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蓮實重彦のなでしこ&女子サッカー批評(in朝日新聞・耕論)

(☆2014年7月21日追記: 最新の関連記事をアップ。

   蓮實重彦のサッカー批評、「W杯の限界」(朝日新聞)&5日連続ラン )

 

 

          ☆          ☆          ☆

RUN 12.1km,57分33秒,心拍147

 

蓮實重彦(はすみしげひこ)という元・東大総長(=学長)は、既に75歳

大御所で、「論壇」(独自の議論を交わす世界)では既にかなり旧世代だが、

今でもそれなりに熱心な支持者を集めてるようだ。

 

蓮實節とも言うべき、独特の難解な語り口が売りの批評家で、専門フラ

ンス文学と映画だが、日本文学についてもかなり語ってるし、野球とサッ

カーを愛することでも知られる。去年W杯後朝日新聞にインタビュー

が載ったので、ウチで軽く記事を書いた所、地味なアクセスが続いて、あ

らためて根強い人気を確認できた。1年後の今日になっても、10人ほど

の検索アクセスを集めてる。

 

  (cf.サッカーのみが「運動する知性」&『ホタルノヒカリ2』第2話)   

 

おそらく、あのインタビューは世間一般で好評だったんだろう。今年も、な

でしこJAPANがサッカー女子W杯で優勝した後の今日、7月26日に、

年と全く同じ形式でインタビューが掲載された。オピニオンページの右上

蓮實、左上が東大教授の人気政治学者・姜尚中(カンサンジュン)。全

体のタイトルは、去年より西暦だけ1年増やした、「2011年のフットボー

」。ノーベル文学賞受賞の大江健三郎『万延元年のフットボール』を意

識して、大がかりな変化を意味してるのだろう。。

 

         ☆          ☆          ☆

さて、残念ながら今、手元に去年の記事が無いが、後で見つかったら追記

するとしよう。とにかく今年は、蓮實が笑顔、姜は満面の笑みの写真で紹

介されている。全く意外な快挙だから、当然だろう。ただ、この笑顔の差は、

2人の論調の微妙な違いをも上手く表してる。撮影は、鈴木好之。ちなみに

記事中央は、カップを掲げた歓喜のなでしこの写真と、ゴール後の沢、米国

の15番の選手(おそらくラピノー)の写真だ。

 

2人とも、日本の「ナショナリズム」的な騒ぎを否定的に扱ってるが、

「不思議なことに、国をあげての熱狂にもかかわらず、選手も国民も、ナショ

ナリズム的な高揚感とは無縁だったように思います」と語ってる。家族と共

「跳び上がって喜」んだのに、そう語るのだ。選手一人一人の物語への

共感が感動となったのであって、「日本」国への愛国心を「ヤマト」ナデシコ

に映したわけではない、という論法だ。

 

しかし、一人一人の物語など、他国の選手にもいくらでもあるはずだが、報

道も共感も、ほとんどが日本選手に対するものなのは事実。その辺り、蓮

實の方が冷静に事実をとらえて、クギを刺している。「ここで声を大にして言

いたいのは『騒ぎすぎて、彼女らをつぶしてはいけない』ということです」。

 

そもそも蓮實の場合、インタビューの冒頭から、なでしこではなく、米国のミッ

ドフィールダー・ラピノーの動きを絶賛。「他の国々の選手たちはどんな動き

をしたか。そこに思いを致した方が、私たちの世界は豊かさを増すのでは

ないでしょうか」という自らの言葉を実践した形になってるわけだ。

 

ただ、この構成は、インタビューの聞き手の太田啓之・金重秀幸記者によ

るものかも知れない(姜の聞き手は秋山惣一郎)。もしそうであれば、正し

い構成だが、残念ながら、蓮實へのインタビューの見出し的を外してる。

美しいゴール 聡明さに興奮」という見出しはむしろ、「美しいゴール 驚

きと爽快さから」とでもすべき所だろう。

 

蓮實の批評では一般に、「驚き」の類のもの、つまり意外性とか桁外れの

差異によって我々を大きく揺さぶるものが、最重要視されている。それは、

去年のインタビューだと、日本代表とも闘ったオランダの得点王、スナイダー

の「動物的な獰猛さ」が典型で、今年のなでしこジャパンだと、18歳の天才

ストライカー・岩淵真奈の自信に満ち溢れたドリブルということになる。

 

それに続くのが、準々決勝・ドイツ戦争の丸山のゴールで、その「動きの

聡明さ」に驚いたという話だ。この「聡明さ」という言葉を、インタビューの

見出しに採用してるわけだが、あくまで丸山の扱いは、2番手か3番手に

過ぎないし、全体の論調でも、聡明さというものは核心にはなってない

 

          ☆          ☆          ☆

やはり、「驚き」。そして、今回強調されてるのが、「爽快さ」だ。爽快さとは、

岩淵の場合だと、「すがすがしい体験」とも言われてる。蓮實の他の具体

的説明を読んでも、爽快さという言葉の適切さがよく分かるのだ。

 

たとえば、日本の1点目、宮間の同点ゴールは、動きの上手さへの「驚嘆」

はあったけれど、「爽快さは感じられません」。なるほど、確かにその通りだ。

沢の同点ゴールを「どさくさ紛れの1点みたいな感じで、二度と起きない奇

跡」と語ってるのには苦笑してしまうが、確かに爽快さからは少し離れたゴー

ルだろう。敗色濃厚な日本を救った中心的選手の得点だから、興奮を呼び

込んだものの、あれがもし米国側のゴールなら、素晴らしいプレーだと絶賛

する人は少ないはずだ。

 

もちろん蓮實も、宮間や沢を高く評価している。勝利の瞬間に、米国選手

と健闘をたたえあった宮間の謙虚さ、「人間として最高レベルの選手

。この辺り、以前の蓮實なら言わなかった事のような気もするが、過激

な論客の蓮實も、年齢を重ねて大人になったということかも知れない♪  

 

ちなみに決勝戦、米国の方が上だったという見方は、前半の半分と試合

後の特集しか見てない私も同じだし、たぶん少なからずのサッカーファン

が内心そう感じてるだろう。米国の攻撃が不運にもなかなか得点につなが

らなかったことで、リズムを崩して自滅。この蓮實の総評の正しさは、あの

PK戦に象徴されてると思う。

 

なお、女子サッカー全体については、男子よりスピードやパワーは劣るもの

の、男子みたいなラフプレーがない点を評価。「ボールを相手に与えず味

方に預け続けることで、見る者を驚かす」というサッカーの理想形はむしろ

女子の方に残ってると語ってる。

 

では、日本のパス・サッカーで本当に蓮實が「驚く」のか、あるいは、それが

理想形なのか、私はちょっと疑問に思うが、まあ女子サッカーへの応援メッ

セージとして、微笑んで受けとめればいいのだろう。。

 

 

(☆28日追記: 検索アクセスが予想以上に多いのは嬉しいことだが、

          前の入力ミスか誤解がかなり目立つ。「蓮見」でも「蓮実」

          でもなく、「蓮實」が正しい。ご本人がこだわりを示してる事

          なので、念のため。。)    

 

 

          ☆          ☆          ☆

時間が無くなったので、については省略するが、米国女子サッカー界のと

らえ方はなかなか参考になった。人気はあるけど、他のスポーツと比べれば

お金にならず、アメリカンドリームをつかむ手段としても弱い。だから、アッ

パーミドルクラスの、経済的に安定した層がプレーするスポーツだと言うの

だ。今回の代表の中心も白人であって、そこには貧富の格差や多様な民族

が織りなす混沌の強み活かされてない

 

とはいえ、仮にその捉え方が正しいとしても、だから今回の米国女子チーム

が負けたというのは言い過ぎだろう。結果的に、決勝のPK戦で惜敗したも

のの、試合内容は押してたし、W杯準優勝というのも見事な成績だと思う。

もちろん、本人たちも含めて、米国人には不満が残っただろうけど。。

 

 

P.S. 2016年5月18日の朝日新聞・朝刊「天声人語」は、蓮實の三島

     由紀夫賞受賞の記者会見に注目。「何だかわからないけど面白い

     というものが世の中にはある」、「新鮮・・・『わかりやすさ』の対極に

     あるから」、「不機嫌な返答も、受賞がわかりやすい物語にまとめら

     れるのを嫌ってのことだったか」と語られてた。

 

     ただしオチは、「ご本人から『違います』と言われるかも知れないが」

     (笑)。映像を見てないので何とも言えないが、一問一答を読む限り、

     ヒネった軽口ではなく、ホントに不機嫌な感もある。「はた迷惑」、「ご

     心境という言葉は私の中には存在しておりません」、「お答えいたし

     ません」、「暴挙」、「馬鹿な質問はやめていただけますか」(爆)

 

     私は、『伯爵夫人』の発表と賞の両方に関わってる新潮社と微妙な

     やり取りがあって、仕方なく受賞&会見に応じたのだろうと想像する。 

     もちろん、「違います」とか怒られそうだが♪

 

 

         ☆           ☆          ☆

最後に、今日の私のランニングについて。スポーツというのは、基本的に、

見るものではなく、するものなのだ♪ 今朝も無理やり早起きして、寝不足

でフラフラの状態で近所の公園に出発。ラジオ体操の音楽が流れる中、わ

りとマトモに12.1km走って来た。  

 

相変わらず、右脚の太腿裏側と左脚のふくらはぎが痛いけど、少しずつ治っ

て来たし、週末の自転車の疲れがたっぷり残った状態にしてはまあまあの

走りだったかも知れない。自転車だと心拍を上げにくいから、ランニングで

心拍を上げてるのだ。

 

トータルでは、1km4分45秒ペース。早く、本気で走れる状態まで回復させ

たいもんだね。ちなみに、今年の8月平年並みの暑さにすぎないという予

報を聞いて、かなりホッとした。去年の8月は記録的な暑さで、自転車に乗

り続けるのは地獄だったもんなぁ。。では、今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 往路(1.05km)    5分55秒   心拍120     

  1周(1.1km)     5分21秒      135             

  2周            5分17秒      143                

  3周            5分17秒       145        

  4周            5分13秒      149              

  5周            5分06秒      151              

  6周            5分05秒      154              

  7周            5分08秒      155             

  8周           5分05秒      156 

  9周           4分54秒      159 

  復路(1.15km)    5分13秒      158 

計 12.1km 57分33秒 平均心拍147 最大163(復路の坂)

 

                    (計 3914文字)

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コメント

澤選手のゴールは奇跡でも偶然でもなく、あの形は澤選手のいちばん得意とする得点パターン。だから宮前選手もニアサイドに蹴ったのです。どさくさという表現は悲しい、というか寂しい。元東大の総長ともあろうお方がどさくさ、とは…。東大のレベルが下がっているのも分かります。蓮實さんのインタビューは全文読みましたが、私見、というより偏見に近くガッカリでした。確かに頷けるところもありましたが、おじいちゃんの縁側日記的なインタビューは読み応え23%でした。

投稿: 朝日新聞頑張れ! | 2011年7月28日 (木) 18時34分

> 朝日新聞頑張れ!さん
   
はじめまして。コメントどうもです。
    
「どさくさ紛れ」というような言葉は、
蓮實が時々使う、冗談半分のくだけた表現です。
笑って聞き流せばいいと思います。
  
「東大のレベルが下がっている」といっても、
彼自身が50年以上前の東大生ですからね。
 
いかにも蓮實らしい、読み応えある私見だったと思います

投稿: テンメイ | 2011年7月30日 (土) 12時32分

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