放射線被曝のがんリスクを帳消しにする運動量の計算など
JOG 2.5km,15分程度
良くはないけどまずまず、ビミョーな結果に終わった川口マラソンから、早
くも3日半が経過。3月の板橋Cityマラソンを目指して、再び走り始めたく
てウズウズしてるのに、時間がない(・・と言いつつブログ執筆♪)。まあ、
両脚故障のまま本気で走ったレースで、ダメージが思ったより少ないって
事だけでも満足すべきかも知れないけど、頭の中の半分くらいはランニン
グが占めてる状況だ。
その一方、放射能・放射線、原発、福島=フクシマの問題から目を離せ
ないのも事実で、今日(12月7日)の朝日新聞・朝刊の記事もしっかり読
んでる。
先に、社会面のトップ記事を見ると、見出しは「賠償 子と妊婦40万円」、
「福島・原子力紛争審 他は1人8万円」。まだ正式決定じゃないとはいえ、
避難してない人も含めて一律に決めたこの賠償金は、避難した人にとっ
ては恐ろしく少ないだろう。家族で長期間避難すれば、経費だけで数十万
はかかるはずだし、収入減まで考え合わせると百万円程にはなるはずだ。
この暗いニュースに対して、読み方によっては明るさも含んでるニュース
は、1面のトップ記事。「『長期に帰還困難』区域」、「福島第一周辺 政権、
設定を検討」。これまた、正式決定ではない話だけど、避難区域を再編し
ようという動きがあるらしい。
これまで(10月以降)は、半径20キロ圏内の「警戒区域」と、20キロ圏外
かつ年間20ミリシーベルト以上(外部被曝)の「計画的避難区域」の2種類。
それに対して、検討中の新区分は、20ミリシーベルト未満の「解除準備区
域」、20~50ミリ程度の「居住制限区域」、50ミリ以上の「長期帰還困難
区域」の3種類。
朝日の見出しは、「長期帰還困難」という指定の重さを強調してるけど、
新たな年間線量の見通しが20ミリを下回れば、来春以降に避難指示が
解除されるわけで、故郷に早く帰りたい人にとっては朗報だろう。
☆ ☆ ☆
そこで問題になるのは、20ミリ未満の外部被曝線量だ。現在の標準的な
考え(LNT=直線しきい値なし仮説)に即して、100ミリの場合の5分の
1(つまり20/100)前後として計算すると、決してリスクは高くない。でも、
出来ればリスクは少ない方がいいはずだ。
では、どうやれば減らせるのか、という疑問を解消するヒントが、国立が
ん研究センターの発表にある(結論だけなら、この記事のポイントだけ拾
い読みすれば十分)。
今春から掲載中の pdf ファイル、「わかりやすい放射線とがんのリスク」
を見ると、まず100~200mSv(ミリシーベルト)の被曝では、がんリス
クは1.08倍(広島・長崎原爆からのデータ)。200mSv以上でも、ほぼ
線量に比例してリスクが高まるから、簡単のため、150mSvで1.08倍
としよう。
つまり、150mSvで0.08倍分だけリスクが高まるのだから、LNT仮説
によると、20mSvの場合には、
0.08×(20/150)≒0.01
だけリスクが高まる。したがって、1倍(元のリスク)を加えると、結局は
1.01倍になるということだ。
しかし、単純に20/150ではなく、それより高いとする学者もいる。また、
20ミリに近い場所に帰還すると、「内部」被曝も増える可能性が高いだろ
う。それらを考慮して、安全のためにリスクを3倍に見て、20mSvでは
1.03倍になると仮定しよう。
☆ ☆ ☆
個人的には、これは十分低い値だと思うが、帳消しにしたければ、1.03
以上の数字で割ればいい。例のファイルを見ると、「野菜不足」によるリス
クは1.06倍で、私も含めて多くの人は、このリスクを背負って暮らしてる。
つまり、元々1.06倍になってるのだ。
そこで、1日420gの野菜を摂取すれば、この1.06倍が消えるから、現
在のリスクの1.06分の1になる。よって、単純計算するなら、被曝による
がんリスク増大を帳消しにして「お釣り」が来るのだ。
1.03÷1.06≒0.97
つまり元のリスクの1倍未満になる。1日420gの野菜というのは、相当な
量だけど、「お釣り」の部分を考えるなら、1日300gの野菜でもOKだろう。
似たような事は、高塩分食品(約1.13倍)を控えたり、肥満(1.22倍)や
痩せ(1.29倍)を克服したり、大量飲酒(1.4倍以上)や喫煙(1.6倍)
を止めても可能になる。
リスクには様々な種類のものがあるから、減らす方法も数多いのだ。
☆ ☆ ☆
では最後に本題。放射線のがんリスクを運動で解消するには、どれだけ頑
張ればいいのか。データが細か過ぎるので、やや大まかにまとめると、1日
あたりの「METs」(メッツ=Metabolic Equivalent of Task = 仕事の代謝当
量)が約25の場合、約43の場合に対して、がんリスクが約1.17倍になる。
(注. METsの最後の「s」は、単位として使う時の複数形を示すだけだか
ら、代謝を表す量というだけの意味なら、MET=メット。)
運動量を72%((43-25)÷25)増やすと、リスクが0.17倍減ることに
なるから、単純計算するなら、運動量を13%増やせば、リスクは0.03倍
減に十分なる。
0.17×13/72≒0.031
そこで、更に余裕を持たせて、運動量を3割増やせば、リスクは0.03倍
を上回る減少(つまり1.03分の1未満)になると仮定するのは、合理的
だろう。結局、「1日METs」25を33まで増やせばいいことになる。
33÷25=1.32 (3割2分の増加)
☆ ☆ ☆
したがって、1日メッツ(1日当たりの代謝当量)を25から33に上げること
を考えよう。メッツとは、安静時の何倍の代謝(=カロリー消費)かを表す
数値で、普通は時間と掛け合わせて「メッツ・時」とする単位だけど、1日
だから24時間分を合計したものだろう。実際、安静時が1メッツだから、
安静を24時間続けると、1×24=24(1日メッツ)。これは、運動不足グ
ループの値にほぼ等しい。
さて、1日メッツ(1日当たりのメッツ・時の合計)を25から33へと8増やす
には、運動ごとの強度を表すメッツ数と時間を掛けて、8にすればいい。
パナソニックのHPを見ると、運動ごとのメッツ数が細かく示されてる。
まず、ウォーキング(犬の散歩)も含めて、身体を少し動かす日常的な活
動は、大体3.0メッツになってる。お掃除でも、ガーデニングでもOK。そ
うした軽い活動を1日に8/3時間、つまり2時間40分行えば8メッツ・時
になる。
3.0×8/3=8(メッツ・時)
次に、走る場合。ジョギングなら8メッツだから、1時間行えば8に到達する。
細かい区分がないから、健康関連会社カイテックのHPも援用すると、時速
8km(1km7分半ペース)で7メッツ、時速10km(1km6分ペース)のラ
ンニングで11メッツ、時速12km(1km5分ペース)だと12.5メッツ。
標準的な時速10kmのランニングなら、1日に44分、つまり44/60時間
走れば8メッツ・時だ。
11×44/60≒8(メッツ・時)
最後に、自転車の場合。パナソニックHPに戻ると、ゆっくり乗るなら6メッ
ツ(時速16-19km)。時速19-22kmなら8メッツ。時速22-25km
なら10メッツだ。普通の人が普通にサイクリングを楽しめば、平均時速
は18kmくらいだろうから、8メッツ。よって、1日に1時間走ればいい。
もちろん、走るだけ、自転車だけの人はいないはずで、日常的な活動(3
メッツ)も別に行ってるから、その分は差し引いていいことになる。大まか
に言うなら、走ったり自転車に乗ったりする時間は4分の3で十分だと思う。
つまり、時速10kmのランなら33分、普通の自転車なら45分だ。。
☆ ☆ ☆
話の最初に戻ると、1日METsで25から33という変化は、家で静かにテ
レビを見てるような人が運動を始めるという、極端な場合だと分かったか
ら、目標をもう少し実用的なものに変えた方がいい。
大まかに推測して、30の人が40に持って行けば、がんリスクは1.03分
の1未満になる。つまり、20mSvの被曝によるがんリスク増加(1.03倍)
を帳消しに出来るだろう。日常的活動だけなら3時間20分、時速10kmラ
ンなら41分、普通の自転車なら56分ほど頑張れば、OKのはずだ。
なお、屋外で運動すると当然、外部被曝は増えるが、よほど高い空間線量
の場所を別とすれば、運動中の外部被曝による放射線リスク増加より、運
動不足解消によるリスク減少の方が遥かに大きい。現在の避難区域に入っ
てない場所(毎時3.8マイクロシーベルト以下)なら、上で書いた程度の屋
外運動をためらう必要はない。
たとえ3.8ギリギリの場所で、毎日2時間外出したとしても、年間外部被曝
20ミリが21.7ミリに増えるだけで、がんリスクの増加はほとんどゼロ。呼
吸による内部被曝の悪影響の増加も、ほとんど無視できるはずだ。。
3.8×0.6(屋外と屋内の差)×2×365≒1700(μSv)
=1.7(mSv)
☆ ☆ ☆
それにしても、スポーツのことだけ考えると、メッツより普通のカロリーで計
算する方が遥かに便利なはず。国立国会図書館によると、次の式でカロ
リーに換算できるらしい。メッツ・時の単位で表された運動量が、「エクササ
イズ」だ。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×エクササイズ(メッツ・時)×体重(kg)
しかし、わざわざ普通のカロリーでなく、メッツを使うのは、日常的な動作も
含めて、すべての身体活動を考慮するからだと思う。ひょっとして・・と思っ
て検索すると、メッツ・時を計測する歩数計なんてものを発見♪ 「社員食
堂」シリーズが大ベストセラーになったタニタだと、4725円(税込)の商品
がすぐヒットした。それどころか、携帯でも計測できる機種があるらしい。
とにかく、放射線のリスクを他の事で帳消しにしていく、ポジティブで現実的
な行動&思考が、今後は重要になって来ると思う。放射能の除染や自然
減だけに頼るわけには行かない。福島県民の方々に限らず、放射線リス
クが気になる人の参考になれば幸いだ。
なお、今日の走りはジョギング2.5kmのみ。レースの後遺症は少し残って
る程度だ。ではまた。。☆彡
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P.S. 「メッツ」という単位や、「エクササイズ」(メッツ・時)は、日本では、
厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」(エクササイ
ズガイド2006)で広く提唱されたものだ。
しかし、遅くとも1993年には米国にあった概念で(英語版ウィキ
ペディア)、おそらくその年の Barbara E.Ainsworthらによる論文
「身体的活動の一覧表: 人間の身体活動のエネルギー・コスト
の分類」(『スポーツ&運動における医学&科学』誌)が最初だ。
Compendium of physical activities :
classification of energy costs of human physical activities
(MEDICINE & SCIENCE IN SPORTS & EXERCISE)
彼女らの2000年の著書は、厚労省の運動指針の参考文献とし
ても挙げられてる。よって、厚労省が新たに「メッツ」を定義したか
のように書いてる日本語ウィキなどの説明は正しくない。
cf.シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について
雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)
被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)
(計 4770文字)
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コメント
テンプレートに置いてあるお写真、頂きました。
勝手に使ってすみません。
それから、「放射線被曝のがんリスクを帳消しにする」
何度も読み返したのですが、頭が悪いのでイマイチ入ってきません。
今も福島にすんでいる方々ににも当てはまるのでしょうか?
それとも、私たちの様に、あまり放射能の被害を受けていない、
地域の人が東北産地の野菜、お米、その他を食べる時に
テンメイさまが書いていらっしゃる事を実行したら、少しは
放射能の恐怖から逃れる事が出来るのですか?
知り合いは福島在住でもう諦めて生活しています。
また他の知り合いは震災直後から自衛隊で派遣され、ずっと
福島で勤務しています。
この人達にはもう当てはまらないですよね?
先日、長年お米を買っていた新潟の魚沼産のコシヒカリの
農家の方からハガキが届きました。
去年まで、順番が廻って来ないほどの人気農家でしたが
今年は全く売れず、とうとう送料無料にしますから購入して
欲しいと言ってきました。
結構上目線の農家だったのですが、お米が本当に美味しくて
大ファンでしたが、他の人達も全く買わなくなってしまった
お米をやはり申し訳ないですが、うちも躊躇しています。
野菜も凄く吟味して買っていますし、関西から西の友人たちが
安全な野菜を豊富に送ってくれるので、安心して食べています。
エクササイズとか自転車とかの運動で放射能が軽減されるなら
友人達にも教えたいです。
亀梨・亀梨と言っては居ますが、やはり私は放射のに関しては
凄く敏感になっています。
折角、ネコの頭でも分かるように説明してくださったのに
理解が出来なくて恥ずかしいです・・・
投稿: みに子 | 2011年12月 9日 (金) 00時35分
> みに子さん
こんばんは
写真って言うか、ブログパーツからキャプチャー
した画像ね。どうぞ、どうぞ。
と言っても、僕は著作権者じゃないけど(笑)
ま、明らかに個人的使用の許容範囲内でしょう。
放射線被曝のがんリスクの帳消し。
やっぱ、分かりにくかったですか (^^ゞ
僕も、書き終えた後に読み返して、意外に
分かりにくいなぁと思ったから、あれでも
かなり分かりやすくした後。
半ば放射線記事、半ば数学記事だから、
運動量の計算がちょっと厄介だけど、
そこは読み飛ばして、結論だけ見ればいいです。
この記事の内容はもちろん、ほぼ全員に当てはまります。
今も働いてる原発作業員とか、特殊な人を除けば、
今から頑張っても、十分な効果を期待できますよ。
過去の作業員、原発近くに住んでた人でもOKです。
ただ繊細な話なので、正確な理解と表現が必要。
「エクササイズとか自転車とかの運動で放射能が軽減される」
と言うと、誤解を招きそうですね。
正しくは、
「運動その他で、放射能による『がんリスク』が軽減される」
という事です。
既に浴びてしまった放射線量は減らせないし、
既に摂取した放射性物質も、自然な減少(崩壊、排泄)を
待つしかない。
ただ、そういったものがなぜ悪者かというと、
病気や障害をもたらすから。最たるものが、がん。
つまり、がんリスクが高まるのが主な問題。
だから、がんリスクを下げるような行動を取れば、
放射線で高まったリスクを低くできる。
完全な帳消しにも、十分出来るのです。
国立がん研究センターのデータから素朴に考えるなら。
ただし、放射能の帳消しではなく、リスクの帳消しです。
たとえ話をするなら、放射能のせいで300万円損した。
それなら、仕事を頑張って300万円稼げば帳消しになる。
-300万+300万=0円
そんな感じの話です。
一番手軽なのは、野菜でしょう。
多くの人は野菜不足のはずだから、野菜を増やす。
スーパーで小さい袋詰めになってるのが200gくらい
だから、あれを毎日1袋食べれば帳消しになります。
タバコを減らしても、塩分を減らしてもOK。
肥満ならダイエット、やせ過ぎなら適度な体重増加。
日常的に身体を動かして、週に2回くらい
30~1時間程度の運動(ジョギング、自転車)を
することでも、被曝によるがんリスク上昇は消せます。
原発作業員とか、一部の特殊な人を除くと、
年間の外部被曝は30ミリシーベルト以下。
内部被曝を非常に多めに見ても、合計で100ミリ以下。
よって、がんリスクは多くとも1.05倍。
実際には、合計50ミリ以下と推定できるから、
がんリスクは多くとも1.03倍。
これなら、野菜、タバコ、塩分、体重適正化、
運動、どれによっても帳消しにできます。
この中で、運動のメリットは、ストレス解消にもなるし、
ダイエット、野菜不足解消にもつながること。
運動すれば、カロリーを消費してお腹が減るので。
屋外で適度に運動することによる外部被曝の増加は僅か。
福島県内でさえ、気にするほどではない(特に大人の場合)。
それでも気になるなら、ジムとか屋内でやればOK。
起きてしまった原発事故は、もう仕方ない現実。
その中で、どのような生活をすれば健康を保てるのか。
そこを本気で考える時期だと思います。
がんリスクを下げる話に対して、ありがちな疑問は、
「それは(単なる)理屈やデータの話」だというもの。
「単なる」を除けば、その通りです。
でも、それを言うなら、放射線でリスクが増すとか
内部被曝が恐いというのも、理屈やデータの話。
リスクが減る話は信用しないのに、リスクが増える話だけ、
恐い話だけ信用するというのは、奇妙なことでしょう。
それはもはや、自分自身の心の問題です。
どちらも信用しないのなら、昔の普通の生活に戻ればいい。
どちらも信用するのなら、運動や野菜を増やせばいいのです。
ちなみに、「今も働いてる・・・」以降は、
コピペして身近な人に送ってもらってもOK。
ただし、身近で落ち着いて話を聞ける人だけにして下さい。
この問題は、科学・医学・事実より、
人間的な感情が深く関わってるものですからね。
という訳で、もし放射能が気になってるのなら、
みに子さんも実践しましょう。
僕はそもそも、それほど気になってないし、
運動もしてるし、体型も標準、タバコも吸わない。
一応、昨夜たっぷり野菜炒めを食べたけど
医療の世界で職業的に被曝してる技師なども、
被曝を気にしてないことが多いような気がします。
もちろん、規則による線量制限は守りながら。
ではまた。。
投稿: テンメイ | 2011年12月10日 (土) 18時48分