携帯連絡が返って来ない時の認知療法スキル(技)~朝日新聞「100万人のうつ」
JOG 3km,18分程度
朝日新聞・夕刊(1面)の長期連載、「ニッポン人脈記」は、様々な項目につ
いて、日本で活躍する人達のつながりをレポートする記事だ。12月8日か
らは、「100万人のうつ」と題するシリーズがスタート。文章の担当は佐藤
陽、写真担当は伊ヶ崎忍。おそらく2人とも朝日の記者だろう。
「100万人のうつ」というのは、厚生労働省の平成20年「患者調査」(21年
発表)で分かった現状だ。大規模調査を元にした推計で、うつ病を中心と
するカテゴリー「気分障害」(躁うつ病含む)の患者数は104万1000人。
男性38万6000人、女性65万5000人だから、女は男の1.7倍となって
る。統合失調症(旧名は精神分裂病)では、患者約80万人中、女は男より
少し多い程度。うつ病女性の多さは、人数的にも、男女比的にも、際立っ
てるのだ。
うつ病患者がここ十数年で急増した背景には、製薬会社の巧みな宣伝(「う
つは心の風邪」など)と、米国精神医学会の機械的な診断基準(DSM)が
あると、よく言われてる。私もそう思うが、人間とか患者の側の精神的変化
もあるだろうし、社会的変化もあるだろう。
特に、うつ病患者の急増と時期的に重なってるのが、PCと携帯の普及。つ
まり、メールや携帯電話で、多数の人といつでも簡単にコミュニケーション
「可能」となったことが、逆に人間関係を難しくして、抑うつ状態を招いてる
側面は十分あると思う。可能性と現実は違うし、コミュニケーションの質も
以前と違う。環境の急変に対する人間の適応能力も、少なくとも上昇して
はいない。それどころか、下降してる気もしてしまうのだ。。
☆ ☆ ☆
さて、今日(12月14日)の夕刊に掲載された「100万人のうつ」の冒頭
は、何とも分かりやす過ぎて苦笑してしまう事例が紹介されている。その
まま引用させて頂こう。
出来事 < A子はB子と遊ぼうと思い、携帯に数回電話したが、
出ない。電話も返ってこない >
→ A子の考え < B子に何か悪いことをしたのかな >
→ 気分 < 落ち込んだ >
→ 行動 < 宿題が手につかない >
これは、星美学園短大(東京)で10月に行われた「こころのスキルアップ
授業」の事例。講師・佐野智子が約40人の学生に、「A子さんはほかの
考え方できないかな」と尋ね、学生は班ごとに話し合う。「B子はアルバイ
トをしていたのかも」、「親に携帯を没収されたとか」。様々な意見が出た
後、佐野が「そんな風に考えたら、気分はどうなる?」と聞くと、「電話に
出なくても仕方ないかな。気分も落ち着く」と答えたそうだ。
これは、授業を極端に短くまとめた報告であって、実際の授業はもっと内
容があったのだろうが、正直言って、あまりに当たり前の考えだろう。自分
を悪者としてネガティブに考えるのではなく、別の納得できる事情を推測・
想像する(真の事情はどうであれ)。そのくらい、授業も話し合いも不要、中
高校生でもすぐに出来そうだが、こういった授業に関心が集まるということ
は、そうした考えを自分で持てない人が増えてるのかも知れない。「携帯依
存症」の増加といった側面もあるだろう。。
☆ ☆ ☆
実際、世界に広がりつつある「認知療法」というものは、基本的に、認知
の仕方(=考え方)を少し変えるだけの心理療法だ。治療者が患者に、よ
り良い考え方を教え、身に付けさせ、それによって気分が改善する。ここ
に、行動の仕方の変化も加えれば、「認知行動療法」ということになる。
日本での第一人者は、雅子さまの主治医として有名な大野裕。元々は精
神分析が専門だったが、今は国立精神・神経医療研究センターで認知行
動療法(CBT)センター長をしているそうだ。ちなみにCBTは、「Cognitive
Behavioral Therapy」の略。センターHPを見ると、専門家相手の教育・
研修機関だからなのか、一般の人にとって役立つ情報はほとんど書かれて
ない。もう少し、社会貢献的側面があってもいいとは思う。
で、その大野が、カウンセラー・高橋チカ子(認知行動療法教育研究会・代
表)や臨床心理士・西村美智子らを誘って研究会を作り、カリキュラムを練っ
て完成させたのが、「こころのスキルアップ」授業とのこと。昨年から研修会
を始めて、小学校、大学など5校で実施したそうだ。なるほど、小学校の授
業としてなら納得できる。
ちなみに大野は、携帯サイトでの認知療法も開始。宮城県では、大震災の
被災者への対応に関して、7月から毎月研修会を開いてるそうだ。メディ
アその他で色々言われながら、しっかり大活躍してるのは流石として、雅
子さまは大丈夫なのか。ちょっと気になる所ではある。雅子さまは患者の
「一人」だが、日本の象徴的存在として「特別な一人」。トップとして、見事
な成果を挙げて頂きたいもんだ。
☆ ☆ ☆
話を授業に戻そう。携帯に限らず、固定電話・PCメール・手紙でも、連絡
が出来なかったり、返信が無いことは日常茶飯事だろう。私自身、しばら
く先延ばしにしてるメールが2つあるし(反省・・)、逆に返信が無くて不安
になったことも度々ある。
では、私がメールを2通、先延ばしにしてる理由は何かと言うと、急ぎの用
件ではないということもあるけど、主として時間配分の問題。違う言い方を
すると、たとえ時間がかかっても、中身のあるメールを出したいということだ。
簡単で事務的なメールなら、いつでもすぐに書ける。ブログのコメント欄の
レスも、一言の挨拶なら一瞬で書けるが、きっちりレスするから1~2日、時
には3日かかるのだ。
逆に、返信がない時には、色々と理由を想像するし、心が不安定になった
りもするけど、「うつ」状態にまでなった事などない。しばらく待てば、多くの
場合は解決するし、待ってもダメな時は、もう一度(or 2度)連絡して、それ
でダメなら(ひとまず)人間関係の停止、または終了だ。それはもう、仕方な
いこととして「諦める」。そういった心のコントロールには、以前は「授業」や
「療法」など必要なかったはず。だが、理由はともかく、最近は世界的に違っ
て来てるのだろう。
スキルアップ授業を受けて、「一つの出来事でも、人によって考えが違っ
ていいんだ」、「考え方次第で、気分が変わることがわかった」といった子
どもの感想が出てるとのこと。これまた正直、私にとっては当たり前の事
のように感じられるが、現代社会の認識が甘いということか♪
「学校では互いの気持ちを言い合う機会があまりない」と書いてるけど、昔
からそんなものは少なかったと思うし、「人が思っていることを聞く授業」も
昔から少ないだろう(特に高校以上)。そういった授業が「生まれて初めて」
だと語った子どももいるそうで、もし本当なら不幸な事だが、実際は、国語
の授業とか、生徒・教師の話し合い(ホームルームなど)で一応あったと思
う。「この時の主人公の気持ちは?」と聞かれて、みんなが答えることなど、
珍しくないはずだ。
☆ ☆ ☆
ともあれ、認知療法の基本はものすごく単純で簡単。だからこそ、普及も
実践も容易なのだ。おまけに、薬と違って副作用もほとんど無いだろうか
ら、不安の解消とか、うつ病の予防になるのなら、いい事だと思うし、授
業も増えていい。
しかし、そんな小手先のスキル=技より、根本的な忍耐力=ガマンとか、諦
念=あきらめ、あるいは変化を受け入れる無常感のようなものを、痛みと
共にじっくり身に付けて行く方が、遥かに実践的だし、人間として本質的な
ことだと思う。「現代っ子に、そんな余裕も潜在能力も無い」と専門家・臨床
家に言われれば、返す言葉に困るが。。
P.S. 12月21日の「森田療法」の話は興味深かったが、残念ながら新
たに記事を書く余裕が無い。神経症の日本的治療法だと思ってた
ら、うつ病にも適用されて成果を上げてるとのことだ。
cf.うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ネット安息日(=禁止デー)の記事を見て、ネットを飛び回った夜♪
☆ ☆ ☆
最後に、今日の走りは、昼間のジョギング 3kmのみ。思ったより天気が
崩れなかったから、気分的には夜のランニングに行きたかったけど、睡
眠わずか1時間半だったから、走る代わりに1時間ちょっと仮眠。無理や
り起きて、ブログその他を済ませたわけ。ギリギリの生活を続けてるのだ。
この余裕の無さが、奇妙なほどの体重減少につながってるのか。あるい
は、栄養がガン細胞に回ってるのか。マジで気になり始めた今日この頃。
認知療法なら、「痩せてスマートになったんだからイイ」とか、「胃袋が縮ん
で、食費が減って経済的」とかポジティブに考えるところか♪ ではまた☆彡
(計 3772文字)
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