愛と死を目指して生きる~『最高の人生の終り方』第1話
(☆13年7月9日追記: 『サマーヌード』第1話レビューをアップ。
水・風・指輪、再びきらめくケンゾー♪~『SUMMER NUDE』第1話 )
☆ ☆ ☆
今日(1月12日)の朝日新聞・朝刊のテレビ欄を見た時、一瞬ドキッとした。
ピンクと白の縦ストライプを背景にして、男装したキレイな女の子が正座し
て軽くお辞儀。軽く微笑む唇は、リップかグロスを付けてるみたいに妖しく
光ってる。で、1秒後にエッ!と思ったわけ。内田有紀が若返ったのかと思っ
たら、山Pかよ♪
ドラマやCM以外で見ることはほとんど無いから、ここ2年間ほどご無沙汰
気味だったけど、やっぱりキレイな顔してるね。写し方やメイク・髪型・服装
によって、男っぽくも女っぽくもなる、中性的な魅力の端正な美形。
今夜の序盤に、短めに映ったタイトルバックでも、ピンクのお花畑みたいな
バックで1人、妖しい光を放ってた。これは思い切ったアピールだな。公式
HPもピンクと白を基調にしてるけど、これは葬儀屋のドラマなのだ♪ 普通
なら黒と白だろう。黒だと、黒・葬儀→クロソーギ→クロサギで面白かった
のに。ちなみにウィキペディアによると、山PのPはピンクという意味らしい。
『コード・ブルー2』以来、丸2年ぶりになる、山下智久主演の連続ドラマ、
『最高の人生の終り方~エンディングプランナー~』は、脚本家・渡辺千穂
によるオリジナルとの事。私の環境で、Googleの窓に「最高の」と打ち込
むと、自動的に示される入力候補のトップが、「最高の人生の見つけ方」。
2007年のアメリカ映画の邦題で、おそらくこれが、今回のドラマ・タイトル
の主な語源だろう。
と言うのも、映画の原題は、『The Bucket List』で、「死ぬ前にやるべ
き事のリスト(一覧表)」という意味だからだ。なぜ「パケツのリスト」なのか、
語源的説明の代表は、「首吊り自殺する前にバケツの上に乗るから」とい
うことに一応なってる。バケツを蹴れば死ぬから、「kick the bucket」で「死
ぬ」という意味の慣用句(英和辞典に掲載)。そこから来たのが、「bucket
list」(バケツのリスト」という慣用句のようだ(英辞郎 on the WEB)。
☆ ☆ ☆
リスト=一覧表にするかどうかはさておき、「自分が死ぬ前に何をすべき
か」、誰でも一度や二度は考えたことがあるだろう。その根源的な問いを、
「他人の死の後に何をすべきか」という問いと共に考えて行く。それが井原
真人(山下智久)の選んだ道だった。父、長田、その他の人々の死と本気
で向き合いつつ、自らの「最高の人生の終り方」へと歩んで行く長旅。
実家の葬儀屋という職業が嫌で、家を出て居酒屋のエリア・マネージャー
をやってた真人。善福寺の店長・長田(設楽統;バナナマン)にプレッシャー
を与えた直後、長田はビルから飛び降り自殺をはかる。責任を感じてた真
人に突然降りかかった、父(蟹江敬三)の死。異母兄の長男・健人(反町
隆史)はどこかへフラリと行ってしまってるし、長女の晴香(前田敦子)はま
だ若くて脚も不自由。三男・隼人(知念侑李)はまだ大学生で、次女、桃子
(大野いと)は幼い高校生。
自分が継ぐ気も全くないし、葬儀屋を廃業しようとしてた真人が直面する
のは、危篤状態だった長田の死。せめてこの人、一人くらいは・・・と思っ
て葬儀を引き受けると、真人が追い込んだ事情を知ってた長田の母が、
遺灰を手に「ありがとう♪」。そして、1人息子・長田が好きだった飴を、真
人に1個手渡す。長田が居酒屋で、お客さんに無料サービスしてるのを
見て、真人が「無駄」だとけなしたことがある、あのキャンディーだ。「こう
して、心から悲しめるのも、あなたのおかげです」。涙をこらえて、深々と
お辞儀する真人。。「辛い時ほど飴は甘い」。そりゃ、『妖怪人間ベム』か♪
この直後、父の墓の前で真人は、「親父の遺した葬儀屋を俺に継がせて
ください」と、涙をこぼしながら告げる。墓前で読み上げたのは、父が生前、
大切に保存してた家族関連の品々の一つ、真人の作文。意外な事に、小
学2年生の真人は、「お仕事をしてるお父さんが大好きです。同じお仕事
をしたいです」と書いてた。これをキッカケに、ドン引きしたクラスからのイ
ジメが始まって、真人は葬儀屋嫌いになったわけだが、幼い頃の彼は、
父も葬儀屋も好きだったのだ。
唐突に墓地に現れた謎の人物、父の友人らしき岩田(山崎努)は、真人に
次のターゲットを紹介した。そりゃ、『クロサギ』か♪ そうじゃなくて、岩田
を横に、真人は美しい青空に向かって心を込めて言う。「いってらっしゃい」。
その後、父の形見の数珠を晴香から手渡され、昔から父の片腕だった従業
員・田中(大友康平)の手助けを受けつつ、真人は葬儀屋としての人生を歩
み始める。。
☆ ☆ ☆
こう、あらすじをまとめるだけだと、昔ながらの感じいいホームドラマの香り
もして来るけど、実はやっぱり現代的に作られてる。私は基本的に見ない
けど、今は事件ものやミステリーが流行る時代。
だから、長田の死が自殺なのか、仲良しだった子供のボールを取ろうとし
て足を滑らせた転落死なのか、まだ分からないし、少なくとも子供は、真人
のせいで自殺したと思ってるらしい。駅のホームと合コンでたまたま知り合っ
た優輝(榮倉奈々)は刑事だし、父の死にも謎が残ってるそうだし(公式サ
イト)、今後は真相追求の要素も強調されて行くんだろう。
正直な印象として、第1話の脚本はあまり上手いと思わなかった。最初だ
から、色んな仕掛けを導入する必要があったんだろうけど、取ってつけた
ような話の構成で、飴は多用し過ぎてるし、特に光る台詞も見当たらない。
「人は必ず死ぬのに、どうして生まれて来るんだろうか」、「死に向かって
生きる」、「死んでも、その人の人生が消えてしまうわけじゃない」、「愛を
知るために、生きるのかもしれない」。。『白夜行』、『クロサギ』に関わった
石井康晴の演出も、ごく普通のものだった。
ただし、それほど不満だったわけでもない。序盤、「笑わない山P」がかな
り笑顔を見せたり、終盤では泣くシーンをたっぷり見せたり。別にファンじゃ
ない男の私が見ても、ちょっと新鮮味があった。今後どんな展開になるの
か想像しにくいから、次回も気になるし、女子高生の次女を演じるモデル・
大野いとのスタイルの良さも明らか。あれなら葬儀に参列してた担任教師
も、禁断の愛へと踏み出すだろう。コラコラ。榮倉も、『プロポーズ大作戦』
の頃よりは可愛く見える・・・って、褒め言葉になってないか♪
それより、個人的にオォッ!と思ったのは、父の死の直後に一瞬映った、
長男・健人=反町の姿。出たっ、『ビーチボーイズ』(97年)☆ 青空のも
と、岸壁で1人、釣りをする姿は、釣り好きの反町のプライベートも反映し
てただろうけど、彼をタレント好感度1位へと登りつめさせた出世作『ビー
チボーイズ』へのオマージュ(敬意を込めた模倣)なのだ。ファンなら当然、
一瞬で思い出したはず。
特に第4話。田舎のちっぽけなビーチの民宿で、反町と共にバイトを始め
た竹野内豊を、元の一流商社の上司(平泉成)が連れ戻しに来る。その時、
岸壁で釣りをするハートフルなシーンがあったのだ。そのフジテレビの名作
の1シーンを思い出させてくれるサービスシーンで、TBSとしてはよく頑張っ
たなって感じだ♪
父から健人への遺言、「お前の家はここだ」も、『ビーチボーイズ』の終盤
の台詞を思い出させるもの。「社長」と慕われてた民宿の主(マイク眞木)
が、反町と竹野内に、「ここはお前らの海じゃない」とか語ったのだ。それ
を一つのキッカケとして、2人は自分たちの海を探しに旅立つことになった。
他にも、真人が上体をのけぞらせて走る姿は、フジ・月9の『プロポ』や『ブ
ザービート』を意識してた気もする。そうゆう、他の作品を軽く思い出させ
てくれるようなサービスは、ドラマファンとして嬉しいのだ。。
☆ ☆ ☆
健人=反町が『ビーチボーイズ』と同様、自分の「海」を探し続けてる一方、
真人=山Pは自分の「海」らしき世界を見つけて、思い切って飛び込んだ。
ところで、山Pが見つけたというか、再発見した新たな世界・葬儀屋は、生
と死の間(はざま)にある境界だ。死者への愛をあらためて抱きつつ、送り
出す場所であると共に、自分たちの死を思う場でもある。この世に生まれ
て以降、着実に死に向かいつつ生きてる、自分の有限性の再認識。死を
恐れる=畏れると共に、生の有難さや重さ、喜びを噛みしめる場所。陸と
海の境界、実生活と冒険の変わり目にあるのが「ビーチ」であるのに対し
て、生と死の境界が葬儀だ。
真人は、「愛を知るために、生きるのかも知れない」と語った後、照れ隠し
するように「・・・な~んてネ」と付け加えた。でも、必然的な死を前提とした
生が、愛をもたらすのは確かだろう。と言うのも、愛とは何かを求め、大切
にすることであって、存在しないものや消滅するものに対して強く抱かれる
思いだからなのだ。
☆ ☆ ☆
目の前の人が、やがて自分の前から立ち去る、あるいは消え去るからこ
そ、強く愛し求めるのだし、自分には存在しないものを持ち合わせてる相
手だからこそ、深く愛するとも言える。心理学的には、すべての愛は、自分
を生み、様々な満足を与えてくれた「幼児期の母親」への欲望と見ることも
出来る。もちろん、その幻想的欲望の対象は現存しないからこそ、欲望は
様々に変形され、似て非なる対象へと逸れて行くことになる。普通に逸れる
のが「正常」、特殊な逸れ方だと「倒錯」。
さらに言うなら、人間にとって本質的な思いである自己愛は、自分が死に
向かう存在だからこそ、激しく抱かれるものだ。死にそうな時、殺されそう
な場面では、ごく自然に助けを求めるだろうし、自分に対する虐待を求め
る心理の根本も、そうゆう事かも知れない。リストカットは、血を流して死
のリスクを冒すことで、自己愛と共に他者からの愛を生み出す。マゾヒス
トは、虐待される可哀想な自分、消滅に向かう自分への性愛を感じる。
したがって、人間は「死」に向かって生きるからこそ、本当の愛を知ること
が出来る。「な~んてね」と照れ隠しする必要はない。人は愛を知るため
に生きてるのだ。「死」と言っても色々だが、生物学的な死まで、普通の視
聴者なら残り数年~数十年。という事は、残り数万~数十万時間。その内
の10時間程度を、生と死の境界を扱うドラマと共に過ごすのも悪くない。
他人であれ、自分であれ、その他のものであれ、「死ぬほど好き」になれる
のは、本当に死ぬから。つまり、死の存在のおかげだ。いまや、ドラマが黒
の代わりにピンクを使った意味も分かる。暗いイメージの死こそ、バラ色の
生をもたらすものなのだ。聖なる=生なる有限性が与えてくれる無限の可
能性に感謝しつつ、愛を目指して真剣に生きて行こう。生命は神がくれた
時間。愛は死がくれた輝き。「燃やそうよ、二度とない日々を・・・」。。
☆ ☆ ☆
昭和を代表する青春ドラマの1つ、『飛び出せ!青春』の主題歌、『太陽
がくれた季節』(青い三角定規)の歌詞へのオマージュを示した所で、今
夜は終りとしよう。古っ!♪
・・・と言っても、今でも小中学校の音楽の教科書に載ってたリするらしい
(by ウィキペディア、教育芸術社HPで確認)。彼らが愛され続けてるの
も、一発屋として「消えた」からかも知れないし、青春や若さがもてはやさ
れるのも、すぐに「消え去る」ものだからだろう。燃え尽きた後の「灰」は、
意外に魅力的なものなのだ。そう言えば、「シンデレラ」という美しい語感
の言葉の語源は、灰だった(英 cinder)。真人が葬儀屋への決意を固め
たのも、火葬場で見た長田の遺灰のおかげとも言えるだろう。
消え去ること、燃え尽きること、その他あらゆる「死」、すなわち有限性に
愛を感じつつ、そろそろ睡眠という名の一時的な死を楽しみたい♪ 「死
ぬ前にやるべきリスト」のトップにある記事執筆は、これにて終了だ。視
聴率は16%前後と予想。それでは。。☆彡
P.S. 初回視聴率は予想通り、15.3%。山P視聴率記事への追記
を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
リハビリ・ウォーキング&珍しくテレビの連続流し見♪ (最終回関連)
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・・・・・・・・・・・・・・・
山P=山下智久主演ドラマ、視聴率の推移(野ブタ~最高の人生)
・・・・・・・・・・・・・・・・
山P=山下智久『ルート66』、男のアメリカ横断一人旅が熱い☆ (第3回)
山P『ルート66』第6回、主役はブーツジャックか♪&『ラッキーセブン』
(計 5326文字)
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コメント
お久しぶりです^^あの走り方はオマージュというより山下の癖なんだろうけど(^_^;)走らせてくれて嬉しいです♡ファンとしては2年ぶりの連ドラを純粋に楽しみたいです。…とテンメイさんが愛と死を目指して生きる~というタイトル付けて下さって嬉しいので出てきました(*^.^*)
そしてテンメイさんにお願いがあります!ぜひ日テレ深夜のROUTE66という山下がオンボロ中古車でシカゴからロスまでたった一人で廃線となってるROUTE66を横断する番組、もちろん録画でもいいのでぜひぜひチェックしてみて下さい!この山下がけっこういい味出してるんですよ。宜しくお願いします。→http://www.ntv.co.jp/route66/
投稿: あんじゅ | 2012年1月13日 (金) 10時27分
> 宇宙人ゼリオさん
違った、あんじゅさん(爆)
超~久々ですね。相変わらずお元気そうで。
ウチのコメント中休み記録の第1位でしょう。
記念に何か、T様グッズを差し上げたいほど♪
で、いきなりイイ突っ込みですネ。
実は僕も、あれが山Pの走り方なのかなと
思ったんだけど、映し方も含めて、
オマージュの話の流れに乗っけてみました。
ただし、よく読むと、山Pの走りを語る辺りでは、
オマージュという言葉自体はちゃんと避けてます♪
代わりに、「意識してた気もする」とボカしてるわけ。
言葉の端々まで、色々と考えて書いてるんですよ。
考えてみると、僕が山Pのドラマの記事に、独立した
タイトルを付けたのは、ブザビ1話以来なんですね。
ひょっとして、そこまで覚えてたのかな♪
もしそうなら、かなりのT様マニアかも (^^)
で、いきなりお願いですか。『ROUTE66』ね
どっかで耳にして、正月特番かと思ってましたよ。
HPの情報は少ないけど、企画は凄くイイですね♪
僕としては、その道路の方に興味が湧きました(笑)
夜中の1時29分から30分の放映かぁ。
まあ、来週か再来週、覚えてたら見てみますよ。
独立した1本の記事は期待しないでくださいネ。
ホントに見たら、何かつぶやくとは思います♪
投稿: テンメイ | 2012年1月14日 (土) 03時31分