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魚・貝・海藻など、水産物の放射能(セシウム)について

個人的に今、極端に時間がない状況だが、魚などの放射線・放射能につい

て、簡単に現状をまとめとこう。陸の除染も大変な問題だが、海・湖・川は

さらに除染しにくいし、まだしばらく放射性物質(セシウムなど)が流れ込み

そうなので、長い目で注意し続ける必要がある。そうした点は、たとえば朝

日新聞7月5日の朝刊・科学面でも書かれていた(「広がる湖沼のセシウム

汚染」、「福島・茨城の霞ヶ浦」)。

     

魚の汚染は、福島第一原発事故の当初から、特別な関心を持たれている

気がする。その理由はいくつかあるが、ポイントは次の4つだろう。

      

   ① 陸の家畜や野菜などと違って、一匹ずつの個体を把握しきれない。

   ② 広範囲を自由に移動する。

   ③ 海の深さによって異なり、表層より底の方が汚染され続けてる。

   ④ より小さい魚を、より大きな魚が食べる連鎖の中で、

      放射能濃度の「生物濃縮」が起きる。

   

   

          ☆          ☆          ☆       

この内、まず④について簡単に補足しておくと、「セシウムを取り込んだ魚

をより大きな魚が食べて行く内に、セシウムの濃度が上がって行く」という

ような説明は、単なるイメージに過ぎない(ちなみに連鎖のスタートは魚で

はなくプランクトンやゴカイなど)。

         

数学的に考えれば、順々により大きな魚が食べて行くと、一匹あたりのセ

シウムの重さ(質量)は増えるかも知れないが、一匹あたりの魚の体重の

類も増えるから、割り算して求める濃度(セシウム÷体重など)が増すとは

限らないのだ。

             

割り算以外にも、時間的変化が問題となる。食物連鎖の間に時間が経過

するから、その間に生物は少しずつセシウムを体外に排出するし、物理的

半減期(Cs137が約30年、Cs134が約2年)にしたがって、セシウム自

体も徐々に減って行く。

           

とはいえ、8月4日の朝日新聞・朝刊記事「今さら聞けない 魚とセシウム」

(別刷be)にも書いてあったように、実際の研究で、生物濃縮と関連する事

実が確認されてるようだ。つまり、食物連鎖の上位にいる大型魚の方が汚

染が長引きやすいという、大まかな統計的事実だ。。

      

    

          ☆          ☆          ☆

一方、③については、朝日の記事が調査データをグラフにしてた。表層の魚

(シラス、コウナゴなど)は、時間と共に濃度が低下。既にほとんどは、今年

4月からの国の新基準値(1kgあたり放射性セシウム合計100ベクレル)を

下回っている。それに対して、底層の魚(マコガレイ、イシガレイなど)では、

濃度が横ばいで、汚染が長期化してること分かるし、新基準を超える魚も多

いようだ。

      

より詳しいデータをネットで探してみると、まず2011年3月24日~2012

年3月末までのまとめは、農林水産省HPの「水産物の種類毎の放射性物

質の検査結果について」というページにある。そこでは、稚魚、浮魚(うきう

お=表層~中層)、底魚(そこうおorていぎょ)、貝・甲殻類、海藻、淡水魚、

水産加工品(シラス干し、乾のりなど)に分類して、詳細なデータを示してあ

る(下図参照)。先日、過去最大の濃度で話題になったアイナメは、もちろ

ん底魚だ。

       

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今年4月以降のデータについても、水産庁HPの「水産物の放射性物質の

調査結果について」というページで更新され続けてる。データ全体に目を通

すと、濃度の大半は数百Bq/kg(ベクレル・パー・キログラム)以下で、特

に基準値100Bq/kgを下回るものが多い。つまり今現在、一部の汚染

が問題となってるからといって、水産物全体を避けなければならないような

状況ではないのだ。もちろん、避けたい人が避けるのは自由だし、あまり

検査されてない部分(魚の頭部など)を避けるのは賢明かも知れないが。

   

    

         ☆          ☆          ☆

試しに、今回もまた、具体的な放射線量の計算を行ってみよう。基準値ギ

リギリ、100Bq/kgの水産物を1日平均200g(=0.2kg)食べたとす

ると、1日あたり20Bq。1年(=365日)で7300Bq。大まかに、Cs137

とCs134が半々と考えれば、経口摂取(口から取り入れる場合)の実効

線量係数は、0.013と0.019の中間。つまり、0.016μSv/Bq。

  

   ∴ 実効線量=0.016×7300

           ≒100μSv (マイクロ・シーベルト)

           ≒0.1mSv (ミリ・シーベルト)

         

これは大人の場合だが、子どもでもこの数倍程度。そもそも、極端に多く

の放射能を摂取するケースを想定してるのだから、他の内部被曝や外部

被曝を加味しても、十分な余裕がある。実効線量の計算については、これ

までも度々具体的に書いて来たが、最近だと先日の海水浴場の記事が参

考になると思う。ストロンチウムの扱いについても、そこで書いておいた。

なお、放射性ヨウ素については、半減期が短いし放出が止まってるので、

現在は問題とされてない。

      

    

          ☆          ☆          ☆

そして最後に、東日本の漁業の現状を考えるべきだろう。福島県ではいま

だに、沿岸漁業や底びき網漁業は全面自粛(ミズダコなどの試験操業やサ

ンプル調査は別)。茨城県でもかなりの自粛に加えて、出荷停止も行われ

ている。宮城県はわりと普通のようだが、一部で自粛や出荷停止がある。

それらの情報は、先ほどの水産庁HPで分かりやすく図示されてるわけだ。

    

魚を食べる、食べないとか言う前に、われわれ日本人全体が、もっと福島

近辺の漁業や海などの状況を知るべきだろう。それは別に、漁業への配

慮のためだけではなく、われわれ自身の食生活、ライフスタイルに関わる

問題なのだから。

    

なお、エラの塩類細胞などから体外へ排出することによる、セシウムの生

物学的半減期は、海水魚が19~84日、淡水魚が50~340日。淡水魚

の方が、セシウムの排出に時間がかかる傾向があるそうだ。単なるイメー

ジ的には逆のような気もするので、意外感があった。

     

もう時間が無くなったので、今日はこの辺で。。☆彡 

    

    

     

cf.原発から各地までの距離と、放射線の年間総量(by文科省データ)

  放射線(放射能)の危険性と距離~2つの逆二乗法則(情報源明示)

  シーベルト、グレイ、ベクレル~放射線・放射能の単位について

  雨の長距離ランニングで浴びた放射性物質の計算(by定時降下物データ)

  原発事故評価レベル7と、セシウムのヨウ素換算値の計算(by INES)

  福島原発レベル7の基準を読む~INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)

  なぜセシウムのヨウ素換算値は40倍か~放射性物質の計算理論(by INES)

  実効線量、等価線量、線量当量~様々なシーベルトの関係

  各地の放射線量、文科省データと「本当」のデータの比較

  ランニングの呼吸で内部被曝した放射線量の計算

 被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

 セシウム牛肉、食後1年間での内部被曝線量の計算方法(定積分&実効半減期)

  放射性物質の半減期、壊変定数、質量(重さ)~微分方程式の初歩など

  外部被曝におけるベクレルとシーベルトの計算式(by IAEA)

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  福島のスギ花粉の放射能による内部被曝の計算式(by林野庁)

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推計(全国、年代・経路別)

  確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

  文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など

  湖や海、水浴場における放射線(外部&内部被曝)の計算

  福島第一原発の汚染水、現状の定量的なまとめ(13年・夏)

      

                                  (計 3037文字)

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