クーナを食う、父の死と同一化~『ゴーイング マイ ホーム』最終回
RUN 14km,1時間04分39秒,平均心拍156
素晴らしい☆・・・とドラマに感動した後に、予想外のPCトラブル発生であた
ふた (^^ゞ これは素晴らしくないね。折角、ちょっと打ち込んでた記事が全
部消えたし、管理ページの入力画面の設定まで消えてしまった。多分、PC
をスリープさせてる間にTVアンテナのUSBプラグを抜いたせいだろう。また
一段と、地デジが嫌いになったね♪
今夜の『ゴーイング マイ ホーム』最終回。2分遅れくらいで、良多(阿部寛)
が寝室で目覚めた所から見始めたんだけど、普段は10分とか30分とか遅
れて見始めることが多かった。仕事やランニングの後の時間帯だから仕方な
いんだけど、もっと毎回、真面目に最初から見てれば良かったね。
ま、「後悔というのは、かつてそこに愛があった証拠」なんだろう♪(第8話)。
「かつて」と言うより、「今までずっと」と言う方が正確だね。現在も愛が続いて
るからこそ、後悔するわけだ。。
☆ ☆ ☆
さて、今回もっとも素晴らしかったのは、冴江(山口智子)の喪服姿だ・・・って
話ではない♪ 私はウエディング・ドレス姿の方が萌えるのだ・・・って話でも
なく、『ロンバケ』のバニーガール姿が最高だって話でもなく、本編ラストシー
ン。良多にクツクツと温かいスープを作ってあげるシーンだ。このドラマ全体を
象徴する、決まった!って感じの技ありシーン。まさか最後が、「クーナを食う」
ショットとは夢にも思わなかった。ものすごく、いいね♪
このシーン。まず、「くだらない」ことで「笑う」所から入っていく。もちろんこれ
は、父・栄輔(夏八木勲)が死に向かう時、つまり「我が家に戻る」(=ゴーイ
ング・マイ・ホーム)時と同じ構図だ。息子が作った「ペロンチョ・ペロペロ」の
くだらないCMに笑ったのが、栄輔の現世での最後であり、天国へのドアで
もあった。そしてまた、くだらないことで笑うことこそ、人生の核心でもある。
良多がマンションのベランダのドアノブを外から修理してると、ノブが取れて
しまって、パジャマ姿でベランダに取り残される。何で寒い冬の夜にそんな事
やってんだ!って所がまた、くだらなくて笑えるのだ。仕方なく外からドアを叩
いて冴江を起こした後、夫婦仲良く、身体が温まることを楽しむことになる。
そう。もちろん、「私、作る人」「僕、食べる人」となって、女性差別CMとして
フェミニスト達に訴えられるのだ。古っ! ちなみに昭和50年(1975年)だ
から、平成ブロガーはもちろん知らない♪
そもそも、作るのがお仕事となってる冴江にとって、身体が冷え切った夫に温
かいスープを作るのは、むしろ誇らしくて楽しいこと。また映画フィルムっぽい
美味しそうな映像で、何を作ってるかなと視聴者に思わせた後、良多が驚く顔
で一段と期待が膨らむ。次の瞬間、カメラがとらえたのは、ホワイトソース系の
スープで溺れる阿部サダヲ・・・ではない。既に彼は溶けてしまって、赤いトン
ガリ帽子だけが残されてたのだ♪ 本当はニンジンのカットかな。
☆ ☆ ☆
もちろん、これは単に小人のクーナの帽子をイメージしただけではない。直接
的な伏線としては、お葬式に来た菜穂(宮﨑あおい)の息子・大地(大西利空)
がわざわざ栄輔のために持って来てた、雪だるまがあった。白い姿に赤いト
ンガリ帽子。これがイメージ的に白いスープと赤い三角ニンジンへとつながる。
実際、直後のエンドロールで雪だるまがあらためてハッキリ映されてた。
一方、より本質的な背景は、父が死んだことで初めて、良多が深い愛に気付
いたことだ。特に大きなキッカケとなったのが、死後硬直で伸びてるように感じ
られた(?)父の遺体のヒゲ。手で感じ取ったヒゲの感触で、幼い頃の父との
「触れ合い」を鮮明に思い出すことになった。
テレビで一緒に、札幌オリンピック(1972年)の選手(金メダルの笠谷幸生
かな)を見ながら、父の支えのもとでジャンプする真似をしたり、あごひげに
触ったり。その記憶を思い出してしまうと、「もっと話しとけばよかった・・」と涙
が溢れ出る。静かに現れた冴江は優しくフォロー。後悔は愛の証しだね・・♪
ラストシーンに戻ると、ベランダの良多は結局、天国のドアの前に、「現世の
マイホームへのドア」をくぐり抜けたことになる。そのドアは、自分が壊しかけ
てたもので、そのために寒い思いもして来た。そこを優しく妻が受け止めて、
特製のクーナ・スープをご馳走する。これを自分の身体に取り入れることは、
目に見えない大切なものをしっかり受け入れることでもあるし、微妙な関係
にあった父と和解することでもあるのだ。
そう、これこそ象徴的な、父の体内化。5年半前、キムタク主演の傑作ドラマ
『華麗なる一族』の第8話レビュー「死と再生」で書いたお話だ。
☆ ☆ ☆
やや長くて複雑なので、ここでは繰返しは避け、中核だけに絞るとしよう。要
するに、人間社会の掟=法の根源は、父を殺してみんなで食べることにある
という話。もう少し一般化した言い方に直せば、死んだ父を身体に取り入れ
ることが、周囲の家族たちに安定した生き方をもたらす、ということなのだ。
精神分析の創始者フロイトが、論文『トーテムとタブー』で詳細に主張した。
『ゴーイング』の最終回、あるいは終盤は、要するに「父の死」とその「体内化」
を描く物語だ。第8話だったか、栄輔が縁側で冴江に、自分の葬式の料理を
頼むシーンがあった。今思えば、あれは「自分を材料にした料理」のお願い、
つまり、自らを周囲に体内化してもらう準備ということになる。
父の体内化は、孫の萌江(蒔田彩珠)から見れば、「大きな父」(grandpa=
おじいちゃん)の体内化。具体的には、おじいちゃんの好きだったクーナ、つ
まり目に見えない大切な存在を、もはや現実世界に見てしまうことなく、普
段は自分の心の中にそっとしまい込むことを指す。時々は思い出していい
し、その思いを父・良多と共有すればいいのだ。
また、死んだお友達への思いを母・冴江と共有することで、母と子も親しみ
が増す。結局、こっそり借りてたクーナ人形も返却し、小人の物語『ホビット
の冒険』とも距離を置いて、現実の母の横に潜り込んで甘える。しばらく甘
えてなかったから、やや甘え過ぎくらいで丁度いいだろう。彩珠ファンも喜び
そうだし♪ おじいちゃんの体内化は、父との同一化、母との同一化ともつ
ながり、坪井家の笑顔につながるのだ。つまり、ゴーイング・マイ・ホーム。
我が家に戻ったことになる。
ちなみに、父の死と体内化に大切な役割を果たすのは、罪の意識、罪悪感
だ。萌江なら、クーナ人形を「こっそり借りた」こと、学校でのトラブルなど。良
多なら、長い間続いた父との微妙な関係。冴江なら、家庭を多少犠牲にし
て、仕事を続けたこと。罪の意識は、必ずしも悪いものではない。それは、そ
の後の生をプラスの方向に導く役割も果たしてくれるのだ。。
☆ ☆ ☆
ラストシーン関連はこのくらいにして、あらためて最終回の全体を振り返ると、
相変わらず良多の姉・多希子(YOU)と母・敏子(吉行和子)のやり取りは笑
えた♪ 霊柩車を高い外車にするか安い国産にするかとか、既に死んでる
栄輔の乗り心地とか。遺影用の写真を合成するって話も、私には面白かっ
たけど、ひょっとするとフツーに行われてる事かも知れないね。中高年女性
2人のおしゃべりに落ち着き感を与えてた渋い脇役が、多希子の夫(安田
顕)だった。
今回登場した栄輔の弟(?)も、いい味出してた。特に、治(西田敏行)と菜
穂を前にして、敏子がクーナ=クミ(久美?)の話を持ち出した時、治たちが
カブトムシのことだと苦しい言い訳をしてたら、そうは言わないぞとか、遠くか
ら突っ込みを入れてジャマしてた♪ 葬式のお経の最中でも、冴江の母・時
子(りりィ)のことを栄輔の女か?とか言ってたし、最後は酔っぱらって、栄
輔そっくりのイビキをかいて、みんなをビビらせてたし。
まあ、栄輔にとって、クーナとは半ばクミのこと。思い出の中の、永遠の愛。
今頃、天国で仲良くしてるだろう・・・と菜穂がからかう度に、治が本気で心配
するだろう♪ 線香1本から立ち上る煙のアップ映像も味わい深かったね。
ミスチル=Mr.Childrenの曲『花の匂い』の歌詞を思い出してしまった。姿
は変わっても、人はすぐそばに生き続ける。線香の煙であれ、紫色のリンド
ウの花であれ、ヒゲの感触であれ。治と菜穂も言ってた通りなのだ。
“永遠のさよなら”をしても あなたの呼吸が私には聞こえてる
別の姿で 同じ微笑みで あなたはきっとまた会いに来てくれる
(作詞 Kazutoshi Sakurai)
☆ ☆ ☆
なお、このドラマ。ここまで極端な低視聴率で、とりわけ山口智子へのバッシ
ングが続いてたが、私は全然OKだったと思う。スタイルの変化を除けば♪
コラコラ。髪型はあと数年、あの独特のロングヘアでOKだね。
昨日の記事にも書いたが、土曜日の朝日新聞・夕刊では、2012年の放送
全体を回顧する記事で、論評者3人のうち2人が、『ゴーイング』を「私の3点」
の一つに挙げてた(早大・岡村美奈子、東大・丹羽美之)。以前には、朝日の
担当記者たちも絶賛。読売のドラマ担当者たちも高評価。もちろん私も、最
近だと飛び抜けて素晴らしい連続映画ドラマだったと思う。
ちなみに、同じ関西テレビが製作して、同じ時間帯にフジが放映した、4年半
前の大人向けドラマ、『あしたの、喜多善男』も、平均視聴率7.2%だったけ
ど、2008年の全日本テレビ番組製作者連盟のドラマ部門・最優秀賞に輝
いたし、ウチのレビューへのアクセスも続いてる。
『ゴーイング』も今後、違いがわかる人達の間で評価され続けるだろう。ゴン
チチの控え目な音楽も良かったし、監督・脚本の是枝裕和の実力をあらた
めて誇示する作品となった。恥ずかしながら、今まで知らなかったけど (^^ゞ
ともあれ、スタッフ&キャストの皆さん、素敵なドラマをどうもありがとう。特に
番組の本当に一番最後、ドングリ(=大切なもの)を抱えた姿で映った姿も
可愛かった蒔田彩珠は、新人子役として光り輝いてた。『喜多善男』の吉高
由里子みたいにブレイクするといいね。
なお、たまたま今日、将棋界の父とも言うべき米長邦雄・元名人が他界した。
隠れ将棋ファンとしては、彼の泥沼流の粘り腰を体内化するとしよう。
それでは、いずれSPでの復活を期待しつつ、今日はこの辺で。。
P.S. 最終回の前日、17日に、オランダのロッテルダム国際映画祭へと
正式招待されたとのこと♪ しかも、全話上映! 流石、私が「連続
映画ドラマ」と言い続けて来た作品だ。どうも、おめでとう☆
P.S.2 最後の「クーナのスープ」のレシピ♪ カリフラワー、長ねぎ、じゃ
がいも、にんじん、バター、塩、鶏ガラスープ、牛乳、生クリーム。
色々と入ってたんだね。量は公式HPをご覧あれ。
cf. 平凡な日常への、非凡な視線~『コーイング マイ ホーム』第1話
性の禁止と侵犯&事前にあさりを仕込んでる潮干狩り場♪ (第6話)
『ゴーイング マイ ホーム』、ロッテルダム国際映画祭に正式招待☆
☆ ☆ ☆
最後に、今日の走りについても簡単に。12月2日の川口マラソンで満足な結
果を出した後、仕事に追われてることもあって、ロクに走ってない (^^ゞ 明ら
かに体力が落ちてて、通勤ジョギングでさえ脚が重く感じ始めてるから、今夜
はハーフ21kmの予定だったのに、時間が無くなった。ドラマの最終回の前
だから、僅か14kmが精一杯。。
と言っても、レース用シューズで飛ばすようなノリでもないから、普通のシュー
ズで適度にスタスタ。我ながら遅いよなぁ・・と思ってたら、丁度いいバトル相
手が抜いてくれたから、さっそく追走。あちらはすぐ止めちゃったけど、私は
1km4分半くらいのペースを持続した。ま、14kmにしては遅いけど (^^ゞ
トータルでは1km4分37秒ペース。もう18日なのに、走行距離がヤバイね。
金曜日まで色々とあおられるから、終末・・じゃなくて週末から頑張るとしよう。
そう言えば、マヤ文明が予言する(?)終末がもうすぐなのか(笑)。ま、終末
より、世界の珍騒動のニュースに期待しよう♪
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
往路(2.45km) 12分40秒 心拍138
1周(2.14km) 10分06秒 155
2周 9分25秒 164
3周 9分41秒 162
4周 9分30秒 163
5周(0.54km) 2分32秒 164
復路 10分46秒 156
計 14km 1時間04分39秒 心拍平均156(85%) 最大169(ゴール時)
(計 5213文字)
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