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原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(5)

シリーズ第5弾、差し当たりの最終回の記事は、旧課程の高校物理の教

科書2冊に掲載されている最後の問題まで扱う。一番最後が、各種エネル

ギーを比較する実用的問題になってるのは、偶然ではないだろうが、その

問題を掲載した時点では、東日本大震災は想定してなかったはずだ。

      

使う教科書は引き続き、『改訂版 高等学校 物理Ⅱ』(数研出版,2001)。

新過程なら、『物理基礎』に続く『物理』の最後に含まれる箇所だ。今回は、

第3編「原子」の演習問題Bに含まれる、第7問(p.145)と第9問(p.146、

ラスト)を扱う。簡単に言うと、核融合と核分裂で、核エネルギーの源となる

2種類の反応だ。

      

         

           ☆          ☆          ☆

  7. 次の熱核融合反応について、以下の各問いに答えよ。

       「2 1 H」+「2 1 H」 → 「3 2 He」+「1 0 n」

     ただし、重水素「2 1 H」、ヘリウム「3 2 He」、中性子「1 0 n」

     の質量はそれぞれ2.0136u、3.0160u、1.0087uであり、電

     子の電荷 e=-1.6×(10の-19乗)C、真空中の光の速さ c=

     3.0×(10の8乗m/s)、ボルツマン定数 k=1.38×(10の

     -23乗)J/K、1u=1.66×(10の-27乗)kg、クーロンの法

     則の定数 k₀=9.0×(10の9乗)N・m²/C² である。

           

     (1) この反応における質量の減少は何uか。

     (2) (1)における質量の減少は、「3 2 He」と「1 0 n」の運

         動エネルギーとなる。その大きさは1反応当たり何Jか。

     (3) 2つの重水素核に上記の反応を起こさせるためには、たが

         いに2.0×(10の-15乗)m程度の距離に近づける必要

         がある。その距離における、静電気力による位置エネルギー

         は何Jか。

     (4) 上記の反応を起こすことのできる重水素核の運動エネルギー

         を、重水素気体の熱エネルギーとして得ようとすると、気体

         の温度を何Kにしなければならないか。

       

    

  解答 (1) 反応式の左辺の質量から、右辺の質量を引けばよい。

          (2.0136+2.0136)-(3.0160+1.0087)

           = 4.0272-4.0247

           = 0.0025(u) ・・・・・・ 答

     

      (2) まず質量の単位をuからkgに変換して、E=mc²の公式

           を用いればよい。

          質量の減少は、 0.0025×1.66×(10の-27乗)

                      = 4.15×(10の-30乗)(kg)

          ∴ (運動エネルギー)

             = 4.15×(10の-30乗)×{3.0×(10の8乗)}²

             = 4.15×9.0×(10の-14乗)

             = 3.735×(10の-13乗)

             ≒ 3.7×(10の-13乗)(J) ・・・・・・ 答

    

       (3) 各重水素核の陽子は1個だから、電荷は電子1個分。

           ∴ (位置エネルギー) 

              = 9.0×(10の9乗)×{1.6×(10の-19乗)}²

                 ÷2.0×(10の-15乗)

              = 1.152×(10の-13乗)

              = 1.2×(10の-13乗)(J) ・・・・・・ 答

         

       (4) 重水素核2個の熱エネルギーは、

             2×(3/2)×(ボルツマン定数)×(絶対温度T)(J)

           これが全て、反応を起こすために使われると考えて、

             1.152×(10の-13乗)

               =2×(3/2)×1.38×(10の-23乗)T

           ∴ T=1.152÷(3×1.38)×(10の10乗)

               ≒ 0.278×(10の10乗)

               ≒ 2.8×(10の9乗)(K) ・・・・・・ 答

         

      

最後の計算をする時、反応する重水素核2個は、1個ずつで単原子分子の

ように考えることになる。温度があまりに高過ぎて2原子分子を作れないの

か、あるいは別の理由なのかは、今のところ分からない。ただ、単原子分子

扱いで熱エネルギーを2倍しないと、教科書の答と合わないし、実際、教科

書ガイドを見ると説明抜きで2倍していた。参考書の類題の解答も同様。

        

なお、核融合は長い間、「夢」扱いされて来たが、研究は着実に進んでるよ

うだ。最先端は国際熱核融合実験炉(ITER)プロジェクトで、フランス南部

で進められてるらしい。三重水素(トリチウム)1gから、タンクローリー1台

分(約8トン)の石油と同じエネルギーを得られるとのこと。ただし、超高温が

必要だし、トリチウムは普通の二重水素と違って放射性物質。実用化はお

そらく50年後くらいだろう。

            

その意味では、核融合はまだまだ「夢のエネルギー」とも言える。それに対

して、次の問題が扱う核分裂は、普通の原発で実用化されてる「現実のエ

ネルギー」なのだ。。

      

    

           ☆          ☆          ☆

  9. 「235 92 U」1個の核分裂によって、2.0×(10の8乗)eVの

     エネルギーが解放される。ある原子炉では、毎秒0.47mgの

     「235 92 U」の核分裂が起こっており、このとき解放されるエネ

     ルギーの10%が利用されているものとする。

     

     (1) この原子炉の熱出力は何kWか。ただし、電気素量を1.6

         ×(10の-19乗)Cとし、アボガドロ定数を6.0×(10の

         23乗)1/molとする。

     (2) 太陽光線を垂直に受ける1m²の面に注がれる熱量が毎秒

         8.0×10²Jであるとすると、(1)の熱出力を太陽熱から得

         るためには、何m²の面積が必要になるか。ただし、注がれ

         た太陽熱の10%が利用されるものとする。

     (3) (1)の出力を、1g当たりの発熱量が4.0×(10の4乗)Jの

         重油によって得るためには、毎秒何gの重油が必要になる

         か。ただし、発熱量の10%が利用されるものとする。

    

   

  解答 (1) ウラン原子1個あたりの核分裂エネルギーは、

          2.0×(10の8乗)×1.6×(10の-19乗)

           = 3.2×(10の-11乗)(J)

         また、ウラン235gに含まれる原子数は、1mol、つまり6.0

         ×(10の23乗)個だから、毎秒核分裂するウラン0.47mg

         に含まれる原子数は、

           0.47×(10の-3乗)÷235×6.0×(10の23乗)

            = 1.2×(10の18乗)(個)

         よって、利用されるエネルギー出力は、

           0.1×3.2×(10の-11乗)×1.2×(10の18乗)

            = 3.84×(10の6乗)(J/s)

            = 3.84×(10の3乗)(kJ/s)

            ≒ 3.8×(10の3乗)(kW) ・・・・・・ 答

          

      (2) 単位をJに合わせて、毎秒あたりの原子炉の熱と太陽熱が

          等しいとおくと、

          3.84×(10の6乗)=8.0×10²×0.1×(面積)

          ∴ (面積)=4.8×(10の4乗)(m²) ・・・・・・ 答

      

      (3) (2)と同様、毎秒の原子炉の熱と重油の熱を等しいとおくと、

          3.84×(10の6乗)

             =4.0×(10の4乗)×0.1×(重油)

          ∴ (重油)=9.6×10²(g) ・・・・・・ 答

     

  

最後の答の単位を、教科書は「g/s」としているが、毎秒何gかが問われて

いるのだから、単位はgとする方が正しい。

     

現在運転中の大飯原発3号機は342.3万kWで、設備利用率78.5%

(09年度)。4号機も342.3万kWで、設備利用率87.6%(同)。すると、

大まかに計算するなら、500万kW強ということになる。(1)で求めた値

3800kWの1300倍ほどだから、必要な太陽熱パネルは

   4.8×(10の4乗)×1300≒6×(10の7乗)m²

                     ≒60km²

   

もちろんこれは、太陽が出ている昼間の話だから、夜まで考えると、太陽光

や太陽熱を原発の代替エネルギーとするのは相当大変なことだと分かる。

原発の場合、設備を作るのが大変なわけだが、巨大なメガソーラーを作っ

て運営するとどうなるのか、今後の実証が必要だろう。重油はなかなかの

健闘のようにも見えるが、もちろん温室効果ガスCO2の排出の問題が大

きいわけだ。原発の数十倍らしい。。 

   

これで、高校物理の教科書における原子核と放射線の問題は、すべて解

き終えた。今後は、大学受験問題とか、実用レベルの計算、あるいは大

学レベルの話に進んで行きたいと思ってる。実用的には太陽より有力らし

い、風力発電の計算も行ってみたい。

   

ひとます、今日はこの辺で。。☆彡

   

   

    

cf. 原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(1)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(2)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(3)

   原子核と放射線~高校物理の教科書の問題と解説(4)

              

                                 (計 3301文字)

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