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『ガリレオ2』第5話の数式、近似のニュートン法による√2の数値解析(&バルマー系列)

(☆6月23&25日追記: 最新数式記事レビューをアップ。

   男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ

   『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流 )

      

      

        ☆          ☆          ☆

今までで一番キレイに数式を読み取れたと喜んでたら、湯川=福山雅治に

水をぶっかけられたね (^^ゞ 「何の意味もない。高校で習ったバルマー系列

の式を書いただけ」。おまけに、最後のエンドロールの壁で、もう一ヒネリ入っ

てた。バルマー系列の式と(ほとんど)関係ない、近似のニュートン法の代表

的例を書いてたのだ。しかも、また式が間違ってる。。困ったもんだね。。

      

それでも私は、第5章『念波(おく)る』の放送終了後、1時間半くらいは、バ

ルマー系列とニュートン法の関係を考えてみた。しかし、「内容的には」関係

が見当たらない。とすると、私に今、思い付くのはこのくらいの仮説のみだ。

        

 「バルマー系列の波長の式 λ = f ( n² / (n²-4) )に少し似た関数

  f(x)=x²-2を使ったニュートン近似法で、√2という簡単な無理数の

  値に少しずつ確実に接近するプロセスを表した。

  なぜなら、ドラマの事件解決のポイントが、少しずつ確実に実行犯に

  接近することだったし、双子(桐谷美玲の1人2役)も限りなく似た別人

  だったからだ」。

             (λ:波長、 f=364.56nm、 n=3,4,5,・・・)

    

    

          ☆          ☆          ☆

ではまず、ハッキリ映されたエンドロールの壁の式を見てみよう。無意味と

豪語してたバルマー系列は、後回しにする。「何の意味もない」んだから♪

         

130513

 確実に第5話の

 式だと考えられ

 るのは、左で全

 てだ。赤い波

 線は毎度お馴染

 みの書き間違い

 で、x nの右下

  に小さく添える

 べき「+1」が、

 右側に大きく独

 立して書かれて

 る。ほぼ100

%、間違いと言っとこう。要するに、数列{x n}の第n項から第n+1項を求

める「漸化式」(ぜんかしき)なのだ。

     

他に、ガリレオの脳内フラッシュをよく見ると、下に添えた別図の式も書か

れてる気がする。これは、上図の式の改良形として、ウィキペディアにほん

の一言書かれてるものだ(長島隆廣「ニュートン近似の改良」,数学セミ

ナー 1980年5月号)。nの代わりにkを使ってある。

        

130514b

    

     

           ☆          ☆          ☆

では一応、近似のニュートン法(Newton’s Method)、あるいは、ニュー

トン・ラフソン法(Newton-Raphson method)と呼ばれるものについて

解説してみよう。

    

壁の一番上には、 f(x)=0 と書いてある。これは、右辺がゼロの方程式

の左辺を f(x) とおいたわけだ。方程式というのは、高校まではキレイに

解けるものが多いが、一般には解そのものは求められないのがフツー

だから、「解に十分近い数値」を求める、数値解析の出番となる。解くので

はなく、単純計算で近づくのだ。たとえば円周率なら、3.14159265359

・・・と無限に続く無理数だが、3.141592654という10桁で計算すれば、

ほとんどの場合は十分だろう。

      

そこで、f(x)=0の解の近似値を求める簡単な方法として有名なのが、ニュー

トン法なのだ。私が最初に習ったのは多分、高校の数学Ⅱの教科書だった

と思う。つまり、方法としてはハイレベルではない、基本レベルのものなのだ。

ただし、証明となるとやや面倒。手元の杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出

版会)だと、「ニュートンの逐次近似法」として、中間値の定理、平均値の定

理(数Ⅲ)、数学的帰納法を使って証明してある(図を含めて1ページ強)。

     

   

         ☆          ☆          ☆

話を戻して、簡単な2次方程式 x² -2 = 0 の正の解の近似値を求めてみ

よう。要するに、√2の近似値だ。方程式 f(x)=0 で、f(x)=x²-2 とした

場合だから、壁の3行目もそう書かれてた。導関数(=微分)、f´(x) = 2x

も簡単だけど、壁の4行目にわざわざ書いてくれてる。これほど初歩的な書

き方は第2話以来だ。

    

130514c

  さて、左図を見てみ

  よう。これはウィキ

  メディアでパブリッ

  ク・ドメイン(公的

  所有)として公開さ

  れてる図だ。

     

  縦は Y 軸、横は

  X 軸とする。大文

字にしたのは、数列の x と区別するためだ。青い曲線に赤い接線が引か

れて、X軸との交点を求めてる。

       

青い曲線が、Y=f(X)、つまり Y =X²-2 とすると、この曲線とX軸(つま

り直線 Y=0 )の交点のX座標が、X²-2=0の解を表す。よって、上図で

x とだけ書かれた値が√2だ。

  

この近似値を求める時、√2(=1.414・・・)より少し大きい簡単な値を

出発点(x₁、あるいは x₀ )としてみる。例えば3として、曲線上に点(3,7)

を取る。そこでの微分係数、つまり接線の傾きは、f´(3)=2×3=6だか

ら、接線の式は  

      Y=6(X-3)+7   ∴ Y=6X-11

          

この接線とX軸との交点のX座標(つまりX切片)は、0=6X-11より、

X=11/6。これは1.83・・・だから、スタートの3よりは、√2に近づい

てるわけだ。この手続きを、適当な回数だけ続ければいい。

   

スタートを x₁として、n番目として求めた近似値を x n としよう。曲線上

の点(x n,x n²-2 )における微分係数は 2x n。よって接線の式は

     Y=2x n(X-x n)+x n²-2

   

X切片を求めるために、0=2x n(X-x n)+x n²-2 とすると、

    X-x n =-(x n²-2) / 2x n。

  ∴ X=x n-(x n²-2)/2x n

   

これが次の x n₊₁だから、壁の5番目の漸化式が出るわけだ。

    x n₊₁= x n-(x n²-2) / 2x n   

    

カシオの高精度計算サイトで試してみると、3からスタートして僅か5回行った

だけで、何と、1.41421356(ひとよひとよにひとみごろ)まで出て来た♪ 

実に素晴らしい!

      

   

          ☆          ☆          ☆ 

なお、病院でなぐり書きした、物理学のパルマー系列関連(元になるリュード

ベリの公式も含む)のなぐり書きについては、意味がないと言ってることだし、

みんなハッキリ読み取れるだろうから、省略しよう。

       

・・・・・・と最初は書いてたけど、やっぱり折角の見せ場の数式だから、一応

書いとこう。大き過ぎるし、内容も少しだけ違うから、左右に分けておく。

   

130514e

 まずは左半分。

 これはバルマー

 系列の4つの波

 長の比を少しず

 つ変形して、公

 式にあてはめて

 るのだ。

   

     

   

      

バルマー系列とは、水素原子から放出される様々な光の分布(スペクトル)

のこと。極端に分かりやすく言うなら、下図のような線の集まりだ♪ ウィキ

メディア、Merikanto氏の作品。理論的には感心しない話だけど、ブログ

で見やすいように、左右を縮めて、左端の色を明るめに補正してある。右

端は本来、もっと鮮やかな赤色だ。

               

130514d

      

一方、なぐり書きの右半分は、バルマーの元になるリュードベリの公式や、

ボーアの原子モデルについて短くまとめたもの。説明は大変だし、「何の意

味もない」のだから、他のサイトや参考書などにお任せしよう。

       

130514f

      

        

黒板も差し当たりは省略する。後で、気が向いたら追記するとしよう。ニュー

トン近似については、また明日のレビューで文系的に考察する。理系と文

系、両方が大切だというのは、前シリーズの湯川も言ってた真実だ♪

     

では、今日はこの辺で。。☆彡

       

        

        

cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す

   心の同期と「慣性の法則」~『ガリレオ2』第2話・指標す

   揺れ動く、見えないもの~『ガリレオ2』第3話・心聴る

   曲がった男のストレートな切れ味~『ガリレオ2』第4話

   接近することの効果と限界~『ガリレオ2』第5話・念波る

   閉じたものを開くこと~『ガリレオ2』第6話・密室る

   脇役と主役、よそおう人々~『ガリレオ2』第7話・偽装う

   虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る

   エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す

   誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)

      

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度

 『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動

 『ガリレオ2』第3話の数式、

          パルス電磁波のフレイ効果による耳の奥の弾性波か

 『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか

 『ガリレオ2』第6話の数式、

             ホログラム記録&再生における光波の複素数表示

 『ガリレオ2』第7話の数式、

            ロッキングチェアの慣性モーメント&回転・直線運動か

 『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か

 『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)

 『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か

                

                                  (計 3528文字)

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さて、母の日も終了である。 両親のうち、父でない方が母である。 他殺死体の場合、被害者以外の全人類の中に加害者がいる。 そして、真犯人ではない人以外が犯人である。 犯人を見つけるためには犯人以外が犯人ではないことを証明すればいい。 なんとなく・・無理な気がするのはキッドだけだろうか・・・。 しかし、... [続きを読む]

受信: 2013年5月14日 (火) 02時35分

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