『ガリレオ2』第6話の数式、ホログラム記録&再生における光波の複素数表示
(☆6月23&25日追記: 最新の数式記事とレビューをアップ。
男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ
『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流 )
☆ ☆ ☆
前回はキレイに数式を読み取れたし、意味もほぼ分かったけど、今回の第
6章「密室(とじ)る」はまた途方にくれて、すぐ諦めて寝そうになった (^^ゞ
今日は睡眠3時間でたっぷり働いて来たから、疲れ切ってるもんで。。
まあしかし、何とかメインの2つの数式を解読できたから、サラッとまとめて
終わりにしよう。例によって色んなサイトを飛び回ったけど、結局は英語版
ウィキペディアの「Holography」(ホログラフィー)の説明が突破口になった。
お馴染みの立体映像、ホログラムを可能にする技術がホログラフィーだ。
☆ ☆ ☆
ではまず、エンドロールの壁に映されてた4本の式の内、最初の2本をキレ
イに再現しとこう。2本目は一部、見えてなかったけど、理論的にこれで合っ
てるはずだ。面倒だから、1本目の式の立体的デザインは無視させて頂く♪
美術スタッフさん、遊んでるね。
3本目の式はほとんど見えないから、オマケ程度。要するに、光の位相(ウネ
ウネした波長1単位の中での位置)の式だろう。複素数表示(後述)において、
x 軸の正の部分から反時計回りに測った偏角だと思う。4本目は全く見えない。
上の3本なら、湯川=福山雅治の脳内フラッシュにも出てたし、上の2本なら
なぐり書きシーンでも一応見えた気がする。
(☆追記: 3本目のφの右下は小さく「M」と書かれてる。また、4本目は2
つの式を並べてるようで、左側は「?λ=2αsinθ」のような式。
右側の左辺は「δ=」となってる気がする。いずれも脳内フラッ
シュから何とか読み取った。)
(☆追記2: 3本目の式と意味について、読者の方からの情報が入った。
ご紹介頂いたpdfファイル(コメント欄参照)によると、
「φ(右下に小さくM)=sin ⁻¹ (λ/2p)」のようだ。
sin ⁻¹ とは、sinの逆関数を示す記号で、要するに普通の
式に直せば、「sinφ=λ/2p」。つまり、「λ=2p・sinφ」。
これが4本目の左側かも知れない(φの代わりにθかも)。
Mは「最大(Maximum)、φ(ファイ)は再生光の回折角、λ
は再生光の波長、pは表示デバイス(ドラマだとホログラム・
シート)の画素ピッチ(pitch=間隔)。
画素をきめ細かく(=pを小さく)する → λ/2pが大きくなる
→ sinφMが大きくなる → φMが大きくなる → ホログラム
を見れる限界角度(視域)が広がる(片側φ+反対側φ=2φ)、
という流れのようだ。そう言えばドラマでも角度の話があった。)
☆ ☆ ☆
最初の2本の式を説明するには、まずホログラフィーという技術について、ほ
んの少しだけ理解しとく必要がある。ホログラムという3D画像を使うには、
記録と再生、大きく分けて2つの作業が必要だ。
左は、記録に関
する図式だ。ウィ
キペディアで公
開されてる、
Cookie48
69氏の作品。
一つのレーザー
光をスプリッター
で2つに分けて、一方は物体に照射し、反射した「物体光」(Object beam)
をホログラム用のフィルム(?)に当てるようだ。もう一方の「参照光」(Refe-
rence beam)は、左下の鏡で向きを変えただけで右下のフィルム(?)に
当てる。
この時、これら2つの光は重ね合わせによって、干渉する。この性質がコヒー
レンス(可干渉性)で、野木祐子(夏川結衣)の昔の研究素材になってたわけ
だ(干渉縞がホログラム)。それに気付いた湯川=福山雅治は、たまたま高
級インテリア・ショップみたいな場所(Minotti)のテレビで3D映像を見て、ダ
ダダダッと高級テーブルに数式を書きなぐり、岸谷美砂(吉高由里子)の表
情を凍りつかせてた。おそらく警視庁に、光学・・・じゃなくて高額の請求書が
送られるんだろう♪
一方、ホログラム再生の時
には、単に照明光を当てる
だけでいい。ドラマだと、野
木の懐中電灯だけで、窓の
カギの像が浮かび上がっ
て、カギがかかった密室の
ように見えてたのだ。左図
の出典も前と同じ。
☆ ☆ ☆
ではいよいよ、数式の解説に入ろう。最初の式は、ホログラムを記録(つ
まり製造)する際の、2つの光の合成ビームの強度を表す式のようだ。
物体光と参照光は、振幅(波の山の高さ)と位相の2組で決まるから、複素
数の極形式 r(cosθ+i sinθ)で表せる。ここで、 i は2乗して-1になる
虚数単位。r は半径、θは偏角。極形式とは例えば、√3+ i という複素数
を、2(cos30°+
i sin30°)と表す
やり方だ。一般に、
複素数 z の半径と
絶対値と共役複素
数 z*の間に、次
の関係がある。証
明は簡単だから略。ちなみに、a+b i の共役複素数とは、a-b i のこ
とだ(a、bは実数)。
r=|z|=√zz*
話を光に戻すと、振幅を半径 r とし、位相を偏角θとして、物体光と参照光
を複素数表示したものをそれぞれ、単に O(オー)、Rと表す。要するに波の
式だ。すると、合成ビームは O+R と書ける。光の強度 I (=Intensity)は、
振幅の2乗に比例するから、比例定数は1としとこう。すると、
I = 1×r² =|O+R|²=(O+R)(O+R)*
=(O+R)(O*+R*) (共役複素数の性質)
=|O|²+|R|²+OR*+O*R
青色が、壁の1本目の式。つまり、3Dメガネの絵を挟んで、二重の文字で
書いてたもので、湯川の脳内フラッシュでも確認できた。複素数とか極形式
というものに慣れてないと、難しく感じるだろうが、慣れてたら簡単な変形に
過ぎない。カリキュラムによっては高校の数学で習う、標準的計算だ。
☆ ☆ ☆
一方、この強度に、ホログラムの光の透過率(transmittance)が比例す
るようなので、また比例定数を簡単に1としとこう。要するに、上の I と同
じ式だ。再生光に透過率をかけると、ホログラムの透過光の式が出る。
再生光として、以前の参照光Rを使うことにすれば、
(透過光)=(透過率)×(再生光)
= I R = (|O|²+|R|²+OR*+O*R ) R
=(|O|²+|R|²)R+OR*R+O*R²
=(|O|²+|R|²)R+O|R|²+O*R²
青色が壁の2番目の式で、脳内フラッシュでもほぼ確認できた。なお、複素
数の極形式というものは、大学以上のレベルだと普通、さらにオイラー表示
という妙なものを使って表す。
r(cosθ+i sinθ)=r (e の i θ乗)
eはネイピア数 2.718・・・で、自然対数の底(てい)として有名な無理数
だ。なお、今回の黒板はまだ真面目にチェックしてないけど、上の話とは
関係ないことばかり書いてあった気がする。
(☆追記: 超伝導関連だけのような感じだ。)
美人の顔の黄金比率については、レビューの方に書く予定。
では、今週はこの辺で。。☆彡
cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す
虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る
エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す
誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度
『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動
『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか
『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か
『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)
『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か
(計 3447文字)
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コメント
テンメイ様
はじめてお便りさせていただきます。ホログラムの原理、興味深く拝見しました。ガリレオはパート1から見ていますが、超常現象を物理学的に検証するスタイルと、登場人物のコミカルなやり取りのコンビネーションが絶妙で、大好きなドラマです。個人的には、パート1の第1話(燃える)が傑作だと思いますが、今作もいろいろ工夫されていて面白いと思います。
学生時代は一応理系だったこともあり、湯川先生が閃いて書きまくる数式には少なからず興味があり、いつも読み取ろうと目を凝らすのですが、かろうじて解読できたのは、恥ずかしながら、パート1の最初の方に出てきた「tanθ=sinθ/cosθ」と「F=ma」ぐらいでした(笑)。そのときは「えっ?湯川先生、そこまで基本に帰るんだ!」と思いましたが(笑)。
こちらのサイトを拝見したところ、湯川先生の書きなぐった数式が正確に再現されていて、本当に驚きました。「実に面白い」です!しかも湯川先生(福山さん)の書き間違いまで指摘されていて・・・尊敬します!また拝見させていただきます。
投稿: miki | 2013年5月21日 (火) 21時01分
はじめまして。
いつも数式の解説楽しく読ませてもらっています。
丁寧な解説ありがとうございます。
学生時代は物理学を専攻していたのでなので趣味の範囲でですがドラマで数式見ては理解するまで調べまくるようになってしまいました。
ここで答え合わせさせていただいています。
今週の数式ですが、
「電子ホログラフィの視域角拡大技術」で検索すると3番目までの数式が解説されている文献がひっかかると思います。ご参考まで。
投稿: nkyoro | 2013年5月22日 (水) 01時12分
> miki さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
『ガリレオ』の記事に、理系&文系的な
「お便り」を頂くのは珍しいですね♪
理系的コメントが大部分ですから。
お名前と文章から考えて、おそろく貴重な
リケジョ(理系女子)の方でしょう。
ぜひ、周囲の女性たちとも、
「昨日の福山さんの数式、実に面白いね♪」
「さっぱり分からないけど、素敵 ♡」
って感じの会話をかわしてください♪
もし、三木さんって感じの名字の男性だったら、
申し訳ありません(笑)
『ガリレオ』は前シリーズから、コミカルな
やり取りを時々入れてましたが、新シリーズは
さらにその傾向が強まってますね。
私は今回の第6話が一番笑えました。
高級テーブルにローソクで数式を書くシーンは爆笑。
女子学生からの細かい突っ込みもウケました♪
で、mikiさん的にはパート1の第1話が傑作だと。
僕は最終回がベストですが、第1話も良かったです。
あれが一番最初だから、ガリレオの人気を
築き上げた記念すべき回ですね。
事件発生シーンの映像がツカミとして上手かったし、
湯川と内海の会話も面白い。
理系男子vs文系女子のコントっぽい対決♪
それに何と言っても、トリックと実験にインパクトが
あって、感覚的に分かりやすかった。
レーザーとか赤い光線とか、誰でもイメージを
持てるし、反射で方向を曲げるのも分かります。
そしてあの壮大な実験場。テレビドラマで
ここまでやるのかっていう驚きがありました。
多分、予算オーバーでしょう(笑)
数式も、光の反射と普通の電磁気学(黒板)
だったから、わりと簡単だったし。
と言っても、録画DVDがどこかへ消えたから、
見直してませんけどね (^^ゞ
今見たら、もうちょっと読み取れるのかも。。
ちなみに前回の取調室の桐谷は、パート1・
第1話の唐沢を意識してたと思います。
一方、数式の読み取りは、私もすごく苦労してます。
書きなぐりシーンはほとんどの場合、ロクに
読み取れないし、エンドロールの壁も、一部が
強調されてるだけで、下側はあまり見えません。
巨大ホワイトボードから探したり、
黒板のあちこちを見たりもしますが、
一番面倒なのは、脳内フラッシュの確認作業。
0.05秒くらいで切り変わるカットの連続なので、
何十回も一時停止するハメになります (^^ゞ
私は非力なPCで見てるので、高機能の普通の
録画機を使ってる人の方がよく見えるでしょう。
ウチの数式は、「正確に再現」されてないものも
多いですよ♪ ま、前回は完全ですけどね(多分)。
自分で面白がって書いてる記事だし、それなりの
アクセスも頂いてますが、2000万人くらいの
視聴者と比べると、ウチの読者数はごく僅か。
ほとんどの人にとっては、「実に面白い」と言うより、
「さっぱり分からない」記事内容なのかも (^^ゞ
ちょっと残念ですが、放送終了後も含めて、
地味に読者を集めて行ければ・・と思ってます。
前シリーズの記事も、放送終了後の方が
遥かに読者は多いですしね。10倍近いかも。
ドラマと無関係な、物理的・数学的アクセスも
わりと多いですからね。
とにかく、残り4回か5回も一緒に楽しみましょう。
またの御訪問をお待ちしてます。それでは。。
> nkyoro さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
大学で物理を専攻してた方なんですね。
それはそれは。私より遥か上の存在です♪
趣味の範囲でも、専門の方が調べまくれば、
かなりの事が分かるんでしょう。
私自身は、前から何度か書いてるように、
数学や理屈全般(文系含む)にはそれなりに
対応できますが、物理は単なる素人レベル。
もちろん、今回のホログラムも全く知らなかったわけで、
限られた能力と時間の中で、何とか書いてる程度です。
で、ご紹介頂いたpdfファイル。
なるほど。これは明らかに有益な情報ですね☆
全くチェックしてませんでした。
この種のファイルは、部外者には「さっぱり分からない」
ものが多いのですが、これは図と説明が丁寧。
私の各種検索だと、出て来なかったと思います。
早速、記事本文に追記しときましたので、ご確認ください。
確かにsin、λ、pは脳内フラッシュでも見ました。
「波の干渉」であることくらい、気付くべきでしたね。
ちなみに、物理というより「数学的な説明」という観点では、
英語版ウィキの方がシャープだと思います。
どの文字が何を表して、どうゆう理由でその数式が
出て来るのか、短いながらも論理的にまとめてました。
ご参考までに。それでは。。
投稿: テンメイ | 2013年5月22日 (水) 21時22分