(☆14年6月20日追記: 映画レビューを新たにアップ。
真解=深海の光を目指す水ロケット~『ガリレオ 真夏の方程式』 )
☆ ☆ ☆
ちょっと驚いた。。旧シリーズの最終回ラストみたいな、ゾクゾクするような
理数系ネタ連発も無く、トリックも予想通り、つまり原作と同じ。ドラマ独特の
コネタ、紫色の傘も、光浦かよ♪って感じの不発。ま、数式が完全に読み取
れて、最後の人工衛星のスイングバイ実験も面白かったからいいか・・・っ
て程度の印象だったのに、長い総集編エンドロールを見てたらふと、ウルウ
ルしてしまったのだ (^^ゞ
この2ヶ月ちょっと、途方も無いエネルギーを『ガリレオ』に注いで来たもん
ね。特に毎回、放送終了直後の数式解読作業はホントに大変だった。と
言っても、撮影スタッフの努力の10分の1くらいに過ぎないだろうけど♪
ちなみに、最終回の数式は、昨日アップした次の記事で解説してある。
『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流
☆ ☆ ☆
それにしても、「実に惜しい」。。新シリーズ『ガリレオ2』の最終章、聖女の
救済(後編)は、視聴率19.1%と健闘。私の予想(18%台)より少し高め
だけど、全話の平均視聴率は19.9%となってしまった。スタッフも苦笑い
かな。あと僅か0.1%で20%だったのにね。まあでも、「実に素晴らしい」
総合成績だと思う☆ 旧シリーズ(21.9%)との単純平均なら、20.9%。
まだ20%台をキープしてるのだ。
ラストは、湯川学(福山雅治)の取説(=取扱説明書)を完全にマスターした
らしい岸谷(吉高由里子)の誘導に従って、湯川が微笑む。「実に面白い」♪
これならもう、仮に映画『真夏の方程式』がいま一つの興行成績になったと
しても、福山『ガリレオ』は続いて行くだろう。1クール使った『ガリレオ3』か、
スペシャルか、映画かはさておき。
仮に、原作者の東野圭吾が『ガリレオ』シリーズの執筆を止めるとしても、大
人のやり取りで何とでもなるはず。何しろ、東野どころか、普段の脚本家・福
田靖も関わってない『内海薫SP』でさえ、15.3%の数字を上げたほど。作
家や役者、個別の人気に依存しない、共同制作プロジェクトとしての『ガリレ
オ』の人気が定着してるのだ。少なくとも、日本においては。。
☆ ☆ ☆
さて、今回は第2シリーズの最後だから、総括とか、まとめのような話を書き
たいんだけど、その前にやはり、2週にわたった最終章「聖女の救済」の話
を書くべきだろう。
まず、原作との比較の問題。当サイトのアクセス解析を見る限り、ドラマと原
作の違いが大きく話題になったのは、第4章と最終章だ。第4章の場合、原
作が地味で、トリックも物理と言うより化学だから、ドラマは苦心の作だった
と思う。
一方、最終章に関しては、「物語=ストーリーとしては」、東野の原作の方が
かなり上。そこそこ満足な出来の最終回を見終わった後でも、やはりそう思
うから、前回に続いて、まだ読んでない方にお勧めしとこう。中核となる犯人
とトリックは同じでも、周辺の情景の描き方が全く違うのだ。
とはいえ、「映像作品として」の出来はまた別に評価すべきだし、脚本家・福
田靖の苦労もよく分かる。原作は、新シリーズにほとんど出て来ない内海(柴
咲コウ)や草薙(北村一輝)に光が当たる話だから、設定上、大幅な書き換
えが要求されるわけだ。
そこで、人気・実力ともにトップクラスの天海祐希を使うことにしたのはいい
けど、5月8日にまさかの軽い心筋梗塞。5月13日に退院して、静養した後
とはいえ、脚本家その他、スタッフはみんな気を使っただろう。何しろ、天海
が倒れた後、舞台の脚本を作ってた三谷幸喜が、「僕のせいで・・・」と悔や
む声まで伝わってたんだから。。
☆ ☆ ☆
本人も『ガリレオ』ファンだという話の、大物の天海をヒロイン・綾音に抜擢
することで、原作の重要な脇役2人、あるいは3人も、(ほとんど)消えるこ
とになった。綾音の助手であり、殺された夫・真柴と不倫関係にもあった、
若山宏美(ドラマの若い先生=山口紗弥加とは別キャラ)。そして、最初に
夫・真柴と付き合ってた、津久井潤子(ドラマでは全くの脇役)。若山宏美の
お腹の子供まで含めれば、3人になる。
あまりネタバレ的な話は書きたくないので、最小限に留めると、若山&お腹
の子は、聖女=綾音が救済する対象でもあるし、聖女=綾音を救済する
主体でもあるのだ。一方、津久井潤子と綾音の関係も複雑だけど、要する
に津久井潤子は、聖女=綾音を救済する警告シグナルを発してたとも考え
られる。こういった解読によって、前回のレビューに書いたような「聖女の救
済」というタイトルの意味は、さらに厚みや深みを増すわけだ。
ドラマの場合、これら2人、あるいは3人が(ほとんど)消えてるし、内海や
草薙もいないので、紫色の傘をつなぎのコネタとして、残るメインは湯川=
福山雅治と綾音の関係となる。
この、かつての片思い関係にある2人を、もう少し熱く=厚く描ければ、物
語としての味わいが増してたと思うだけに、その点はちょっと残念だ。2人
の中学時代のエピソードとか、今現在の思いとかが伝わらないまま、「好き
だった」という事実だけ繰返し持ち出されても、感情移入は難しい。折角の
北海道・幌向中学校での告白シーンも、物語の流れとしての必然性は薄い。
まあ、映像の力というものは確かにあるけどね。廃校寸前の田舎の中学校
や自然、あるいは、湯川が中学生みたいな笑顔を見せてた恐竜博物館とか。
☆ ☆ ☆
原作との違いは、同じトリックの分かりやすさの違いにもつながる。原作の
場合、浄水器や水道管の類に、全くヒ素が見つから「なかった」(過去形)と
いう点が強調されてるからこそ、「完全犯罪」ということになるのだ。もちろ
ん、2階のベランダの花が度々(?)枯れるなんて分かりやすい伏線もなし。
だからこそ、最先端の科学施設SPring-8や、草薙、津久井潤子のエピ
ソードが光ることになる。
ドラマの場合、綾音の犯行を裏付けるのは、状況証拠以外に、湯川に対
する告白(非公式な自白)と、2階の花ということになる。ただ、花がすぐ枯
れるようなヒ素の濃度なら、フツーの鑑識課や科捜研(科学捜査研究所)
で何とか出来そうなものだし、どうして岸谷=吉高が突然、絶望して号泣
するのか、不思議な気もしてしまうのだ。まあ、吉高の出世作『あしたの、
喜多善男』最終回でも、『内海薫SP』ラストでも、ヒロインは泣いたから、ド
ラマの形と言うものかも知れない。
逆に、ドラマのいい点を探すなら、具体的な映像だろう。綾音が浄水器にヒ
素を仕掛けるシーンとか、1年間もの間、夫その他に浄水器を使わせない
ようにする努力とか。夫が夜中、トイレに起きた際にも、浄水器を見張って
る姿には説得力があった。聖女の名にふさわしい、気の遠くなるような忍
耐力。それを、手間ヒマかかるタペストリーの形で見せたのもいい。美しさ
さえ感じてしまう、壮大な犯行計画なのだ。
1年間にわたる綾音の努力はあまりにあり得ないから、原作では「虚数解」
と呼ばれてた。簡単で基本的な例だと、2次方程式「x²=-1」の解。実数、
つまり現実=本物の数の世界では、解は無しとなるが、高校数学では虚数
単位 i を用いて、+i、-i という「虚数解」を考える。i は、「imaginary」(想
像上の)の頭文字だ。
ドラマでは単に、現実ではあり得ない、といった台詞で終わってた。まあ、国
内だけで2000万人もの視聴者を考えたテレビ的配慮として、仕方無いだ
ろう。本と違って、遥かに多くの人がオンエア中に理解できるように作るから、
小説とは全く事情が違うのだ。
前回のレビューで注目した、「聖女の救済」というタイトルに関しては結局、
自白によって、「聖女が自らを救済する」という当たり障りのない解釈になっ
てた。湯川や警察・太田川(澤部佑)らが聖女を救済したといっても同様の
話で、原作にあった強烈なヒネリは消えてる。
原作では、様々な含みの中、聖女が1年間だけ夫を必死に「救済」したとい
うシニカル(冷笑的)な意味がメインだが、ドラマではそれは「執行猶予」と
いう分かりやすい言葉に変更されてた。やはり、テレビはテレビなのだ。。
☆ ☆ ☆
最後に、ラストの人工衛星の実験と重ねつつ、新シリーズのドラマ全体を振
り返ってみよう。スイング
バイ(swing-by)によ
る軌道修正だ。
左の2枚の図はウィキ
ペディア、ミュール氏の
作品。赤丸が惑星、白丸が
人工衛星だ。惑星が緑
の矢印に沿って、恒星
の周りを公転してる時、
人工衛星が後ろから
回り込むと、加速され
る。逆に、前から回り
込むと減速される。この
記事末尾のP.S.2も参照。ドラマの黒板にも、似た図が書かれてた。
湯川が発進させた人工衛星(金属球)は、テーブルの上の惑星3つの周り
で左回りに軌道修正されて、見事に元の位置(おそらく地球)に戻ってた。
重力、つまり万有引力の代わりに、磁力を使ってるんだろう。何とも分かり
やすくて興味深い映像で、これはテレビの強みを上手く活かしてる。
ここではもう、あの物理的な解説を書いてる余裕はないから、ポイントだけ
書くことにしよう。要するに人工衛星は、巨大な惑星の力を借りて、自然か
つ滑らかに元の位置へと戻ってる。途中で宇宙の放射線によるビット反転
(1が0に、0が1になるエラー)が生じてしまうリスクも克服しつつ。これこそ、
新シリーズの比喩なのだ。。
☆ ☆ ☆
人工衛星、つまり『ガリレオ2』は、3つの点で新たな旅を開始した。まず内
海=柴咲の代わりに、岸谷=吉高というクセのあるキャラの登場。2つ目
は、湯川=福山のキャラを少し軽めにしたこと。そして3つ目は、見せ場で
ある数式書きなぐりシーンとは別に、エンドロールの壁やホワイトボードで、
数式の一部を見せたこと。湯川がドラマ内で書いてない数式や、単なる美
術スタッフさんのお遊びまで含めて。
その人工衛星の軌道を修正したのが、巨大な惑星3つだ。テレビ視聴者、
原作愛読者、そして、未来の可能性も含めた、世界の視聴者。特に、3番
目の「世界」という要素は忘れがちだからこそ、注目する必要がある。『ガ
リレオ2』は、ドラマ開始の直前に、アジアを越えて欧米にまで進出するこ
とが決定してるのだ。北米では既にスタートしてるし、欧州は今日、6月26
日から放送開始の予定。
では、巨大な惑星3つの力によって、人工衛星「ガリレオ2」の軌道はどう
修正されたか。岸谷のエリートという設定はすぐに消滅、生意気さも弱めら
れて、むしろ可愛さ、可憐さ、いじらしさが強調されるようになった。最終回
の終盤がその集大成で、大泣きするし、バカにしてた先輩・太田川にすが
るし、湯川に対しては最後、イタズラっぽく巧みに誘導して、雷殺人事件へ
と誘導してた。
また、湯川=福山のキャラは、最終的には、少し元に近くなってる。つまり、
「論理的」で重みのある、真面目で落ち着いた変人・物理学者。ただし、栗
林や岸谷を微かにからかう程度の軽さは身に付けたようだ。ラストも、2人
の仲の良さを(嫉妬混じりに)からかってた。
そして、数式。最終回では、タペストリーの裏側の壁にきっちり書かれた様
子が本編で映された代わりに、エンドロールの壁が消えた。その方が物理
ドラマとして自然だし、親切でもある。おまけに数式の内容はちゃんと、浄水
器や水道管、排水管などの内部における水の動きを示してた。スピードが
速くて整ってない「乱流」と、遅くて整ってる「層流」、両方をカバー。沢山の
水が流されてヒ素の痕跡が消えたとする仮説の、湯川的な表現なのだ。第
5話の「無意味」な数式と比べると大差だろう。
☆ ☆ ☆
スイング「バイ」とは、惑星の「そばで」、惑星の力「によって」、スイング=揺
れること。その際、人工衛星は、惑星と衝突することなく、上手く引力だけを
利用して、また離れて行く。
色々と言われ続けた『ガリレオ2』も、終わってみれば、視聴者と正面から「衝
突」することなく、上手く軌道修正した形だ。加速できたかどうかはさておき、
少なくとも、あまり減速してないし、細かい軌道修正にもほぼ成功。世界レベ
ルの評価がどうなのかは、まだよく分からないけど、細かい言葉の説明や論
理より、大まかな感情表現や映像表現の方が伝わりやすいのは確かだろう。
だからこそ、赤い花(バラ)は枯れてたし、綾音の複雑な背景は自転車事故
の悲惨な映像になってたし、別の容疑者は目立つ紫の傘を差してたし、湯川
&綾音のしんみりした会話は、教会や故郷の自然の中で映し出されてた。最
後は、世界的にウケそうな人工衛星の実験を成功させた後、ヒロインと主人
公の笑顔の連鎖で終了。上手く、帰還した形と言っていい。
☆ ☆ ☆
さて、次の『ガリレオ』の旅立ちはいつ、どうなるのか。とりあえず、映画や海
外の反響に注目しよう。もし欧米で人気が出るようなら、ウチの数式記事の
ポイントだけでも英訳することは一応考えてる(将来的に♪)。
(☆6月28日追記: 既に英語の数式記事(非常に短い要約)を1本アップ。
Yukawa's physics formulas in "Galileo 2" episode 1 )
「実に面白い」、「さっぱり分からない」、「非-論理的」、「現象には必ず理由
がある」、「仮説は実証して初めて真実になる」といった、ドラマ独特の台詞
の微妙なニュアンスや面白さを外国に伝えるのは大変だろうが、物理学と
数式は世界共通。単純な翻訳で相互理解が可能なのだ。
私としては、『ガリレオ』というドラマを惑星として、ブログという人工衛星を上
手く軌道修正、スイングバイできたと思ってる。つまり、日記ともスポーツとも
数学とも人文系とも違う、自然科学の方向への適度な進路変更だ。ブログ
というより、私自身をスイングバイしたと言ってもいい。
ちなみに福山雅治は、吉高由里子のすぐ「そば(by)」で、セクハラまがいの
冗談をフル「スイング」で見せてるそうだ♪ 映画『真夏の方程式』、プレミア
ム上映式での発言だ。案外、スイングバイと言うより、既に両者は「接触」し
てるのかも知れない。
その場合、誕生する新たな命がスイングする揺りかごが、人気者・福山の
疲れを救済することになるだろう。ちょうど原作小説ラストで、新たな命が、
周囲の人達みんなの救済へとつながるように。
なお、既にかなりの要素を拾い上げて書いて来たが、今まで無視して来た
要素を全体的に認識し直すことで、新たなガリレオ像が浮かび上がる可能
性は十分あると思う。ちょうど恐竜の化石発掘現場で、骨だけでなく丸ごと
CTスキャンすることで、全身を浮かび上がらせるように。
とりあえず、長旅の疲れを癒やすとしよう。スタッフ&キャストの皆さん、どう
もお疲れさま♪ それでは、今回はこの辺で。。☆彡
P.S. 7月6日まで、フジテレビ・オンデマンドで、動画が無料配信されてる。
音楽とアルバムに関するもので、4本合計で約25分のお宝映像だ。
福山雅治、ドラマ「ガリレオ」と音楽「Galileo+」
P.S.2 スイングバイの加速と減速は、「定性的には」次のように考えれば
「分かりやすい」。人工衛星が惑星の後ろから回り込む時、しばら
くの間、衛星は惑星を後ろに引っ張って公転速度を下げることに
なる。だから、惑星の運動エネルギーが減り、エネルギー保存則
によって、衛星の運動エネルギーが増す。つまり加速するのだ。。
cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す
心の同期と「慣性の法則」~『ガリレオ2』第2話・指標す
揺れ動く、見えないもの~『ガリレオ2』第3話・心聴る
曲がった男のストレートな切れ味~『ガリレオ2』第4話
接近することの効果と限界~『ガリレオ2』第5話
閉じたものを開くこと~『ガリレオ2』第6話
脇役と主役、よそおう人々~『ガリレオ2』第7話
虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る
エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す
誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ
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『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度
『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動
『ガリレオ2』第3話の数式、
パルス電磁波のフレイ効果による耳の奥の弾性波か
『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか
『ガリレオ2』第5話の数式、
近似のニュートン法による√2の数値解析(&バルマー系列)
『ガリレオ2』第6話の数式、
ホログラム記録&再生における光波の複素数表示
『ガリレオ2』第7話の数式、
ロッキングチェアの慣性モーメント&回転・直線運動か
『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か
『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)
『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か
(計 6928文字)
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