『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か
(☆14年2月17日追記: 映画の数式記事をアップ。
ガリレオ『真夏の方程式』の数式、水ロケットの飛距離、初速度、発射角 )
(☆6月24&25日追記: 第10話の数式は、最終回の数式の前半みたい
だ。第10話の2本目の数式を、この記事にも追
加した。最終回の数式記事は、以下の通り。
『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流 )
(☆6月20&23日追記: 第10話のレビューとSP記事をアップ。
誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)
男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ )
☆ ☆ ☆
月曜恒例、3時間睡眠&キツイお仕事&帰宅後すぐに数式解読して執筆
・・・っていう3点セットから、今週は解放されたかと思ったら、やっぱり数式
があった (^^ゞ 1回休みでも全然良かったのになぁ。。
私がたまたま居眠りしたのでなければ、湯川=福山雅治の数式書きなぐり
シーンは今回、無かったはず。実際、エンドロールの途中で映される湯川の
脳内フラッシュにも、今回はそれらしき数式が見当たらず、湯川の顔が短め
にクルクル回ってただけだ。僅かに映ってた数式は、今回の第10章「聖女
の救済(前編)」と関係ないと思う。
当サイトの『ガリレオ』数式記事は、旧シリーズだと内容が乏しいものもか
なり混ざってたけど、新シリーズでは前回まですべて、それなりの内容を書
いて来た。しかし今回は残念ながら、僅かな推測(or想像)しか書けない。
悪条件が揃い過ぎてるのだ。まず、書きなぐりシーンが(多分♪)無かった。
次に、私がサッカー・ブラジル戦を見て、長めの記事まで書いてしまったの
で、ハードディスクを空けるヒマが無くなって、エンドロールしか録画できな
かったのだ。つまり、黒板を録画できてない。更に、今回の数式はおそらく、
化学反応に関するものだと思うけど、手元に持ってる化学の本は、高校参
考書のチャート式のみ(笑)。
ってことで、今回はホントに最低限のことだけ書いて、さっさと寝ることにす
る。と言っても一応、放送終了後は2時間近く、ネットで検索しまくったのだ。
溶液、濃度、反応速度、微分方程式関連で調べまくったのに、どうしても似
た式が発見できなかった。前回はすぐに元の研究が見つかったのにね。。
(☆翌日の追記: 第4話に続いて、全く見当ハズレの努力だったようだ。正
しくは、ポット、水道、浄水器などの水の複雑な流れを示す
式。さらに読み込むなら、ゼラチンや絵の具をはがして拡
散する力の式とも見れる。この記事末尾を参照。
ただし、以下の議論は私が苦労して書き上げた「仮説」
だから、「実証して真実になる」ことに失敗した後も残し
ておく。)
☆ ☆ ☆
ではまず、今回のエンドロールで映し出された数式を掲載しよう。2本目は
ほとんど見えなかったし、全く意味不明だから、とりあえず省略しておく。
(☆追記: 最終回で、第10話の2本目が映し出されたので、下に追加した。)
今回、扱われた「物理的」現象は、水の色の変化に関するものだけだった。
電気ポットにミネラルウォーターを入れて沸騰させ、耐熱グラスに注ぐ。1
回目の色は、単なる透明のまま。2回目は赤色。3回目は紫になった。
ポットの中(ふたの裏?)に、ゼラチンで薄く覆った赤い絵の具と、厚く覆っ
た青色の絵の具を仕込んでおく。1回目だと、まだどちらもゼラチンに覆わ
れたまま。2回目に、赤い絵の具だけ溶け出す。3回目には青い絵の具も
溶け出すから、赤と混ざって紫になる。確か、こんなトリックだったはずだ。
ただし、これだとポットにゼラチンが残ってしまうから、天海祐希の完全犯罪
には使えないってことで、結局はボツの仮説とされた。物語の中では、ひま
わり会の子供が喜んだだけなのだ。
ちなみに、絵の具と対応させたかった毒物はヒ素・As、正確にはその化合物
の亜ヒ酸ナトリウム・NaAsO₂。ナトリウムと化合する前の段階の亜ヒ酸・
As(OH)₃とは、98年・夏の和歌山毒物カレー事件で有名になったもので、
除草剤・殺虫剤に用いられる三酸化二ヒ素・As₂O₃を溶かした水溶液に
生じるらしい。毒物の検出には、SPring-8(スプリング・エイト)と呼ばれる、
巨大で複合的な科学研究施設が用いられた。。
☆ ☆ ☆
一方、物語の外側では、エンドロールの数式に使われたんだと思うけど、ど
の文字が何を表して、全体として何なのか、「さっぱり分からない」♪
ρ(ロー)は普通、密度や濃度に使われる記号で、この場合は濃度だと思う。
色んな記号の上についてる横棒は普通、平均を表す記号だ。l(エル)らしき
記号は、おそらく水溶液の体積だろう。とすると、ρは化学でお馴染みの、
「モル濃度」(mol/L)じゃないかな。1リットルの溶液に溶質が何モル溶け
てるかを表す。モルとは6.02×10²³個の粒子(原子、分子、イオン)のこと。
酸素分子0₂の1mol なら、酸素の原子量が約16だから 16×2=32gだ。
この場合、ρl(ロー×エル)は、溶けてる溶質(絵の具やゼラチン)の量(=
モル数)を表すわけだが、今回の数式の途中は「ρl²」となってる。これは毎
度お馴染み、スタッフの書き間違いじゃないのかな? ρも2乗した「ρ²l²」
(ρl の2乗)が正しい式なら、その部分だけは納得しやすいのだ。さほど自
信があるわけじゃないけど、一応、可能性だけ指摘しとこう。
(☆追記: 書き間違いではなく、正しい式だった。)
☆ ☆ ☆
既にPCやスマホの画面から数式が消えてるだろうから、再掲しとこう。
左辺に戻って、u´、v´とは何なのかが気になる。と言うか、そもそも左辺の
右端は本当に「v(ブイ)」なのか、疑問がわくのだ(☆追記: ブイで正しい)。
ギリシャ文字 ν(ニュー)だとしたら、単に記号が変わるだけだからいいとし
て、「ダッシュ無しu(ユー)」だと大違いになる。
中央から右側には、v(ブイ)は全く出てないのだから、u(ユー)と同格の別
文字なら、どうしてv(ブイ)だけ消えてるのだろう。もし本当にv(ブイ)なら、
uとvの間には密接な関係があって、u(ユー)だけで計算できるということだ
と、一応考えられる。
チャート式・化学の中で似た内容を探してみると、化学反応の速さに関する
説明で、v と v´ が見つかる(どちらも上に横棒つき)。物質Aから物質Bが
生じる時、Aのモル濃度が変化する速さが v(減るから符号はマイナス)、B
のモル濃度が変化する速さ(増えるから符号はプラス)が v´だ。もちろん、
どちらも平均の速さで、一つの化学反応だから、v と v´ は密接に関係する。
この「´(ダッシュ)」は関係の深さを表すもので、微分の記号ではない。
例えば、過酸化水素2モルから酸素1モルが発生する反応を考えてみよう。
2H₂O₂ → 2H₂O+O₂ (H₂Oは単なる水だから無視)
過酸化水素のモル濃度が変化する速さは、酸素のモル濃度が変化する速
さの-2倍になる。マイナスは、符号が違うから、つまり、v<0 かつ v´>0
だからだ。これでは、反応速度の数字が混乱するので、普通は酸素、つま
り反応式の右辺(生じる物の側)で係数1の物質に、速さを統一するらしい。
このチャート式の話を考えると、ドラマの式の左辺にマイナス、中央では
絶対値記号がついてることに、ちょっとだけ納得できるのだ。左辺のv´や
絶対値記号の中は、マイナスの数であって、減る物質と関わる何かなん
だろう。下側の水滴マークの白黒も考え合わせると、xが関係する物質が
減って、yが関係する物質が増えるのではないか。だから、最後(一番右)
の辺では、増える y だけ残したんじゃないだろうか。化学界の慣習にした
がって。。
☆ ☆ ☆
それにしても、まだ、雲をつかむようなレベルの話にすぎないし、ρ、u´、v´、
u、x、y、μt(ミュー・ティー)、いずれも確定してない。速さの話なら、微分の
下側は「dt」となってて欲しいのに、片方は「白水滴 x 黒水滴 y」(笑)、もう
片方は dy なのだ。
これはもう、諦めて気持ちを切り替えた方がいい。前シリーズだと何度も
あったことだし、今回は湯川が書いた式でもないのだから。まあ、おそら
く数式のレベルはかなり低いので、化学を少し勉強すれば「な~んだ・・」
と思うようなことだろうと想像する。
レビューは明日か明後日アップの予定。それでは、今夜はこの辺で。。☆彡
P.S. 読者の方の情報をもとに調べてみると、あの式は、乱流(普通に
ある複雑な流れ)におけるレイノルズ応力(≒乱流粘性応力)の一
部らしい。ポットのお湯を非常に微小な立方体へと分割、ただし、
面が座標軸と平行になるようにする。x軸の正の向きの面におい
て、y軸方向(横とか上とか)に働く、ずらす力(=せん断応力)を
求めてるのだ。
ρ(ロー)はゼラチンや絵の具混じりのお湯の密度(一定だと仮定)。
u´は、x方向の変動速度(=速度-平均速度)。v´はy方向の変動
速度。l(エル)は「混合距離」。「混合」(mixing)と呼ぶ理由は、音楽
の世界のミキシングみたいに、色んな要素を上手く調整して、混ぜ
合わせてるからだと思う。要するに、微小な部分が同じ物理的性質
を保ちつつ移動できる微小な距離のこと。l だけ動いた後で初めて
性質が変わるとすれば、話を単純化できる。
プラントルという学者の近似的な仮説で、わりと上手く現実に当ては
まるらしい(実証例は未確認)。気体分子運動論における平均自由
行程(まったく邪魔されずに動ける距離)みたいなもののようだ。
duのuはx方向の速度。その下の「水滴マーク&xy」は、普通はdy
になってる(6月24日、最終回でdyだと確認した)。ただ、xとyの区
別は軸の取り方によるし、dyばかり続くと見た目が単調だから、xy
と書いて水滴マークに白黒の区別をつけたのかも知れない。(普通
なら)2つ並んでるdu/dyの左側だけ絶対値記号がついてる理由
は、プラス・マイナスの符号の調整らしいが、まだ納得できてない。
どうもやはり物理の説明は、数学と違って、色んな仮定や省略が密
かに存在してるのだ。
右端の辺は、ブシネスク(またはブシネ)という学者の応力理論で、
μt(ミュー・ティー)は渦粘度とか乱流粘性係数とか呼ばれるもの。
結局、右側の等号(=)は、プラントルとブシネスクの理論をつない
でるわけだ。
水に働く、せん断応力は、ポットの中だとおそらく、ゼラチン絵の具
をはがして拡散する力でもあるはず。ポットの内側に貼り付けたゼ
ラチンは、押しても動かないし、引っ張る力は無視できるだろうから、
結局は、ずらす力、つまり、せん断応力が問題となるだろう。
まあでも、そうゆう話なら、私が最初に想像した溶解の反応速度を
考える方が実用的だと思う。物理というより化学ではあるが。。
cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す
虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る
エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度
『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動
『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか
『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か
『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)
(計 4971文字)
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コメント
こんばんは。
毎回おもしろい数式記事を載せていただきありがとうございます。
毎週楽しく読ませてもらっています。
今回の数式、私も調べまくりました。
最初に数式を見た時、ρ(密度)、u(内部エネルギー?)が見えたこと、またゼラチンが溶けるという話だったことからと熱力学かな?と思いました。熱力学を中心に色々調べてみました。
全然違いました…。
長々と調べた結果、たどり着いたのは流体力学でした。
「せん断応力」という力のことを表す数式のようです。
エンドロールの数式がそのまま掲載されている文献がたくさん見つかりました。
「プラントル」「せん断応力」「混合距離」「運動量輸送理論」等のキーワードで検索すれば数式がそのまま載ってる文献にたどり着きますので、お時間ありましたら見てみてください。
ただ、見つかった文献の内容はかなり難しかったです…。
私は「せん断応力」の意味すらわからなかったので(補足:流体力学は苦手)、youtubeで勉強してしまいました(苦笑)。
今回は、ゼラチンが溶けるという現象を、
ゼラチンと熱い水(流体)の間に働くせん断力(せん断応力)によって、ゼラチンがせん断される(=溶ける)、という現象に置き換えてこの数式を載せたのかな、と私は解釈しました。※あまり自信ないです。
ただひとつ思ったことは、所詮ゼラチンが溶けてるだけなんだからもっと簡単な数式にしてほしかった。。。
テンメイさんの化学の立場からアプローチが読み物としてとてもおもしろかったです。
「化学反応の速さに関する説明で、v と v´ が見つかる」
からの説明が実に論理的で分かりやすく、なるほどなぁ、と思う点がいくつもありました。
アプローチの仕方が素晴らしい、参考にさせていただきます。
私、化学の本は一冊も持っていないんですよね。
名著「チャート式・化学」、今度買ってみようと思います。(笑)
投稿: nkyoro | 2013年6月19日 (水) 00時39分
> nkyoro さん
こんばんは。再びコメントどうもです。
内容豊かで、繊細な配慮も感じられますね♪
「u」を見て、内部エネルギー。なるほど。。
大文字なら私もそう思ったかも知れませんが、
小文字だと思い付きませんでした。
「v」と共に、速度の記号だろうってことで、
旧シリーズのドラマに反応速度が出たことを
思い出したのが、勘違いの主なキッカケです。
ちなみに、内部エネルギーをなぜUと書くのか、
理由がどこにも見当たりませんね。
英語でもドイツ語でもダメ。
確か、高校時代は、「うちがわ」だから
Uなんだろうと思ってました(笑)
せん断応力。。なるほど、あっさり納得です。
いかにも科学監修の大島まりが好きそうな話。
専門も、テレビ出演で書いた式も、
流体力学ですからね。
私も一応、流体力学の本は見てましたが、
大学1、2年レベルの入門書だから、
ギリギリ書かれてなかったようです。
恒藤敏彦『弾性体と流体』岩波書店。
せん断、レイノルズ、乱流といった話は
一応出てるのに、あの式までは書いてない。
「エンドロールの数式がそのまま掲載されて
いる文献がたくさん見つかりました」との事。
私はそんなに調べてませんが、そのままではなく、
少しだけ違った式も多かった気がします。
まあ、文字の取り方もあるし、せん断応力と
いっても2つの方向がありますからね。
垂直応力も含めれば、流体の1つの面に対して
3種の応力があります。
実際は、3つの方向に面があるから、
3方向×3種=9つの応力を扱うことになる。
だから、全体を3×3の正方行列で表して、
3階3次元の応力テンソルととらえる。
そんな話でしょうね。大まかなイメージですが♪
せん断応力とドラマの関係については、
既にこの記事に追記してますが、
2つの意味が考えられます。
一つは、単なる沸騰水の「乱流」の記述、
もう一つは、ゼラチン絵の具の溶解。
ドラマ的には、ゼラチンの溶解速度が問題であって、
沸騰水の動きは関係ないので、濃度と溶解速度に
関する化学理論の方が適切だったと思います。
実は最近、毎朝アイスコーヒーを飲んでますが、
かき混ぜる時、最初は勢いよく溶けるのに、
時間が経って濃度が上がると、溶けにくくなる。
それを無理やり溶かそうと思うと、朝の貴重な
時間を30秒ほど奪われるわけです(笑)。
コーヒーの乱流の様子より、コーヒーの濃さと
溶ける速さの方が遥かに大切。
濃さは、溶ける速さの積分からすぐ導けるから、
結局は速さが問題のはず。
まあ、一般人と科学者では視点が違うのでしょうが。。
最後に、物理と違って化学ってものは、普段
ほとんど接してないから、あえてチャート式を
引っ張り出したって部分もありました。
意外なほどハイレベルですね♪
個人的には意外なことに、フツーは物理より
化学の方が好まれてるという情報もあります。
この失敗に懲りず、たまには化学にも
目を向けようと思います。
ちなみに『チャート式・化学』。
今売ってるのは、旧課程向けに作った版を、
表面的に新課程向けに作り変えたもの。
実質的な問題はないと思いますが、おそらく
最初から新課程向けに作った版が
来春くらいに出ると思います。
ちょうど今、移行期だから、現在はまだ、
最初から新課程向けに作った版は『生物』のみ。
書き手も編集者もバタバタしてる所でしょう。
細かすぎる話ですが、ご参考までに。
貴重な情報、どうもでした。
それでは。。
投稿: テンメイ | 2013年6月20日 (木) 22時20分