誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)
(☆6月23・25・26日追記: SP記事と最終回の数式記事&レビューをアップ。
男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ
スイングバイによる軌道修正~『ガリレオ2』最終回・聖女の救済(後編) )
☆ ☆ ☆
でもガリレオは救済されたわ。
時間はかかったけど。
救済には時間がかかるの。
真柴綾音(天海祐希)
☆ ☆ ☆
あ~、折角書いた文章が700字くらい消えてしまった。。やってくれたな、コ
コログ! 最近、ブログ記事を書いてる途中に、ブラウザの文字コードがお
かしくなることがあるのだ。保存ボタンを押した途端に、エラー表示が出て、
慌ててオフラインで元に戻そうとしても既に文章が消えてる。ハァ~~~。。
・・っていうボヤキはさておき、幼児教室の先生(山口紗弥加)がわりと好み
だって話もおいといて(笑)、今回はまずブロガーとしての告知から入りたい。
放送終了の6時間後にアップした数式記事は、その後、大幅に加筆&修正し
てある。限られた情報と時間を使って、苦心して書いた仮説は、結果的には
ピント外れだった。第4話『曲球(まが)る』以来、久々の失敗だ。私が狙いを
定めてた球は、少し曲がるスライダー(化学)だったのに、実際は球威のある
ストレート(物理)だったらしい。
湯川学(福山雅治)も言うように、実証に失敗したからといって、仮説の意味
が無くなるわけではないから、元の文章もタイトルもそのまま残してある。そ
の上で、記事末尾を中心に、正しい説明を書き加えた。興味のある方はご
参照あれ。
『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か
ウチの特徴の一つは、前に書いた記事への加筆修正をずっと続けてるこ
とだ。真実になれなかった仮説はそれなりに意味を認めつつ、より正しい説
明や情報を素直に取り入れる。たとえ時間がかかっても、カトリック教会や
ローマ教皇のように。。
☆ ☆ ☆
さて、今週はいきなりサッカー・ブラジル戦で長めの記事を書いたこともあっ
て、週間文字数制限2万字まで、早くも残り1万字となってる。週末には、
『ガリレオ』内海薫スペシャル「愚弄(もてあそ)ぶ」まで入ってるから、今回
のレビューは3000字程度しか書けない。
そこで、「救済」というテーマに絞り込んで、2つの事だけ語ることにしよう。
まず、ガリレオ湯川の名前の由来でもある、天才科学者ガリレオ・ガリレイ
の救済について。もう一つは、「聖女の救済」というタイトルについて。
☆ ☆ ☆
コペルニクスに続いて、ガリレオ(1564-1642)が、地動説(太陽中心に
地球が回転するという説)を唱えて、天動説(地球中心に天が回転するとい
う説)を支持する教会と対立。裁判で有罪になった後、「それでも地球は動く」
と語った・・・・・・といった「物語」は有名で、私も中学か高校の時に聞いた気
がする。
このガリレオの言葉が作り話らしいという歴史的コネタはいいとして、この
問題の科学的正解(らしきもの)を知ってる人はかなり少ないと思う。ガリ
レオの地動説が正しかったというのは非常に大まかな話であって、もう少
しだけ正しい言い方に直すなら、「太陽は小さく動く、地球は大きく動く」、と
いうことなのだ。
つまり、太陽と地球という2つの天体だけ考えるのなら、「太陽と地球の重
心を焦点とする別々の楕円軌道で、どちらも回転する」。これはかなり高度
な話で、実際、ガリレオの死後、天才ニュートンが主著『自然哲学の数学的
諸原理』(1687)でようやく証明したことだ(天文学や物理学というより、純
粋な数学とか幾何学に近い)。
☆ ☆ ☆
ただ、太陽の方が約33万倍の重さ(正確には質量)だから、重心は太陽の
すぐ近くになり、近似的に、重心は太陽自体と考えていい。また、太陽の動
きは地球と比べると無視できるほど僅か。おまけに、楕円といっても、ほと
んど円に近い。
だから、「太陽中心に地球が円運動する」というのが、地動説の一番簡単
なイメージとなる。高校2~3年レベルになると、「太陽を焦点とする楕円軌
道で地球が公転する」といった話になるけど、太陽も動くという所まで説明
されることは少ないのだ。手元の『チャート式・物理』(笑)でも、その点は巧
みにスルーしてある。話を簡単にする教育的配慮というものか。
実は、天体は2つではなく、無数にあるから、事態は絶望的に複雑なのだ。
以前、「人間のジャンプで地球が太陽から離れて温暖化防止になるか」と
いう冗談っぽい科学記事で少し触れたように、多数の天体に関する「多体
問題」は解決不能の超難問として、今でも避けられてる感がある。太陽と
地球と月の「3体問題」でさえ、ニュートンも非常に苦労して、大まかな推測
を立てただけだ(『諸原理』、通称『プリンキピア』、第1篇・第11章・命題66
など参照)。
ガリレオ裁判の話に戻ると、「地球が動く」という彼の考えは、それだけを見
ると結論として正しいが、その理由づけや中身は不十分だったし、実は「天
も動く」のだ。
したがって、ガリレオの死から350年後の1992年に、教会が地動説を「救
済」したのはいいとして、なぜ「天動説」はみんな救済しないのか、考えてみ
るべきだろう。あるいは、なぜ天動説の救済を誰も望まないのか。「地動説
より遥かに間違ってるから」という理由づけを行うのは、簡単なことではない。
ひょっとすると、「救済には時間がかかるの」と言うより、「救済には、選別が
あるの」ということか。救済されるものと、されないものとの。親鸞『歎異抄』
の「悪人正機説」に従うなら、善人でさえ救われるのだから、悪人はもちろん
救われるはずだが。。
☆ ☆ ☆
続いて、『聖女の救済』というタイトルについて。これは、ドラマの第10章
(=最終章・前編)の題名でもあるが、元は東野圭吾の原作小説のものだ。
正直に言うと、私は既にこの長編小説を読み終えてる。犯人はアレで、ト
リックはこれだ・・・と書くと、ネタバレでヒンシュクだろうから止めとこう♪
ただ、今からこれだけは言っときたい。『ガリレオ』の原作は7割~8割く
らい読んでるけど、『聖女の救済』が断トツで面白かった。ドラマの脚本家・
福田靖も高く評価してるけど、これはやっぱり、原作をお勧めしときたい。
「虚数解」と呼ばれる、理論的には可能だけど現実にはあり得ないトリック
も、終盤まで「さっぱり分からない」から楽しめるけど、それより遥かに良かっ
たのは人間ドラマ。原作では、草薙(ドラマだと北村一輝)と内海薫(同・柴
咲コウ)が「実に面白い」心の動きを見せてくれる。特に、内海は「女性」刑
事として大活躍。SPを作るくらいなら、最終章で内海を使えば良かったの
に、と思うほどだ・・・と書くと、岸谷(吉高由里子)ファンは不満たろうか♪
で、その原作の最後になってようやく、「聖女の救済」というものの分かりや
すい説明が簡単に登場するのだが、当然、原作者・東野も、色んな含みを
もたせてるに違いない。例えば、『容疑者x(エックス)の献身』で、エックス
に「χ」(カイ=解=数学的な答)という文字を忍び込ませて、音的に「愛」
(あい)と重ね合わせてたように。。
☆ ☆ ☆
ウチでは3年前、キムタク=木村拓哉・主演、篠原涼子・助演のフジ月9、
『月の恋人』(Moon Lovers)で、このタイトルの意味を簡単に分析したこ
とがある。これを正確に理解した読者の方(おそらく日本人の女性)が、翻
訳して英語サイトに投稿。それがベトナム語に翻訳されたことがあった。
ポイントの一つは、助詞の「の」。「聖女の救済」の場合、普通の日本語解
釈でも、東野の小説でも、「聖女が何かを救済」すること、という意味だと
受け取るのが普通だろう。言い換えるなら、「聖女による何かの救済」。元
の「の」は、主語を表すから「主格」だ。もちろん、救済する「何か」とは、聖
女自身かも知れないし、まさに「ガリレオ」(=湯川)かも知れない。
一方、「聖女の救済」は、「聖女を何かが救済」すること、という意味にもな
る。あるいは、「聖女を救済する何か」。「の」は、英文法なら目的格の前
置詞 of と説明される単語だ。「聖女を湯川が救済」するのかも知れない
し、「聖女が聖女を救済」するのなら、結局さきほどの解釈と同じになる。
☆ ☆ ☆
ちなみに、ドラマのネタバレにはならない範囲で書くと、原作では「聖女を
草薙が救済」しようとする所が微笑ましいのだ♪ 表面的な捜査でもそう
だし、心理的にも、さらには間接的かつ偶然的にも。もちろんそれは、「聖
女が草薙を救済」することにもなってる(一応・・)。
その草薙を助けて大活躍するのが内海薫だから、「聖女=内海が草薙を
救済」することにもなるし、「聖女=内海が、別の聖女を救済」するという解
釈も可能。もう一つオマケに、「その別の聖女が、さらに別の聖女を救済」
する話も付いてた。湯川にせよ、私にせよ、男性なら苦笑してしまう話だ。
来週・最終回のドラマだと、普通に考えるなら、「聖女が何かを救済」して、
その「聖女を湯川が救済」するのだろう(ある意味で)。もちろん、キリスト教
や仏教が示してるように、そもそも救済とは何なのか。難しい問題なのだ
が。まあ、完全犯罪の罪悪感に苦しむ犯人のトリックを暴いて逮捕するの
は、救済と言っていいだろう。悪人を殺してあげるのが救済かどうかはさ
ておき。。
☆ ☆ ☆
とりあえず私としては、300年以上も悪役を押しつけられたままの天動説
を、ささやかながら救済したつもりなのだ♪ それにしても、ドラマを見なが
ら、天海祐希の体調が気になった視聴者は多いはず。自らが心臓の不調
に苦しみ続けてる私としては、彼女の声がか細いように感じて、ハラハラし
てしまった。
ま、撮影はもう終了してるはずだから、軽い心筋梗塞を起こした「聖女=天
海の救済」は優秀な医師が行ったんだろう。あぁ~、長くなってしまった (^^ゞ
それではまた来週・・・じゃなかった。週末かな♪☆彡
cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す
虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る
エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す
『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度
『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動
『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか
『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か
『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)
(計 4632文字)
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コメント
こんにちは。聖女の救済(前編)を見ました。
テンメイさんは、原作では聖女の救済が一番お好きなんですね。私は、ガリレオの原作は、どちらかというと科学的な謎解き部分を重視した短編が好きで、湯川と犯人との心理戦を重視した長編はそれほどでもなかったのです。しかし、今回の聖女の救済前編はとても丁寧に作られていて、とても見応えがありました。
綾音役の天海さんはガリレオのフィナーレを飾るのにふさわしい女優さんですね。彼女と湯川先生との並びは豪華で、画面が引き締まります。
原作を読んだのがかなり前で、細かい部分を忘れてしまっているため、今は原作を読み返しつつ、ドラマと原作の相違点などを楽しんでいます。
私が最終回で注目しているのは、湯川先生が「虚数解」という言葉を使うのかどうか、ということです。こんなことを気にする人はあまりいないと思いますが(笑)。後編が待ち遠しいですね。
投稿: miki | 2013年6月21日 (金) 19時52分
> miki さん


こんばんは
『聖女の救済』に続いて、昨夜は『内海薫SP』。
ドラマで比較すると、かなり違う方向ですが、
女性という存在が大きく扱われてる点は同じ。
『聖女』の原作とドラマ『内海薫』とでは、
女性刑事・内海の活躍という点が似てました。
本来の主人公を完全に脇役にしたSPで、
視聴率何%取ったのか、気になる所です♪
まあ、一般に連ドラのSPというのは、
意外と数字が伸びない傾向がありますけどね。
僕は、ドラマや映画になったガリレオ原作だと、
『容疑者X』と『真夏の方程式』以外は
一通り読んでます(多分)。
ということは、短編ばかりだったから、
長編の『聖女』は読みごたえがありました。
ガリレオに限らず、僕は謎解きやタレントより、
プロセスや全体の構図、あるいは逆に、
細部(ディテール)を楽しんでます。
ドラマや映画もそうだし、小説もそう。
『聖女』の原作だと、ドラマ前編ではカット
されてる内海、草薙、あるいは容疑者の1人・
若山宏美の描き方とか、好きですね。
湯川や綾音というより、その周辺。
短編とはかなり違うテイスト(味わい)だから、
そのギャップもプラスに作用したのかも。
mikiさんはやっぱりリケジョ(理系女子)だから、
湯川の科学的な謎解きが好きなんでしょう♪
まあ、一般的にも、ミステリーや事件ものは
大人気ですしね。
ウチでは半年前、ほとんど何も起こらないドラマ、
『ゴーイング マイホーム』をプッシュ(笑)。
低視聴率だけど、見てた人には高評価でした☆
ドラマの『聖女』は、天海を前面に出してますね。
彼女が入院した時点で、ドラマの撮影はまだ
だったと思うから、色々と大変だったでしょう。
ドラマでしっかり活躍してたってことは、かなり
体調が戻ってるのか、あるいは彼女の意志なのか。
以前からの『ガリレオ』ファンって話ですからね。
『聖女』の場合、原作とドラマで、トリックは
おそらくほぼ同じだと思います。
ただ、人間の描き方の差が大きいこともあって、
色んな声が出てるようですね。
まあ、原作は原作、ドラマはドラマ。
両方それなりに楽しめばいいと思ってます。
「虚数解」とは面白い言い回しですが、
公式サイトでは前面に出してませんね。
アクセスするとすぐ流れ出す言葉の数々には、
入ってません。使わないってことかな?
まあ、テレビ向けの言葉ではないですけどね。
高校の数学をある程度知ってる、あるいは
覚えてる人でないと、意味が分からないから。
「実数解」でも苦しいかも(笑)。
数学好きの僕としてはもちろん、ドラマで
「虚数解」を使ってくれた方が記事を
書きやすいから、一応期待してます♪
いよいよ新シリーズのドラマも最後ですが、
福山もフジもまだまだやりたそうな感じ。
そのためにも、最終回の視聴率は18%前後
キープして欲しいと思ってます。
『容疑者』に続く映画の大ヒットにも期待♪
ではまた。。
投稿: テンメイ | 2013年6月23日 (日) 20時24分