『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流
(☆14年2月17日追記: 映画の数式記事をアップ。
ガリレオ『真夏の方程式』の数式、水ロケットの飛距離、初速度、発射角 )
(☆6月26日追記: 新シリーズ最終回のレビューをアップ。
スイングバイによる軌道修正~『ガリレオ2』最終回・聖女の救済(後編) )
☆ ☆ ☆
流石は新シリーズの最終回☆ エンドロールではなくドラマの中で、湯川学
(福山雅治)が書いた数式をすべてハッキリ映したのは、これが最初で最
後。6本ではなく、7本(!)の数式を完全に読み取れたけど、私は今、体
調が最悪だし、いくら何でもテレビやブログに時間をかけ過ぎてる。妥協し
て、7本中の5本の説明だけで終わりにしよう。
それらは全て、毎度お馴染みの物理学(流体力学)の数式だけど、今回
はむしろ、黒板に書かれてたヒ素の化学反応式が気になった。後で余裕
が出来たら、追記するかも知れない。ま、ガリレオのファンには、物理系
の人が目立つから、化学の話だと検索アクセスは少なそうだけど♪
(☆6月29日追記: 私の録画した箇所だと、黒板の左側が見えなかった
けど、最初の化学反応式は以下の通りか? 等号
「=」ではなく矢印「→」が正しいと思うけど。検索して
も、意外なほど情報が見当たらないのは、悪用を警
戒してるからなのかね。。
2H₃AsO₄+5H₂S = As₂S₃↓+8H₂O+2S↓ )
☆ ☆ ☆
7本まとめると、図が大き過ぎるし、説明もしにくいから、3本と4本に分け
てみる。まず、最初の3本について。
上の2つは、前回のエンドロールで唐突に示されたもの。2本目は、前回
の壁の映像だけだと読み取れなかったけど、今回書かれた上の式で間
違いないと思う。ただし、意味は今現在、分からない。左辺が「質量×
加速度(dv/dt)」、右辺は力の和、つまりニュートンの運動方程式だと
想像するけど、文字の定義も図もないから、ちょっと分からない。
3番目の式は「さっぱり分からない」し、右側の文字が奇妙なのだ。カッコ
を閉じる直前の、uの右肩にある文字は、T と 「 の中間くらいの記号で、
読むことさえ出来ないし、カッコの右側は「m」かと思ったら「i n」(イン)。
書き間違いでなければ、これまた意味不明だ。
ただし、1本目は既に先週、解決してある。当初は、前回の実験を考えて、
「ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か」と思ってたんだけど、実は
「乱流」、乱れた流れの式だった。前回の記事の追記とかなりカブる内容
だが、一応こちらにも書いとこう。
☆ ☆ ☆
あれは、乱流(普通にある複雑な流れ)におけるレイノルズ応力(≒乱流
粘性応力)の一部の計算式。まず、ポットのお湯、浄水器の水などを、非
常に微小な立方体へと分割、ただし、面が座標軸と平行になるようにす
る。x軸の正の向きの面において、y軸方向(横とか上とか)に働く、ずら
す力(=せん断応力)を求めてるのだ。ちなみに、ずらすのではなく、真っ
直ぐ押したり引っ張ったりする力は、垂直応力と呼ばれる。
ここで、あらためて1本目の式だけ再掲しとこう。
ρ(ロー)は水の密度(一定だと仮定)。u´は、x方向の変動速度(=速度
-平均速度)。v´はy方向の変動速度。l(エル)は「混合距離」。「混合」
(mixing)と呼ぶ理由は、音楽の世界のミキシングみたいに、色んな要素
を上手く調整して、混ぜ合わせてるからだと思う。要するに、微小な部分
が同じ物理的性質を保ちつつ移動できる微小な距離のこと。l だけ動い
た後で初めて性質が変わるとすれば、話を単純化できる。
プラントルという学者の近似的な仮説で、わりと上手く現実に当てはま
るらしい(実証例は未確認)。気体分子運動論における平均自由行程
(まったく邪魔されずに動ける距離)みたいなもののようだ。
☆ ☆ ☆
duのuはx方向の速度。2つ並んでるdu/dyの左側だけ絶対値記号がつ
いてる理由は、プラス・マイナスの符号の調整らしいけど、まだ納得できて
ない。あちこちに簡単な説明はあるけど、それぞれ別の説明になってるし、
式の出し方も違うのだ。
右端の辺は、ブシネスク(またはブシネ)という学者の応力理論で、μt
(ミュー・ティー)は渦粘度とか乱流粘性係数とか呼ばれるもの。添え字
の「t」は、乱流(turbulent flow)の頭文字か。結局、右側の等号(=)
で、プラントルとブシネスクの理論をつないでるわけだ。
この「せん断応力」は、流体力学の基本概念でもあるし、前回の実験の
ポットの中で、ゼラチン絵の具をはがして拡散する力にもなると思う。ポッ
トの内側に貼り付けたゼラチンは、押しても動かないし、引っ張る力は小
さくて無視できるだろうから、結局は、ずらす力、つまり、せん断応力が問
題となるだろう。
今回のヒ素の仕掛けとの直接的関連は、よく分からない。映像がハッキ
リ見えなかったし、あそこは録画もしてなかったからだ。少なくとも、ゼラ
チンの貼り付けとはかなり違うやり方だったと思う。。
☆ ☆ ☆
一方、今回の式の後半、4本目~7本目は次の通り。2段目が、左右で
2つの式に分かれてる。湯川=福山の書きなぐりだと、式の切れ目が少
ししか無かったから、最初は「変な式変形だな」と感じてしまった。
4本目、つまり上の1段目の式は、乱流ではなく、整った「層流」(laminar
flow)の「流量」Qを求める式。水道管やホースみたいな円管をゆっくり水
が流れる場合の話で、πは円周率、Rは半径、uは速度、pは圧力、xは管
の中央に取った軸。Δpは微小な圧力変化、l(エル)は(短い?)管の長さ
だろう。
5本目、つまり2段目の左側は、4本目を断面積πR²で割った式で、断面の
単位面積当たりの平均流速Vを求めてる。右端のU₀は、管の中心の最大
流速のことで、その半分が平均流速Vになるようだ。管の中央のスピードが
そんなに速いとは、ちょっと意外な気がする。ちなみにレイノルズは、色素
を流す実験で観察して、理論化したらしい。
6本目、つまり2段目の右側は、これまで何度も黒板に書かれてた気がす
る「レイノルズ数」Reの式。レイノルズは19世紀後半に活躍した有名な学
者だ(アイルランド出身、英国籍)。
ρ(ロー)は密度、v(ブイ)は平均速度、dは流れる距離、μ(ミュー)は粘性
係数、ν(ニュー)は動粘性係数(=μ/ρ)。どこにでも載ってる、基本的
な式だ。このレイノルズ数Reが小さい(つまり粘り気が強くて速度が遅い)流
れは、整った層流。Reが大きい流れは、乱流になる。円管の場合、その境
目となるReは2300~4000らしい(ウィキペディア)。
☆ ☆ ☆
7本目は、時間tで速度uを微分してるのだから、加速度の式だろうが、とり
あえず意味不明。ただ、直前の3本がわりと簡単だから、これも簡単な式
なんだろうと想像している。
あっ、分かった! 前に記事も書いてる、有名なナヴィエ・ストークス方程式
だ。非-圧縮性で、粘性率が一定の場合の形ね。それなら右辺の第1項の
「u・∇」は、丸カッコでくくる方が普通だけど、省略しても結果的に同じになる
わけか。v(ブイ)と書いてしまったのは私の(?)間違いで、実は動粘性係数
ν(ニュー)だね。Spは力。どうしてSpなんて記号を使うのかは不明。
ちなみに、物理でよく見る記号「∇」(ナブラ)は、3回まとめて偏微分するた
めの演算記号で、(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z)のこと。∇²だと、∇同士
の内積∇・∇、つまり、(∂²/∂x²)+(∂²/∂y²)+(∂²/∂z²)となる。こ
れはラプラス演算子(or作用素)とも呼ばれ、上に尖った記号「△」で表す
こともある。
風邪がひどいので、今夜はもう限界。レビューは明日か明後日にアップの
予定。ではまた。。☆彡
cf. 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す
虚像=花火を演じる舞台としての生~『ガリレオ2』第8話・演技る
エリートがみだす凡人の心の歯車~『ガリレオ2』第9話・撹乱す
誰が何を救うのか~『ガリレオ2』第10話・聖女の救済(前編)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度
『ガリレオ2』第2話の数式、不覚筋動による水晶振り子の強制振動
『ガリレオ2』第4話の数式、流体中の回転ボールを曲げるマグナス効果などか
『ガリレオ2』第8話の数式、花火の光の入射角&3つの像の位置関係か
『ガリレオ2』第9話の数式、超音波による圧力・密度変化(&ビルの高さ)
『ガリレオ2』第10話の数式、ゼラチン絵の具の濃度や溶解反応速度か
(計 3832文字)
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コメント
Tと「に見えるのって
時定数とかのτ(タウ)ですかね?
でも全然式わかんないですね(笑)
投稿: か | 2013年6月25日 (火) 16時48分
> か さん

「実に面白い」一口コメントですね。
湯川=福山が「τ(タウ)」を書く時は、
文字の下側のハネが大きい傾向があります。
しかし今回はそうではなかったし、文字全体が
小さ過ぎて「´(ダッシュ)」に見えたほど。
大文字の「Τ(タウ)」とか「T(ティー)」を
すごく小さく書いてたのかも知れませんね。
今の所、「さっぱり分からない」ままです。。
投稿: テンメイ | 2013年6月26日 (水) 02時57分