日本人の自然放射線と医療被ばく線量(『新版 生活環境放射線』2011)
(24日) 鼻呼吸 JOG 14km,1時間13分29秒,平均心拍148
今日は昨日に続いて、軽いコネタ+ランニング日誌の予定だったけど、夕
刊を見て気が変わった。情報量は多くないけど、地味に重要だし、ちょうど
震災関連の記事を久々に書きたいと思ってた所だから、これで行こう。
2013年7月24日の朝日新聞・夕刊、1面トップ記事の見出しは、「被曝
早見図 説明せず改訂」、「周知不足で混乱」と書かれてる。記事中央では
枠で囲んで、「放射線医学総合研究所」という名前を強調。3.11後、毎度
お馴染みの中核的な研究機関で、この放医研がHPで公開してる図が批
判の対象だ。
記者は昨年3月、甲状腺被曝の記事で一躍「有名」になった、大岩ゆり。そ
の時は、ミスリーディングな(=誤解を招く)書き方が気になったが、その後
の記事を読み続けてみると、制約の強い大新聞の中で健闘してるようにも
感じる。今回の記事も、扱いがちょっと大げさだが、放医研を十分評価した
上での、叱咤激励といった感じかも知れない。短い字数で上手くまとめてる
し、大筋ではごもっともな指摘だ。要するに、基本的データは統一して、国民
全体に分かりやすく説明すべきなのだ。
なお、朝日の記事でなく、自然放射線と医療被ばくだけに関心のある方は、
しばらくスクロールして先に進んで頂きたい。。
☆ ☆ ☆
まずは、放医研HPで元の早見図を確認する所から始めよう。朝日の記事
の左に載せてる図は、大幅に変形&簡略化したものに過ぎない。
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/20130502.pdf
どこが一番最初か知らないが、これに似た図は3.11以降、あちこちで見て
来た。私が最初に見たのは文科省HPで、線量データのページの補足資料
だったと思う。朝日の記事によると、放医研の図が、文科省の副読本や政
府サイトに引用されてるそうだ。だから、もっと厳密に、という話になる。
朝日が指摘してる、十分な説明なしの改定というのは、3つある。まず、100
mSv以下のいわゆる低線量被ばくについて。
(旧) 100mSv以下ではがんの過剰発生がみられない
(新) 100mSv超ではがん死亡のリスクが線量とともに
徐々に増えることが明らかになっている
(12年4月改訂)
図に添える短い文章としては、改訂後の方がベターだろう。これはそもそも、
最大の争点でもあるから、他でさんざん議論・説明されてる話であって、説
明なしの改訂だと批判されるほどのものでもない。そもそも放医研HPの、
「放射線被ばくに関するQ&A」の一番最初で、100mSvの正確な意味は
説明されてるのだから。
☆ ☆ ☆
続いて、胃のX線検診(1回)の医療被ばく線量に関する記述。
(旧) 0.6mSv
(新) 3.0mSv (12年4月改訂)
これは身近な検査だし、2.4mSvもの大幅な増加だから、1mSvが大きな
話題になってる日本の現状を考えると、何か注意を促す工夫くらいあった
方が良かったかも知れない。
ちなみに早見図のどこにも「3.0mSv」という数字は見当たらないが、1mSv
の目盛と10mSvの目盛の中間に位置づけられていて、底(てい)が10の常
用対数を使ってるから、10の(1/2)乗で約3mSvだと読み取れる。朝日の
3.0mSvという数字は、取材によるものか、あるいは別の箇所に書かれた
データを挿入してるのか。
ちなみに、放医研の早見図が参照してるのは、日本放射線技師会・医療被
ばくガイドライン(おそらく2006年版)「など」で、技師会HPでチェックすると、
腹部のX線単純撮影における「低減目標値」が3mGy(ミリグレイ)になって
た。これを、胃は3mSvだと読み変えるのだろうか。そうすると、Sv(シーベ
ルト)と言っても(全身の)実効線量ではなく、身体各部の等価線量のよう
な気もしてしまうが、他の情報を加味すれば、どうも実効線量のようだ。。
☆ ☆ ☆
最後に、朝日の3つ目の指摘が、「日本人の自然放射線量(年間)」の改訂。
(旧) 約1.5mSv
(新) 約2.1mSv (13年5月改訂)
pdfファイルを見ると、正確には5月2日の改訂らしい。また、早見図の説明
は、実際には「1人当たりの自然放射線量(年間約2.1mSv) 日本平均」
となってる。この元になった報告書を、朝日はなぜか書名なしで、こう説明
している。
「電力会社幹部らが役員を務める原子力安全研究協会が2011年
12月に出した。国内外の論文を検証したという。原発事故の影響
は考慮されていない」
反原発の立場をとる朝日らしく、何か言いたげな書き方にも読めるが、そこ
は今、こだわらないことにしよう。この報告書は、放医研のpdfファイルの左
脇に、『新版 生活環境放射線(国民線量の算定)』と書かれてる。原子力
安全研究協会の生活環境放射線研究委員会による執筆で、B5・166ペー
ジで税込6620円だから、一般向けの本ではない。研究者、メディア、図
書館向けだろう。
☆ ☆ ☆
私も実物は見てないが、信頼できそうな複数のpdfファイルで引用されてる
ので、肝心の部分だけは内容が推測できる。元々の出版時には、自然放射
線量は2.09mSv/年としてたが、翌2012年の11月に、2.1mSv/年
と訂正。そのため、元の値を引用したままの文書もあるので、注意が必要だ。
放医研の早見図はもちろん、訂正後の値を載せてある。
この報告書を見ると、早見図には載ってない重要なデータもあった。医療被
ばくの平均線量だ。1年前の朝日新聞では、3.8mSvという値を出してたが、
報告書によると、3.87mSvだから、四捨五入で3.9mSv。ただし、診断用
の検査だけの値であって、治療用の放射線量は別扱いになる。
結局、年間でまとめると、次のようにキレイに書けるわけだ。
(自然放射線量)+(医療被ばくの人工放射線量)
= 2.1mSv+3.9mSv
= 6.0mSv
この年間6mSvという値は、覚えやすいので好都合だ。これにプラスされる
原発関連の人工放射線を、1mSvに留めようという話になる。6にプラスす
る量を1と定めることに、どの程度の意味があるのかは、考えてみる必要が
あるだろう。総額5兆円とも言われる除染費用とも関係するし、「いつ1mSv
になるのか・・」といった被災地住民のストレスとも関係する問題なのだから。
なお、文科省が学校教育用に作って配布した「副読本」(2011年)には、
自然放射線量の古い値(1.5mSv)を補足する形で、2005年に日本分
析センターが出した2.2mSvという値も書いてある。いずれにせよ、日本
も、世界平均2.4mSv(UNSCEAR:国連科学委員会,2008)とほぼ同
じになったわけだ。
以上、朝日の記事を軸にして、自然放射線と医療放射線の最新標準デー
タをまとめてみた。いずれにせよ、もし放射線による影響を考えるのなら、
線量の高い一部の被災地を除いて、医療放射線が重要だろう。もちろん、
ベネフィット(=利益、メリット)やコスト(経済的、時間的)、さらには個人の
選択も加味して、個別の事例ごとに対処するわけだ。。
☆ ☆ ☆
既に記事が長くなったし、時間も無くなったので、昨夜の走りについては一
言だけ。再び湿度100%(日本気象協会)の中、汗ビッショリで走ることに
なったけど、実際は湿度98%くらいだった気がする♪ 前日の実際は湿度
99%くらいだから、ほんの僅かにラクだった。気温は25度。
トータルでは、1km5分15秒ペース。遅いけど、前日よりはマシだし、2日
続けてガマンしただけでも良しとしよう。公園のコースは相変わらず、先日の
ゲリラ雷雨の影響で、ゴミと泥が散乱。自転車の周回は、滑るし汚いから、
もうしばらく止めといた方が良さそうだ。
それでは、また明日。。☆彡
往路(2.40km) 13分54秒 心拍130
1周(2.14km) 11分38秒 143
2周 11分01秒 152
3周 10分58秒 155
4周 10分38秒 158
5周(0.64km) 3分26秒 157
復路 11分55秒 157
計 14km 1時間13分29秒 心拍平均148(81%) 最大166(4周ラスト)
(計 3343文字)
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