ホームで女性救出、40人で32トンの電車を傾けた力の物理学的計算
BIKE 30km,約1時間07分,平均心拍122 (?)
実に素晴らしい☆、とガリレオ湯川もニッコリ微笑むだろう。3.11の大震
災直後、首都圏の駅のホームに整然と並んだ乗客の列を思い出すね♪
既に世界各国で報道されてるそうで、日本の底力、まだまだ恐るべし・・・
と思って頂けたようだ。
って言うか、そもそもホントに外国だとあり得ないことなのかね (^^ゞ 同じ人
間として、それもちょっとどうかと思うけど。私もその場にいたら、よっぽど急
いでない限り、全力で電車を押してたはずだ。あるいは、「鉄パイプ! 硬い
金属の棒はありませんか?!」と大声で叫んで、テコの原理を使おうとした
かも。テコを使えば、地球さえ動くのだ。そりゃ、アルキメデスの伝説か♪
(☆追記: 7月28日の日テレ『真相報道バンキシャ!』で再現映像が紹介
されたらしい。最初にアクシデントに気付いたのは外国人だった
とのことだ。)
☆ ☆ ☆
さて、私がこのニュースに気付いたのは、4日遅れの昨夜のこと。どこが最
初に報道したのかハッキリしないけど、あちこちで引用されてるってことは、
読売新聞でいいのかな。たまたま現場のJR南浦和駅に居合わせた記者が
撮った写真は、臨場感あふれるものだから、まだの方にはお勧めしとこう。
ただし、読売の記事はすぐ読めなくなることが多いから、念のため。
車両押して女性救出、ホームの乗客から拍手が・・・ (7月22日)
京浜東北線の電車から降りようとした30歳代の女性が、ホームとの隙間
(10cmほど)に落ち
て、腰あたりで挟まっ
てしまった。こうゆう
場合、車両の側に何
か装置があるとか、
駅に特殊な器具があ
るとか、リスク管理はし
てないのかね? とに
かく、約40人の駅員&
乗客が車両を押して、僅かに傾いた所で女性を引っ張り上げたらしい。
平日の午前9時15分頃だから、通勤客が多かったのが幸いした形かな。ま
あでも、ラッシュだからこそ落ちたんだろうから、損得はビミョーかも。。
☆ ☆ ☆
このニュース、最初にネットで読んだ時、車両が32トンもあるのにたった40
人でどうして傾くのか、理解できなかった。半ば理数系のマニアック人間とし
て、すぐに暗算してしまうわけ♪ もちろん、持ち上げたんじゃなくて傾けただ
けだから、32トンをそのまま相手にするわけじゃないけど、剛体(大きさのあ
る硬い物体)の回転の物理を考えても、ちょっと計算が合わない。
おかしいなぁ・・・と思いながら、他のサイトのニュースを見て、すぐに納得。な
るほど、車両の下にサスペンションがあるわけね。それなら人間の負担が減
るから分かる・・・でおしまいにしない所がマニアなのだ(笑)。1人当たりの力
の大きさは100kg(正確には100kg重)以下だと思うから、それを物理学の
計算でキレイに示したい。
試しに図を書いて、適当な設定で計算してみたら、あっさり片付いたので、
記事にまとめてみよう。ま、このニュース自体はすぐに忘れられるだろうけ
ど、剛体のつり合いに関する物理記事ってことで、十分意味はあると思う。
と言っても、検索アクセスは少ないだろうけど♪
☆ ☆ ☆
ではまず、傾ける前の段階から始めよう。話を単純化して、電車の真正面か
ら見て2次元的に考える。サスペンションは単純なバネとして、フックの法則
に従うとしよう。「 F = k x 」。つまり、力 F は、バネの伸び縮みの長さ x と
比例する。その比例定数が k (ばね定数)。
力の単位としては、ニュースに合わせて、
いわゆる重さをそのまま使うことにしよう。
つまり、車両にはたらく重力が32トン、つ
まり32×1000kgとするわけだ(正確に
はkg重)。長さの単位は m で、仮に最初
は0.1m、つまり10cm縮んでるとしよう。
左図で、バネは2本だけ書いてるけど、
もちろん本当は、図の向こう側(モニターに垂直な方向)に何本か並んで
るはずだ。2本というより、左右2組のサスペンションを表してる。
上下方向の力のつり合いから、
32×1000 = 2×(k×0.1) ∴ k=160000kg重/m
次に、左図のような設
定で、傾ける力Fを計
算する。傾けるとは、
僅かに回転させること
で、回転軸は左のバ
ネの連結部と考えた。
この時、左側のバネが
1cm=0.01m沈む
から、0.1mだった縮
みは0.11mになる。その分、右側のバネの縮みは減るから、0.1mだった
縮みは0.09mになる。さらに、各部の長さについては図のように設定しとこ
う。大体、合ってると思うし、数字の細かい修正だけなら簡単な話にすぎない。
傾きの角度はほんの僅かだから、近似的に0度と考えよう。
すると、右回り(=時計回り)の力のモーメント(力×軸からの距離)は、車両
の重心に働く重力を考えて、 32000×1.5 (kg重・m) 。
また、左回り(=反時計回り)の力のモーメントは、人間の力Fと、右のサスペ
ンションの力を考えて、 (F×1.5)+(160000×0.09×3) 。
160000は先ほど求めた、バネ定数の値だ。
よって、力のモーメントのつり合いの式は、「右回り=左回り」で書くと、
32000×1.5=(F×1.5)+(160000×0.09×3)
∴ 48000=1.5F+43200
∴ F=3200 (kg重)
したがって、 (1人当たりの力)=3200÷40=80 (kg重)
納得、納得♪ 上の計算から分かるように、もしサスペンションが無かったら、
Fは1ケタ大きくなってしまって、「あり得ない」値になってしまう。その値なら、
ガリレオ湯川も「あり得ない?」と突っ込んで来ないだろう。
ちなみに私が以前、少しだけジムに通ってた頃、腕だけで上げるベンチプレ
スは80kg、脚で上げるレッグプレスは150kgくらいだったから、80kg重で
押したという試算は頷けるのだ。
後は、実際の長さやばね定数に合わせて微調整すれば、実際の力を計算
できることになる。とにかく、みんなで力を合わせれば、かなりの事が出来る
わけだ☆ もちろん、隙間に落ちないように気を付けることがまず大切では
ある。って言うか、そもそも隙間を無くす方法も考えて欲しいもんだ。
ちなみに、救出された女性は一応、病院に行ったけど、無事だったとの事♪
まさに、不幸中の幸いだね。良かった、良かった。。
P.S. 7月29日の朝日新聞・朝刊「ニュースがわからん!」によると、空気
ばねの高さは約20cmとなってる、元の高さ、普通の縮み、みんなで
押した時の縮みについては書いてない。なお、こういったアクシデント
は「めったにないみたい」とされてた。
P.S.2 2014年8月6日、オーストラリアのパースでも似たような男性救出
劇があり、YouTubeで当局による公式ビデオも公開された。
☆ ☆ ☆
もう時間が無いから、今朝の走りについては簡単に。木曜の夜の睡眠時間
が2時間、金曜の夜が3時間、つまり2晩で5時間しか寝てない状況で、軽く
朝ランして来た。心臓の調子が怪しいことを考えると、感心しないね (^^ゞ
またジョギングの予定だったけど、気温が27度、湿度90%の悪条件だった
から、久々に自転車に乗ることにした。汗ビッショリのジョギングを3日続けた
後だし、ちょっとラクしたわけ。約2週間ぶりで、疲れもあったから、最初はサッ
パリの走りで落胆したけど、15kmくらい走ったら調子が出て来て、まあボチ
ボチの30km走になった。コースにはまだ砂があちこち浮いてて危なかった
し、こんなもんでしょ♪ 心拍はやたら低いしね。やや測定エラー気味かも。。
それにしても朝ランはやっぱ、紫外線を浴びちゃうね。軽く日焼け止めを塗っ
てたのに、また全身がヒリヒリって言うか、風呂上がりみたいにホカホカしてる
状況 (^^ゞ それでも今日は、家でやらなきゃいけない仕事があるのだ。
お盆まで、休みなし! ま、超ウルトラマラソンのつもりで、ゆったり頑張ると
しよう。では、また明日。。☆彡
(計 2964文字 ; 追記後 3219字)
| 固定リンク | 0
「自転車」カテゴリの記事
- 年末のトラブルと走り納め&12月の全走行距離&2024年の年間走行距離(2024.12.31)
- 次の次の大会は3月の短距離&ずっと休みなしで充実♪、24年11月の全走行距離(2024.12.02)
- 10月の湾岸ナイト・サイクリング、快適だけどまた道を間違えまくり♪、明るくて安いライトはバッテリー弱すぎ!(2024.10.13)
- 走り込みは成功、ダイエットは失敗で体重1kg増加、24年9月の全走行距離(2024.10.02)
- 『雲上を駆ける! 第39回・乗鞍ヒルクライム2024』(NBS長野放送)、YouTube動画で見た感想(2024.09.24)
「物理」カテゴリの記事
- ペルチェ素子による「冷温」効果のソニー「REON」POCKET 5、雑誌『LEON』(レオン)と同じモテ系オヤジの高価な流行り物か♪(2024.06.22)
- 水平回転と垂直回転のジャイロ効果の違いなど、ChatGPT4に質問した回答(『魔改造の夜』)&11km、休養でもランペース♪(2024.03.06)
- 冬(寒い日)にスマホの電源が急に落ちる物理的な理由・原因~電池の内部抵抗が増加、端子電圧が降下、保護回路が作動(2023.01.07)
- 量子もつれ(エンタングルメント)の実験的検証~ノーベル物理学賞2022、授賞・受賞理由(英文和訳)(2022.10.07)
- 家庭崩壊の恨みを抱く古芝=山上徹也、手作りの科学的武器で政治家の暗殺を計画~『ガリレオ 禁断の魔術』レビュー(数式解説付き)(2022.09.19)
コメント
テンメイ様、ご無沙汰しています。元気に通学しています。現在は前期の定期試験期間中です。
この計算、ありがとうございました。私も不謹慎を反省しながら、真っ先に計算の方に気が行きます。
経験的に、空いている車両にワーと人が乗り込むと車両はホームの反対側に傾きその後揺れますので、あ!!車両は動くんだ、、と思ってましたので、人が押して車両を傾けたと言う話は余り驚きませんでした。そんなことより、一番は女性が無事だったことですね。
投稿: gauss | 2013年7月28日 (日) 23時49分
> gauss さん
こんばんは。ご無沙汰ですね♪
お元気に通学して、勉強一筋。羨ましい限りです。
定期試験中のコメントって大丈夫ですか? 単位は(笑)
テストは余裕でしょうが、レポートは厄介でしょう。
ドラマ『ガリレオ』の旧シリーズ初回で、
ガリレオ湯川学が事件関連で面白がってたら、
ヒロインが本気で怒る場面があります。
面白がってる場合じゃない。不謹慎だってことですね。
まあでも、「知ることを愛する」のは学問の基本。
そこでは、「知ることを楽しむ」という部分も大きいはず。
いいニュースを喜ぶだけでなく、一歩踏み込んで
考えてみることも大切でしょう。知の習慣として。
また、次の自分の行動への導きとして。
乗りこんだ時の車両の揺れ。。最近、感じてませんね。
身体が鈍感になったのかな (^^ゞ
僕はすぐ、頭だけで考えて、どう考えても
力が1ケタ足りないけどなぁ・・と思っちゃいました♪
その後、サスペンションの話を知って、
図を書いて計算。なるほど!と納得しました。
ただ、ここでは角度を0度としてますが、
0度ではない小さな角を想定すると厄介です。
その場合、車両を押す手の摩擦力も関係しますからね。
垂直ではなく、斜めに押すことになりそうだから。
無理やり、車両の側面を垂直に押すと想定すると、
今度は身体が浮き上がることになりそうだし♪
ともあれ、女性が無事で良かったです。
お互い、電車の乗り降りには注意しましょう!
ではまた。。
投稿: テンメイ | 2013年7月30日 (火) 00時19分