仏紙『カナール・アンシェネ』、福島の風刺画と見解(フランス語原文)
RUN 12km,1時間00分04秒,平均心拍157
またフランスか。。う~ん、私は基本的に、フランスは好きなんだけど、去年
の「川島・福島」問題に続いて再びこうゆう事が起きると、考え込んでしまう。
もちろん、フランスのごくごく一部の動きに過ぎないけど、やっぱり「ユーモ
ア」とか「風刺」に関する感覚に、決定的な違いがあるのかな・・・と思ってし
まうのだ。致命的な違いとまでは言わないものの。。
cf. 川島・福島・4本腕~リュキエが再び問題発言、仏語原文&日本語訳
まだ知らない方のために説明しとくと、9月11日付けでフランスの新聞が、
東京五輪決定と福島第一原発を結びつける風刺画(caricature)を2枚載せ
たのだ。既に多くのマスメディアが転載してるから、著作権を気にする必要は
無くなってるけど、「拡散」を手助けするのも気が引けるし、ここには載せない
でおこう。その代わり、言葉で説明する。去年に続き、フランス語原文を添えて。
☆ ☆ ☆
2枚の内、1枚はさほど問題ないと思う。危険マーク入りの防護服に身を包
んだ2人が、プールを監視中で、1人が持つ線量計は音を立ててる。絵の
上側には、こう書かれてた。以下、仏語独特のアクセント記号はすべて省略
するので、念のため。
J.O. de 2020 AU JAPON:
LA PISCINE OLYMPIQUE EST DEJA CONSTRUITE
A FUKUSHIMA
日本での2020年オリンピック・ゲーム:
オリンピック用プールは既に福島に作られてる
絵の下には、こう書かれてる。
on va peut-etre reautoriser la combinaison pour
les nageurs!
水泳選手用におそらく、つなぎタイプのウェアが再び認められるだろう
つなぎのスイムウェアとはもちろん、防護服のこと。要するに、水泳プールと
使用済み核燃料プールを掛け合わせた風刺で、これだけなら騒ぎにはなら
なかったと思う。この2年半、これより強いネガティブ表現が、日本でいくらで
もあったのだから。
☆ ☆ ☆
問題は別の1枚なのだ。福島かどこかハッキリしないけど、廃墟と化した施
設の前に土俵があって、土俵下には防護服を着た力士が2人、あぐらをか
いてる。そして、土俵上には防護服なしの痩せた力士が2人。左の力士は
腕が3本、右の力士は脚が3本。
意識的かどうかはさておき、明らかに、去年騒ぎになった、4本腕のゴール
キーパー・川島と似た奇形の表現だ。少なくとも今現在、公の事実には反し
ているし、理論的にも確率は非常に低い。数百mSv以上、大量に被曝した
作業員の数は少ないし、その子どもでさえ、「風刺画みたいな奇形児」とな
る確率はほぼゼロだ。
絵の土俵の左側では、頭部だけ防護服から出したレポーターが、皮肉っぽ
い笑いを浮かべながら、こう伝えてる。
MARVELLOUS! GRACE A FUKUSHIMA LE COMBAT
DE SUMOS EST DEVENU DISCIPLINE OLYMPIQUE
素晴らしい! 福島のおかげで、相撲の試合が五輪競技になった
「福島のおかげ」という言葉の意味が曖昧だけど、一応、解釈は可能だ。
普通、相撲の力士の特徴は極端に太った体型だけど、それ以上に特徴的
な体型になったおかげで五輪競技に選ばれたと言いたいのかも知れない。
もちろん、人気(あるいは世間的関心)やテレビ映えが重要なのだから。。
☆ ☆ ☆
さて、『カナール・アンシェネ』と言っても、日本ではほとんど知られてないと
思うけど、フランスの週刊「紙」だ。週刊「誌」ではなく、8ページの新聞紙で、
2012年の発行部数は48万部弱(フランス版ウィキペディアの説明)。日本
の大手新聞が毎日、数十ページを数百万部、発行してることを考えると、大
した事ないような気もするけど、100年の歴史もあるし、独自の魅力と人気
を誇ってるらしい。ユーモア、風刺、漫画、政治・経済ネタのリーク、等々。
ちなみに新聞の名前「Le Canard Enchaine 」は、「鎖(チェーン)につな
がれたカモ=新聞」といった意味。要するに、かなりの制約を受けつつ報道
する自分の立場を、ユーモアを込めて表してるんだろう。1面の上側、目立
つ場所には、カモ(またはアヒル)の絵が書かれてる。
さて、束縛されつつ刺激的な発言を続けるカモの代表、つまり編集長は何と
弁明(あるいは主張)してるのか。まず、約50万部発行で、フランスを代表
する週刊誌『ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』HPの記事から引用する。A
FP通信による、『カナール』紙のルイ・マリ・オロー(Louis-Marie Horeau)
編集長へのインタビューだ。
Le Canard assume ces dessins sans le moindre etat
d’ame
カナール紙は、まったく感情を抜きにして、それらの漫画を引き受ける。
Ce n’est pas parce qu’on fait de l’humour qu’on
outrage les victimes.Ici,on peut traiter une tragedie
par l’humour,apparemment,ce n’est pas le cas au
Japon
ユーモアを示したからと言って、被災者たちを侮辱することにはなら
ない。この漫画では、ある悲劇がユーモアで扱われてるようだが、
見たところ、これは日本の場合ではないようだ
S’il y a matiere a s’indigner,c’est de la maniere
dont a ete geree la crise par le gouvernement japonais
もし憤慨する理由があるとすれば、それは日本政府が危機を扱って
来たやり方なのだ
ちなみに毎日新聞HPの12日の記事には、放送大学の柏倉康夫名誉教授
(仏文学)の談話として、「この週刊紙の読者層は主にインテリで、風刺画が
事実でないことは理解されていると思うが、フランスに福島第一原発の状況
がより深刻ではないかとの疑念がある表れでもある」という見方を示してる。
当然、「日本から正確な情報を世界に発信することが必要だ」。
☆ ☆ ☆
というわけで、自分たちの「ユーモア」への反省は無し。どうして我々が怒ら
れるのか?、悪いのは日本政府と東電だろう、という主張なのだ。時間が無
くなったから省略するが、有名なフィガロ紙に対しても、「何に対して謝るの
か? 私には分からない」と答えてる(HPで確認)。
「日本の電力会社の東電が毎日350トンもの(汚染)水を流し続けてる、と
伝える記事に対しては、日本政府は一言も語らない」という書き方を見ると、
実はそれほど日本や福島の事情に詳しくないような気もするが、記事をそ
の記事は読んでないから、その点はおいておこう。ちなみに当サイトでは、
8月中旬の時点で汚染水のまとめ記事をアップしてるが、刻々と情勢や情
報が変化してるので、また近いうちに記事を追加しようと思っている。
それはともかく、福島について、腕や足の数を増やす「ユーモア」が、日本
ではまったく受け入れられないということを、この編集長は既に知ってたは
ずだ。去年のリュキエ騒動から、まだ1年も経ってないのだから。
わざと日本を不愉快にさせる表現を使って、怒られた確信犯なのに、どうし
て今回の騒動を驚いたり不思議がったりしてるのか、その点はかなり引っ
掛かる。むしろ、「怒るのは分かるけど、こうした風刺や批判の価値も認め
るべきだ」と語る方が、言論に関わる者として誠実だろう。
ただし、この『カナール』のような新聞や週刊誌が日本に(ほとんど)見当た
らない事を考えると、日仏の文化ギャップの大きさについても「理解」する
必要はある。「許容」や「納得」は別としても。。
P.S. 時事通信によると、翌週の『カナール』紙では、改めて「我々に過ち
はない」と謝罪拒否。「ひどい風刺画を報道して国民を傷つけたの
は日本のメディア」、「日本にいる本紙の予約購読者は僅か51人」
と反論したらしい。逆ギレ的で自虐的なユーモア(?)に少し苦笑して
しまった。こうした反論を見ると、やはり当サイトが風刺画を転載しな
かったのは妥当だったようだ。。
P.S.2 フランス語で書かれたベルギーの『Le Soir』紙HPでは、Kazuya
Onaka(おそらく大中一彌)法政大教授の言葉が引用されてた。
日本のメディアが、風刺画と一緒に掲載されてた記事を訳してない
のが問題だ、という考えはその通り。実は私も、記事本文を探した
けれど、見つからないので断念した。
ただし、風刺画の十分な理解に本文が不可欠としても、風刺画の
批判に本文は「不可欠」ではない。文脈、コンテクスト抜きでも、画
像だけで問題だということはいくらでもある(例えば幼児の虐待写
真)。そもそも、文脈やコンテクストというのは無限に広がったもの
であって、あらゆる反応や言及は、表現の総体ではなく一部に対
して行われるものなのだ。
P.S.3 2015年1月7日、フランスで起きた悲惨なテロのキッカケとなっ
たのは、風刺週刊紙「シャルリ・エブド(Charlie Hebdo ; 英語な
らチャーリー・ウィークリー)が載せたイスラム指導者の風刺漫画。
直近のISIS(イスラム国)関連のものに対する抗議と言うより、今ま
での積み重ねが大きかったのではないか。
ちなみに、直近の公式ツイッターの風刺画は、イスラム国のバグ
ダディ指導者の演説を描いたイラストで、絵だけなら普通のもの。
ただし、フランス語で「Meilleurs voeux,au fait.」(ところで、新
年おめでとう)と題した後、絵の上部に「Voeux.Al-Baghdadi
aussi」(アル・バグダディ氏からも)、「Et surtout la sante!」
(そしてとりわけ、お元気で)と書かれてる。この皮肉に激怒したと
も思えないが。。
P.S.4 15年1月13日、300万~500万部も発行されたとされる風刺紙
の最新号について、簡単にコメントした。
TOUT EST PARDONNE(すべては許される)としても・・&27kmジョグ
☆ ☆ ☆
時間が無くなったので、最後に今朝のランニングについて一言。蒸し暑かっ
た。。昼間の暑さは和らいで来たけど、気温26度、湿度90%の気象条件
は真夏とほとんど変わらない。1日休んだ後、わずか12km走っただけな
のに、汗ビッショリで、心拍も序盤から上昇。平均157、ラストは173まで
達してしまった (^^ゞ
トータルでは、1km5分00秒ペース。ま、5分切ろうと思えば切れたけど、
5分03秒くらいでいいと思ってたから、ラストはあんまし無理をせず。と言っ
ても心拍173だから、無理したら176くらいまで上がってたね♪ まだまだ
ランニング・シーズンは始まったばかり。論外の状況なのだ。
それでは、また明日。。☆彡
往路(2.40km) 13分14秒 心拍141
1周(2.14km) 10分41秒 155
2周 10分29秒 161
3周 10分25秒 164
4周(0.78km) 3分53秒 166
復路 11分22秒 166
計 12km 1時間00分04秒 平均心拍157 最大心拍173(ゴール時)
(計 4526文字)
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