« 心拍計のボタンを押しても反応せず、壊れたと思ってリセットしたら・・ | トップページ | 西友「味番付」、食品と飲み物の人気ランキングを見て・・ »

フィンランド「オンカロ」~世界初の使用済み核燃料・最終処分場を目指して

北欧フィンランドに、世界初の高レベル放射性廃棄物の最終処分施設が

作られつつあるという話は以前から知ってたし、いずれ記事にまとめよう

とも思ってた。その考えをプッシュしてくれたのは、最近伝わって来た、小

泉純一郎・元首相の脱原発(または反原発)運動のニュースだ。原発維持

路線を歩む自民党の元トップにも関わらず、原発ゼロ政策を力説してるら

しい。息子である進次郎を始めとして、自民党の内部を少なからず揺さぶっ

てることだろう。

       

小泉・元首相が反原発を唱えるキッカケになったのが、今回のテーマである

131003

  フィンランドの施設「ONK

  ALO(オンカロ)」らしい。

  左はウィキメディア、Qui

  zimodo氏の作品を加工

  したもの。赤丸あたりの

  場所で、島という話だが、

  普通の感覚で地図を見

  るなら、陸続きに近い。

    

  ここは元々、専門家の間で

  注目されてたが、一般の関

心を呼び込んだのは、2009年制作、10年公開の美しい映画、『100,000

年後の安全』だろう。10万年もの間、使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄

物)を地下深く貯蔵して、自然に放射能が減るのを待つわけだが、いくら何で

も長過ぎる期間ではないか。マイケル・マドセン(またはミケル・マッセン)監督

は、わりと穏やかな姿勢に見えるが、そんな疑問を深く抱いてるようだ。

     

元首相がこの施設を知ったのは、3・11の後、NHK・BSが再放送した海

外制作ドキュメンタリー『地下深く永遠に~100,000年後の安全~』(映

画の短縮版)を通じてのことらしい。原子力の勉強をした上で、今年の8月

中旬、三菱重工業、東芝、日立製作所といった原発メーカーの幹部らと現

地を視察。「脱原発」を確信(『週刊朝日』13年10月11日号、ネットより)。

要するに、原発の明るい未来や持続可能性よりも、処分の途方もない困難

さを実感したということだろう。

   

なお、既に1999年から米国のニューメキシコ州で、核廃棄物隔離試験施

設が稼働してるようだが、なぜフィンランドが世界初として扱われるのか、ま

だ理由がよく分からない。米国は基本的に核兵器用で、フィンランドは原発

用だからだろうか。。

     

        

          ☆          ☆          ☆ 

さて、ここでまず指摘したいのは、「オンカロ」という言葉の意味の曖昧さだ。

そもそも、このフィンランド語の意味が、説明の出典を遡っても、フィンランド

語のオンライン辞書を見ても、ハッキリしないのだ。

    

色々と調べてみると、おそらく「洞窟」とか「(深い)穴」というのが普通の訳

語だろう。朝日新聞、英語版ウィキペディア、コトバンク、Google翻訳、いず

れもそうなってる。それに対して、「隠された場所」とか「隠し場所」という、人

間的な意味を込めた訳語を使ってるのは、映画も含めて、特定の立場の世

界で目立ってるようだ。語源が「隠された場所」なのかとも思ったが、今の所、

証拠は見当たらない。フィンランド語の語源までは調べにくいのだ。

       

一方、意味と言うより、「オンカロ」が何を指し示すのか。その指示対象も曖

昧だ。少なくとも今現在、運営するPosiva(ポシバ)社のHP(英語)を読む

と、最終処分場そのものではなく、処分場建設を目指した岩盤などの調査・

研究施設だと説明してあるし、朝日新聞でも「試験施設」としてあった。だか

らこの記事のタイトルは、「オンカロ~・・・最終処分場」ではなく、「・・・最終

処分場を目指して」と正確に書いたわけだ。

        

131003b

       

普通に上の図面を見れば、曲がりくねった5kmの長いトンネルのことだと

感じる。深さは500m弱。最深部が455mということだろうか。ポシバ社HP

より頂いたが、著作権を主張されることはないと信じる。図の更新は1年以

上前に終了してるから、その頃に(ほぼ)完成したのだろう。処分場ではなく、

トンネルなどが。

       

とはいえ、準備トンネルとしてのオンカロと最終処分場とは、施設も計画もほ

ぼ一体だし、まだオンカロしか出来てないのだから、丸ごと全体をオンカロと

省略表現するのは自然なことだろう。それに、処分場というのは、トンネル全

体と比べると遥かに小さくて目立たないはずだ。単に、トンネル下部に開けた

竪穴みたいなものだと思う。

            

    

          ☆          ☆          ☆

とにかくここに、「世界初」の高レベル放射性廃棄物の最終処分場が完成し

ようとしてるわけだ(前述の米国施設を除く)。逆に言うと今現在、世界のど

こにも原発の核燃料の最終処分場が無いわけで、反原発的な立場でなく

ても、「トイレなきマンション」という比喩は分かりやすいものだろう。

   

ただし、本当にトイレの無いマンションは、悪臭で1週間も我慢できないだ

ろうが、原発の排泄物としての使用済み核燃料(ガラスで固めた固化体が

典型)は、数十年くらい「トイレ」が無くても何とかガマンできてしまう。だから

日本に限らず、世界的にまだ「トイレ」無しでも原発を維持できてるのだ。も

ちろん、無しのままでは危険だから、計画は世界各地で進んでる。フランス、

ドイツ、スウェーデンでも、2030年頃までに運転開始の予定だ。

          

フィンランドは今現在、電力需要の約3割を原発が担っており、4基の原子

131003c

 炉が稼働中。そ

 の内の2基があ

 るのがオルキル

 オト原子力発電

 所(近い内に3

 基目も営業運転

 開始予定)。左

 はウィキメディ

アで公開中の原発の写真で、作者不明。

        

ここから数マイル(1マイルは約1.6km)ほどの場所にオンカロはあるか

ら、「トイレ」の場所としては好条件だろう。非常にしっかりした花崗岩の岩

盤に恵まれてる上に、国民や地元の支持も十分あるようで、日本とはかな

り違う状況のようだ。地層が古くて、地震や火山活動も非常に少ないとのこ

と。自国の核廃棄物は国内で処分すると、法的に明示した点も評価できる。

          

今後は来年6月に処分場建設開始、2020年操業開始が目標。地下500

mほどに、核燃料入りの金属製の筒(キャニスター)を埋設して行き、2100

年には事業終了。穴を埋め戻して、人間社会から隔離。物理的な半減期に

したがって、大自然の中で放射能がゆっくり減衰するのを待つことになる。

半減期が24000年と長くて、問題視されがちなプルトニウム239の場合、

4倍の96000年経てば、1/2の4乗で、1/16まで減少するのだ。。

        

     

           ☆            ☆          ☆

さて、日本人としては正直、ここを日本にも使わせてもらえないのかと思って

しまうが、日本のゴミを受け入れるどころか、フィンランドのゴミだけでも、まだ

処分場が足りないらしい。ただ、今回の処分場が成功すれば、次へと技術は

受け継がれるし、信頼感も増すはずだ。間接的には、日本にとっても明るい

話だろう。

     

日本の場合、地震や火山活動が非常に多いので、地下300m程度に埋め

る「地層処分」は、まだ議論や研究の最中となってる。岐阜県ではかなり具

体的な研究も進められてるようだが、日本学術会議は、最終的な地層処分

をする前に、60年の「暫定保管」をするよう提言。原発敷地内や浅い地下

で管理して、その間に研究や議論を進めようという、現実的な考えだ。

   

その後、さらに200年は、いざとなったら廃棄物を回収できるような状態で

処分。という事は、少し浅めに埋めるとか、穴の一部や管のような物を残し

て掘り起こしやすくするといった方法だろう。大まかな総論としては、もっとも

な考えだと思う。まだ原子力の歴史は100年にもなってないのだから、あと

100年くらいは、研究や社会の様子を見てもいいはずだ。現実的な安全性

を保った上で。。

         

   

          ☆          ☆          ☆

今現在、国内の核のゴミは、原発内(使用済燃料プールなど)に14000

トン、青森県・六ヶ所再処理工場に2900トンほど貯蔵されてるようで、8

月29日には5000トン貯蔵可能な「リサイクル燃料備蓄センター」が青森

県・むつ市に完成した(操業は年末以降に延期)。

          

本当にリサイクル(=再処理)されるかどうかはともかく、鋼鉄製の貯蔵容器

(キャスク)で保管することで、もうしばらくの時間的余裕を与えられたことに

なる。フランスや英国での再処理を終えて返還されたガラス固化体は、とり

あえず、六ヶ所・高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設に置かれてる。

        

放射能の強さとか危険度を考えても、ゴミ処理の問題は、この春から話題

汚染水より本質的に重要な問題だから、今の内に議論と理解を進める

べきだろう。原発推進にせよ反対にせよ、この問題から逃れることは出来

ないのだ。

    

原発や核兵器に限らず、産業廃棄物や家庭ゴミも含めて、バックエンド(事

後処理プロセス)には意識的に目を向ける必要がある。と言うのも、我々は

どうしてもバックの日陰から目をそらして、明るいフロントエンド(生産・使用)

だけ見ようとしがちだから。

      

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

      

    

     

P.S. この記事をアップした翌日、10月4日に、優れたマンガと遭遇。

     講談社『モーニング』NO.44、10月17日号(発売は3日)に掲載

     された大賞受賞作『いちえふ 福島第一原子力発電所案内記』。

     作業員の竜田一人が淡々と丁寧に描いた現地の日常は、「一つの

     現実」として心に響くものだった。ありそうで無い、中立的なルポ。

     続編にも期待しよう。。

   

                                   (計 3718文字)

| |

« 心拍計のボタンを押しても反応せず、壊れたと思ってリセットしたら・・ | トップページ | 西友「味番付」、食品と飲み物の人気ランキングを見て・・ »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

科学」カテゴリの記事

コメント

安倍総理どの、貴殿も是非ともこちらオンカロの核燃料最終処分場を見学してくださいませ

投稿: まーくん | 2013年11月16日 (土) 21時31分

> まーくん さん
   
コメントどうもです。
安倍総理とかオンカロに限らず、
みんなもっと色々と勉強すべきでしょうね。
世界的視野で、じっくりと冷静に。
もちろん、私自身も含めて。。

投稿: テンメイ | 2013年11月17日 (日) 03時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 心拍計のボタンを押しても反応せず、壊れたと思ってリセットしたら・・ | トップページ | 西友「味番付」、食品と飲み物の人気ランキングを見て・・ »