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「ラプラスの魔」と人間の意志(仏語原書に即して)~『安堂ロイド』第5話

「壊れちゃう・・・」♡ このサプリ(本田翼)の言葉のシーンだけリピートして

る、そこの貴方(あなた)! HDDが壊れちゃうから、ほどほどにネ♪ 私

は録画してないから、脳内再生の連続。心が壊れちゃうかも。。

     

さて、今回の『本田サプリ』・・・じゃなくて、『安堂ロイド』第5話♪ 涙なくして

は見れない感動物語になってたけど、裏番組に2週連続で日本シリーズが

入った直後で、視聴者はあまり多くないだろうし、楽しめた人はさらに少数

かも。私は最初の7分間、焼きそばのために台所にいて見れなかったけど

(笑)、その後は終了後まで含めて、たっぷり楽しめた。

     

ただし、何度も書いたように、ウチは1ヶ月間ほど「お引越しモード」に入る

ので、長くて本格的なレビューは書けない。その代わり、現在ネット上に見

当たらないマニアックな話を正確に書いてみよう。それは、「ラプラスの魔」

(Laplace’s demon)と呼ばれる悪魔的(?)存在に関する内容だ。

    

安堂ロイドだと一応、白いセーラー服の美少女(桐谷美玲)がちょっと近い存

在だろうけど、厳密な意味での本物は、単なる抽象的な幻想にすぎない。少

なくとも今後、数百年くらいの間は。。

       

    

          ☆          ☆          ☆

まずは、ドラマの流れを大まかにまとめとこう。おそらく物理学者・沫嶋黎士

(木村拓哉)は、未来や過去を変えたり、それらと情報をやり取りしたりする

理論を考案して、実際に少し使用したんだろう。そのため、100年後の警察

その他によって殺された(一度は・・)。歴史の変更、物理法則によって完全

に決定された世界の流れからの逸脱は、法的に認められないのだ。

    

同じ理由で、沫嶋の理論に接近した他の研究者たちも殺されるし、巻き添

えで殺された人々もいる。現在の人間臭い刑事、「足も臭い」・・・じゃなくて

「葦母衣朔」(あしもいさく:遠藤憲一)にしてみれば、許せない権力乱用とい

うことになる。黎士の婚約者で、自分自身も狙われてる麻陽(柴咲コウ)に

とっても、未来の警察や殺し屋アンドロイド達は論外だろう。

   

ところが、誰か未来のクライアント(顧客)の要望にしたがって、麻陽を助け

てくれる安堂ロイド(キムタクの一人二役)も、もともと殺し屋だし、今現在も

敵(ある意味、かつての仲間)を次々に消滅させてるのだ。だから、ロイドは

決して、単なる正義のヒーローではない。麻陽にとっては、自分を助けてく

れて、黎士に似てるから、ポジティブな特別扱いになってるだけだろう。後

は、彼女特有の「刑事の勘」とか。そりゃ、『ガリレオ』の内海か♪

        

    

          ☆          ☆          ☆

だから、ロイドには、麻陽だけでなく大勢を納得させるだけの存在意義が必

要になる。それこそ、今回の序盤で黎士のフリをしながら行った、東京帝国

大学の講義内容なのだ。おそらく、未来で生きてる(?)黎士からのメッセー

ジを、学生や妹・七瀬(大島優子)らに伝えたんだろう。どうして急に人気者

の教授になったのかは、問わないことにする♪

       

そこではまず、悪役として、第1話の殺し屋の名前にも使われてた、フラン

スの天才科学者・ラプラス(1749-1827)の考えが語られた。一言でま

131111c

  とめると、未来も過去もすべて決定さ

  れてて、全知全能の神(いわゆる「ラ

  プラスの悪魔」)のような存在なら、

  すべて確実に分かるだろう、という考

  えだ(いわゆる「決定論」)。写真は

  ウィキメディア、パブリックドメイン(公

  的所有)の作品。

  

             

そうゆう考えは、人間の自由や意志の力、価値、世界の可能性を否定する

ものだし、実現は程遠いか無理だということもあって、悪者扱いされることが

多い。だから、全知全能者は「魔」(デーモン)と呼ばれることになる。

       

それに対して、良い考え、共感できる考えとされることが多いのが、ロイドの

講義の終盤だ。録画してないから正確には分からないけど、こんな感じだろ

う。公式サイトのキャラクター紹介、ロイドの項目からの引用。

      

   全知全能など必要ない。人の想いは未来を変える。過去の過ち

   さえ変えることができる。生命は正しい未来へ導くちからのことだ。

        

   

          ☆          ☆          ☆

さて、ツイッター検索をかけてみると、気になった人はやっぱりウィキペディ

ア(日本語)にアクセスしたようだ。「ラプラスの魔」という項目があるんだけ

ど、おそらく序盤は、ラプラスの著作自体を読まずに、何か(解説書の類か

ネット)から引用してると思われる。

          

と言うのも、項目の末尾に出典がないし、本文中の出典も引用文も不正確

だから(ラプラス本人の項目でも同様)。もし訳書を読んだのなら、出版社く

らい書くだろう(共立出版)。唯一挙げてる出典が、日本人のネット公開論文

1本という点も、気になる所だ。

         

それに対して、英語やフランス語のウィキは、正確に書いてある。ここでは、

元のラプラスの著作自体をまずフランス語・原書で見てみよう。タイトルは

Theorie analytique des probabilites』(確率の解析的理論、アクセ

ント記号は以下でも省略)。日本語のウィキは「1812」年と書いてるが、

それは初版の年。肝心の文章が書かれてるのは「1814」年の第二版

らなのだ。昔の本にありがちなこと。

      

初版も第二版も、googleが無料ネット公開してるから、書籍内検索で確認

済み。おまけに専門家の内井惣七もそう説明してるので(後述)、まず間違

131111d

  いないだろう。では、

  第二版の原文(グー

  グルのコピペ、序文

  p.2)をご覧あれ。

  200年前の古典だ

  し、著作権は問題な

  いはずだ。

          

    

     

131111a

     

この第二版(1814)の文章は、同じ年に出た有名な著作『確率の哲学的

試論』にもそのまま掲載されてる(英・仏のウィキはこちらを採用)。この『試

論』の訳書(内井訳、岩波書店)から、その箇所を引用させて頂こう。個人的

にちょっと気になる点も2つあるが(前半の条件法と、最後のpresentの訳)、

一応そのままにしておく。

           

   ある知性が、与えられた時点において、自然を動かしている

   すべての力と自然を構成しているすべての存在物の各々の

   状況を知っているとし、さらにこれらの与えられた情報を分析

   する能力をもっているとしたならば、この知性は、同一の方程

   式のもとに宇宙のなかの最も大きな物体の運動も、また最も

   軽い原子の運動をも包摂せしめるであろう。この知性にとって

   不確かなものは何一つないであろうし、その目には未来も過去

   と同様に現存することであろう。

                              (訳書 p.10)

    

    

         ☆          ☆          ☆

この全知全能の知性(intelligence)は、ラプラスの著作だと神のような扱い

で、もはや彼にとって「確率」というものは無意味になる。すべて、確率100

%(つまり1)で起きるのだから。ところが、その後の人達は、その知性を「魔」

と呼ぶようになる。ドラマでも、それに少しだけ近い存在らしい美少女は、意

地悪な魔女のように描かれてた。

     

では、ロイド(&黎士)が良いものとして扱った、人間の意志は、ラプラスに

とって何だったのか。これも、上の引用文の数行前に書かれてるのだ。

    

131111b

    

『試論』の訳文は、次の通り。

    

   ・・・無差別な事柄での意志の選択の際のうつろいやすい理由を

   見失って、意志は動機なくしてみずからを決定するのだと思い込

   む精神の錯覚・・・   (同上)

    

直訳でやや分かりにくいが、要するに、意志の自由というものは錯覚にすぎ

ないということ。多くの選択肢の中から何かを選択する時、選択を決定する

原因があったはずなのに、それを見失って、まるで自由に、あるいは偶然に

選び取ったように思ってしまうだけ。人間がそういった不完全な存在だからこ

そ、確率などという曖昧なものを考える必要も生じる、という話なのだ。。

     

        

         ☆          ☆          ☆  

「ラプラスの魔」とか、それに似た存在(完全な理数系の知性)というものは、

特に理系の人間を魅惑する考えだが、200年前からいくらでも批判はある。

ただ、批判の側にも弱い点があるから、それらについてはまた別の機会に

書くことにしよう。決定論と自由、偶然、不確定性の問題だ。

       

とりあえず今現在は、観測者や観測機器、専門家やコンピューターの能力

を駆使しても、10日後の天気予報は当てにならないのだ。傘が必要かどう

かもハッキリしないレベル。まして、全知全能のコンピューターとかA I (人

工知能)が登場するのは、少なくとも数百年はあり得ないだろう。1000年

後でも、まあまあの物が出来てる程度。せいぜい、3ヶ月先の天気予報が

かなり正確に当たるとか、半年前に大地震の予知がほぼ出来るとか。

      

とにかく、「錯覚」だろうが何だろうが、人間にとって、意志を持って自分や世

界を変えて行くことは決定的に大切なこと。機械化が進む世の中だからこそ、

感情や欲望、直感なども含めて、機械的に割り切れない部分が、これから

ますます大切になって来る。

        

その意味で、機械であるロイドや本田サプリに感情が芽生えたのは、「人間

的進化」と言っていい。もちろん、それは機械的部分にとっては余計だった

り、障害だったりするし、悲しみや苦しみ、嫉妬や苛立ちにもつながる。でも、

だからこそ喜びや楽しさ、愛や安らぎといった、人間的な幸せも生じるわけだ。

   

おそらく人間は、アンドロイドに限らず、機械に人間的な部分を持たせようと

していくだろう。それは科学技術的なものだけでなく、いわゆる「感情移入」

も大きい。その意味で、このドラマを見ながらアンドロイドに感情移入すること

は、来るべき未来へのウォーミング・アップにもなる。人間と機械が、区別不

能なくらい密接に関わり合う世界は、もうすぐそこまで来てるのだ。

   

多分、今は悪役っぽい「ラプラスの魔もどき」の桐谷セーラーにおいても、や

がてポジティブな意味での人間性が大きく成長するんじゃないかな。例えば、

今回のサプリみたいに、正しさへの意志を持って、自らを犠牲にしてまでロイ

ドや麻陽を助けるとか。。

     

   

           ☆          ☆          ☆

なお、サプリが最後に、敵と一緒に光の玉になったシーンは、『ウルトラマン』

最終回へのオマージュ(敬意を込めた模倣)とも言える。あと、ロイドの内部

で感情的プログラムが問題を起こす時に映ってた、変な記号は、「ロイド眼鏡」

の下で、鼻(ハナ)をハテナにしたものに見えた♪

    

ちなみに私が脚本家なら、自由意志によって、サプリを復活させるだろう。

ナース服の色だけ、もっと可愛いピンクかイエロー、またはパステルグリー

ンに変えて。ドクロ顔のぬいぐるみじゃ、視聴率も私のテンションも下がるし、

「殺された」黎士でさえ死んでないらしいから、サプリが生き返ってもおかし

くないはず。実際にはイキながら、「死んじゃう ♡ 」のだ。コラコラ。

          

残念ながら、実際の私は一般ピープルに過ぎないから、脳内で自由に記憶

をリピートすることになる。感情や欲望と共に、思いのまま、合法的に映像を

加工しながら♪・・・って、アブナイわ! 

        

脳内はしばしば脳の外につながってしまうから、気を付けよう。このセルフ・コ

ントロールも、大切な自由意志の表れなのだ。結局、長い記事になってしまっ

たのは、「偶然」の産物だと思っとこう。では、今日はこの辺で。。☆彡

                

        

        

P.S. 11日(月)、9時半前の「ネットの噂」では、視聴率11.5%とのこ

     と。12%までの回復は欲しかった所だけど、果たして。。ちなみに

     日本シリーズの影響は、5日前の記事で分析してある。

     (追記: 噂は正しかった。スポニチで確認。)

         

      プロ野球・日本シリーズがドラマ視聴率に与えた影響&休養ラン

        

           

cf. 制作費70分の1、SF映画に挑戦するドラマ~『安堂ロイド』第1話

   雨が止んだ夜中に12km走&『安堂ロイド』第2話

   ハーフ走、1km4分半まで回復♪&『安堂ロイド』第3話

   アンドロイドも開く、パンドラの箱~『安堂ロイド』第4話

   『安堂ロイド』第6話、軽~いつぶやき♪

   ほろ酔いジョギング(コラコラ!)&「十八」(ジュワッチ)♪ (第7話関連

   『安堂ロイド』第9話、サンスクリット語のasura(阿修羅)の意味など

   沫嶋ロイドとして一時帰還した黎士~『安堂ロイド』最終回

      ・・・・・・・・・・

   プラントル・グロワートの特異点とベイパーコーン

                             ~『安堂ロイド』物理的解説

   『安堂ロイド』公式ガイドブック、軽~い感想♪

           

                                    (計 4926文字)

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コメント

今回も充実の内容、楽しく拝見しました。

深夜バラエティーは「夢がモリモリ」です。まだ森くんがいたころですね。
あれをみて家族でファンになりました(息子はまだ存在していませんでしたが)。

あの、伝言を講義するロイドのシーンはとてもよかったですね。
こちらを拝見して、さらに納得。
人間も世界も0と1じゃないですよね。もっとファジーで、曖昧だからこそ、定理や法則を証明したくなるのかもしれません。

私もサプリ復活希望です。
このドラマで初めて彼女を知ってファンになりました。将来が楽しみなので演技も続けてほしいです。

引っ越し、数え切れないほどしてきましたが、大変ですよね。滞りなくできますように((o(^-^)o))

投稿: みい | 2013年11月11日 (月) 09時32分

> みい さん
    
こんばんは。再びコメントどうもです
「今回も充実」、ドラマですかね。
  
この記事は正直言って、ドラマと関係ない
個人的事情が絡んでるんですよ (^^ゞ
実はラプラスに関して、数学の本格的記事を
書く予定なのに、ずっと実現しないまま。
その代わりみたいな感じで書いたわけです。
あんまし、代わりになってないけど(笑)    
   
で、『夢がモリモリ』。あ~、なるほど!
土曜夜、『ねるとん紅鯨団』の後番組ですね。
   
「モリモリ」って、元SMAPの「森」って
意味も入ってたんですか。
彼、オートレースの世界で成功してますよね。
まさに我が道を行くって感じで、いいかも♪
番組にSMAPが出てたのは覚えてませんが、
キックベースは面白そうでした。
小学校時代、たまにやった気がします。
   
    
ドラマに戻って、ロイドの講義はいいんだけど、
終わった後の拍手喝采が苦手なんですよ (^^ゞ
ドラマ的な説明過剰。今、いい台詞を
言いましたよっていう、視聴者向けシグナル。
   
どうも、キムタクのドラマって、
派手なポジティブ反応が目立つんですよね。
TBSだけじゃなく、フジテレビも。
『華麗』、『CHANGE』、『プライスレス』。。
    
それに対して、福山雅治『ガリレオ』の中だと、
ホントに大学レベルの講義をやってますが、
それでも満員の女子学生がポワーンとなるだけ♪
これなら軽いギャグだし、確かにそうゆう
女子はいるだろうから、分かるんですよ。
   
   
0と1、デジタルの世界でかなり凄い事が
可能になるのは事実なんですが、
もちろん、それだけじゃないですよね。
何か対象を、0と1で表す主体。それを読み取る
主体。0と1のデータから物を作るシステム。
必ず、0と1以外のものが大きく絡んで来ます。
  
「すべて」を0と1で表すのは不可能。
ラプラスの魔なんてものがホントに実現するなら、
何か僕らには思い付かない認識方法を使うはず。
まあ、完全な実現はあり得ないとして、
ほどほどの実現なら、デジタルと共に、何か
曖昧でアナログ的な方法を導入するでしよう。
    
証明ってものは、神には必要ないわけですね。
ま、お遊び感覚でやるかも知れないけど♪
   
定理や法則の証明は、正しさがすぐには
分からない人間だからこそ、必要なわけです。
その意味で、優れた人間的文化の一つ。
    
本田サプリは、ネットを見ても評判良さそうです♪
ぬいぐるみを残したのは、復活への伏線でしょう。
本田翼や桐谷美玲は、やっぱ可愛いですね
柴咲が美人タイプだから、組合せ的にもいい。
   

最後に、お引越し。そんなに経験してるんですか。
僕はやたら荷物が多いし、面倒くさがり屋だから、
今回も「外圧」で仕方無くって感じです (^^ゞ
あぁ、残り3週間しかない。どうしよう。。
  
・・って感じで、今日はこの辺で。。

投稿: テンメイ | 2013年11月12日 (火) 03時13分

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