行列の基本変形、逆行列の求め方、1次方程式の解法
ここ2ヶ月の引越しパニックで、理数系の記事がほとんど書けてないから、今日
はローテーション的に数学記事にしてみよう。ただ、数学関連の本がどこに行っ
たのか、ロクに分からない状況だから、たまたま目に付いた「線形代数」の教
科書で軽く書いてみる。
斎藤正彦『線型代数入門』(東京大学出版会)。親切丁寧とは言いにくい大学
の本格的な教科書を参照するが、この記事のレベルは高校~大学1年程度
にすぎない。あくまで具体的な例や問題に即して簡単に説明するだけだ。ち
なみに「新課程」の高校数学では、今まで数学Cに入ってた行列の内容が消
えてるようだから、その場合は大学1年程度ということになる。
それにしても、数学に限らずカリキュラムがかなり不安定なのは、生徒と教師
双方にとって、どうかと思う。高校のみならず、大学においても。。
☆ ☆ ☆
さて、以下では、高校数学の行列の基本知識は前提とする。つまり、行列と
は何か、行と列の区別、単位行列、逆行列、加法・減法・乗法などは説明し
ない。また、線形 or 線型という概念についても今回は扱わないので、あらか
じめご了承を。
話の目標は単純。次のような「3元一次方程式」を機械的かつ効率的に解く
方法の理解と習得
だ。もちろん、高
校の「加減法」だ
けでも簡単に解決
できるが、それだと無駄もあるし、理論的発展にもつながらない。
それに対して、以下のように、行列の「基本変形」によって逆行列を求め
る方法だと、行列の「標準形」とか、行列・線形変換の「階数」(rank)など
の理論につながって行く(今回は指摘のみ)。
☆ ☆ ☆
ではまず、上の方程式の係数で作った3×3(3行3列)の正方行列を考える。
高校では2×2の正方行列
が中心だが、加法・減法・
乗法に関しては、3×3で
も同様。ただし逆行列の話
は、一見かなり違うように感じるだろう。もちろん後で、本質的には同様だと
分かることになる。
係数行列の逆行列が分かれば、元の1次方程式の解がすぐ求められるとい
う点は、2×2でも3×3でも同じこと。ただ、2×2だと、逆行列の簡単な公式
を使えるが、3×3の場合、やや面倒な計算になる。以下では、前述のテキス
トで最初に書いてある方法について、より丁寧かつ詳細に説明してみよう。
逆行列とは、元の行列の左から掛けても右から掛けても単位行列Eになるよ
うな行列であって、ここでは「左から掛けると単位行列になるような行列」と考
える。つまり、 XA=E となるような行列Xだ。
左から行列を掛けるという操作は、「左基本変形」を何度か行うこと。つまり、
①ある行と他の行を入れ替える、②ある行を数倍する(0倍以外)、③ある行
に、他の行の数倍を加える(0倍でも構わないが、変化しないので無意味)。
これら、行列の「行」(横の並び)に対する簡単な操作を何回か行うことだ。
☆ ☆ ☆
そこで、左基本変形だけを行って、行列Aを単位行列へと変形すればいい
ことになる。この時、Aの右横に単位行列を付け加えて、3×6行列を作って
おけば、その右半分に自動的に、実行した左基本変形すべてを表す行列が
現れることになる。
Aはたまたま最
初から、左上に
1が来てるが、
そうでない場合
は、その数の逆
数を掛けて1に
すればいい。た
だし、最初の左
上が0の場合に
は、第1列が0
以外の数となってる行と入れ替えた後、その数の逆数を新たな第1行に掛け
ればいい。
とにかく、左上(第1行・第1列の成分)が1となってる状態で、第2行と第3行
の第1列(左端)を0に持って行く。上では、第1行の2倍を第2行に加え、-2
倍を第3行に加えてある。この時、たまたま中央(第2行・第2列の成分)が1
となってるが、そうでない場合は、先ほどと同様の操作で1にする。
ちなみに、どうしても1にならない時は、逆行列が存在しない(=正則でない)
場合で、元の方程式の解が不定か、存在しない場合ということだ。
☆ ☆ ☆
話を戻すと、上図の2
回目の変形では、第2
行の-2倍を第1行に
加え、2倍を第3行に
加えてある。さらに左
図に進むと、まず第3
行の第3列を1にする
ために、第3行を1/2倍
してある。
そして最後、第3行の1倍を第1行に加え、-2倍を第2行に加えて、左半分
(元は係数行列A)が単位行列Eになった。この時、一連の左基本変形のトー
タルが右半分に出て
来る。これこそ、
Aに左から掛けて
単位行列となる行
列、すなわち、Aの逆行列だ。
結局、元の3元1次方程式は、下のようにキレイに解けることになる。行列
と列ベクトルで表した後、両辺の左側から逆行列を掛ければいい訳だ。
☆ ☆ ☆
なお、3×3の正方行列に慣れてない人は、まず2×2で練習すれば分かりや
すいだろう。ちなみに、2×2の場合の逆行列を上のやり方で一般的に求める
なら、次のようになる。
左は、行列式
ad-bcが0で
ない場合で、し
かもa≠0の場
合だ。もしa=0
なら、第2行と入
れ替えればいい。
第2行の第1列
cも0なら、
ad-bc=0と
なってしまい、前
提を満たしてない。
3回目の変形(第2行
を「a/ad-bc」倍)と、
最後の変形(第2行の
「-b/a」倍を第1行
に加える)が少しだけ
面倒だが、キレイに
逆行列を導き出せた。
もちろん、4×4行列
でも上手く行くし、一
般にn×nで成功する。
なお、逆行列が存在しない場合や、元の行列が正方行列でない場合につ
いては、いずれ続編記事を追加する予定(☆既にアップ、下のcf.にリンク
を付けた)。最後に、テキストには書かれてないが、「列」(縦の並び)を操作
する「右」基本変形で逆行列を求める方法についても、図示だけしておこう。
AX=E となるXを求めるわけだ。
今週は少し回復して、合計14777文字となった。それでは、今日はこの辺
で。。☆彡
cf. 行列の基本変形と1次方程式(2)~逆行列が存在しない場合など
(計 2409文字)
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