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トランプのポーカーの確率計算~『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』第1回解説

マニアック!♪ 面白くなかったら、すぐ見るのを止めようと思って見始めた、

NHKドラマ10『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿』第1話、「天才数 

学科女子大生 VS 爆弾テロリスト(前編)」。これ、ホントに計算してるね♪

感激した☆ 一部の計算間違いや不正確さは御愛嬌ってことで(笑)

 

『ガリレオ』は公式を書くだけで、計算はごくたまに黒板やレポートでチョコッ

とやってる程度だけど、『数学ガール』はホントに計算して答まで出してた♪

いやぁ、意表を突かれたわ。偉いぞ、脚本の蒔田光治! ちょっと雑で、詰め

が甘いのはさておき(笑)。数学監修の名前が無かったから、チェックが緩かっ

たか、無かったんだろう。

 

☆追記: コメントで情報を頂いたから、ネットで確認。横浜国立大学・大学

       院の根上生也(せいや)教授監修してるようで、大学の公式サ

       イトでニュースになってた。この方なんと、『ガリレオ』の一部でも

       数学監修を務めてたらしい。)

 

たまたまハードディスクがほぼ一杯だったから、飛び飛びでしか録画してない

んだけど、これは次回から本気で見なきゃいけないかも。難波くるみ(橋本愛)

と伴田竜彦(高良健吾)の妙なコンビも笑えたし、いいね☆ 視聴率や一般ウケ

はともかく♪

 

ちょっと今、仕事が長引いたせいで時間がない。妥協案として、1シーンの計

算、答、台詞、グラフだけ解説しとこう。調べてみると、このドラマ。実は去年

の秋に、BSで既に放送したものなのか。ちょっと拍子抜けかも。。

 

 

           ☆          ☆          ☆

では、私が録画した範囲だと最初の計算について。5枚ポーカーをくるみ達

5人がやってて、彼女の手は、ダイヤJ、ハートJ、ダイヤ10、スペード7、ク

ラブ3。ここでくるみは、1ペアのJ(ジャック)を残すことにして、残り3枚をどう

するか考える。

 

まず、残り3枚すべて交換して、別のJが手に入る確率を計算。仲間の女子

大生1人が持ってる5枚は、くるみにも分かってると考えるのか、残りのカー

ド枚数全体を42枚として計算してた(追記: 仲間がくるみにコッソリ見せた

ようだ)。本来なら全52枚から手持ちの5枚を差し引いて、47枚とするはず。

 

42枚から3枚を引く組合せ(Combination)の全体は、

   42 C 3 = 42×41×40 / (3×2×1)= 11480 (通り)。

 

ドラマの映像では、間違えて、分子を「42×41×40×39×38」と書いてた。

理論的におかしいし、これでは右辺が11480にならない。まあ、この種の些

細な書き間違いは、『ガリレオ』でも何度か指摘しておいた。分母の1は無意味

だから省略してたけど、この記事ではきちんと書くことにする。

 

話を戻すと、引いた3枚にJが1枚だけある場合の数は、Jがスペードかクラブ

かで2通り。J以外の2枚の引き方は、「42枚 ー J2枚」、つまり40枚の中か

ら2枚引く組合せの数。

 

   ∴ (Jが1枚だけある場合の数)=2×40 C 2

                       =2×40×39/(2×1)

                       =1560 (通り)

 

さらに、 (引いた3枚にJが2枚ある場合の数)

             =(残り40枚から、あと1枚選ぶ方法の数)

             =40 (通り)

 

以上より、 (3枚交換して、新たにJが手に入る確率

                        =(1560+40) / 11480

                        ≒13.94%

 

 

           ☆          ☆          ☆

この確率と、7と3の2枚だけ交換して、Jか10が手に入る確率(ドラマの答は

22.64%)とを比較。2枚交換の方が確率が高いから、くるみは2枚だけ交換

見事にJを1枚ゲット。そのゲームでは勝利を収めてた。                              

 

では、2枚交換の場合の確率を示そう。

 

 (42枚から2枚選ぶ組合せ)=42 C 2 = 42×41/(2×1) =861 (通り)

 

  (Jが1枚だけ手に入って、10は手に入らない場合の数)

         =(Jの選び方)×(Jでも10でもない残り1枚の選び方)

         =2×37

         =74 (通り)

 

  (Jが2枚手に入る場合の数)=1 (通り)

 

  (10が1枚だけ手に入って、Jは手に入らない場合の数)

         =(10の選び方)×(Jでも10でもない残り1枚の選び方)

         =3×37

         =111 (通り)

 

  (10が2枚手に入る場合の数)=(残り3枚の10から2枚選ぶ方法の数)

                     =3 (通り)

 

  (J1枚と10が1枚、手に入る場合の数)=(Jの選び方)×(10の選び方)

                           =2×3

                           =6(通り)

 

   ∴ (2枚交換して、Jか10が入る確率

                 =(74+1+111+3+6) / 861

                 ≒ 22.65% (四捨五入した場合

 

 

           ☆          ☆          ☆

ドラマの映像ではなぜか、こちらの確率だけ、四捨五入ではなく切り捨てで計

算して、22.64%と書いてた。まあ、ほとんど同じで、13.94%より遥かに

大きい値だから、判断に影響はない。

 

あと、3枚交換する時の計算では、一気に3カードを手に入れる確率や、J以

外の1ペアを手に入れる確率も必要。さらに、2枚交換した時の手と比べて、

どちらが強いかも考える必要があるし、他人(ここでは友達)の手を知ってる

のなら考慮に入れる必要があるから、本当はもっと面倒な計算になる。

 

とはいえ、テレビ的にはあれでも十分だろう。あそこまできちんと計算して、物語

の進行と関連させるドラマは、今まで見たことない。

 

 

           ☆          ☆          ☆

続いて、くるみがQ(クイーン)のフォーカードの時、相手(opponent)が自分よ 

り上の手(Superior hands to me)の確率0.017%と計算してた。これ

間違いだが、非常に小さい数字だという点は正しいので、物語の進行には

影響ない。

 

今回は、くるみと友達がカードを交換した後だからなのか、残り全体を37枚と

して計算。

 

  (5枚の組合せ)=37 C 5

            =37×36×35×34×33/(5×4×3×2×1)

            =435897(通り)

 

次に、「相手がロイヤル・ストレート・フラッシュの場合の数」を、絵柄の種類の

数で4通りとしてたが、これは単純なうっかりミス。自分がQのフォーカードを持っ

てるのだから、相手がロイヤル・ストレート・フラッシュというのはあり得ない。Q

を持てないからだ♪

 

一方、 (相手がK(キング)かA(エース)のフォーカードの場合の数)

                         =2×(残り1枚の選び方)

                         =2×(37-4)

                         =66

 

これをドラマでは、2×35=70と間違ってた。33を35と間違えたのか、あるい

は、37を39と間違えたのか、事情は不明。

 

とにかく、正しくはこうなる。

 

  (相手が自分より上の確率)=66/435897≒0.00015=0.015%

 

要するに負ける確率が非常に低いことになる。だから、くるみが「コール(Call)」、

つまり同額の300万円を賭けたのは、数学的には正しい、あるいは間違って

ない。もちろん、リスク管理的、倫理的にはあまり正しくないが♪ 

 

実際、いかさまポーカーだったせいで、ショー・ダウン(Showdown : 手持ち

カードの見せ合い)すると、相手はキングのフォーカード。借金を背負うことに

なってしまった。

 

 

           ☆          ☆          ☆

最後に、「ポアソン分布」(Poisson Distribution)について。飛び飛びで

(離散的に)起きる現象が、ある期間内にどのように発生するのかを示す分

布で、当サイトでは以前、地震の確率計算の記事をアップした。

 

今回は、トランプのポーカーでQ(クイーン)が配られて来るという現象につい

て。くるみの場合、5回の配布の中で4回もQが配られたわけで、かなり珍し

いことのように感じられる。これは、「ポアソン・クランピング(Clumping)」と

呼ばれる現象で、頻度の低いはずの現象が短い時期に「かたまる=凝集す

る」(clump)ことだ。確率論的には、時々起こることであって、それほど不思

議でも運命的でもない。

 

所与の期間(あるいは単位時間)に、平均でλ回発生すると期待される事象

140624b2  が、実際はちょうどX回発生

  するとしよう。X=kである確

  率は、左の通り。ちなみに

  Pは、確率を表す英語、

Probabilityの頭文字、eはネイピア数2.718・・。k!はkの階乗、つまり

k(k-1)(k-2)・・・1 だ。

 

140624  ドラマの映像では、ポア

  ソン分布のグラフも映っ

  てた。左はウィキメディ

  ア、Skbkekas氏の作

  品。ドラマでもλ=1,

  4,10のグラフだった。

 

  上のグラフだと、例えば

  λ=4の場合、その2倍

以上(8回、9回、・・・)起きる確率は合計で数%くらいあると分かるわけで、

時々ある偶然なのだ。カシオの計算サイト「keisan」によると5%ほどらしい。

 

なお、トランプを配る場合だと、1回何か(Qが来るとか)が起こった時、次に

また起こる確率がかなり変わってしまうので、普通に計算する方が遥かに正

確だ。ポアソン分布をドラマで映したのは、一般性のある高級な数理モデル

だからだろう。

 

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. ポーカーの確率の最初は、くるみの仲間の手を計算したようだ。ダイ

     ヤ3、ハート3、スペード2、クラブ7、スペードQ。そこで、ワンペア

     なる確率を求めると、

 

    (5枚の組合せ)= 52 C 5

    (ワンペア2枚の組合せ)=(番号の選び方)×(絵柄の選び方)

                        =13×4 C 2

    (他の3枚の組合せ)=(ワンペア以外の番号の選び方)×(絵柄の選び方)

                 =12 C 3×4³

 

    ∴ (ワンペアの確率)=13×4 C 2×12 C 3×4³/52 C 5

                  =1098240/2598960

                  =0.4225690

                  ≒42.26%

 

      

cf. 検査精度と難病の確率、落下速度、素因数分解の暗号

                   ~『ハードナッツ!~数学girl』第2回解説

   無理数を発見した弟子をピタゴラスが殺した伝説の検証

                            ~『ハードナッツ』第3回

    ピタゴラス音律と普通の十二平均律、周波数のズレなど

                            ~『ハードナッツ』第3回

   ラブレターの換字式暗号&数字の順列パスワード~第4回

   計量文献学による解析、K特性値、筆者判定~第4回

   ハートマークと「i LOVE u」、愛の方程式~第5回

   「アッシェンフェルターのワイン方程式」の間違いと本物(原論文)~第5回

   特殊な違いの有無の判定(統計的推測、5%片側検定)~第6回

   変化点検出と外れ値、スコア(Score)~第7回

   変化点検出とスコア、具体的な計算例~最終回

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

   ポアソン分布による地震の確率計算(by政府・委員会)

 

                                     (計 4090字)

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コメント

この番組は、横浜国立大の根上生也教授が監修を務めています。第一回を見る限り根上先生の名前は何処にも出てきませが。テンメイさんのようにこんなに丁寧に見てくれる人がいて先生はきっと喜んでいると思います。今度(多分9月)会ったときにお伝えします。
42C3の話はさらっとです。

投稿: gauss | 2014年6月27日 (金) 01時34分

> gauss さん
   
こんばんは。今回も貴重な情報コメント、どうもです♪
   
なるほど。エンドロールに名前が出てなくても
監修者はちゃんといらっしゃったんですね。
大学HPでも宣伝してたから、この記事に追記しました。
   
あの方、『ガリレオ』の一部でも数学監修なんですね。
科学監修しか見てませんでした。
  
それにしても、『ガリレオ』ならまだしも、
このドラマを本気の理系目線で見てる人は
ごく一部みたいです。
もうちょっと検索アクセスを期待してたんですが、
今の所、正直言ってハズレ気味。
ま、自分が面白いし、勉強になるからいいですけど。。
  
「42C3の話はさらっと」というのは、
さらっとだけお伝えするって意味でしょうかね。
お任せしますが、数学的にはもちろん、
Qのフォーカードで負ける確率の方が問題です。
  
来週のドラマの数学は、既に去年の秋のBS放送で
軽く話題になったようですが、僕もまた
独自のこだわり方を見せようと思ってます。
その後はどうするか、まだ決めてません。
     
やっぱり、読まれない記事というのはむなしいもの。
その点、斜方投射の記事3本は、意外なほど
読まれてます。予想の5倍くらい♪
結構、初歩的な物理のツボ、あるいは穴だったかも。
    
ではまた。。

投稿: テンメイ | 2014年6月28日 (土) 00時15分

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» だるまさんがころんだよ・・・ハードナッツ! 〜数学girlの恋する事件簿〜(橋本愛) [キッドのブログinココログ]
待ちに待ったBSからのお下がり放送である。 最初のオンエアは2013年10月なので・・・大晦日の最終回まで・・・あまロスを埋めた作品の一つである。 ユイちゃんこと橋本愛の演ずるヒロインは・・・少し、アキちゃん(能年玲奈)が入っているという評判である。 もちろん・・・妄想では・・・橋本愛はアイドルグル... [続きを読む]

受信: 2014年6月26日 (木) 01時59分

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