純白の普段着、ファンキーな結婚~『続・最後から二番目の恋』最終回
人生とは 自分の未来に恋をすること
一人でするのがつまらなければ
だれかと一緒に 未来に恋をしよう
友であれ 恋人であれ 夫婦であれ 家族であれ
隣りに気の合う誰かがいてくれさえすれば
人生はさらに ファンキーになるはずだ・・・♪
☆ ☆ ☆
完結かどうかはともかく、ドラマの「形」がきちんと出来てたね♪ さすが、脚
本・岡田惠和&演出・宮本理江子の『ビーチボーイズ』コンビだ。形式美とか
様式美というものを理解してる。もちろん、繊細なディテール(細部)と共に。
宮本が3年半前、『ビーチボーイズ』の竹野内豊を主役にして作った月9『流れ
星』も、地味ながら心に沁みる、素敵な恋愛ドラマだった。原作は『クラゲマリッ
ジ』、クラゲの結婚。ドラマのラストには、水槽の白いクラゲがヒロイン・上戸彩
に重ねられた映像。一目で感心した私はすぐ、それを主題にしてレビューした。
クラゲ流星群のウエディングドレス~『流れ星』最終回
ちなみに純白は女性のための色で、男の場合、日焼けした筋肉質の身体を
覆うTシャツくらいしか、様にならないものだ。シャイな私も、実は店員にそそ
のかされて、純白のパーティー用(?)スーツを買ってしまったことがあるが、
一度しか着てない。その日も途中で家に帰って着替えたくなったほど♪
最終回の『続・最後から二番目の恋』では、吉野千明(小泉今日子)は最初か
ら、純白の普段着(サマーニット)を身に付けてた。今まで、白黒が基本だった
のに、最後はやっぱり白。ナチュラルな花嫁、普段着の輝きを放つキョンキョン。
物語も最初から最後まで、「結婚」を意識した要素を散りばめた流れ。一緒に
暮らす、プロポーズ、料理、洗濯、お風呂、結婚観。。「ノーメイク、ノーライフ」
とか言いつつ、ノーメイクの素の笑顔も見せてた。もちろんあの台詞は、コー
セーの化粧品「エルシア」への気遣いにすぎない♪
☆ ☆ ☆
そしてラストシーン。主題歌『T字路』とエンドロールが流れる直前は、長倉和
平(中井貴一)の両親の記憶と同じく、ソファーで仲良く寄り添う姿。もう、途中
から完全に読めてた。両腕で抱きつく千明の白が、優しく抱いて受けとめる和
平の白いシャツと融け合ってる。後ろには、朝の自然な光の輝きと、心地良い
そよ風の象徴としての扇風機。脇には、緑。
まさに、純白に輝く普段着のウエディングドレスを着たラストなのだ。日常的
な幸せの絶頂。ちなみに、前夜は絶頂には達してないと思う。和平がベロベ
ロに酔っ払ってたから無理なのだ♪ なまくら和平。コラコラ。
マジメな話、さんざん仲良し家族の全体を描いた上で、最後は2人きりの世界
を創り上げたのは流石の美意識だった。と言っても、2階のHな万里子(まりこ:
内田有紀)は朝までずっと、嫉妬心メラメラで聞き耳を立ててたはずだけど。。♪
「愛する人を家族に奪われる」というのは、クリスマスイブ恒例、『明石家サンタ』
の不幸話にも出て来るパターン。遥か古代に遡るなら、ギリシャ悲劇の最高傑
作「エディプス王」の構造でもあるのだ。。
☆ ☆ ☆
ところで、これは「結婚」を意味するのだろうか。もしそうなら、「最後から一番
目の恋」、つまり「最後の恋」になったということだろうか。それでも「ファンキー」
なのか。前シリーズの最終回の言葉に反して。
ラストシーンの千明のモノローグは、確かにそうゆう意味にも受け取れる。
吉野千明48歳 長倉和平52歳 足して100歳
こうなったら 目指せ 2人合わせて200歳
人生まだまだ ファンキーだ♪
あと50年、夫婦の恋愛関係を保つためには、一条さん(織本順吉)秘蔵の週
刊誌の特集が必要だろう・・・って軽口はさておき、そもそも「結婚」とは何か。。
☆ ☆ ☆
日本語で「結婚」と言うと、辞書を見ても、男女が夫婦になることとされてる。10
年以内に、「男女」という性の制限が消える可能性はあるが、いずれにせよ、
ほとんどの場合、制度的な夫婦になることを示す言葉だ。
しかし、結婚を示すフランス語の「mariage」(マリアージュ)に、「一体化、結び
つき」という意味があるのは、5年前の亀梨和也のワイン・ドラマ、『神の雫』で
具体的に書いてある。同様に、結婚を示す英語の「marriage」(マリッジ)にも、
「密接な融合」という意味があるのだ。
ピンクとブルーのマリアージュ~『神の雫』第5話
結局、千明と和平は、より合わせた1本の白い糸のように一体化し、結ばれた
わけで、その意味で「結婚」したと言っていい。50年後を目指して、今後もずっ
と一緒、仲良しのままという点も間違いない。
ただ、制度的な結婚は別問題だし、「最後の恋」かどうかも全く分からない。魅
力的な千明にも、モテまくりのお地蔵様にも、まだまだ別のチャンス=機会が
沢山あるだろう。だから、あくまでこれは最後の前、「最後から二番目の恋」。
したがって、前シリーズの説明通り、ファンキーな人生が続くのだ。。
☆ ☆ ☆
ここで、「ファンキー」とはどうゆう意味なのかを改めて考える前に、ドラマの終
盤、リビング・ルームのシーンを具体的に確認してみよう。そこでは、「最後か
ら二番目の恋」というコンセプトがしっかりキープされてた。
まず、「恋」だから、他の家族は誰もいなくなって、2人きりの世界になってる。
猫は別として♪ 熱くない、生ぬるい長倉和平がいいし、だからモテる。そう、
千明が妙な褒め方をした後、「ずっと私のそばにいろよな!」と命令。すると
和平は、「いますよ。隣に住んでるんですから」とか、茶化しながらも承諾。
同じ命令を和平がすると、今度は千明が茶化しながら承諾。何を命令して、
何を承諾したのか、微妙な線を保ってる。
そして、決定的なのは、プロポーズのやり取り。千明が、いまだにプロポー
ズなんてされたことない、悔しかったらしてみろ!、と和平に命令。すると、
オレと結婚しろ! 吉野千明!
いやだね!♡
断りやがって。。
そうゆう事じゃないでしょ♪
分かってて言ってんだよ♪
☆ ☆ ☆
ギリギリの会話が絶妙だ。つまり、千明の希望通りに和平がプロポーズして、
それを千明が断ってないのはまず間違いないけど、断ってないということさえ
ボカした表現になってる。和平も、何を「分かってて」、何を「言ってん」のか、
ボカしてあるのだ。
もちろん文脈を考えれば、「いやだね」も、「断りやがって」も、単なる仲良しカッ
プルの言葉遊び。本心では、千明がありがたくOKして、和平も喜んでる。普通
はそう考える所だろうが、別の解釈も一応可能。「真面目にプロポーズしないで
よ」、「分かってて、遊びでプロポーズしたんだよ」、という、距離をおいた会話と
も受け取れるわけだ。
あくまでファンキーな関係をキープ。だから、夫婦の安定感とは違う、恋人同士
のワクワク、ドキドキ感を持ったままでいられる。
ちなみにこの記事の冒頭に引用した、千明のモノローグも同様。誰かと一緒
に、自分の未来に恋をしよう。そう読みたくなる所だけど、1人で自分の未来
に恋をするのもアリ、という風にも読める。
☆ ☆ ☆
たまたま昨日、書店で、27日に発売されたばかりのノベライズ本(蒔田陽平、
扶桑社)を見つけたからチェックすると、アドリブではなく、(ほとんど)岡田の
脚本通りのやり取りのようだ。『ゴーイング マイ ホーム』の是枝裕和もそう
だが、実力派のベテランが書く脚本には凄いものがある。
その後のスイートな会話も絶妙。ギリギリで宙吊り状態のままなのだ。
他の男と結婚することだけは絶対に許さねぇ! 分かったか!
分かりました ♡ そんな予定もございませんが♪
それでいて、最後はちゃんと「大人のラブシーン」で終了。千明の挑発、逆ナン
パに乗るようにして、和平が抱きとめて、後ろから、立ったまま「あすなろ抱き」。
深読みしないように♪ で、途中は編集でカットして、いきなり朝になる。結局
どうなの?と、全国の視聴者が悶々と興奮して楽しめるわけだ。
まあ、真実を見抜く心眼を持ってる大人なら、明らかなことだろう。「猫は見た」、
あるいは、「万里子は聞いた」ってこと。目覚めたばかりの、えりな(白本彩奈)
や、男優の携帯番号を手に「荒野」を目指す典子(飯島直子)も、コッソリのぞ
き見してるかも。。♡
☆ ☆ ☆
それにしても、「ファンキー」とはどうゆう意味なのか。それは、峠を攻めるこ
とだ。そりゃ、ヤンキーだろ! 既に前シリーズの最終回、「最後から二番目
と考えた方がファンキー」という台詞を受けて、私は次のように書いておいた。
Yahoo!で『デジタル大辞泉』(小学館)を読むと、野生的で躍動感にあ
ふれてるとか、けばけばしいとか。けばけばしいと言うと否定的に聞こえ
るけど、もうちょっと滑稽で親しみやすい語感の言葉だと思う。クラブや
ディスコ(今でもある)で声をかけまくる男はファンキー過ぎるとして、「も
う1回、本物の恋がある」と思った方が、確かに人生のノリは明るくなる。
今回、あらためて英語の「funky」の意味をチェック。「型破りの」、「素晴らしい」
といった意味があるのは予想通りとして、語源にハッとさせられた。「輝く」とい
うのが元の意味なのだ(by Wiktionary)。
輝くという状態は、単に非常に明るい状態だけでなく、キラキラした動きとか変
化、ダイナミックなきらめきを感じる。見る側にとっては、ときめきをもたらすもの。
最後から二番目の恋と考える方が、次を夢見る輝き、ときめきにつながるから
ファンキー。千明の存在は時々、和平の心の時計を型破りのスピード感で動か
すから、ファンキー。そして、自分の部屋で、千明との実らぬ恋を思い描き続け
る万里子も、独特のファッションも、ファンキーなのだ。
私は前シリーズの終盤から見始めたから、その前はほとんど知らない。ただ、
オフィシャル・ガイドブックの名言集で確認すると、和平と金太郎(佐津川愛美)
&秀子(美保純)との三角関係も、ファンキーと呼ばれたらしい♪ 確かにそれ
は、置物みたいなお地蔵様の日常に、型破りの輝きや躍動感をもたらしてくれ
ただろう。千明ほか、野次馬たちにとっても。。
☆ ☆ ☆
さて、ではこの続編ドラマは、「最後のドラマ」なのか、「最後から二番目のドラ
マ」なのか♪ 分からない所がまたファンキーだが、ちょっと考えてみよう。
まず、先日行われたファン・ミーティングで、『北の国から』みたいな人気シリー
ズとして続けて欲しいと頼まれた中井貴一は、「続きをやるとするなら、次は
(北海道)富良野で」と応答。するとキョンキョンは、あの有名な主題歌を口ず
さんで会場を盛り上げたそうだ(毎日新聞・まんたんウェブ)。
一方、この時にキョンキョンは最終回の撮影直前で、「灰になるまで燃え尽き
たい」とも語ってる。もちろんこれは、超有名マンガ&アニメ、『あしたのジョー』
のラストだ。美青年の主演で2011年にも映画化されたし、ボクシングに興味
ない女性でも流石に知ってるだろう・・・というのは、一部読者の方々へのご挨
拶だったりする♪ 総合マニアック・ブロガーという商売は、多方面への気遣い
が不可欠なのだ。商売じゃないだろ!
あしたのジョー(矢吹丈)は最後、白い灰になって、リングのコーナーで座った
まま目を閉じ、うなだれる。死んだ、死んでないという、ファンの熱い論争があ
るけど、テレビアニメとしては10年後に一応、『あしたのジョー2』として甦った
のだ。元のアニメの不足を補う形で。。
☆ ☆ ☆
『最後から二番目の恋』の場合、千明と和平だけ見ると、これで完結でもいい
と思う。まさに2人が激しく闘った後、白い灰になったわけで、終わりの形が出
来てるのだ。The End。
でも、さんざん重い病気だと言われて来た、死亡フラグ立ちまくりの真平(坂口
憲二)が何事もないままになってるし、万里子が応募した同性愛(レズビアン)
の脚本の行方も気になる。フツーに考えるなら、見事に優勝、500万円(?)を
ゲットして、千明のプロデュースで映像化される所だろう。で、千明はそのまま
(カメオ?)出演。三角関係の敵役として、和平も出るとか♪
脚本の仕上げは、ハルカ先生(益若つばさ)が手伝ってくれるはず。そもそも、
今まで千明たちが作って来たドラマ『ビター・シンデレラ』でも、市長(柴田理恵)
が活躍するはず。そこでは、超スイートな『最後から』と違う、苦みを含んだビ
ターな恋物語が展開されるだろう。
典子&広行(浅野和之)の荒野夫婦の今後も気になるし、若いミュージシャン
と同棲し始めた祥子(渡辺真起子)、名古屋で元カレとひとまず同棲するらしい
啓子(森口博子)もまだまだファンキー♪ 少なくとも、あと1回スペシャルを作
るのは簡単だと思う。続編の平均視聴率12.9%、最終回13.8%。それなり
の実績も残してる。
したがって、岡田はまた脚本を書くのだ。そして最後はまた、千明と和平のプ
ロポーズのやり取り。「もう一度君に、プロポーズ」。で、アホ部長が「他局のド
ラマとカブってるから変更しろ」と言って来るとか♪
☆ ☆ ☆
まあ、金八先生=和平の有難いお話にもあったように、部長には部長の現場
があり、スタッフにはスタッフの現場がある。みんな、それぞれの現場で頑張っ
てるのだ。
視聴者としては、再び『最後から』の現場が復活することを夢見ながら、それ
ぞれの現場に戻って、ファンキーに生きるしかない。フィクションの世界もいい
けど、自分の未来に恋をしよう。できれば、誰かと一緒に ♡
そろそろ私も、ネットという現場から、実生活という現場に戻る時間だ。ホント
はこの後、『T字路』の歌詞の分析・解釈とか書き添えようと思ってたんだけど。
最後はやはり、この言葉しかないだろう。
お達者で・・・♪ ☆彡
cf. アラフィフの明るい切なさ~『続・最後から二番目の恋』第1話
『続・最後から二番目の恋』第2話、超軽~い感想♪
『続・最後から二番目の恋』第3話、超軽~い感想
『続・最後から二番目の恋』第4話、軽~い感想
『続・最後から二番目の恋』第5話、僅か1600字の感想
『続・最後から二番目の恋』第6話、軽~い感想&雷雨後ラン
『続・最後から二番目の恋』第7話、軽~い感想♪
『続・最後から二番目の恋』第8話、軽~い感想♪
『続・最後から二番目の恋』第9話、軽~い感想
『続・最後から二番目の恋』第10話、2300字の感想
・・・・・・・・・・・・・・・
『続・最後から二番目の恋』オフィシャル・ガイドブック感想&ブラジル・ネイマール
(計 5837字)
| 固定リンク | 0
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 1+2+3+4+・・・=-1/12、オイラーの数式とラマヌジャン総和法による「証明」~NHK『笑わない数学2』第7回(2023.11.30)
- 円周率 πと自然対数の底eが代数的数でなく超越数であることの証明(背理法)、円積問題~NHK『笑わない数学2』第5回(2023.11.22)
- ケプラー予想の前に平面充填問題、どんな四角形でも平面を埋め尽くせることの幾何学的証明~NHK『笑わない数学2』第6回(2023.11.18)
- 結び目理論の指紋、アレクサンダー多項式と交点の数、領域、行列式の計算方法、べきと符号の正規化~NHK『笑わない数学2』第4回(2023.11.03)
- T・DK、トラちゃんウサちゃん50mバトンリレーで勝利!、熱い女性リーダーと社長・会長の応援で(NHK『魔改造の夜』)(2023.10.28)
「芸能・アイドル」カテゴリの記事
- アリス・谷村新司追悼~ボクシングの曲『チャンピオン』の歌詞モデル、カシアス内藤の引退試合(沢木耕太郎『一瞬の夏』より)(2023.10.17)
- 外資系FTIコンサルティングとジャニーズ事務所、「氏名」NG記者リストの感想&11km走、1km4分半バトル(2023.10.05)
- ライオンの娘がシマウマ・・藤島ジュリー景子も被害者だったのか?&10月の残暑で9kmラン(2023.10.03)
- ジャニーズ事務所の新社長・東山紀之、記者会見で覚悟と誠実さは見えたが、前途多難・・&11kmジョグ(2023.09.08)
- 再び残暑7kmジョグ&短い芸能つぶやき(2023.08.30)
コメント