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ハートマークと「i LOVE u」、愛の方程式~『ハードナッツ』第5回

NHK『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~第5話は、「ワインと殺 

意の方程式」(脚本・山浦雅大)。メインの数式は、「アッシェンフェルターの 

ワイン方程式」とか呼ばれるもので、そこに不倫のメッセージが隠されてい

たのが、本妻の殺意を呼び起こすキッカケの1つになってた。

 

という訳で、本来なら今回はまず、このワイン方程式の記事をアップすべき

所だが、これは後回しにしよう。というのも、ドラマの式部分的に間違って 

る可能性が高いからだ。しかも、おそらく書き間違いのレベルではなく、もっ

と本質的にまずい事をやってしまってる。つまり、ネットや一般書に溢れてる 

間違った式を、確認せずにそのまま利用してしまったのだろう。

 

ある意味、間違った情報の「コピペ」だから、STAP細胞騒動の後の国営放

送が流すのはビミョーな所。たとえドラマであっても、真面目に受信料を払っ

てる数学好きとしては、かなり引っ掛かってしまうのだ。

 

まだ、確率70%くらいの自信しかないし、元の英語論文データが専門的な

書き方になってるので、もう少し調べてみる必要がある(内容はそれほど難しく

ない)。もちろん、もし私が間違ってたら訂正して謝罪するが、まず間違いない

と思ってる。実際、ウチでは過去、度々その種の間違いを正確に指摘して来た

のだ。詳しくは、また後ほど、ということで。。

 

 

(☆追記: 翌日、間違いを詳しく解説した記事をアップした。

  「アッシェンフェルターのワイン方程式」の間違いと本物(原論文)~第5回 )

 

 

           ☆          ☆          ☆

という訳で、今夜はとりあえず、「密かな愛の方程式」を解き明かしておこう♪

不倫する2人の間で交わされた数式は3本。1本目がハートマークの方程式

(x、yの陰関数)で、2本目と3本目はお遊びの愛のメッセージだった。

 

先に、簡単な式から片付けよう。終盤、数学ガール・くるみ(橋本愛)が黒板

に書いてた2本目の式は、次の通り。x、i、u、3つの変数に関する3元1次

不等式だった。

 

        9x-7i > 3(3x-7u)

 

これを変形すると、  9x-7i > 9x-21u

           ∴ -7i > -21u 

           ∴   i < 3

 

ここで、中央の「<3」を左に90度回転させて合体させれば、

                i  u 

 

これだけでフツー、「i LOVE u」(アイ・ラブ・ユー=愛してる)と読めるだろう

が、3本目の式で、わざわざ「」の読み方を説明した形になってた。

 

          2(x+5) < 2x+(1/7)E

 

変形すると、  2x+10 < 2x+(1/7)E

        ∴    10 <  (1/7)E

        ∴    0  E

 

ここで、 左の「」を180度回転、中央の「」を左に90度回転させれば、

              

 

不倫でなければ、熱い理数系カップルの微笑ましい遊びだったのだ。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

最後に、1本目の方程式。これは高校3年の数学、数Ⅲの発展問題といっ

た所だろう。一見、難しげな方程式に見えるが、グラフの概形を書くだけな

ら一応、単なる高校レベルなのだ。

 

140723b 左図の上が、元

 の式。下はそれ

 を普通の「y=」

 の形(陽関数)

に直したもの。

 

途中の「±」(プラス・マイナスの二重符号)で、+(プラス)がハートマークの

上側、-(マイナス)がハートマークの下側の式になる。

 

まず、 y=(3乗根)x² y=±√(1-x²) の合成と見れば、下のようなグラフ

がごく大まかに書けるだろう。青緑が合成する2つ(後者は単位円x²+y²=1)

で、ピンクが元のハート。大阪教育大・友田勝久氏のフリーソフト、「Grapes

7.00」で描いたものだ。

 

理由は調べてないが、失礼ながら、グラフの精度は高くないようだ。細かい部

分(グラフの端、接線の傾き、極大・極小、変曲点など)は、別扱いの計算で

確認する必要がある。例えばハートの中央、尖った2点は、本当は点(0,±1)

で、それらから左右の曲線がほぼ真上に向かって伸びていくことになる

(y´=±∞)。

 

 

140723a_2

 

 

次に、ハートの上側の式と下側の式、それぞれの微分、2階微分、凹凸付き

増減表は次の通り。xの代わりに-xを代入しても同じ式になるから、グラフ

はy軸対称。よって、0<x<1で考えて、 x→+0 の極限(lim)と x→1-0

の極限も考慮した。

 

140723c2

 

 

140723d2

      

 

なお、上側の式「y上」で、y´=0、つまり極大となるxの値αは、カシオの計算

サイトやフリーソフトMaxima」で近似値を求めると、約0.617極大値は約

1.51になった。これについては、上のグラフは正確に描いてる。

 

140723e2  一方、下側の式「y下」で、

  y´´=0、つまり変曲点

  なるxの値βは、約

  0.293。この時のは、

  -0.515(左図はカシ

  オHPのキャプチャー)。

  グラフから数値を読み

  取るのは難しいが、正

  しい変曲(S字カーブ)

  になってるようだ。

 

  それでは、今日はこの

  辺で。。☆彡

 

 

 

cf. トランプのポーカーの確率計算

          ~『ハードナッツ!~数学girlの恋する事件簿~』第1回解説

   検査精度と難病の確率、落下速度、素因数分解の暗号

                     ~『ハードナッツ!~数学girl』第2回解説

   無理数を発見した弟子をピタゴラスが殺したという伝説の検証

                             ~『ハードナッツ』第3回

   ピタゴラス音律と普通の十二平均律、周波数のズレなど~第3回

   ラブレターの換字式暗号&数字の順列パスワード~第4回

   計量文献学による解析、K特性値、筆者判定~第4回

   特殊な違いの有無の判定(統計的推測、5%片側検定)~第6回

   変化点検出と外れ値、スコア(Score)~第7回

   変化点検出とスコア、具体的な計算例~最終回

 

  (普通の文字 2221字 ; 図中の手書き文字 約400字 ; 計2621字)

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受信: 2014年7月23日 (水) 04時33分

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