猿の自撮り写真(selfie)、機械の自動撮影~著作権と「主体」
お盆前の仕事に追われる中、時間がないのにちょっとハマってしまったニュー
スがあるから、今日の分の記事にしてしまおう。
最初はエキサイト・ニュースで、「猿の自撮り写真、著作権は誰のもの?」と
いう記事が目に留まったのだ。これは二重に面白い話で、猿が自分の写真
を撮る様子を想像するだけでも頬が緩むし、その妙な写真の著作権がどう
なるのか、人間たちが真面目に議論してるのも興味深い。
そこには、私の個人的事情も関わってる。このブログの中に時々、ウィキペ
ディア・グループのウィキメディア(Wikimedia)の写真を引用させてもらって
て、その際に「パブリック・ドメイン」(public domain:公的所有)という一言
をよく書き添えてるのだ。ウィキで公の所有物とされてるから著作権は問題
にならない、という意味で念のために書いてる。
今回の猿の自撮り写真もまさに、そ
のパブリック・ドメイン扱いされたも
のなのだ。一応、小さく縮小したも
のを1枚だけ挿入させて頂こう。こ
のカメラマン・・・ではなく、カメラ・
モンキー。器用に左手1本で、カ
メラを持ってシャッターを押してる
ようだ。カシャッという音や感触が気
に入ったようで、何百枚も繰返し撮影。「自分撮影」も混じってたらしい。
ただ、カメラの素人・・・じゃなくて「素猿」なので、ほとんどピンボケ写真だった
とのこと。表情は別に失敗ではなく、元々こうゆうユニークな顔つきのようだ♪
「he」(彼) と書いてあったり、「female」と書いてあったりするので、オスかメス
かは一応、不明としとこう。おそらく、雌だと思う。日本の女の子たちのプリクラ
好きと似たようなものかも(笑)。
☆ ☆ ☆
さて、このニュースには主要な源泉(ソース)が2つある。その一つはAP通
信が世界に配信した記事で、エキサイトの日本語ニュースはそれを短くまと
めて翻訳したもの。もっと長い英文が、ネットのあちこちで公開されてた。も
う一つは後述する、ウィキメディアの公表文書だ。
問題の猿は、インドネシアに生息するクロザル(crested black macaque)
で、チンパンジー並みの賢さとのこと。カメラを与えたのは、英国の野生写真
家・デイヴィッド・スレイター(David Slater)氏。3年前、2011年の夏に話題
になって以降、写真が拡散して、複数の「編集者」たちによってウィキメディア
に登録。現在まで、鮮明な写真が数枚、無料公開された状態になってる。
スレイター氏がウィキに削除要請したのは今年の1月らしいが、8月になって、
ウィキが初めて、「Transparency Report」(透明性を確保するレポート)を
公開。その中で、この猿の写真の著作権問題を紹介したことで、一気に世界
中で話題となったらしい。
☆ ☆ ☆
左がその箇所の説明全文、
「Monkey Selfie」(猿の自
撮り写真)。AP通信の英語記
事より簡素だから、APその他
は独自取材を加えたのかも
知れない。他にネット上で、ウィ
キの公式文書が見当たらない
のだ。
とにかく、写真家から取り下げ
要請が来たけど、「我々は同
意しなかったから、その要請
を却下した」と書いてある。
「We didn’t agree,so we denied the request.」
AP通信の報道やウィキの一般的方針で補うと、要するに、シャッターを押した
主体が人間ではなく、(米国の?)法律的に著作権は認められないから、この
場合は自動的にパブリック・ドメイン(公的所有)となる、といった説明らしい。
ワシントン・ポストHPが掲載したAPのニュースには、ウィキの女性担当者(ス
ポークス・ウーマン)の名前が書いてあったし、USA TODAYの動画には美
人の映像まである。単なる匿名「編集者たち」の全体的意見ではないようだ。
まあ、写真家の取材費用や損害(逸失利益)もかなりの額だろうけど、この騒
動による知名度上昇のプラスもかなりのものだろう。
☆ ☆ ☆
ところで、私も含めて一般市民にとって、猿にカメラ撮影させる機会というの
はほとんど無いけど、機械に自動撮影されることならいくらでもある。最先端
の監視システムなら、映像から個人を特定するのは一瞬で、しかも精度が非
常に高いという話もある。
すると、自動撮影した写真や映像の著作権はどうなるのか。さらに、自動的に
個人認識情報も加えた画像が、機械的にネットに流れた場合、どう対処するの
か。もちろん、機械の場合は、設置者やシステム運営者(つまり人間)が著作
権や法的責任を持つのだろう。著作権を持たない関係者に対しても、他人の
肖像権やプライバシーの侵害に対する法的責任を問うことは可能なはず。
ただ、今やロボットとかアンドロイド、あるいは人工知能というものが急速に発
達して、人間の領域に入り込みつつある。この変化の速さに、法や司法、ある
いは社会倫理があまり対応できてない気がするのだ。
☆ ☆ ☆
素敵なアンドロイドの自撮り写真がネット公開されて、恋人の(つもりになって
る)人間が取り下げや著作権を主張。そんなSFマンガか映画みたいな世界は、
少なくとも技術的には、すぐそこまで迫ってると思う。
人間とは何か。「主体」とは何か。まだ多少の余裕がある今の内に考えておい
ても、損はないだろう。いずれ、こうした問題を考える権利さえ、人間から機械
へと委譲されてしまう可能性も十分あるのだから。機械を始めとして、人間以
外のものが実質的に主体、主人公となっていく時代の流れは、もう止められ
ないのだ。良し悪しや好き嫌いは別として。
ちなみに今現在はまだ、このブログの執筆者は、自分を人間&主体だと思っ
てるらしい♪ 幸せな時期はあと何年、続くのだろうか。「この文章は人間が
書いたから著作権は認めない」(笑)と機械判定されてしまう日を想像しなが
ら、それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 手助け(help)とは何か~チンパンジーの研究をめぐって
(計 2432字)
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