『HERO 2』第8話、暴力団の犯罪と一般市民
年に1度の自転車レース直前で、ドラマやブログどころじゃない状況だけど、
昔から関心のあるテーマだし、ごく簡単に感想その他をまとめとこう。裏番組
に好評だった城島茂の24時間マラソンSPが入ったにも関わらず、『HERO
2』第8話の視聴率は大台、20.5%とのこと。ホント、根強い人気だね。
さて、今回も非常にシンプルで古典的なヒーロー物語で、悪の暴力団に正義
の久利生検事(木村拓哉)が敢然と立ち向かうという筋書き。外見的にも、型
にハマった対比が付けられてる。悪そうな人、良さそうな人。服装、顔つき、
表情、仕草。
ただし、暴力団というものを、幹部、下っ端、顧問弁護士に分けて描いてる点
は丁寧だし、暴力団を倒すのではなく、身代わり出頭の下っ端構成員(池内
博之)を不起訴とするに留めた辺りは、ヒネリがあって芸が細かい所だった。
もちろん、コネタでホノボノさせたり笑わせたりする技も健在。水羊羹(ようか
ん)をワイワイ食べるシーンや、暴力団に襲われないためと言うより、襲って
くれとアピールしてるような変装(笑)。あるいは、「身代わり」、「日替わり」な
どの言葉遊びとか♪
ちなみに最近は、言葉の後ろから前へと逆向きに辞書を引く「逆引き」がネッ
トでもすぐ出来るから、似た言葉は簡単に検索できる。実際、Yahoo!辞書
で「がわり」で終わる言葉を検索すると、日替りも身代りもヒットした。脚本は
いつもの通り、実力派のベテラン、福田靖。
☆ ☆ ☆
さて、暴力団の対立抗争というのは、テレビ、映画その他でお馴染みのもの
で、時々ニュースでも目にすることがある。ここ最近だと、最も騒がれたのは
九州の抗争だろう。
2006年以降、一般人まで巻き込んだ事件が続いたので、2つの団体を全
国初の「特定抗争指定暴力団」に指定(2012年、改正・暴力団対策法)。
去年から今年にかけて、ひとまず抗争集結という形になったらしい。
もちろん今後も警戒が必要だが、実際問題、暴力団はどのくらいの人数がい
て、どの程度の犯罪を引き起こしてるのか。私自身も含めて、あまり知らない
と思う。今回のドラマでも、テロップや台詞、HPでの補足的説明はない。
そこで、法務省、警察庁による公式データをごく簡単にチェックしてみた。もち
ろん、それは表面的なものであって、裏の分かりにくい実態を表してないといっ
た批判もあるだろうが、とりあえずの基本、スタート地点という事だ。
☆ ☆ ☆
まず、最新の平成25年版の犯罪白書を法務省HPで見てみよう。ここ20年
で暴力団構成員等の検挙人員は徐々に減少。平成24年(2012年)だと、
計24000人ほどとなってる(一般刑法犯14500人+特別法犯9600人)。
一般刑法犯のみの検挙人員の全体は約29万人だから、暴力団がその20
分の1を占めて
ることになる。
特別法犯も含め
ると、暴力団は
約30分の1。
☆ ☆ ☆
一方、警察庁の「平成25年の暴力団情勢」を見ると、ここ10年で暴力団員
(構成員+準構成員)
はかなり減って、平
成24年の時点だと
約63000人。とい
う事は、僅か1年間
で3人に1人以上が
検挙されてることに
なる。
もちろん、普段から
警察・検察に目をつ
けられてるという事
情はあるだろうけど、
それにしても多過ぎる
だろう。一般人だと、
数百人に1人の割合なのだから。
ただし、検挙理由の1位は断トツで覚せい剤(特別法犯)。続いて多いのが、
傷害、窃盗、詐欺などだ。殺人は約100人で、これも全体(約1000件だか
ら2000人くらいか)の20分の1くらいとなる。ということは、暴力団の犯罪
の中で、殺人が目立って多いわけではない。一般の犯罪者と同じく、200人
に1人くらいの割合で、殺人でつかまるわけだ。
☆ ☆ ☆
では、今回のドラマで扱われた、暴力団同士の抗争というのはどうなのか。
再び警察庁のデータを見ると、ちょっと意外な事実が分かる。簡単に言うと、
かなり少ないと言うか、ごく僅かなのだ。
発生事件数というのは、数え方が特殊だから飛ばして、発生回数以下を見る
と、銃の使用は10回程度、死者・負傷者が共に5人程度。一般人の死傷者
というのはほとんどゼロとなってる。この辺り、暴力団の対立にカタギを巻き込
まないような配慮があるのかも知れない。まあ、カタギへの配慮というより、余
計な敵を作らないための狡猾さかも知れないが。
☆ ☆ ☆
簡単にまとめると、暴力団は数が少ないわりに、犯罪者(正確には検挙者)
が非常に多いが、殺人が特に目立つとは言いにくいし、一般人が対立抗争
に巻き込まれる確率はほとんどゼロと言っていい。
だからと言って、対立抗争が許容されるわけではないが、フィクションの世
界では、派手な犯罪を誇張してる可能性が高い。派手なことをすれば、処罰
される確率も高まるから、冷静に計算できる幹部なら、なるべく避けるだろう。
もちろん、検察官や事務官に手を出すなんていうのは論外で、検察・警察を
真正面から敵に回すことになる。だからこそ、あのいかにも悪そうな顧問弁
護士(鶴見辰吾)も、余計な事をしないように組の者たちに伝えたわけだ。
ちなみに彼、プライベートでは自転車好きの芸能人としてかなり有名だった
りする♪ 熱いアスリートなのだ。
☆ ☆ ☆
話を戻すと、私自身は、暴力団っぽい男にからまれたことが10回弱くらい(?)
あるが、ホントに暴力団員かどうかは怪しいし、実害を受けたことはない。周囲
でも、実害を聞いた覚えはないのだ。
それに対して、自転車やバイクで真面目に走ってて、自動車(四輪)にひき殺さ
れそうになったことなら何百回もあると思う(特に左車線での猛スピードの追い
越し)。その内の何回かは、明らかに意図的なものだった。
これは統計でもハッキリ表れてて、自動車(バイクも含む)関連の犯罪者(自動
車運転過失致死傷等)は圧倒的に多い。窃盗と合わせると、刑法犯の8割を
超え、その大半は一般人によるものなのだ。
暴力団を悪として強調し、打ち負かすと、分かりやすいし、大部分の人の共
感を得られる。でも、多くの人がおかしてる犯罪を悪として強調すると、視聴
者その他の反発を招く。あるいは、他人事のように流されたり、チャンネルを
裏番組へと変えられたリする。文科省はともかく、テレビ局サイド、特に脚本
家は分かってるだろう。善悪のつけ方、選び方、作り方。
だからこそ、私が今回のようなドラマを見る時は、統計データも見るし、いか
にも悪そうな暴力団の姿の向こう側に、フツーの姿で犯罪をおかす大勢の
一般人を「見てる」わけだ。その中に自分が入らないよう、十分注意しようと
思いながら。。
☆ ☆ ☆
視聴率が高いドラマというのは、実は逆に、「見るのが難しい」ドラマだろう。
「スッキリする」のが簡単だとしても。。ホントは暴走族やマイルドヤンキーの
話にも触れるつもりだったけど、もう時間が無くなってしまった。
今回、本当に不起訴が正しいのかどうか、それも厄介だから保留しとこう。
1人の目撃者の証言など、出頭者が身代りだという根拠としては弱いものに
過ぎない。あくまで、始めに結論ありきのドラマ的ストーリー展開だった。
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
cf. 「暴力団をなくすために山口組を守りたい」~組長インタビュー(産経新聞)
芸人・暴力団・一般人~上岡龍太郎の刺激的発言(inバブル末期)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
起訴か不起訴か、検事の倫理と現実~『HERO 2』第1話
『HERO 2』第2話、軽~い感想&6日連続ラン
新・創世記、「Let there be surf」(波あれ)~『HERO 2』第3話
仲間、身内という存在~『HERO 2』第4話
『スマスマ』ネイマール笑顔&『HERO 2』第6話&6日連続走
『HERO 2』第7話、軽~い感想♪
チームワークと善悪~『HERO 2』第9話
事件と人生、真正面に向き合うとは~『HERO 2』第10話
LIE STOPS HERE(嘘=夢はここにある)~『HERO 2』最終回
(計 3240字)
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