数学甲子園2014準々決勝、全問コメント&問題10の解答・別解
(☆16年4月の追記: 関連する最新記事をアップ。
数学甲子園2015準々決勝、全問コメント&解き方 )
☆ ☆ ☆
いつの間にか、数学甲子園の公式HPで、2014年の本選・準々決勝の問題
が公表されてたので、軽い記事をアップしとこう。記事自体は軽いけど、その
準備は意外と重かった♪ 解くのはすぐとして、問題10の別解を力づくで書く
のが大変だったのだ。
日本語表現で10問、高校数学の標準問題。英語表現で5問、やや簡単な問
題。合わせて15問をチーム全員で30分で解くということだから、優勝した灘
高校・おめがチームみたいに5人のメンバーがいれば、1人あたり3問で30分。
1問10分。最終的な答のみが採点対象みたいだから、通過した上位15チー
ムにはおそらく、満点チームが多かったんだろうと想像する。
以下ではまず、日本語の問題1~9と英語の問題11~15に一言ずつコメント。
その後で、問題10の解答と別解(途中まで)を示すことにする。問題文は、10
番以外は掲載しないので、公式サイトを御覧あれ。
ちなみに予選問題については先月既に、1問だけ解説してある。
四角形の外接円の半径の求め方~数学甲子園2014予選問題13の解説
☆ ☆ ☆
問題1 x=-3+2i の時、5次式の値を計算する。直接代入してもいいし、
5次式をx-(-3+2i)で割ってもいい(組立除法も可)。ただ、普通
は虚数の計算が面倒だから、(x+3)²=-4と見て、5次式を(x+3)²
で割る所か。
問題2 階差数列が(等差数列)×(等比数列)となってる漸化式から、一般項
を求める。1からn-1まで式を書き並べて辺々足し算、簡単にした後、
セオリー通り、「公比」に着目すればいい。
問題3 四面体で、上の頂点から底面に下ろした垂線ベクトルを求める。垂線
の足が底面上にあることと、2つの底辺ベクトルとの直交条件(内積0)
を用いればいい。
問題4 絶対値記号付きの定積分で与えられた関数の最小値。絶対値記号の
中の2次式が因数分解できるので、0以上か負かで、場合分けすれば
いい。折り曲げられた放物線のグラフをさらっと書いてもいいけど、参
考程度にしかならないはず。
問題5 ちょっと面白い整数問題で、ある意味、「覆面算」とも言える。ただ、場
合分けは少ないし、勘が鋭い生徒なら、5つの文字が1~5のどれな
のか、直感的に見抜くかも。
問題6 ∞-∞(無限大マイナス無限大)の不定形の極限値。(1/3)乗になっ
てるから、直ちに3乗-3乗の形に変形する所か。
問題7 cos3θの方程式、つまりcosθの3次方程式を与えて、4次式の値を
計算する。すぐに方程式が解けてしまって、角度も分かるけど、もっと
上手いやり方があるということだろうか。
問題8 数Ⅲの置換積分。log xをtと置くだけ。
問題9 複素数平面で、与えられた2つの頂点から、三角定規(30度・60度・
90度)の残り1つの頂点を求める。点Aをまず原点に平行移動して、
ABを回転拡大(複素数の掛け算利用)。逆向きに平行移動して終了。
☆ ☆ ☆
問題11 ちょっと英文の後半が気になるけど、5回のテストの平均点を一定
範囲にするための得点計算。中学校レベルの不等式。
問題12 文字(パラメーター)が入った2次方程式の2解の条件から、解と文字
を求める。解と係数の関係を利用すれば、暗算レベル。
問題13 凸多角形の辺の数と対角線の数の関係。中学の図形&計算。
問題14 三角形ABCの内部の点Pで、「中心角」120度で3分割した後、
AP²+BP²+CP²を計算。余弦定理と面積公式を利用。余弦定理
だけで解こうとすると厄介。
問題15 自然数25の階乗(!)で、右端にゼロがいくつ並ぶか。つまり、
(2×5)が何組あるか。2は溢れてるので、5の数だけが問題。
最後の25が、5×5となってる所が軽いひっかけ♪
☆ ☆ ☆
では、上で飛ばした問題10について。まずは問題と普通の解き方を提示しよう。
xに関する不等式√(2-x) > ax+bの解が1<x≦2となるための、
a、bに関する必要十分条件を求めなさい。
解答 xy平面で図形的に考える。y=√(2-x)のグラフ(横向き放物線の上
半分)が直線y=ax+bの上側にあるようなxの範囲が、ちょうど
1<x≦2になるための条件を求めればよい。
左図を参照する
と、そのための
必要十分条件は、
直線が点(1,1)
を通り、点(2,0)
の下側を通ること。
∴ 1=a・1+b かつ a・2+b<0
∴ a+b=1 かつ 2a+b<0 ・・・・・・ (答)
☆ ☆ ☆
解説&感想 高校時代、この種の無理不等式の問題はグラフを利用する
ようにという話を見聞きして、納得できなかったから、普通に
場合分けと計算で解いてた覚えがある♪
実際、多くの場合、パラメーターは0個か1個だから、わざわざ
グラフを書く必要性を感じなかったのだ。ただ、この問題みたい
にパラメーターが2つ入ってしまうと、グラフを使わずに解くのは
非常に面倒で複雑。ほとんど初めてグラフの有難さが分かった。
最後の答は、変形して、「b=-a+1 かつ b<-2a」とか、
「b=-a+1 かつ a<-1」と書いてもいいが、趣味の問題
だろう。もし点(a,b)の存在範囲を図示するのなら、最後の答
が一番わかりやすいと思うけど、ここでは条件を求めるだけだ。
高校・大学レベルのテストだと、上の解答で十分のはず。ただ、
ひそかに図形の性質(特に放物線の形)を使ってることもあって、
論理構成的にはちょっと微妙な感もある。
☆ ☆ ☆
そこで私は、グラフなしでやってみたけど、全部ここに書く気に
ならないくらい大変だった。一応、前半の部分だけ書いておく
ので、腕に自信のある方は、後半の難所をお試しあれ♪
(別解) まず、a、bの条件で場合分けして、不等式の解(xの範囲)を
求め、その解が1<x≦2と一致するための必要十分条件を
考える。(根号の中の式)≧0という実数条件から、解の大前
提として、2-x≧0、すなわち x≦2が常に必要となる。
(1-1) a=0 かつ b<0の場合
与式は √(2-x)>b これは直ちに成立。
よって大前提より、 解は x≦2 。
(1-2) a=0 かつ b≧0の場合
与式は両辺2乗しても同値で、 2-x>b² ∴ x<2-b²
この時、大前提x≦2も成り立つから、解は x<2-b² 。
(2) a>0 の場合
不等式の右辺の符号によって、解を左右2つの範囲(小さい方と
大きい方)に分けて求め、後で左右を連結して最終的な解とする。
(ア) まず、(不等式の右辺)ax+b<0の範囲で考える。
この時、不等式は直ちに成立。
つまり、x<-b/aなら、後は大前提x≦2を考慮するのみ。
ここで (-b/a)≦2 を解くと、b≧-2a 。
よって、「a>0 かつ b≧-2a」の場合、
解の左側は x<-b/a 。
また、「a>0 かつ b<-2a」の場合、
解の左側は x≦2 。
これは大前提そのものだから、この右側に解は無い。
よって、最終的な解が x≦2 となる。
(イ) 次に、ax+b≧0の範囲、すなわちx≧-b/aで考える。
与式両辺は0以上だから、両辺2乗しても同値。
∴ 2-x>(ax+b)²
∴ a²x²+(2ab+1)x+b²-2<0
左辺をf(x)とおくと、条件は
D>0 かつ α<x<β
(ただし、Dはf(x)=0の判別式、αとβは異なる2実解)
D>0より、(2ab+1)²-4a²(b²-2)>0
∴ 4ab+8a²+1>0
また、α<x<βより、
{-(2ab+1)-√D}/2a² < x < {-(2ab+1)+√D}/2a²
ここで、α、βと-b/aの大小関係を考える。
α=-b/a-(1+√D)/2a²だから、α<-b/a。
また、f(-b/a)=・・・=-(2a+b)/a
既に今、2a+b≧0の時だけ考えればいいので、f(-b/a)≦0
更に、f(2)=・・・=(2a+b)²≧0だから、
f(x)のグラフと横軸の関係を考えれば
-b/a≦β≦2
以上より、a>0かつb≧-2aの場合、
解の右側は-b/a≦x<β
よって、解の左側であるx<-b/aと連結すると、
最終的な答は、 x<β 。
(3) a<0の場合 (☆以下、この場合の議論は2日後の追記)
a>0の場合と同様、不等式の右辺の符号によって、解を左右
2つの範囲に分けて求め、後で左右連結して最終的な解とする。
(ア) まず、(不等式の右辺)ax+b<0の範囲で考える。
この時、不等式は直ちに成立。
つまり、x>-b/aなら、後は大前提x≦2を考慮するのみ。
ここで (-b/a)<2 を解くと、b<-2a 。
よって、「a<0 かつ b<-2a」の場合、
解の右側は (-b/a)<x≦2
また、「a<0 かつ b≧-2a」の場合、
解の右側は存在しない。
(イ) 次に、ax+b≧0の範囲、すなわちx≦-b/aで考える。
与式両辺は0以上だから、両辺2乗しても同値。
a>0の時と同様に考えて、条件は
D=4ab+8a²+1>0 かつ
{-(2ab+1)-√D}/2a² < x < {-(2ab+1)+√D}/2a²
以下、省略。
☆ ☆ ☆
グラフなら明らかな、a≧0の場合の処理だけで、普通の場合分けだとこれほ
ど大変な作業になる(上ではa<0の場合も少し追記してある)。分けるのも大
変。後でつなぐのも、まとめるのも大変だ。もう疲れたし、ほとんど読者がいな
い話だろうから、この辺にしとこう♪
解き方によって、これほど手間や効果が違ってしまうというのが、数学の奇妙
な所でもあり、面白い所でもある。まあ、いずれ高性能のコンピューターを全
面的に数学で使い始めると、高校・大学レベルの場合、解き方の工夫という
のは人間的な趣味ということになるのだろう。
ちなみにコンピューター将棋だと、今現在、専門家たちが工夫を重ねてるし、
それでもまだ必勝法や結論のようなものには達してない。まあ、囲碁も含め
て時間の問題だとは思うけど。。
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
cf. 数学甲子園2015、全20問の問題、解き方、感想
数学甲子園2013予選のポイント、問題15の解説&解答
数学甲子園2012、予選問題&3日ぶりのラン、まだ暑い・・
数学甲子園2012・サンプル問題の解き方&リハビリジョグ2
数学の甲子園、全国数学選手権の問題にチャレンジ☆ (2011年)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Z会「超難問コロシアム2014」、数学・例題4の解答
(計 4192字)
(追記 21字 ; 合計 4213字)
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コメント
"もう疲れたし、ほとんど読者がいない話だろうから、この辺にしとこう"
読者いますよ!!お疲れ様。
こうなんですよね。グラフの力偉大です。なお、私は、b=-a+1かつa<-1 と書きます。
投稿: gauss | 2014年10月 8日 (水) 13時34分
> gauss さん
こんばんは。毎度どうもです。
読者ってだけでも有難いことですが、
「参加者」にはならなかったわけですね♪
bをaの関数として表す答は、図を意識したもので、
高校数学としては自然だと思います。
ただ、あまり数学が得意でない人の場合、
元のxの関数やグラフとゴチャ混ぜになるかも。
a、bを対等に扱う答(この記事の最初)より、
もう一手間かかりますしね。
折角「読者いますよ」ってコメントを頂いたので、
もう少し別解を追加しときました。
ここまで書くと、あと一息でしょう。。
投稿: テンメイ | 2014年10月 8日 (水) 23時39分