『信長協奏曲』第8話、原作コミックとの比較など
2014年の流行語大賞は、「ダメよ~ダメダメ」、「集団的自衛権」。なるほど
ね、ちょうど選挙前だし。ユーキャンはともかく、『現代用語の基礎知識』は
左派=リベラル的な事典で、出版元は自由国民社か。で、審査員が編集長、
姜尚中、鳥越俊太郎、やくみつる、俵万智、室井滋、箭内道彦。納得・・・っ
て言うか、初めて知った。
だから毎日新聞が左派的に報道して、朝日新聞も軽く左寄りに伝えるわけか。
一方、右寄りの産経と読売はあっさり伝えて、日経はお馴染みの淡白な中立
的ニュースになってる。分かりやすいメディアの構図だね。流行語大賞の伝え
方だけで、それぞれの基本的ポジション、立ち位置がキレイに表れてるわけだ。
☆ ☆ ☆
「左派と右派、リベラルと保守といった二分法はもはや意味が無い」というよ
うな話は以前からあるけど、呼び名はともかく、大きく分けて2つの陣営が対
立しがちな点はほとんど変わってないし、中身も人もメディアも、ある程度は
決まってしまう。最近の大物俳優の訃報もそうだった。
むしろ、「『もはや意味が無い』という主張には、もはや意味が無い」と言うべ
きかも♪ あるいは、意味の揺れ、ズレを見つめるべき、とか。
いや、急に政治思想的な話をしたいわけじゃなくて、経済思想に目が行った
のだ。織田信長(小栗旬)の楽市・楽座というのは、経済的な自由主義(リベ
ラリズム)で、大まかなイメージ的には良い事のような気がする。悪しき制約
に対する規制緩和、束縛からの解放。ドラマでも、週刊ヤングマガジンの『セ
ンゴク』でも、いいイメージで描いてた。
ただ、織田領(その他)が急に独自判断で始めて、そんなに上手く行くのか
ね。関所にも関所の意味があるわけで、それを急に撤廃すると危ないような
感じもある(江戸時代には復活)。そもそも戦国時代の後半、織田は全国か
ら狙われてる身だし。理屈はともかく結果的に成功したって感じの歴史把握
も、再考してみる必要がありそうだ。
ま、今日はマンガの話をしたいだけだから、あまりこだわらない事にしよう。
ちなみに、最新の義務教育の教科書『社会科 中学生の歴史』(帝国書院、
2014年)にはこう書いてた。謎の兵法書『日本史B』なら、もっと色々書い
てるだろう。演説に紛れ込んでたマニュファクチャー(工場制手工業)とか♪
信長は・・・・・・次々と政策をうち出しました。まず、関所を廃止して
自由な交通を可能にし、道路を広げて商品の流通をさかんにしま
した。さらに、楽市令を出して座をなくし、市場での税を免除して商
工業を活発にさせました(楽市・楽座)。その一方で、堺では自治
権をうばうなど、商人や職人たちを支配下におきました。しかし、
1582年、家臣の明智光秀に本能寺(京都府)で攻められ、信長
は自害しました(本能寺の変)。 (p.91)
☆ ☆ ☆
それでは、今日はこの辺で・・・って、コラコラ! はいはい、コミックの話ね♪
試しに、最近のドラマの箇所だけ読んでみたら、なかなか面白かった。特に、
お市のふくれっ面が(笑)。すぐ、プーッと頬を膨らませて怒る顔がカワイイの
だ。ま、少年マンガ的な表現とも言える。
意外だったのは、一番後ろの印刷の情報。アニメの放送開始直前、今年の
6月になってようやく、第2刷とか第3刷になってる。ネットで調べてみると、信
頼できる情報がほとんど見当たらなくて、11巻で100万部という数字が一応
流れてる程度。この情報は、オリコンの週間ランキングの数字からの推測と
それほど違ってないから、一つの目安になるだろう。
地上波のフジテレビでアニメとドラマが放送されて、この数字ということは、そ
れまでは大ヒット作ではなかったはず。そこに目を付けたわけだから、フジと
しては気合を入れた勝負だね。視聴率その他から考えると、今のところボチ
ボチの結果かな。第7話が10.5%、第8話が11.8%。金、人、手間をつぎ
込んだわりにはビミョーかも。
元の歴史は男の子っぽい話なのに、マンガの絵やストーリー、感情描写には
かなり少女マンガっぽい部分も感じる。面白いミックスだと思うけど、大ヒット
は難しいのかな。7巻で300万~400万部の『きょうは会社休みます』とか、
幅広い女性読者にウケそうなコミックと比べると。。
☆ ☆ ☆
さて、原作マンガとドラマを比べると当然、類似点と相違点がある。元が本物
の歴史だし、大まかなストーリー的にはかなり似てた。第8話のメインである、
森可成(よしなり : 森下能幸)ファミリーの扱いもほぼ同じ。
一番違うのは、帰蝶だろう。ドラマだと柴咲コウのキャラに合わせて、ツンデレ
と言うか、ツンツンデレくらいのキャラになってるけど、原作は奥ゆかしい正統
派の美人妻。「びじんづま」と読んでも、「び・ひとづま」と読んでもOK♪ 個人
的には、原作の方が好みだ。愛する信長さまが京からなかなか帰って来れな
いだけで、涙を流す姿とか。
ドラマの第8話になって、いまだに「ウツケ!」と信長を呼び捨てる帰蝶の姿は、
どうもしっくり来ない。せめて序盤、第3話くらいまでにしとけば良かったと思う。
ちなみに、歴史的にはお市(水原希子)が絶世の美女として扱われてるようだ
けど、原作マンガでは帰蝶が典型的な美女で、お市は気の強い個性派。一応、
旦那様の浅井長政(高橋一生)から一歩引いた立場を保ってるけど、子供の
茶々を使って、長政の織田攻撃を止めさせようとする。その説得に失敗する
度に、プーッとふくれっ面して平安美人になるのだ♪
マンガの侍女・ゆき(夏帆)の性格も、お市にちょっと似て、気が強いのに、
ちょっと可愛かったりする。上杉謙信に片思いする忍びの女のコだったのに、
少しずつ敵のサブロー信長に魅かれて行く。でも、自分ではその変化を認め
たくない。ハッキリ気付いて、情に流されやすい性格を心配してるのは、ゆき
の姉だけなのだ。
ゆきは風呂上がりの信長の下半身も見てしまったから、ますます魅かれてい
くはず(笑)。無意識の性的欲望はコントロール不能なのだ♪ 明智光秀の素
顔も見てしまったから、そちらにも欲望は充当される。謙信、サブロー信長、
光秀の間で、ゆきの自我は分裂するのだ。とはいえ、ドラマと違ってマンガだ
と、宇佐山城のエビソードの時点では、ゆきは腹黒い女スパイのままだった。
☆ ☆ ☆
どうしても女性の方に目が行ってしまうけど(笑)、もちろん主人公はコミック
でもサブロー信長。キャラ的には、ドラマよりマンガの方がちょっとクールでシ
リアスになってる。
外見も、マンガの方が美男子だ・・・と書くと小栗ファンに怒られそうだから止
めとこう♪ 書いとるわ! ま、おしょうゆ系で目じりが切れ上がった、スッキ
リした顔立ちだから、小栗の顔と路線が違うのは確か。マンガの信長は、宮
本武蔵の敵役、佐々木小次郎の外見イメージに近い。「元気ですか~♪」っ
て感じで、マイク片手に(笑)猪木っぽい演説をするキャラでもないのだ。
木下藤吉郎=羽柴秀吉(山田孝之)はマンガだと、いかにも猿っぽい顔で、
鉄砲の名手を雇って信長を狙撃させる(ドラマは、ゆきが単独犯で自白、改
心)。マント(羽織)に穴が開いただけだったから、狙撃犯に褒美も渡さず、
殺してしまうのだ。ドラマだと信長の肩あたりを銃弾が貫通、寝込んでた。
池田恒興(向井理)はマンガだとイマイチの男になってたけど、柴田勝家(高
嶋政宏)や足利義昭(堀部圭亮)はドラマもマンガもまったく同じ(笑)。完璧な
キャスティングとお化粧だね。徳川家康(濱田岳)も見た目はそのまんま♪
女好きキャラも同じだけど、多少マジメで、サブロー信長に手渡されたエロ本
を読みふけるほどでもないし、表紙の写真に挨拶することもない(笑)。
ちなみに歴史的には、写真の発明は19世紀になってから。カラー写真は19
世紀末で、ノーベル物理学賞にもつながったらしい。
・・・って言うか、サブローは今どきの高校生のくせに、修学旅行にエロ本を持っ
て行ってたのかな♪ あるいは、松永(古田新太)からの貰い物とか。修学旅
行なら、片思いのあの女の子の姿をたっぷり目に焼き付けて、脳内写真で間
に合うと思うけどね。間に合わせ方はさておき(笑)。あっ、今ならスマホのアプ
リで音を消して盗撮って手もあるのか。コラコラ!
☆ ☆ ☆
最後に、第8話の主役、森可成につ
いて。森ファミリー(ブラザーズ)への
こだわりは、コミックでも同じというか、
コミックの方がこだわってるかも。作
者の石井あゆみが子供好きなのか、
あるいは少年マンガだから読者に合
わせたのか。
左の肖像画の出典は、ウィキメディ
ア他だと国立国会図書館としか書い
てないけど、栗原信充による江戸後期の作品(デジタルコレクションで公開中)。
森はドラマだと、年配のパッとしない家臣だけど、コミックだと男っぽくて、むし
ろ柔道部主将って感じ
のゴッツイ体育会系♪
こちらの勇壮な浮世絵
に近い。
芳幾(よしいく)による
1867年の作品、太
平記英勇伝。東京都
立図書館デジタル
アーカイブ。ウィキ
キメディアには「落合芳幾」とか「utagawa yoshiiku」(歌川芳幾)と書かれ
てるのに、単なる「芳幾」で検索しないと出て来ないから苦労した。システム
を直した方がいいけど、画家は画姓や画号が多過ぎて対応できないのかも。
☆ ☆ ☆
とにかくマンガだと、森は十文字槍の名手として必死に闘った後、延暦寺の
僧兵の槍か薙刀(なぎなた)みたいな物に後ろから胸を貫かれてしまった。
歴史的には、宇佐山城の戦いは「志賀の陣」の序盤。1570年、元亀元年。
しかし、僧兵ってものも考えてみると妙な存在だね。心身を鍛えるだけなら分
かるけど、戦で人を殺したり、女遊びしたり(マンガ)。信長が比叡山の焼き打
ちをした気持ちも分からなくはない(1571年、元亀2年)。いずれまた、歴史
や実情を調べてみよう。
父の死の直後、織田家に仕えるようになった森ブラザーズの可愛い蘭丸は、
ビードロを渡してもらうシーンはないけど、入浴中の帰蝶に優しい言葉をかけ
られて頬を赤くする。当然、彼の幼児性欲は、一気に帰蝶に注ぎ込まれるだ
ろう♪ その後、父親代わりの信長にライバル心を持ってしまい、そうした自
分に罪悪感を持って悩む。これぞ、両親なきヴァージョンの変形エディプス・
コンプレックスなのだ。。
☆ ☆ ☆
なお、ドラマでは全く無かったけど、原作だと森ブラザースその他を連れて、
みんなで津島の宵祭を楽しむシーンが美しかった。もちろん、信長&帰蝶カッ
プルにとっては、ラブラブの少女マンガ的「でえと」(デート)なのだ。
それにしても、大勢の武士が死ぬ中で、1人の死だけが英雄的に描かれる
のも妙なものだね・・・とかいう小市民の感想は、リベラルっぽいかも(笑)。
不自由よりも、不平等というものが心に引っ掛かるのだ。
ある意味、恵まれない自己愛の変形かも。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(☆以下、追記)
cf. 『信長協奏曲』第1話、軽~い感想♪
『信長協奏曲』第2話、軽~い感想♪
『信長協奏曲』第3話、軽~い感想(『信長公記』付き♪)
ルービック・キューブ1面(+α)完成方法♪&『信長協奏曲』第4話
『信長協奏曲』第5話、超軽~い感想♪
お市の方の小豆袋、出典は本当に『朝倉家記』なのか
『信長協奏曲』第9話、短~い感想♪
お市の方のInstagram&『信長協奏曲』第10話、原作コミックとの比較
『信長協奏曲』最終回、軽~い感想♪
(追記220字込み 計4630字)
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