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3・11東日本大震災から4年、福島県の放射線・放射能の減少

今日は2015年3月10日。あの衝撃から、明日で丸4年になる。首都圏の

私でさえ、激しい地震で一瞬あきらめの境地になった感覚をよく覚えてるか

ら、主な被災地の方々の記憶はまだまだ鮮明だろう。

 

とはいえ、色んな意味で「風化」が進んでる気がするのも事実。風化とは、必

ずしも悪いものではなく、あまりに不快な記憶、単なるネガティブなイメージが

徐々に薄らぐのであれば、むしろ良いことだと思う。しかし、関心が薄れるこ

とで悪しき誤解がそのままになるのは良くないことだ。特に福島については。

 

量的に少なくなって来たとはいえ、今でもメディアの報道やネット情報にネガ

ティブなものが多いこともあって、福島県「全体」がまだかなり高い放射線・放

射能で覆われてると思ってる人がいるのは事実。それは、私の身の回りでも

確認できるし、ブログ記事へのアクセス状況からも推測できる。これでは、い

わゆる風評被害は解決せず、農産物の価格差も残ってしまうのだ。

 

 

           ☆          ☆          ☆

そこで今日は、あらためて福島県の放射線・放射能(=放射性物質)の現状、

あるいは減少を、まとめてみる。

 

ただ、その前に、東日本大震災の主な被災地全体の人的被害状況を確認

しとこう。というのも、福島県よりも宮城県、岩手県の方が遥かに多くの死亡

者を出してるからだ。出典は、警察庁(2月末)と復興庁(去年9月末)。朝日

新聞デジタル「震災4年目の福島 データを歩く」には、少しだけ違う同様の

数字が掲載されてた。

 

            宮城県      岩手県    福島県

直接死       9539人    4673人    1611人

行方不明     1253人    1129人     203人

震災関連死    900人      446人    1793人

 

 

直接死の人数だけなら、宮城と岩手と福島の比率は6:3:1となる。そのほ

とんどは津波による溺死であって、放射線被ばくを主な直接的原因とする

死者は今のところ1人もいない(公式情報、間接的影響は別)。

 

そもそも放射線による死というのはほとんどガンによるものであって、被ば

くから死亡まで5年~10年以上かかるのが普通とされる。その意味では、

そろそろ注意が必要とも言えるわけだ。もちろん、原発の影響に関して論争

が続く、子どもの甲状腺ガンの動向も含めて。ちなみに朝日は最近、甲状

腺問題については、中立的立場で報道し続けてる。

 

 

         ☆          ☆          ☆  

福島県で目立つのは震災関連死であって、これは要するに、避難生活に

よる心身の不調によるもの。その大半は、福島第一原発事故関連だと思

われる。  

 

文科省の1月28日のpdfファイル「避難指示区域の状況について」と、福島

県の1月30日のpdfファイル「ふくしま復興のあゆみ」によると、2014年(平

成26年)12月の時点で、避難者は12万人強。2年半前と比べて4万人以

上減ってる。6割が県内、4割が県外。

 

150310b その内、避難指示区

 域からの避難者は8

 万人弱。最も深刻な

 「帰還困難区域」、

 かなり深刻な「居住

 制限区域」、少し希

 望を持てる「避難指

 示解除準備区域」

 から、それぞれ3分

 の1といった感じだ

 (2.4万、2.3万、

 3.2万人)。

 

  左は、福島県のファイ

  ルより。ごく一部では、

既に解除されてる。最も被害が大きいのは、第一原発のある大熊町、双葉

町と、その北西に延びる浪江町。事故時の風向きによる運・不運によって、

明暗が分かれたらしい。

 

 

          ☆          ☆           ☆ 

それでは、被ばく(被「爆」ではなく被「曝」)の問題について。まず、身体の外

からの外部被ばくに関して、3月9日の朝日新聞・朝刊に掲載された福島県

の地図をコピペさせて頂こう。公益性があるし、元のデータは福島県HP

公開されてるものだから、著作権の問題は生じないと考える。

 

150310a_2

 

避難指示区域となってる、福島県の北東部(図の飯舘、浪江2ヶ所)では、ま

だ線量が高いが、それ以外は既にかなり低い値となってる。ちなみに東京都

内だと、0.04前後だから、南会津や会津若松はほぼ東京並み。いわきも同

様。避難指示区域の外で目立つ数字は、福島市の0.23μSv/h(毎時マ

イクロシーベルト)くらいだろう。

 

この数字(屋外で測定)で、年間の(余分な)被ばく量がいくらになるか計算

してみよう。まず、もともとあった平常値(背景値)を0.04として差し引くと、

0.19。また、1日あたり、屋外に8時間、屋内に16時間いて、屋内は屋外

の4割の線量と仮定するのが標準。

 

   ∴ (年間被曝量)=(1日分の屋外+屋内)×365

              ={(0.19×8)+(0.19×0.4×16)}×365

              ≒ 1000μSv 

              ≒ 1mSv 

 

というわけで、いわゆる「1ミリシーベルト基準」とほぼ一致する。つまり、一般

的な見方では、十分に低いリスクなのだ。ゼロリスクという幻想や理想にこだ

わらない限りは。どこで何をしようが、リスクはある程度存在する。

 

 

          ☆          ☆          ☆ 

続いて、身体の内側から浴びる内部被ばくについて。結論から言うと、今現

在、福島県から出荷される農産物・畜産物には(ほとんど)問題ない。ほとん

どという言葉は無くてもいいくらいだが、念のためにカッコに入れて付けとい

た。何しろ、反原発メディアの朝日新聞でさえ、ほとんど問題視してないのだ。

 

去年同様、今年も朝日は連日、「東日本大震災4年」という大きな特集記事

を載せてる。その第4回のテーマは、「食」。一番上の大見出しは、「福島産

実った自信」。ページの左下、つまり最後の小見出しは、「野菜も米も基準値

超えゼロ」となってる。

 

多少、知ってる人なら、これを読んで直ちに、「魚やキノコ、牛肉は?」とか

言いたくなるかも知れない。実際、震災後の1年間は時々、これらの品目で

高い数値が検出されてた。1kgあたり数千Bq(ベクレル)とか。といっても、

そんな極端な物だけを食べ続けるわけではないから、全体的に見れば、当

時から既にほとんど実害は無かったわけだが。

 

では、水産物ときのこ・山菜。13年度には既に、ほとんど全て基準値(1kg

あたり100Bq)を大きく下回る状況だ。牛肉は朝日に数字がなかったから、

150310d2  福島県の農林水産物全体のモ

  ニタリングを扱う便利なサイト、

  「ふくしま新発売。」で検索。県

  内の各産地ごとに、最新のデー

タがきっちり公開されてた。「検出せず」がほとんどで、ごく一部に20Bq前

後含まれてる程度だ。

 

150310c

 

にも関わらず、相変わらず福島産の物を避ける動きは残ってるらしくて、価

格は低迷気味。東京の卸値だと、牛肉で1割ほど安くなってた。それより驚い

たのは、消費者意識調査。他の産地のホウレンソウが150円の時、放射性

物質が不検出(10Bq未満とか)の福島県産をいくらなら買うか。首都圏だと

120円になってるが、京阪神だと半額以下の70円でないと買わないらしい。

 

 

           ☆          ☆          ☆

ちなみに私なら、同じ値段でも買う。震災直後、1割ほど値引きされてた東

北の牛乳も、進んで買って飲んでた。正直、ほんの少し気になるのは確か

だけど、科学的に考えてほとんど実害はないはずだし、福島を応援する意

味もあるからだ。

 

では、計算してみよう。基準値以下とか、不検出というのは、大まかに見て、

1kgあたりの平均で20Bq以下ということだ。話を簡単にするため、水、一般

食品、牛乳、乳児用食品、すべてまとめて、1日に4kg飲食すると仮定しよう。

 

口からの飲食による「経口摂取」で、放射能としてはセシウム137と134が

半々だと仮定。BqをμSvへと換算するための、実効線量係数は、平均値

である0.016とする。(0.013+0.019)÷2。細かい話は後で補足する。

 

  (年間の内部被ばくの最大値)=0.016×(1日分のベクレル)×365

                     =0.016×(20×4)×365

                     ≒500μSv

                     ≒0.5mSV

 

というわけで、最大値でさえ0.5ミリシーベルトだから、実際には0.1mSv

以下のはず。万が一、多少の検出もれやデータの偽造があったとしても、全

体には影響ない。コープふくしまが続けてる、実際の福島県の食事検査で

も、14年度は100家庭全てで不検出とのこと(検出限界は1Bq/kg)。

 

 

         ☆          ☆          ☆   

「嫌なものは嫌」というような意見は、私自身も何度か直接聞いて来たので、

それは個人の生き方、考え方として、仕方ないかも知れない。特に、(一部

の)女性、母親の拒否感の強さは、理解しておく必要がある。

 

ただ、「嫌なものは嫌」とは言えない状況など、世の中にはいくらでもあるし、

放射能以外に、遥かに大きなリスクはいくらでもあるわけだ。とりあえず、福

島とか放射能、地震に限らず、リスク全般に対する最低限の知識や情報収

集能力は持ってた方がいいと思う。もちろん、色々と見えて来ると、「嫌だっ

たものが今はそうでもない」というような変化も生じ得るわけだ。 

 

いずれにせよ、福島に限らず、被災地は少しずつ着実に前進してることだ

けは間違いない。特に、巨大な地震リスクを抱える関東・東海地域の住民

にとっては、今こそ意識的に東日本大震災を見つめ直すべき時だろう。風

化の先には、また次の巨大災害があるのだから。

 

それでは、今日はこの辺で。。☆彡

 

 

      

P.S. ベクレルをシーベルトへと換算する、実効線量係数について補足。

     Cs(セシウム)137とCs134の物理的な半減期はそれぞれ、約30

     年と2年(除染や体外への排泄の話は別)。Cs137はほとんど減っ

     てないけど、Cs134の方は既に4分の1になってるはず。最初の2

     年で半減、さらに次の2年で半減するからだ。

 

150310e  よって今現在、本来な

  ら、放射能の大部分は

  Cs137と考えていい。

  実際それは、牛肉の放

  射能でも大まかに確認

  できる。ただ、それで被

  ばく量を計算すると、

  137の方が係数が小

  さいから、低めの値に

  なってしまうのだ。

 

  この種のリスク計算では、

高め、多めに計算するのが「安全原則」とされるから、上では一応、4年前と

同じく、137と134は半々と仮定して、2つの係数の平均値を使っておいた。

 

 

P.S.2 朝日の特集記事には、食品の基準値の定め方がごく簡単に書か

      れてた。まず、国際規格を決めるコーデックス委員会の指標に従っ

      て、年間1mSvとし、それを飲料水0.1mSvとその他0.9mSvへ

      と分ける。

 

      そこから、飲料水は10Bq/kg、一般食品は100Bq/kgとなり、

      さらに年少者への配慮として、牛乳は50Bq/kg、乳児用食品は

      20Bq/kgとする。

 

      飲料水0.1mSvから、10Bq/kgを出す計算は書いてないが、

      おそらく次のように決めるのだろう。1kgあたり、a(エー)Bqで

      0.1mSv(=100μSv)になるとして、1日1.5kg飲むと仮定。

 

       100=0.016×1.5a×365

          ≒9a

      ∴ a≒11    従って、少なめのキレイな値として、a=10。

 

 

cf.被曝する年間放射線量すべての計算方法(自然・医療、外部・内部、屋外・屋内)

  ラジウム温泉の放射線について~低線量被曝の影響

  朝日の甲状腺被曝87ミリシーベルト報道の意味~実効線量と等価線量

  WHO(世界保健機関)による被曝線量の推計(全国、年代・経路別)

  文科省が10都県で確認、ストロンチウム(Sr)90の実効線量係数など

  湖や海、水浴場における放射線(外部&内部被曝)の計算

  魚・貝・海藻など、水産物の放射能(セシウム)について

  確率的影響と確定的影響~放射線被曝の二分法の再考

  外部・内部・甲状腺、福島県の放射線被曝について~3・11から2年

  日本人の自然放射線と医療被ばく線量(『新版 生活環境放射線』2011) 

  汚染水のトリチウム(三重水素)、実効線量係数と年間の内部被曝線量

  3・11東日本大震災から3年~主要データ・情報のまとめ&感想

                              (その他、多数の記事あり)

 

                                    (計 4693字)

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コメント

姉の先輩が福島の街の真ん中に住んでて、毎年、この日に電話して
長話するんですが、難しい問題ですよね。
先輩の周りはもう年齢の高い人ばかりだそうです。
若い人は未だに福島から出て行っちゃうと言うか、
仕方がないそうです。
先輩と言っても女性で息子達ふたりは医者と地震学者。
皮肉なものだと言ってます。
息子といってももう40代だそうで、孫は20代。
絶対、遊びには来させなくて自分から出かけて行くそうです。
姉も遊びに行くと言ったら断られ、東京で会いましょうと・・・
でも福島に住んでいる方々は前を向いて明るく過ごして
いるそうです。
色んなお稽古事とかしたり、ランチしたり、震災前と
変わったのは、
若い人が働く所もないから出て行く。
政府は現実を見てくれないけど、私達はもう年齢が
高いからこのままここで終わるのよって、
なんかどう答えたら良いのか言葉がでなくて
姉は電話で相づちばかりでした。
こんな事書いたらダメですよね。
表に出さないで頂けますか?
なら書くな・・・ですよね(汗)

投稿: みに子 | 2015年3月19日 (木) 23時50分

> みに子さん
  
表に出すべき良コメントでしょ
   
まあ、この種の話が遥かに注目を浴びてた3、4年前なら、
ご希望通り(?)非公開か、ごく一部修正にしてたかも。
皮肉なもので、今は風化したから大丈夫です。
    
福島は実は、就業地別の求人倍率が全国一。
その気になれば働く所はあるから、本音だと、
今こそ若い人が福島に留まって欲しい所ですが、
そう語るのは難しいでしょうね。職種も限られちゃうし。
   
僕が家族なら、勝手に福島に遊びに行っちゃうかも♪ 
追い返しはしないはず。怒られるのは最初だけでしょう。
本音は、嬉しさの方が大きいはず
      
福島にいる僕の知り合い達は逆に、友達を呼んでますよ。
泊まりがけになっちゃうから、僕はまだ行ってないけど。
一昨年のスキー&スノボ旅行は別として。
  
   
って言うか、そろそろ東海地震でしょ♪
ちゃんと防災グッズを用意しとくように
・・・とか、他人事のように言ったりして
  
真面目な話、あと1回は大きな地震があると
思っとく方がいいですね。
関東はもう十分揺れたから、次はお任せします。
神が与える試練は公平なはず♪
  
亀梨グッズの山につぶされないように(笑)
ではまた。。

投稿: テンメイ | 2015年3月20日 (金) 13時10分

我が家は東海地震の備えはばっちりです。
うちのマンションが立ってる所は地盤が凄く硬いし、
マンションも頑丈ですし、住人自体、建築関係も多い。
だから引っ越したくても引っ越せないし。
万が一の時の為に、食料、水、蓄えも万全。
簡易トイレもね
怖いもの知らずの姉の1番嫌いなものが地震ですから。
私はこの世で1番怖いのは姉ですが
テンメイさんのお見通しの様に「なんでわかったの?」
大きな本棚にカメちゃんの切り抜きファイルが250冊。
1つのファイル20ポケットに5枚位入れて、姉から
あんたが死ぬ時はこれの下敷きね。
って言われてて、寝室を変えました。
今月はその250冊溜めたファイルをざっくり捨てて、
お気に入りの写真だけで50冊にしましたよ。
でも処分できたのも、多分、愛が減ったかも

投稿: みに子 | 2015年3月23日 (月) 22時22分

> みに子さん
   
こんにちは。
バッチリだと面白くないから亀グッズの山に埋もれて、
スマホと自撮り棒で写真をブログにアップしてください
  
地盤も建物も頑丈で、住人に建築関係が多い。。
それは出来過ぎですよ。たぶん、耐震偽装(笑)
普通の人に売るとバレるリスクがあるから、関係者でかためたと。
マンション管理組合の実権を握るために♪
  
簡易トイレまで万全! やっぱ出来過ぎ。
たぶん、いざという時、どっちかが体調崩して、
1人で2人分使い果たしてケンカになります(笑)
ま、いざとなったらどこでも出来るけど。
紙がなくなったら、切り抜きファイルとか
   
250冊?! 確かに、大きな本棚1つですね。
好きなものだけには凄いエネルギーを注ぐと♪
そのエネルギーが5分の1になっちゃったんだ。
50/250=1/5。
ということは、来月には10冊、5月には2冊、
6月には0.4冊になって、卒業です
  
あぁ、僕も大量の不用品を早く捨てなきゃ!
ゴミの出し方が細かすぎて面倒なもんで・・
・・とか言い訳してるヒマがあったら片付けろと♪
ではまた。。

投稿: テンメイ | 2015年3月25日 (水) 13時43分

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