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x² のフーリエ級数展開~『アルジャーノンに花束を』第5話、咲人(山P)が書いた数式

久々に読者の方からリクエストを頂いたので、早速お答えしよう♪ ちょうど

何か数学記事を書きたいなと思ってた所だから、渡りに船、という感じだ。

 

ドラマ『アルジャーノンに花束を』第4話の本編終了直後、35秒ほどの予告

編が流れた。この冒頭あたりで、主人公・咲人(山下智久)が難しげな数式

を書いてるカットが一瞬だけ映ってた。明らかに、福山雅治の人気ドラマ『ガ

リレオ』の名物シーン、数式書きなぐりを意識したものだ。

 

私は、『ガリレオ』の数式解読記事だけでも多数書いて来たので、今回も第

5話を見た後に解読するつもりだったけど、予告編の一瞬だけで「フーリエ 

級数」(Fourier series)だとご指摘を受けたので、試しに自分で再びチェッ

ク。なるほど、x² のフーリエ級数展開をかなり丁寧に書いてる。

 

顔を映すために、透明なボードに書く姿を反対側から撮ってるから、左右が

反転して分かり辛くなってたけど、大学1、2年生向けの教科書の基本例題

といったレベルで、別に天才的なレベルの式ではない。ただ、つい先日まで

知的障害者だったのに、新しい手術で一気に大学レベルの数学をマスター

した所がポイント。いい意味でも悪い意味でも、「ヤバイ」流れなのだ。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

ではまず、山Pが書いた黒板・・・じゃなくて透明ボードの数式を、私が読みとっ

たものをお見せしよう。公式HPの30秒弱の予告編だと、カットされてるので、

念のため。いつもかどうか知らないけど、少なくとも今回は、本放送の予告の

方が5秒ほど長かったのだ。画像が大きいので、上下2枚に分割した。

 

π(パイ)はもちろん、円周率3.14・・・のこと。上から2番目の式がフーリ

エ級数展開の中核となる公式。そのcosの左で係数となってる数列「a n」

は、上から3番目の式で定義。∞は無限大を示す記号。

 

150505f

 

 

150505g_2

 

 

赤い波線部分は、読み取れなかった部分を私の推測で補ったもの。おそら

く、ほとんど合ってるはず。「書き忘れてる」と赤字で指摘してるのは、山Pか

スタッフの単純なミスらしきもの。「sin nx」と書くべき所を、うっかり「sin x」

と書いてた。まあ、ガリレオ福山も時々間違ってたから気にする必要はない。

まさか、この記事の指摘を受けて、あわてて撮り直すこともないと思う(笑)

 

上に示したもの以外にも少し書いてたけど、まったく読みとれないので省略

した。第5話の本放送で読み取れたら、この記事に追記や補足を行う予定。

ちなみに、最終的な答は次のようになる(細かい書き方の違いは色々ある)。

高校数学の数Ⅲで習う「部分積分」を中心として、計算自体は高校の教科書

の章末問題レベル(=発展レベル)くらいだ。

 

   f(x) = x² = (π²/3)+4Σ{(-1)ⁿ/n²}cos nx  (n=1~∞)

 

Σ(シグマ)の無限級数と{ }が難しく見えるが、n=1~4で具体的に書き

下すと、次の通り。右に行くほど、cosの係数の絶対値が小さくなるから、

影響力は下がって行く。

 

 x² = (π²/3)-4cos x+cos 2x-(4/9)cos 3x+(1/4)cos 4x-・・・

 

もっと簡単に、n=1とn=2だけ考えても、十分な正しさの近似式になる。

こちらの式を使って、下で説明しておいた。

 

   f(x) = x² ≒ (π²/3)-4cos x + cos 2x

 

πが嫌な人向けに、普通の数字で書き直すなら、次の通り。

 

   x² ≒ 3.3-4cos x + cos 2x

 

 

           ☆          ☆          ☆

では、簡単な解説に入ろう。「フーリエ級数展開」とは、200年ほど前、数

学者フーリエが考案した、数式の変形方法のこと。無限個の項目の足し

算(=級数)へと展開するので、級数展開と呼ばれる。

 

要するに、上に∞(無限大)のマークが付いたΣ(シグマ)を使った式に

することだ。Σの上が数とか普通の文字なら、高校2年の数学Ⅱや基礎

解析でほとんどの人が習ってるはず。それを、延々と足し続けるのが級

数だ。理系なら、高校3年の数学Ⅲで習う話。

 

150505c  これは半ばドラマ記事だし、数

  式より図形で直感的に示す方

  がいいだろう。まず、左の放物 

  線が、問題となってる y=x²

  (-π≦x≦π)。大阪教育大

  学・友田勝久氏による関数グ

  ラフソフト「GRAPES」を利

  用させて頂いた。

 

 

 

 

150505a2 上の放物線に似た 

 グラフを、三角関 

 数(sin、cos)の 

 波型を組み合わ 

 せて作るという

 話なのだ。数学

的にも物理的にも、色々と役に立つ。青緑の線が、y=cos x。赤紫の線

が、y=cos2x。

 

この2本を上下に伸縮・反転して、足し合わせる(合成)。さらに少し上にズラ

すと、放物線に近づくのだ。その上下の伸縮・反転のやり方や、ズラす幅を、

咲人=山Pは公式に従って積分計算してた。

 

 

          ☆          ☆          ☆

150505b  左は、y=-4cos x と

   y=cos2x。つまり、元

  のy=cos xだけ、上下

  4倍して反転してある。

 

  これらを足し合わせ、

  上にπ²/3(約3.3)

  だけズラすと、最初

  の放物線 y=x² と

  ほぼ一致する。

 

 

 

150505e  黒線が元の放物線 y=x²

  赤線が三角関数の合成

  (フーリエ級数展開の中心

  部分)、つまり青緑+赤紫。

  y=(π²/3)-4cosx

      +cos2x 。

 

  まだ少しズレてるけど、もっ

  と沢山のcos曲線を合成し

  て行くと、限りなく放物線に

  近づいて行く。最近は、計

  算もグラフもコンピューター

  がやってくれるから、楽な

  のだ。自分の手だと大変。

 

150505h  「cos曲線を2つ合成しなくても、

  (π²/3)-4cos x だけで十分

  では?」と思った方のために、

  比較してみよう。左で、黒線は

  元の放物線、赤線

  y=(π²/3)-4cos x 。

  かなり似てるけど、ズレも目立

  つから、赤線の式に cos2x を

  加えてズレを少なくするわけだ。

  すぐ上の図と見比べると、劣って

  るのは明白。こちらの赤線は、形

  もかなり尖ってるけど、cos2x

を加えると丸みが増して、放物線に近づく。 

 

ちなみに、予告編で書いてた放物線は、元のものより右側にズレてた。と

150505d いうのも元の放物

 線の範囲(定義域)

 は-π≦x≦π

 だけど、三角関数

 の波線は本来、

 左右にずっとウネ

 ウネ伸びてる。だ

 から、元の放物線

 を左右にコピペし

 て、つないで並

べると、イメージしやすいのだ。周期2π(約6.3)で左右に伸びる関数

のグラフへと、無理やり変形したと言ってもいい。

 

上図の黒線が元のグラフ、青線が右横にコピペしたもので、この青線部分

だけが予告編に映ってたことになる(テレビ画面だと、反転してるので右上)。

150506b  その無理やり

  作った放物線

  の波を、この青

  緑と赤紫の波線

から作り上げるというイメージだ。

 

 

         ☆          ☆          ☆

最後に、ほんの少しだけフーリエ級数展開を知ってる人は、「どうしてcos

だけなのか? sinも使うのでは?」と思うかも知れない。

 

一般には、sin(正弦)とcos(余弦)の両方を使って表すし、どちらの係数

も計算しなければいけないけど、この場合は、元の放物線が左右対称(y 

軸対称)だから、sinの項はすべて消えてしまうのだ。言い換えると、グラ 

フの式が偶関数の時は、cosだけで展開できる

 

そもそも本来は、係数の積分計算をする時の積分区間は-π≦x≦π

だけど、偶関数の場合は、区間を0≦x≦πにして、積分記号(インテグラ

ル)の前に2を書けばいいことになる(つまり2倍)。これは、積分される関

数の全体(元の偶関数×cos nx)が偶関数だからだ。

 

ちなみに偶関数とは、f(-x)=f(x)をみたす関数 f(x) のこと。つまり、マ

イナスの値で計算しても、プラスの時と同じ値になる関数。

 

フーリエ級数については、いずれまた、別の数学記事を書く予定。

とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. 第5話のレビューをアップ、数式にもコメントしてある。フーリエより

     微分(differentiation)の基礎が中心だった。

 

P.S.2 1ヶ月半後、関連する数学記事を追加した。

        フーリエ級数展開2~方形波=矩形波(くけいは)

 

 

cf. ママ、お利口になるから嫌わないで~『アルジャーノンに花束を』第1話

   自分たちのために他者を利用すること~『アルジャーノンに花束を』第3話

   居眠りジョグ&おまけ&15年4月の全走行距離  (第4話関連)

   ホーキング「人は、人生が公平ではないことを悟れる・・」

           (英語出典&原文)~『アルジャーノンに花束を』第5話

   雨だし生活が乱れてるから、つぶやきミックス  (第6話関連)

   原作を踏まえた、妹との関係~第7話

   新薬ALGの原料キサンチンの化学式C5H4N4O2と構造式、

                  シチズン腕時計♪&12km走  (第8話関連)

   波動関数Ψでつながる原子、魂でつながる人間~第9話

   Yesterday Once More♪~『アルジャーノンに花束を』最終回

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・

   『アルジャーノンに花束を』と、哲学者プラトン『国家』洞窟の比喩

 

                                   (計 3550字)

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コメント

す、凄い!
テンメイさんありがとうございます!
息を呑みながら読ませて頂きました。
細部までとても丁寧に描かれている作品でしたので、もしや数式も?と思い質問させて頂きましたが、やはり手を抜いていない事がわかり嬉しいです☆
しかも、テンメイさん直筆の数式まで見せてもらって感激です!
なんて美しい数式…
私も5話をじっくり味わいながら、咲ちゃん覚醒の場面を見つめていきます(*゚ー゚*)
本当にありがとうございました。

投稿: セフィ | 2015年5月 5日 (火) 09時05分

お久しぶりですね。
フーリエ級数で基本的に学ばないといけない事は全て説明されていますね。級数展開、グラフもあり、安心しますよね。いつもお見事です。

投稿: | 2015年5月 6日 (水) 01時36分

> セフィ さん
  
おはようございます。
満足して頂けたようで、良かったです (*゚ー゚*)
手頃な式を丁寧に書いてたので、何とか解読できました。

ちなみに、コメント送信の際のスパム扱いは
気にしないでください♪
不特定多数のアクセスが入るので、
フィルターをかなり強めに設定してます。
ほとんどの場合、送信ボタン1回だけで届きますし、
半日以内に手作業で公開してます。
  
で、「息を呑みながら・・」(笑)
山Pファンに少なくとも1人、
数学大好き少女 がいらっしゃるわけですね♪
  
ふと、最近そこまで夢中になったことがないな・・
と思ってしまいました (^^ゞ
まあ、愛のなせる技なんでしょう
   
こうなると、第5話は注目ですね。
僕も『ガリレオ』並みの気合を入れて、
数式に集中することにします。
理論的な台詞も聴き逃さないように。。
   
こちらこそ、色んな意味でいい刺激を頂きました。
貴重なコメント、ありがとうございます。
   
やっぱり、基本は愛ですね♪ 
人間にせよ数式にせよ、美しきものへの心ときめく恋愛。
その無限大のパワーをあらためて感じつつ、ではまた。。
  
   
   
  
  
> 名無しさん
  
おそらく、gauss さんでしょうね♪
お久しぶりのご登場、どうもです。
      
本当は、計算式をもう少し入れたい所ですが、
読者層を考えると、このくらいで十分なんでしょう。
理数系の一般的な読み物だと、もっと省略して、
イメージ的に語ることが多いですからね。
特に物理学はその傾向が強い気がします。
  
グラフは、Excelを使うともっと上手く
書けるみたいですが、まだマスターしてません。
世の中全体のデジタル化は進む一方。
もっともっとデジタル能力を上げる必要を感じてます。。

投稿: テンメイ | 2015年5月 6日 (水) 07時15分

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