(☆2017年9月の追記:
京都大学がダウン症用の新物質を「アルジャーノン」と命名。
5日の発表が話題になってるので、論文の和訳記事をアップ。
新化合物「アルジャーノン」、英語論文の和訳 )
☆ ☆ ☆
ウルウルの連続。。私のつぶらな瞳に真珠のような涙が何度も浮かんだの
であった。。♪ 寒っ! 母を抱くシーン、退行後の自分へのメッセージ執筆、
お別れと微笑ましい慰め、ゴールドのイヤリング返却、「もう1人の父」を救う
心温まる気配り。。シクシク、ポロポロ。。
いや、真面目な話、いい「最終回」だったと思う。伏線、拾いまくりだし、終わ
り方も斬新な原作解釈で納得。テレビ的な明るさ、柔らかさ、面白さがあった
し、他局(フジテレビ)のドラマ『SUMMER NUDE』へのオマージュ(敬意を
込めた模倣)にもなってた♪
それでいて終盤、興帝メディカル産業の小切手で咲人(山下智久)が鼻をか
むシーンや、社長令嬢の梨央(谷村美月)の大げさな退院シーンには、ちょっ
としたトゲもある。とりわけラストの映像、不自然な青紫の「花束」(バラ=
rose?)には、脚本監修・野島伸司らしい社会批判も感じられた。ちなみに
原作小説は、遥かに挑発的内容だけど、アルジャーノンへの花束にはトゲ
はあまり無い。
ドラマ終了直後、樹海(長野県の原生林)に咲く人工的な花が目に焼き付い
て、ちょっと重い気分になってたら、美青年のゆる~い爆安スマホCMが救っ
てくれた♪ 「やまぴー おったまげ」(笑)
おまけに、甘熟王GOLD PREMIUMの立派なバナナを美味しそうに食べ
るビミョーな美女CMも流れたから、一気に私の頬は緩んだのであった♪
そっちか! あっ、スポットCMだから地域によって違うのかも。。
☆ ☆ ☆
さて、まずは昨日の放送直後に書いたつぶやきについて、ワンス・モア、も
う一度♪ この最終回、私はこれで本当に終わりとは思ってない。文字通り、
Yesterday Once More。。「昨日の物語がもう一度」あっても、いいね☆
野島が昔から好きらしい、カーペンターズなのだ。序盤のハンバーガー屋の
シーンのBGM、控えめに流してたから、ツイートとかネット情報も少ない。
曲の話は後回しとして、最終回問題に戻ろう。元々、SP(スペシャル)1回か
映画で、続きを少し作れる終わり方にしてたんじゃないかな。残念ながら視
聴率が冴えなかったから、正直、難しくなっただろうけど、アジア全体に大勢
いるファンの方々の熱い声がTBSに届けば何とかなるかも♪ 今こそSNS
拡散アピールの時期なのだ。
私はちょうど9年前、同じTBSの連ドラ『クロサギ』の最終回レビューでは、
「これで本当に終わりにするのなら、かなり中途半端な出来だ」とハッキリ
指摘。その2年後、2時間の映画として続編が作られた。
『アルジャーノン』最終回の場合、『クロサギ』ほどの中途半端さはない。一
通りの形は出来てるから、あれで終わりでも、9年前ほどの消化不良には
ならないのだ。原作との対応を考えても、これ以上作るとむしろ「蛇足」と言
われる恐れもある。
ただ、遥香(栗山千明)が選ぶことにした第3の道は、もう少し描く余地があ
る。きっぱり別れるか、相手をすべて受け入れるか。どちらでもない3番目
の選択肢として咲人ママ(草刈民代)が考えてたのは、しばらく時間と距離
をおく道だろう。相手が誠実なら、覚悟を決める間くらい待ってくれるはず。
そして、止まってた時計が動き出す。
遥香が覚悟すれば、今の咲人は特に抵抗しないだろう。たとえ少し前の自分
からのメッセージを読んでも、幸か不幸か、もはや意味が分からないはずだ。
父(いしだ壱成)の幻影まで手助けしてくれて、必死に書いた3行のひらかな
メッセージ。「あるじゃーのん」の「あ」の一文字に、切ない思いを込めて。。
はるかに あわないで あいしてるから
☆ ☆ ☆
他にも、私が続編を期待する理由は色々ある。一番分かりやすいポイントは、
梨央だろう。既に、父(中原丈雄)や舞(大政絢)らを通じて、咲人が必死の努
力で自分を助けてくれた経緯は知ってるはず。新薬RSYを急いで開発したの
も、手術に立ち会って投薬のタイミングを決めたのも咲人だし、そもそも2人
は一夜を共にした仲。それなのに御礼どころかまだ顔も合わせてないらしい。
しかも、梨央は檜山(工藤阿須加)とのお別れもクールでアッサリしてたし、
父はこのままだと単なる(唯一の)悪役で終わってしまう。一方、蜂須賀(石
丸幹二)はALG以外の手段を考案して咲人に伝え、天才の彼も納得してた。
そうなると、命の恩人・咲人を改善させる研究に対して、興帝メディカルが
全力のバックアップ。天才ではなく、完治でもなく、わりと普通に近い知的
障害の状態まで改善させるくらいの流れはあってもいいはずだ。大好きな
車の運転も出来て、記憶も少しあって、言葉ももう少しスムーズに喋れる。
それならもう、遥香の第三の道も現実的になるし、医学的な現実味も多少
は出て来る。咲人の最後の願いも、昔と同じだった。「かみさま ぼくを お
りこうにしてください」。
他にも、元に戻った咲人に、ママが声をかけるシーンも欲しい所。咲人が、
「ママ、バカな子、嫌い?」と不安げにたずねて、ママが「大好き・・・」と涙で
抱き締めるとか。何なら、例の黄色い風船を買ってあげてもいいし、耳に光
るゴールドのイヤリングを見て、咲人が無邪気に「ママ、光ってる。キレイ」
とはしゃいでもいい♪ その様子を優しく見守る竹部社長(萩原聖人)。
そして続編のラストシーンはもちろん、妹と仲良く天ぷら or 揚げ物(笑)。違
うわ! 樹海のアルジャーノンのお墓。あの人工的な花が、もう少し穏やか
な色になって、キレイに咲いてるのだ。最後は花のアップから、タイトルバッ
クの花につないで、ホワイトアウト。終了。。余韻を味わってる所へ、唐突に
「おったまげ」CMとか♪
☆ ☆ ☆
ここまで、「昨日の物語をもう一度」といった感じで書いて来たが、この記事
に「イエスタデイ・ワンス・モア」というタイトルを付けたのは、もっと本質的な
指摘をするためだ。
要するにこの野島&池田奈津子の脚本は、ダニエル・キイスの原作で重要
な役割を果たしてる「洞窟」(大哲学者プラトンの主著にある有名な比喩)や、
そこへの「退行」を、十分に美しいものとして解釈したことになる。闇の底に
戻るイメージではなく、Yesterday Once Moreのスイートなイメージ。
まず、ドラマとの関連をあらためて確認しよう。冒頭、檜山と柳川(窪田正孝)
が公園のハンバーガーショップ「Lucas’s burger」(ルーカスズ・バーガー)
で食事するシーン。店をやめるというマスターに対して、柳川はゴールドのア
クセサリーを褒めて、名残りを惜しむ。
後知恵としては、これがラストの海の家、「あいきょでしょ バーガー」(別名・
ルーカスズ)につながってたわけだが、この伏線シーンで流れてたのが甘美
なバラード、The Carpentersの古典的ヒット曲だった。試しに調べてみると、
TBSで95年に放送した野島ドラマ『未成年』では、主題歌も挿入歌もカーペ
ンターズを使用したらしい。20年後のセルフ・オマージュということか♪
☆ ☆ ☆
ところで、その名曲。兄・リチャードの歌詞も、今は亡き妹・カレンの歌声も、
すごく分かりやすいけど、私は歌詞の一部を理解できてなかった。その部分
こそ、まさにドラマで流れ始めた個所なのだ。
Every Sha-la-la-la
Every Wo-o-wo-o
Still shines
この印象的な「シャラララ ウォウ・ウォウ」。私は今まで、本来の歌詞とは別
の、無意味なコーラスみたいなものだと思ってた。だから、そこは飛ばして、
昔よく聴いてた曲は「すべて、今でも輝いてるの」と自分で訳してたのだ。
ところが読み直して、あちこち調べてみると、シャラララも、ウォウ・ウォウも
立派な歌詞の一部らしい。沢山の懐かしい曲の、「どのシャラララも、どの
ウォウウォウも、みんな今でも輝いてるの」という意味だった。
要するに、それぞれの懐かしい曲のメロディーやフレーズを指してるわけで、
日本ならむしろ「タラララ」かも(細かい・・)。「Every shing-a-ling-a-
ling」も同様。日本語なら、「ルルルル」とかかな。ただし英語の出だしは、エ
ブリシング(Everything)とも掛けてる言葉になってるし、sing(歌う)とshine
(輝く)を合成した造語にもなってる。
☆ ☆ ☆
だから何なのか。ドラマの解釈では、洞窟の底、過去の暗闇が、「シャラララ」、
「シンガ~リンガ~リン」と明るく歌われてるということなのだ。だからこそ、眩
しい夏の日射しの中、ルアー(=イケメン咲人)でビキニギャル達を釣り上げ
るバーガーショップという意外なオチになる。
これがどれほど大胆な解釈か、原作の終盤を真面目に読んだ人なら分かる
はず。原作ではほとんど重くて抽象的、文学的な描写になってる。
ただし実は原作の洞窟にも、非常に分かりにくい形で、眩しい光が登場して
るのだ。奥の方に、実は小さな洞窟があって、その辺りが光ってるらしい。で
も、そこにはなぜか主人公チャーリイは辿り着けないようなのだ。暗闇の深さ、
重さがそうさせるのだろうか。
『Yesterday Once More』の歌詞全体をあらためて読み直すと、確かに
この最終回のアレンジと合ってる。「long lost friend」(長く遠ざかってた
友達)みたいに「back again」(また戻って来る)なんてフレーズもあるし、
「彼が彼女の心を傷つけた場所」とか「今でも私の涙を誘う」とも歌ってる。
それでもやはり、過去はすべて今でも輝いてるのだ。あの懐かしいメロディー
の数々が、年月を融かしてくれる。音楽の力、エモーショナル(情動的)なイ
メージで、思い出を美しすぎる存在へと変えてくれるのだ。。
☆ ☆ ☆
元に戻った咲人からは、「ウォウ・ウォウ」といった感じのたどたどしい言葉、
「シャラララ」といった感じの陽気な笑顔がこぼれ出す。それはドラマなら、
爽やかな映像やBGM、あるいはストーリーによって美化される。
それでは、現実社会ではどうなのか。キイスや野島の視線は当然、そちら
にも向かってるし、私の視線も同様。例えばつい先日、明るみに出た、知的
障害者に対する施設内の虐待などはもちろん、ドラマと密接に重なるもので、
シャラララと歌い流しておしまいにすることは出来ない。
それでも、必ずしも心地良くないものまで含めて、大切に慈しむこと、愛する
こと、抱き締めること。そこから、生きる喜びや力が生じて来るし、虐待の回
避にもつながる。それは自分の心の中で、「音楽を流す」ことだ。心地良い感
情や意志の「メロディーを流す」ことで、すべてを融かして輝かせること。水と
言うより、「音に流す」こと。。
☆ ☆ ☆
そう言えば、あの樹海のシーン。大木の根もとの「洞穴」で、ママに貰った
季節はずれの黄色いマフラーを巻いて眠る咲人を発見。そばには小保方
さんノート♪ 違うわ! アルジャーノンの絵。「しんぱいしないで あるじあ
のんおはかで たいとうの ともだちを まって」。
昔の黄色いジャケット(orハーフコート)をそっと上からかけた後、両脇に寄
り添うように寝転がった柳川と檜山は、必ずしも心地良くはなかったはず♪
下はゴツゴツ、ゴロゴロした山の地面。小さな虫も沢山いるだろう。
それでも、「何とか、なるだろ」とポジティブかつ楽天的に空を見上げる所か
ら、新たな道が開けて行く。この後、上手く行かなくなったり、またケンカした
り、「対等」(たいとう)を忘れたりすることもあるだろうけど、そんな時はまた、
イエスタデイ・ワンスモアを聴きながら、ハンバーガーを頬張ればいい。何な
らシャラララの代わりに、柳川の「伝書鳩」物真似でもOK♪ ポッポロロ・・・
曲については、同時代の古典的名曲、中島みゆきの『時代』やユーミン『あ
の日にかえりたい』との比較もしたい所だけど、今日はもう終わりにしよう。
ちなみに昨日、個人的にウケたのは、蜂須賀のもとに帰ると告げた杉野
(河相我聞)に笑顔で投げかけた咲人の一言、「読みづらい人ですね」♪。
あと、小久保(菊池風磨)に「また遊びに来ていいですか」とか言われた花
蓮(飯豊まりえ)が、「私も仕事が忙しいから」とか応じたシーン♪ おそらく、
花束を持って告白しに来た小久保の耳には聞こえてないはず(笑)
不快な現実は抑圧する。原作小説でも度々登場する心的メカニズム。それ
はそれでいいけど、たまにある程度、見つめることも必要だし、必然なのだ。
忘れたくても、「あの時を もう一度」。シャララララ。。♪
結局、「Flowers for Yesterday」ということだろう。あの日に、花束を。
そして、「Tomorrow Once More」。明日を、もう一度。。
それでは、そろそろこの辺で。。☆彡
P.S. 公式サイトのロケーション・インフォメーションによると、原生林は
長野県のビーナス
ライン沿いで、白
樺湖の手前。フジ
『ゴーイング マ
イ ホーム』でも
ロケに使ったとの
事。私がバイクや
自転車で何度も
走ってる所だ♪
左の地図は茅野
市の観光用pdf
ファイル、「ロケ
地を巡ろう!」。
海は、千葉県富津市の新舞子海
水浴場。左はウィキメディア、
Tdk氏の作品より。房総半島を
もう少し南下すると、『ビーチ
ボーイズ』の布良海岸(館山市)
もある。ロケは4月29日だから、
真夏のような快晴に恵まれた
のは幸運かも♪
P.S.2 最終回の視聴率は7.2%。スタッフ&キャストの皆さん、どうも
お疲れさま!
P.S.3 最終回のサブタイトルの意味を問う検索アクセスが入ってた。私は
サブタイトルをあまり読まない人間だが、新聞とウィキペディアで確
認すると「奇跡のラスト~私から僕への遺言」。
奇跡とか遺言という言葉は、やや大げさな宣伝文句だが、対等な
3人で全く新たな道を元気に歩み出したのは奇跡的なこと。一方、
「私」(天才)が消える前に、「僕」(知的障害者)に残したメッセージ
は、「私」(天才)にとっては遺言みたいなもの。その言葉の美しさが
また、奇跡なのだ。。
cf. ママ、お利口になるから嫌わないで~『アルジャーノンに花束を』第1話
自分たちのために他者を利用すること~『アルジャーノンに花束を』第3話
居眠りジョグ&おまけ&15年4月の全走行距離 (第4話関連)
ホーキング「人は、人生が公平ではないことを悟れる・・」
(英語出典&原文)~『アルジャーノンに花束を』第5話
雨だし生活が乱れてるから、つぶやきミックス (第6話関連)
原作を踏まえた、妹との関係~第7話
新薬ALGの原料キサンチンの化学式C5H4N4O2と構造式、
シチズン腕時計♪&12km走 (8話関連)
波動関数Ψでつながる原子、魂でつながる人間~第9話
・・・・・・・・・・・・・・・
『アルジャーノンに花束を』と、哲学者プラトン『国家』洞窟の比喩
x²のフーリエ級数展開
~『アルジャーノンに花束を』第5話、咲人(山P)が書いた数式
(計 6011字)
(追記 94字 ; 合計 6105字)
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