デズモンド・モリス『年齢の本』(平凡社)について、簡単に♪
本来なら今夜はドラマ・レビューを書く所だけど、アクシデントが2つ重なった
上に、明日がまた土曜出勤だから、もう無理。短いコネタ記事でお茶を濁し
とこう♪ と言っても、日本語でも英語でも情報が非常に少ない話だから、多
少の意味はあると思う。わざわざ図書館で調べて来たから、感想&まとめの
記事にしないと大損だ・・・と思ってしまうのがブロガー症候群なのだ(笑)
昨日(2015年6月18日)の朝日新聞・朝刊コラム、天声人語は、選挙権を
18歳で与えるようになったニュースに関するものだった。冒頭の「つかみ」
の引用がなかなか面白い。
「31歳はもはや若者に信用されなくなる年齢である」。
「59歳は中年としての最後の喝采を受ける年齢である」。
☆ ☆ ☆
31歳はまだOKだろ?とか、59歳は中年じゃないだろ、とかいう突っ込み
の前に、執筆者や時代を確認しとこう。英国の動物行動学者、Desmond
Morris(1928~)の著書『年齢の本』が出典で、原書『The Book of
Ages』の出版は1983年、日高敏隆による翻訳(平凡社)は1985年だ。
この本、朝日の天声人語が引用するのは2回目(後述)のようで、内容豊富
だし、なかなか面白い♪ それなのにネット情報が非常に少ないのは、ネッ
トが流行り出す前の本で、しかも古典と言うほどでもないからだろう(失礼)。
あと、特に日本の場合、弟子とされるライアル・ワトソン(『生命潮流』などの
著者)がちょっとキワモノ扱いされてる学者(ニューエイジ・サイエンティスト)
だから、ネガティブなイメージが漂ってるのかも知れない。『年齢の本』にも
細かい間違いが多いという話は、訳者のあとがきに書かれてた。
他にも、大型本で税抜き2600円だし、読者の側の教養を前提としてるから、
ビミョーに縁遠いのかも。有名人の名前やエピソードが大量に入ってるけど、
知らないと楽しめないと思う。アマゾンでも今現在、邦訳の取り扱いがないよ
うだ(英語サイトなら原書を取り扱ってる)。
☆ ☆ ☆
さて、朝日が本当に引用したかった文はもちろん、18歳についてのものだ。
18歳は「完全におとなになる年」とある。
朝日は18歳の選挙権に賛成、祝福してるから、こうした引用になるけど、
実際に元の本を確認すると、18歳の扱いにはビミョーな部分もある。今ま
での区切り目だった年齢の箇所に、こう書いてるからだ。
「多くの人々にとって、20歳は、思春期の酔ったような自己探求と恋
のあとに、‘正気’になるおとなの時期の始まり」
現代日本で著名人がこんな事を言うと、またネットが炎上しそうだけど、30年
前のユーモア好きの英国なら何の問題もないはず。要するに、直前の19歳
や18歳は正気ではないのだ♪ この直前、18歳が男の性の頂点とされて
ることとも関係する説明だろう。18歳ね。。私は20歳くらいが頂点かな・・・っ
て、どうやって決めるの? 飛距離とか(爆)。コラコラ!
ちなみに、肉体的成熟はしばらく遅れて、25歳とされてる。まあ、運動経験
や種目によるだろうね。当時と比べると、今は選手寿命が延びてるから、肉
体的成熟は平均27歳くらいかも(細かい・・)。
☆ ☆ ☆
では、その後はどうか。
30歳 「矛盾に満ちた年齢」
40歳 「‘中年’の年である。しかし、この年齢に達した人で、
ただちにこの事実を認めるものはいない」 (爆)
30歳は、若者という部分とそうでない部分が衝突するから、「矛盾」という
こと。確かに、29歳と比べると「終わった」感はある♪ 40歳が笑えるけど、
41歳の説明も面白かった。直前の40歳なら「30代の終わり」と言い訳でき
なくもないけど、41歳は「正真正銘の40代」。
ま、四捨五入すれば40歳だから、30代の終わりと言い張ることも不可能
ではない(笑)。美魔女も41歳くらいなら全然イケるしね・・・って、何が?♪
☆ ☆ ☆
その後はさすがに、枯れた味わいになって来る。
50歳 「円熟の年」
60歳 「家庭を愛するようになる年」
70歳 「聖書によると70歳が人間の寿命」
80歳 「もろさの年齢」
90歳 「レースで奮闘したあとに、ちょっとしたフィニッシング・
キャンターを楽しむ年齢」
50歳はまだ円熟してないんじゃないかな。逆に、60歳にならなくても家庭を
愛するのが現代社会でしょ。昨日のドラマもそうだったし♪ 80歳は、骨折
を考えると、そのまんま。
90歳のフィニッシング・キャンターという言葉はネットで見当たらないけど、馬
がレースでフィニッシュ(=ゴール)した後、ゆっくり駆け足(canter)すること
らしい。人間の陸上競技でも、時々見る光景。ちなみに私は、全力のラストス
パートの後、倒れ込んで係員に声かけられるタイプ♪
競馬や陸上のレースならまた次があるけど、90年の人生レースに「次」は無
い。天国ではレースしないだろうしネ。あっ、血の池地獄で蜘蛛の糸をよじ登
るレースならあるのか♪ 腕の持久力も鍛えとかきゃ。。
☆ ☆ ☆
一番最後の100歳を調べ忘れたから、また今度ってことで (^^ゞ まあ、ほと
んどの人には関係ない年齢でしょ。特に、寿命が短い男性には。なお、この
本は随所に生物学的内容があるけど、引用した言葉に統計的根拠や科学的
証明があるわけではないので、念のため♪ 半ば、英国流のジョークなのだ。
年令別の性的能力の説明も興味深かったけど、今夜はもう時間がない。
それでは、また明日。。☆彡
P.S. ネットの複数の情報によると、朝日の天声人語が最初に『年齢の本』
を引用したのは2005年12月20日。「15歳は門出の年だ。青年期
の若者が成人期にまさに入ろうとする時期であり、刺激的な世界に
胸をときめかす」と書いたらしい。
P.S.2 2ヶ月後になって、ようやく最初と最後を追記。
0歳 赤ん坊の年・・・けっして年齢で呼ばれない唯一の年齢・・・。
・・・週か月でいい表される。
100歳 女王のおことばを受ける年である。イギリスでは・・・。・・・
年齢に打ち勝ったことを象徴する瞬間である。
100歳以上 極限まで生き残った人々の年齢・・・。・・・老いの進行
に並々ならぬ挑戦をつづけてきた人々・・・。
本の最後は、118歳という最高年齢を記録した人として、日本の
泉重千代さんの名前を記してあった。
(計 2557字)
| 固定リンク | 0
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 蜂飼耳の小説「繭の遊戯」(25共通テスト国語)全文レビュー・書評 ~ 家畜として玉繭で糸を出した蚕の幼虫、成虫で飛び立てたのか(2025.01.19)
- 谷川俊太郎追悼、生と性と死の詩「なんでもおまんこ」(詩集『夜のミッキー・マウス』)を読んだ感想、意味の解釈(2024.11.21)
- 牧田真有子『桟橋』(24共通テスト国語)、全文レビュー・書評 ~ 漁師に拾われた魚、捻じ切れた血の橋を自分で生き始める(2024.01.23)
- 梅崎春生『飢えの季節』(23共通テスト)、全文レビュー~戦後の日常・欲望・幻想をユーモラスに描くエッセイ私小説(2023.01.21)
- 誰が、何に、どれほど飢えているのか?~梅崎春生『飢えの季節』(初出『文壇』2巻1号、2023年・共通テスト・国語)(2023.01.15)
コメント