フーリエ級数展開2~方形波=矩形波(くけいは)
今夜は雨。手軽な数学記事を1本アップしとこう。1ヶ月半前、テレビドラマ
関連で、x² のフーリエ級数展開を解説した。番組内の映像に即した数式を、
多数のグラフと共に補足したわけだ。今回は普通の実用的な数学記事(&
物理学の波動関連)として、最もメジャーな「矩形波」(くけいは)を扱う。
まず、ウィキメディアのOmegatron氏の作品で、4つの波の形を比較しよう。
下の図で、赤、緑、青、ピンク、4つの線だ。
上から、三角関数でお馴染みの正弦波(Sine wave)、今回扱う矩形波=
方形波(Square wave)、三角波(Triangle wave)、のこぎり波=鋸歯状
波(Sawtooth wave)。矩形波とのこぎり波の垂直の線は、外見を整える
もの。本当は存在せず、上端と下端の少なくとも一方が白丸となってるのが
普通だ。
ちなみに矩形波とか方形波と呼ばれるものは、日本語で文字通りに読むと
「長方形の波」ということになるが、英語版ウィキペディアによると、上下の
持続時間が等しいものを矩形波と言うとのこと。もっと一般に、単なる長方
形の波ならパルス
波(Pulse wave)
とか長方形波
(Rectangular
wave)とされる。
上図はウィキメディア、Krishnavedala氏の作品。波長Tの波で、上側の持
続時間はτ(タウ)、下側の持続時間は、T-τ。縦軸は振幅(Ampitude)。
τ<T/2だから、矩形波ではないパルス波ということになる。
まあ、波形の呼び名はおそらく、世界的にあまり統一されてないと思う。数学
の世界は意外と大まかな部分があるのだ。特に物理や経済が絡んでる実
用的内容だと。。♪
☆ ☆ ☆
さて、フーリエ級数展開とは、滑らかで扱いやすい正弦波を無限に組み合わ
せることで、その他の波
y=f(x)を表すための、数
学者フーリエによる数式変
形。理論的にはややハイ
レベルで、普通は大学1、
2年の授業内容だ。
左は、垂直線なしの矩形
波を正弦波1本、2本、3
本で表そうとしてる様子。
ウィキメディア、Lucas
VB氏のgifアニメより。
たった3本(n=3)で、
かなり矩形波に近似した形になってる。この正弦波の組合せを計算するの
がフーリエ級数展開だ。
もっとも基本的な
式は、左の式。
ウィキから借用。
cosの係数その他の a n と、sinの係数 b n は、元の関数 f(x)を用いた次
の定積分で定める。
a n はフーリエ
余弦係数、b n
はフーリエ正弦
係数。a n だけ、n=0から始まるのは、Σの左側に a₀ があるから。
変数はここでは t としてあるが、定積分だから、元の x のままでもいい。
☆ ☆ ☆
最初の式の左端、a₀ /2という項のせいで、フーリエ級数の人気が半減して
ると思うが(笑)、Σで出来る関数をy軸方向に平行移動させてるのだ。cos
とsinのΣだけだと、x軸の上下が非対称的なものを作るのが難しくなるから、
Σの左の定数項で簡単な調節を行ってる・・・と考えればわかりやすい。
実際、a ₀/2を計算すると、長さ2πの区間-π~πにおけるf(x)の積分
の1/(2π)だから、区間内の「平均値」となってる。
一方、最初に挙げた基本の式は、元の関数 f(x) とキレイに一致するとは
限らないので、左辺の側に「f(x)~」と書いてる本もある。もちろん、気にせ
ず「f(x)=」と書く本もある。普通の人にとっては、等号(=)の方が分かり
やすいだろう。。
☆ ☆ ☆
では、実際の計算について。もっとも基本的な矩形波として、原点対称の
次の関数を考える。x=0で不連続、x軸の上下に分かれることになる。垂
直の線は無い。
f(x)= -1 (-π<x≦0)
1 (0<x≦π)
これは、不連続点(x=0)を除けば、f(x)=-f(-x)を満たす関数、つまり
奇関数だから、フーリエ余弦係数 a n は0になって消滅。というのも、積分す
る f(x)cos nx が奇関数×偶関数=奇関数となるからだ。よって、フーリエ
正弦係数 b n だけ残して、次の「フーリエ正弦級数」を求めればよい。
Σb n sin nx (n=1~∞)
ちなみに以前扱った x² のフーリエ級数展開だと、逆に偶関数だから、余弦
係数 a n だけ残して、フーリエ余弦級数を求めた。
なお、この種の基本問題で、f(x)の値を-1と1にする代わりに、-π/4
とπ/4 などとした問題もあるが、要するにそれは後知恵によって調整した
値。-1と1の問題の答が分かってると、最初から π/4 倍しときたくなる
のだ。以下、実際に-1と1の問題を解いてみよう。
☆ ☆ ☆
b n = (1/π)∫f(t)sin nt dt (-π~π)
=(2/π)∫f(t)sin nt dt (0~π) (積分する関数が、奇×
奇=偶関数だから)
=(2/π)∫1・sin nt dt (0~π)
=(2/π)[ (-1/n)cos nt] (0~π)
=(-2/nπ){(-1)ⁿ-1}
∴ f(x)=Σ(-2/nπ){(-1)ⁿ-1}sin nx (n=1~∞)
=(4/π){sin x+(sin 3x)/3+(sin 5x)/5+・・・・・・}
というわけで、あらかじめ(π/4)倍しとけば、最後の答がもっとスッキリする
ことになる。元のf(x)の定義域にx=-πは入ってないけど、積分する時に
は普通に-πからπで計算してよい。簡単に言うと、端点だけなら積分に関
係ないという理由だが、厳密な話をするには、フーリエ級数と積分についての
正確な議論が必要。この記事では扱わないし、普通こだわらない所だ。。
☆ ☆ ☆
なお、矩形波が(不連続点を除いて)偶関数の場合は、フーリエ余弦級数を
使えばいい。x軸の上下が同じ幅になってないのなら、まず平行移動して上下
同じ幅に直して、後で逆向きに平行移動してもいい。
周期が2πでなく2Lの場合(区間 -L<x≦L の関数など)については、また
いずれ別記事で扱うことにしよう。要するに、横幅をπ/Lに縮めて解いた後、
L/πして元に戻せばいいのだ。置換積分になるので、やや面倒ではある。
とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡
(計 2455字)
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