二重化というアート=技術~『恋仲』第5話
(線香花火 パチパチ ポトン・・)
俺 あかりが好きだったんだ あかりは俺の 初恋だった
・・・・・・!
何ビックリしてんだよ フツー気付くだろ 俺から花火大会誘ってんだから
言われなきゃ分かんないよ 言ってくれれば良かったのに ♡
あの時の あの関係が壊れるのが嫌で 言い出せなかった
私もおんなじ こないだのバーベキューの時 手紙の話 したでしょ
あぁ 俺の机に入れたってやつ
ホントは 葵が好きって書いた 私も 葵が初恋だった
エエッ?!
何 その顔 フツー気付くでしょ
好きじゃなかったら キスなんかしないよ
いやそんなの 言われなきゃ分かんねぇだろ ♡
☆ ☆ ☆
「言われなくても誰でも分かるわ!」と、ツッコんで欲しいわけね♪ 脚本・桑
村さや香&協力・LiLyのコンビ、時々、何気ないボケや笑いを入れてるのだ。
分かる人は分かる、繊細な魅力の数々。『恋仲』第5話は11.8%で、3週連
続の2桁キープ。おめでとう☆ 初回と第2話の1ケタでさんざん叩かれた後、
静かな人気と支持の拡がり。キャストもスタッフも、嬉しいだろうね。初回から
フツーにいいドラマだと書いてた私としても、嬉しい限りだ。
ねとらぼによると、全国の中高生たちも、あのラストの「花火アート」(花火文字)
写真を真似して祝福してくれてるらしい。スマホなら Instant Xというカメラ・ア
プリ(無料)のバルブモード
を使うらしいけど、似たよ
うな機能はデジカメでも可
能。恋仲の前から既に、
Instagramやtwitterで拡
がってたとのこと。。
写真はインスタグラム、saacchiiiさんの作品、「I LOVE YOU」。いいね♪
☆ ☆ ☆
さて、私は今、自転車その他でバタバタあおられて、ドラマレビューどころじゃ
ない状況だから、今週は休もうかとも思ったけど、「二重化」というキーワード
を中心に、軽く解釈してみよう。
何かと他のものと、「二つを重ね合わせる」というのは、誰でも色んな場面
でやってることだし、あちこちで見聞きすることでもある。
例えば、ようやく騒動が静まって来た感もある、五輪エンブレム関連の盗作
問題では、元の他人の作品と、新たな自分の作品を無断で重ね合わせて
る(ように見える)わけで、感心しない二重化の例と言える。コピペの代わり
に、トレースという小奇麗な言葉が使われてた。エンブレムに似せた、セブ
ンイレブンのおでんPOPは笑える二重化なのに、取り下げとなったらしい。
あるいは、気付きにくい大切な二重化の例としては、算数や数学の等式を
挙げられる。「1+2=2+1」という式は、左辺と右辺、二つの式を等号で
重ね合わせて、同一視してるわけだ。図形の合同を表す「≡」や、相似を表
す「∽」でも同じこと。
まあ、数式を1つ入れるごとに読者が急減していくというのは、あの車椅子の
天才・ホーキング博士も書いてた事だから、この程度にしとこうか♪ 既に読
者が半減したかも。。(笑)
☆ ☆ ☆
無難な人文系のドラマの話に戻すと、この記事の冒頭で引用した、葵(福士
蒼汰)とあかり(本田翼)の会話も、色んな形で二重化になってる。
前半は、葵が告白して、あかりが「言われなきゃ分かんない」と応答。後半
はその逆。会話そのものが二重化して、味わいや面白さを出すと共に、2
人の対等で相互的な初恋関係を表してる。と同時に、この千葉県・館山市
の海辺の花火が、故郷の海辺の花火と二重化されてるわけだ。言語的な
二重化と、時空的な二重化。
このドラマを受けて、全国で花火アートが拡がるのは、ドラマとプライベート、
フィクションとリアルとの二重化と言っていい。心理学用語なら、「同一化」と
いう言葉も有名だ。あるいは、何重にも重なってることを考えると、「多重化」
とも言える。
恋仲の花火 = Aさんの花火 = Bさんの花火 = ・・・・・・
また難しげな式だと思われるかも知れないけど、等式をつなげていく思考
パターン(推移律)は、魚にも見られるという話(笑)。先日、話題になってた。
人間がお魚に負けてる場合ではない・・・というのは人間の偏見かも♪
☆ ☆ ☆
ところで、二重化というものは、自然に出来ることも多いけど、人間が自分
で創り出すことも多い。その意味で、二重化そのものが「アート」だ。
アート(art)という言葉は、日本語だと芸術という意味合いが強いけど、元
の言葉をラテン語(あるいはギリシャ語)まで遡れば、人間の「技」、「技術」、
テクニックという広い意味になる。その有名な知識を強調するために、この
記事のタイトルは「アート=技術」と二重化しておいた。
技としての二重化には、できる人とできない人、する人としない人、といった
違いが出て来る。
例えば私がこのドラマを見る時は、色んなものを重ね合わせて味わってる。
故郷の瀬戸内海と、ドラマの海。自分の恋愛(=恋する仲)と、ドラマの恋愛。
このドラマと、別のドラマ(『ビーチボーイズ』その他)。ドラマの花火と、もうす
ぐ行く予定になってる首都圏の花火大会。
実は昔のバイト先に、福士に似た後輩もいて、わりと仲が良かったから、ド
ラマを見てる間中、そいつの事を思い出すことになる(変な意味ではない♪)。
明るく元気で可愛い、ボーイッシュなあかりは、私の初恋候補の1人である
女の子とも重なるのだ。と言っても、小学校の低学年だから、あまり覚えて
ないわけで、重なるというより、自分で「重ねる」のだろう。無意識かつ、能
動的に。。
☆ ☆ ☆
『恋仲』に戻ると、あかりにとって、自分の幼い頃と、父が養ってるレイナちゃ
んとはキレイに重なる。
父が作ってくれた船のキーホルダーも同じ物で、わざわざ実際に重ね合わ
せてた。2人一緒のシーンはテレビ的配慮で、分かりやす過ぎたかも知れな
いけど、序盤でまだ説明もなしに、いきなりレイナちゃんと船の映像を1カット
入れたのは巧みなアート=技。
『ガリレオ』ファンの私としては、大ヒット映画『容疑者χの献身』の序盤で、
やがて死体トリックに使われるホームレスを一瞬映してたのを思い出した。
そう言えばあれは、2人を重ね合わせる二重化トリックのオチになってた。
ガリレオはさておき、あかりにとってある意味、レイナは父を取り合うライバ
ルでもあるけど、自分自身でもあるから、憎むことはできない。まして、父が
与えたお小遣いで買ったラムネ菓子(?)とか、分けて貰ってしまうと。。
☆ ☆ ☆
もう少し気付きにくい、やや高度な二重化の例だと、公平(太賀)が翔太(野
村周平)を慰めるシーン。
富山名物ブラックラーメンで、恋愛とか失恋のもやもやを解消する時、実は
公平自身のもやもやが重ねられてたわけだ。葵の妹・七海(大原櫻子)に、
あんまし相手にしてもらえない辛さ。あそこで公平が、自分の話をしなかっ
た所が味わい深い。ラーメンを食べる姿が、隠れた象徴表現になってた。
あの葵のマンション(or アパート)だと、葵がベランダか屋上みたいな場所
に出て、あかりの事を心配しながら思い出すシーンも、やや高度なアート=
技。葵の姿をカメラが後ろから写す時、その先に何気なく、船が進んでるの
だ。おそらく、多くの視聴者の視線は、葵に集中してただろうから、船の映
像は無意識で認識される。
そこから画面が切り替えられて、船の横を歩くあかりの姿が映る。ここでも
視聴者の視線は、あかりとメモ用紙(父の住所記載)に向けられてるから、
背景の船はほとんど意識しないだろう。無意識の内に、船を使って、葵と
あかりが重なり合う。そしてラストでは、幼い時のかくれんぼのエピソード
が出るのだ。船に隠れたまま寝てしまったあかりを、葵が発見した思い出。
あかり=船=葵。かくれんぼで見つけてもらえない不安も、懐かしい♪
この辺り、脚本も演出(金井紘)も、プロの技を披露してくれてる。事務所が
父の住所を教えたのは、あり得ない個人情報暴露だけど、主犯は3枚目役
の社員だから、笑って見逃すとしよう。あかりに一目惚れしたらしいし♪ キ
モイ花占いを、瑠衣子(市川由衣)の美脚の間に映すサービス・ショットも、
いいね。
☆ ☆ ☆
最後に、二重化とは別の地味な技巧についても、1つだけ見ておこう。私の
お気に入りの瑠衣子が、葵をあかりのもとへと送りだした直後。部屋にいた
七海が、葵のダッシュから察して、外へ慰めに出て来る。
七海 瑠衣子さん・・・
瑠衣子 私たち やり直せなかった
七海 またお兄ちゃん フラレちゃったんだ
瑠衣子 ううん 私がフラレたの
わざと、お兄ちゃんがフラレたとか言って慰める七海と、その気持ちを有難く
受け取りつつ、自ら否定する潔い瑠衣子。目線は合わさず、それぞれ川(or
海)を眺めながら。素敵な会話だと思うけど、それを味わうには、多少のアー
ト=技が必要かも知れない。
フラれたことを認めた瑠衣子の視線の先には、橋をダッシュする葵の姿が映っ
てた。その大きなストライド(歩幅)のダイナミックな走りを見て、持久系アスリー
トの私は自分の走りと重ね合わせるのだ。ちょっと負けてるかも知れないけど♪
ということで、今日はもう終了。副音声で、野村周平と太賀が面白トークを繰り
広げたらしいけど、無料動画だと聞けないのかね。オンエアを見て欲しいって
ことか。それでは、また明日。。☆彡
cf. 葵へ 待っ(てるから) あかり~『恋仲』第1話
「有心論」、心に神=キミが有るから・・~『恋仲』第2話
斜めから復活、鯛焼きシャチホコの初恋~第3話
PUNGENS(プンゲンス)、刺々しい裏切り~第4話
エドガー・アラン・ポーの小説『盗まれた手紙』との比較~第6話
フィクションの建築、人間の設計~第7話
100年続く家で、エバートラベル(永遠の旅)~第8話
普通に輝きを増すノームコア~『恋仲』最終回
(計 3906字)
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