五輪エンブレム・佐野研二郎のトートバッグ盗作疑惑、ニーチェ名言の英文はさておき・・
(☆9月2日の追記: 関連する最新記事をアップ。
画像の元ネタの検索・発見方法(五輪エンブレム展開例)&自転車 )
☆8月13日夜の追記:
サントリーが一部商品の取り下げを発表。以下の説明で、私が盗作
とまではまだ言い切れないとしたニーチェ商品は共に残り、おかしい
と指摘した商品は取り下げられた。さしあたり、妥当な対応だろう。
ただし今後の調査の展開を受けて、ニーチェ商品も取り下げになる
可能性は一応ある。例えば、創った本人たちが盗用を認めるとか、
疑惑に配慮するとか。それより、肝心の五輪エンブレム。流石にも
う引き際だと思う。
なお、取り下げとなった、6(小鳥)、7(同)、8(同)、12(水泳)、
18(パン)、19(本)、20(矢印)、24番(サングラス)については、
この記事の末尾に画像をまとめておいた。
☆ ☆ ☆
徹夜で仕事を片付けた後、ようやくお盆休みに入った今日、8月12日。眠い
頭で、ドラマ・レビューでも書こうかなと思ってたら、例の盗作疑惑問題にズブ
ズブとハマってしまった (^^ゞ 昨日のジムも合わせて、まだグッタリ疲れてる
もんで、セルフ・コントロール(自己制御)能力が落ちてるのだ♪
まあ、でも、ちょっと興味深かったし、勉強にもなったから、前回の記事に続
いて再びまとめとこう。個人的には、盗作とか罪&罰の話より、画像やデザイ
ンの類似性をどう扱うのかが気になるのだ。
☆ ☆ ☆
文章の場合なら、STAP細胞・小保方さん問題の時にも話題になったように、
一致する文字を機械的・ソフト的にカウントして、割合を論じることができる。
例えば、1ページの半分以上の字数が無断コピペになってたらアウトとか。判
定システムを持ってなくても、Googleの検索オプションとか使うだけでかなり
対応可能。
それに対して、画像の場合、どのくらい似てるか、どの程度似てるかといった、
類似性の程度の判定が難しい。
色だけなら、先日のセカオワ深瀬の暗号記事でもやってみせたように、個人
のWindowsパソコンのアクセサリー・ソフト「ペイント」で簡単に数値化できる
から、何とかなる。でも、形の類似というのは、数学的にも厄介な話。トポロ
ジー的には、円も長方形も同じ(ような)形とされるが、デザイン的にはかなり
の違いだろう。
☆ ☆ ☆
一般論は手短に済ませて、個別の具体的な話に移ろう。今日、初めてネット
(R25、その他)で知った、東京五輪エンブレム騒動のデザイナー、佐野研二
郎の別の疑惑。サントリーのトートバッグのデザイン。広告・宣伝には定評の
ある企業だけに、この夏のキャンペーンも一見、上手いなと思ってしまう。
ところが、30種類のデザインに対して、かなり色々と盗作疑惑や類似が指摘
されてるのだ。私のとりあえずの結論から言うと、「一部は非常に似てるし、全
体的にもそこそこの類似性がある」と思う。ただ、それと罪&罰の話は別問題
だし、盗作とは程遠いものもゴチャ混ぜになってるのだ。
すぐに、おかしいと
思ったのは、哲学
者ニーチェの名言
の引用についての
指摘。
左はバッグの30番
のデザイン(ウラ=
裏)。ニーチェの代表作、
『ツァラトゥストラはかく語りき』のドイツ語原文(第3部・中盤)を英訳したもの
の一種で、英訳の種類まではまだ特定できてない。英語版ウィキソースの訳
とは少し違うし、amazonですぐヒットするものとも違うのだ。
He who would learn to fly one day must first learn
to stand and walk and run and climb and dance;
one cannot fly into flying.
(英文からの日本語訳: ネットで流通してるものとは無関係、私の直訳。
いつか飛ぶことを学びたい者は、まず、立ち上がり、歩き、走り、登り、
踊ることを学ばなければならない。
人は、飛ぶことへといきなり飛躍することはできないのだ。)
ちなみに、対応するドイツ語原文は次の通り(上にリンクした電子図書館グー
テンベルクで公開中)。これをほぼ直訳すると、例の英文になる。
wer einst fliegen lernen will, der muss erst stehn und gehn und
laufen und klettern und tanzen lernen:
- man erfliegt das Fliegen nicht!
☆ ☆ ☆
さて、上の佐野のデザインでは、ニーチェの名前の綴りを間違えてしまってる。
正しくは「Nietzsche」なのに、cが脱落して、「Nietzshe」になってるのだ。こ
れはワザとボケてるとは思えないミスだから、確かに恥ずかしいことではある。
ただ、それが佐野のミスかどうかは微妙な所で、デザインではなく制作工程の
ミスかも知れない。その場合は、責任はわりと軽いだろうし、盗作疑惑の根拠
にはならない。実際、バッグ
13番のデザイン(表・裏)で
は、同じ名言が正しい綴り
で引用されてるのだ。
19番バッグも合ってる。
他に、1番、3番、4番、9番、11番、12番、24番、26番、27番、28番、29
番にもこの英文があるようだが、文字が小さかったり薄かったりして判別不能。
綴り(スペル)のミスが元ネタと同じだから怪しい・・・といった感じの指摘も流れて
るが、複数の情報が混ざった誤解だろう。例えば左が、元ネタかも知れない
と噂されてる画像で、
例のベルギーのデザ
イナーも利用してる画
像投稿サイト、Pinte
restのもの。名前の綴
りは間違ってない。
30番バッグとは字体、改行、行数も違うし、ミドルネームの有無も違ってる。お
まけに、この英訳に独自性も感じられない。むしろ13番と似てるけど、元の名
言が同じなのだから、これだけだと盗作とまでは言いにくい。
試しにGoogleの検索オプションで、「Nietzshe」という間違った綴りの数を
調べると、約70000件もヒットする。特殊な綴りだから、ありがちなミスなの
だ。英語の引用も、日本語サイトを含めてあちこちにあるものだし、著作権も
既に消滅(130年前の本)。パクリとか盗用だと指摘するのは難しいだろう。。
(☆追記: 上のピンタレスト画像のピンもと(情報源)は「daytradingbias.
com」となってるが、そのサイトでは発見できないし、一番最初
のものとは思えない。
有力候補は、1977年の英語の紹介本、『The Portable
Nietzsche』だが、その前まで遡る可能性は十分ある。。)
☆ ☆ ☆
それに対して、確かに怪
しいと思わざるを得ないの
は、バッグ20番のデザイ
ン。赤い矢印で、BEACH
(ビーチ)の方向が示され
てる。
これは、second lifeとい
うサイトで販売(?)されて
る左のデザインに酷似し
てると言っていい。画像検
索で1番にヒット。字体、
輪郭、傷までソックリだし、
これの更に元ネタがあるかと思って画像検索してみても、少し似た物しか出な
かった。
もちろん、お金(L$50;50ドルという意味か?)を払って購入してるのなら、
法的問題も倫理的問題もないが、もしそうなら、きっちり説明した方がいい。
☆ ☆ ☆
さらにもう一つ、バッグ18番のフランス
パン。これが、個人ブログの写真の無
断使用ではないかという指摘にも、な
るほど・・と頷くことになった。
一部をトリミング(部分カット)して、約
60度回転して使ってる(ように見える)。
正確には、左回り(=反時計回り)
に57度回転。どうやって探し当てたのかなと思って、私も自分でGoogleの画
像検索を試したが、バッグ画像の類似画像という形では発見できなかった。
それに対して、バッグ画像を使わず、単に「フランスパン バケット」で画像検
索すると、わりと下の方
に個人ブログがヒット。
そのサイト内で類似の
画像を自分で探すとよう
やく発見できる。他に、単に「バゲット」で画像検索すると、直ちに発見可能。
まあ、最初に発見して指摘した人はGJ(グッドジョブ)だと思う。
ちなみに、ブログの管理人の方は、指摘を受けた後も別に怒ってはいない
ような感じだ。むしろ、とまどってるとか、指摘の鋭さに感心といった所か。
そもそも、パン自体の制作者はポンパドゥル(POMPADOUR)か、担当の
従業員だし♪
☆ ☆ ☆
とにかく、五輪エンブレムが訴訟問題にもなったのだから、少なくとももう一度、
佐野研二郎か関係者による説明、釈明が必要だろう。
小保方さん問題が、学術論文への警鐘となったように、今回の問題がデザイ
ンとか芸術への警鐘となるのは間違いない。たとえ、作者の意識では「盗作」
してなくても、ある程度以上「類似」してる場合、ネットや世界から批判される
リスクがあるわけだ。
広告代理店も含めて業界全体としても、司法制度的にも、それなりの対処が
必要だろう。類似性の判定装置やソフトの開発もポイント。
それでは、また明日。。☆彡
P.S. 取り下げとなった8つのバッグのデザインは、以下の通り。
P.S.2 14日のスポーツ報知によると、事務所が受注、佐野は監修役
で、週明けにも見解発表とのこと。今後、関与した社員の名前が
出て来るかも。
一方、日テレNEWS24によると、水着女性のデザインを12番
バッグで盗用された可能性がある米国デザイナー、マクフェトリッ
ジ氏は、「デザイン業界では他人の影響を受けながら作品を作っ
ている」として、法的手段をとる考えはないとのこと。
P.S.3 佐野は、スタッフデザイナーによるトレース(そのまま描き写すこと、
複写)を認めて謝罪。ただ、五輪エンブレムは自分のデザインだし、
問題ないと主張。
半ばジョークとか軽口として書き添えとくと、佐野は会社MR_
DESIGNのHPで「トートバック」と繰返し書いてるが、バッ「グ」が
正しい♪ 佐野は東京出身だから、「バック」という言葉は方言とか
ではなく昭和的なものか。弁護士ドットコムでは、引用する際にわ
ざわざ「グ」へと修正してた。法的には些細な違いという事かも。
P.S.4 8月15日の日刊ゲンダイHPによると、佐野が手掛けたTシャツの
デザインに、フランスのギタリスト、ビレリ・ラグレーンに似た写真が
使われてるとの事。ジプシー・ジャズの第一人者らしい。許可の有
無など、法的・倫理的な問題についてはまだ不明。34年前のアル
バム『Bireli Swing ’81』の裏ジャケット、よく気付いたもんだ。。
P.S.5 佐野がデザインした、名古屋市・東山動植物園のシンボルマーク
が、コスタリカ国立博物館のロゴにそっくりな点については、神田
敏晶氏による検証記事が参考になる。30度回転でほぼ一致。
P.S.6 「BEACH」のデザインをトレースされた米国のデザイナー、ベン・
ザラコー氏は、FNN(フジ・ニューズ・ネットワーク)の取材に応答。
説明を求めたいし、お金を儲けていたのなら法的手段を取りたい、
などと主張したそうだ。
P.S.7 残った25番バッグの黒猫(下図)で類似が指摘されてる、ATSUKO
MATANO(俣野温子)氏は8月16日、ブログで控えめに不満と
批判を示した。
ところが、その日
の夜遅くに、記事
の内容とタイトル
を変更。自身の作品
の写真を示すに留める形にした。
私は元記事を読ん
でるが、賢明な判断
だと思う。左が公式
サイトで販売中、黒
猫ランチ フォーク
セットのケース。顔をのぞかせる絵柄は、「ひょっこり黒猫」と呼ばれてる。
デザインについては、あえてコメントしないが、ロゴの文字について一言。25
番の「Merci」(メルシー)は、ここだけがフランス語で、意味は「ありがとう」。
ひょっこり黒猫の方は、フランス語のブランド名「LA MERISE」(ら・むりー
ず)で、直訳すると「(野生の)さくらんぼ」という意味。
俣野氏は、定冠詞の「LA」と、「merise」というやや珍しい単語(普通は cerise)
に、「世界でたったひとつの」という意味を込めてるようだ(公式サイト・CONCE
PTを読んだ上での解釈)。
P.S.8 専門家の栗原潔氏が、著作権侵害の基礎について、個別の具体的
な見解をアップ。黒猫の場合だと、「著作権侵害的には一応クリアー
・・・・・・アイデアを模倣すること自体がモラルとしてどうか・・・」との事。
P.S.9 東山動植物園とコスタリカ国立博物館の類似について、8月18日
の昼、中日新聞HPも
報じた。この類似性
は黒猫以下だろうし、
他にも似た物はあるだ
ろう。ただ、指摘や類
似例があまりに多い
から、どれも騒動に
なってしまうわけだ。
動植物園の地元・中
日より僅かに早く、産
経HPでも報道。
動植物園は調査を依頼したそうだけど、イメージ的にはかなり違う
ので、おとがめ無しになると予想する。
P.S.10 上毛新聞ニュースによると、佐野が担当した「おおたBITO 太田
市美術館・図書館」のロゴについて、念のために調査するとのこと。
かなり特殊なデザイン
だから、おそらく大丈夫
だろうとは思うが。。左
は群馬県・太田市の
HPより。
(元の字数 4383字)
(翌週以降の追記 887字 ; 合計 5270字)
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