斜めから復活、鯛焼きシャチホコの初恋~『恋仲』第3話
万里子 ねえ 建築家にとって一番大切なものって 何だと思う?
葵 クライアントの思いを 一番に考えるってことですか?
万里子 惜しい! シャチホコのない名古屋城みたい♪
葵 それ、どうゆうことですか
万里子 さあ 後は瑠衣ちゃんに任せて甘い物でも食べて帰ろ シャチホコ♪
葵 いや シャチホコじゃないです
万里子 帰るよ シャチホコ♪
☆ ☆ ☆
『恋仲』、やっぱりフツーに面白い、フツーに良く出来たドラマだね♪ 第3話
で遂に初の2ケタ視聴率、11.9%☆ おめでとう! 第1話から、9.8%、
9.9%、11.9%だから、最初の3回で数字を上げ続けたことになる。この
右肩上がりは、フジ月9の歴史の中でも、かなり希少価値のある記録だと思
う。後で調べてみようかな。。
さて、鯱(シャチホコ)という漢字はちょっと難しいが、第3話のシャチホコの
意味や使い方もちょっと高度で、ドラマを鑑賞する技術・能力を試される。ツ
イッター検索をかけると、「恋仲 シャチホコ」のツイートは数十個あるが、
「シャチホコ 鯛焼き」だとゼロ。
シャチホコの比喩の面白さや、まりこ(羊田吉・・・じゃなくて吉田羊)による
連呼の可愛さに気付きながら、鯛焼きとのつながりに気付かないというの
は、シャチホコを見
ない名古屋城見物
みたいなもの♪
写真はウィキメディ
アで公開中、Gnsin氏とOcdp氏の作品の連結。
ましてや、『恋仲』をベタで古臭い初恋成就ドラマとしか思わないような見方は、
名古屋城を見ない名古屋旅行みたいなものなのだ(笑)。このドラマには、新
たな城やシャチホコが色々と含まれてるのだから。脚本・桑村さや香、協力・
LiLyのコンビ、なかなかのテクニシャンだと思う。意識的なものか無意識的
なものかはさておき。。
☆ ☆ ☆
鯛焼きとは、ラック作りの御礼として、あかり(本田翼)が葵(福士蒼汰)に渡し
た、唐突なプレゼント。直前のシャチホコ話とのつながりが分からないと、意味
不明なおやつになってしまう。
冷めてるとか突っ込みつつ、鯛焼きを嬉しそうに食べてる葵の姿は、まるで公
平(太賀)が用意したシャケ&イクラの親子丼みたいになってた♪ もちろん、
シャケが葵=シャチホコ、イクラが鯛焼きと対応してるのだ。
ポイントは、シャチホコの解釈にある。万里子がなぜ、建築家に関する葵の
考えを「シャチホコの無い名古屋城」と言いつつ、葵自身を「シャチホコ」と呼
んでたのか。万里子が「雇って良かったと初めて思った」(笑)、葵のスピーチ
後半を引用してみよう。新築離婚を決意した顧客(クライアント)の夫に対する、
青くて熱い演説、青春メッセージだった。
お二人 幼馴染なんですよね
ずっと長く一緒にいたのに こんなに簡単に別れてしまって
ホントにいいんですか?
・・・・・・長くいすぎたとか 最高じゃないですか
後悔しますよ 失って初めて気付くんです
心から好きになれる人が 生まれた時からそばにいてくれるのが
どんなに幸せなことか
当たり前みたいにそばにいた人が ある日突然いなくなる
それが それが どれだけ辛いことか。。
何かしてあげたいと思っても いなくなってからじゃ遅いんですよ!
奥さんを ちゃんと見ていってあげてください
お願いします。。
☆ ☆ ☆
このスピーチが、実はあかりと父親(小林薫)の親子関係に向けたものになっ
てることに気付かないと、またシャチホコのない名古屋城になってしまう♪
中段の、「心から・・・・・・辛いことか」の部分を読み返せば、明らかだろう。
葵は顧客に頭を下げつつ、おじさん(父親)にも頭を下げてたのだ。
父親の件は、翔太(野村周平)との奇妙なお金のやり取りも含めて、また来週
見てみよう。直接的な状況を見ると、建築家の卵である葵は、「クライアント
(顧客)に対して、また周囲に対して、自分の熱い思いを真剣に伝える」姿を示
してた。
名古屋城とは、建築家がクライアントの思いを一番に考えること。シャチホコ
とは、建築家自身の思いを二番に考えること。万里子の質問に対する葵の
答には、自分の思いの大切さが入ってなかったから、シャチホコの無い名古
屋城なのだ。「クライアントの思いを尊重しながら、自分の溢れる思いをぶつ
けていくこと」。こういった答なら、シャチホコ付き名古屋城になってた。
けれども、葵自身には熱い思いがあるし、それを言葉や行動で示すこともで
きる。だから、葵自身は金色に輝くシャチホコだ。大衆食堂で葵とビールで乾
杯した後、あの瑠衣子なら酔ったフリをして、そっとささやくはず。腕を絡めて、
「葵のシャチホコ、素敵。。♡」。 コラコラ!
☆ ☆ ☆
一方、手作りラックの「斜め」の仕切りというのも、面白い小技だった。あれが
実は、万里子が徹夜で書き直した建築設計図と重なってることに気付かない
と、またシャチホコのない名古屋城となる♪
美術スタッフさんか、建築士指導・小針美玲の苦心の作。居間のセンターに
ある階段下のデッド・スペースを利用して、旦那さんが大好きなミニカーを飾
る。あの図をよく見ると、旦那さんは横目でミニカーを見れるけど、奥さんは
背を向けてるのだ♪ 細かい所、シャチホコの鱗まで、よく出来てた。
「斜め」とは、真っ直ぐでない、自然でないものの象徴。新築の家の真ん中で
斜めに伸びてる階段は、ミニカー問題をキッカケに大きくこじれてしまった夫婦
関係を表してる。しかし、斜めを上手く利用すれば、新しい関係や環境の創作、
リノベーション(再構築)につながるのだ。
☆ ☆ ☆
一方、安くてお勧めのOSB(配向性ストランドボード)素材を使った、手作り
ラックの仕切りの「斜め」。こちらは、2つのこじれを象徴してたわけだ。あか
り&葵の関係、そして、娘&父親の関係。
葵は、真っ直ぐの仕切りの方がいいと主張してた。それは要するに、あかり&
翔太の現在のカップルを尊重するという意味であって、実際、ここまでのストー
リーはほとんどそうなってる。
それに対してあかりは、斜めにこだわるのだ。翔太との真っ直ぐな関係に、横
から突然入って来た、葵の存在に。この幼馴染カップルが今現在、斜めの関
係になってしまってることは、あのシーンの2人の位置に表されてる。あかりが
左上、翔太が控えめに右下という、かなり珍しい構図になってた。
斜めの仕切りを挟んで、斜め下から葵が見たあかりは、父親との思い出の写
真を見つめてた。この写真もまた、斜めに写されてたのだ。斜めになってしまっ
た2つの関係にこだわるヒロイン、あかり。
父親の扱いはちょっと読みにくいが、少なくとも葵との関係は、最後に斜めから
真っ直ぐになるはず。対等で自然な新婚夫婦。それを翔太が、新たに斜めから
祝福するという、ハッピーエンドだろう。。
☆ ☆ ☆
他にも、あかりの部屋を訪れた葵に、恵里香(馬場園梓)が何気なく翔太用
のコップを渡して、後で翔太が気付くとか、細かい配慮があちこちに見られた。
OSB(Oriented Strand Board)、配向性ストランドボードとは、断片(ス
トランド)を同じ向きに配置した(オリエンティド)板(ボード)のこと。細かい要
素を上手くまとめることで、良質の全体が出来上がる。
ドラマを見ること、創ることも、また同様だろう。スピーチ・シーンでの、円形に
回転する映像。その奥で、何気にじっと聞き耳を立ててるらしい、紳士の姿。
あるいは、ラック用の買い物シーンで、上の通路から下の地面へと何気なくつ
ないで切り替えた映像。これらも、忘れるわけにはいかない大切な断片、小さ
なシャチホコの鱗となってた。演出は宮木正悟。
第2話のLINEシーンで葵がスマホを逆に持ってたなんてコネタは、流石に細
かすぎて伝わらない断片=ストランドかも知れない♪ とにかく次回の第4話
も楽しみだ。それでは、今日はこの辺で。。☆彡
cf. 葵へ 待っ(てるから) あかり~『恋仲』第1話
「有心論」、心に神=キミが有るから・・~『恋仲』第2話
PUNGENS(プンゲンス)、刺々しい裏切り~第4話
二重化というアート=技術~第5話
エドガー・アラン・ポーの小説『盗まれた手紙』との比較~第6話
フィクションの建築、人間の設計~第7話
100年続く家で、エバートラベル(永遠の旅)~第8話
普通に輝きを増すノームコア~『恋仲』最終回
(計 3338字)
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