ソフトバンクの元セーラームーンCMと、『Moon River』歌詞解釈
時事ネタとして考えるのなら3週間遅れの話題だけど、たまたま最近ニュース
を2本、目にしたので、簡単に記事を書いとこう。個人的には、時事ネタでな
いクラシックな側面の方が興味深かった。
直接のキッカケは、J-CASTとアサ芸プラスの記事。ソフトバンクの新CM
に不満や批判があるという内容だ。有名な原作の続きのような作品が出ると、
必ず似たような現象が起きるわけで、ここではもっとフツーにCMを鑑賞して
みよう。少なくとも、相当な制作費用をかけてる「大作」なのは間違いない。
豪華キャストへのギャラにせよ、著作権関連にせよ。
私はあまりテレビを見ない人間なので、テレビCMとしては今まで、元セー
ラームーン(小泉今日子)と元・鉄腕アトム(堺雅人)が登場するヴァージョン
を1回見ただけだった。15秒か30秒か、短かい放送だったから、アッ、これ
か・・・と思った程度。そこで、YouTubeの公式動画で一通り見てみた。
☆ ☆ ☆
私が見た順番は、「MOON RIBAR」篇のA・B・C・D・E、アルファベット順
で、最後に予告編も鑑賞。ただ、この記事では予告編から始めよう。
都会の雑居ビルの
屋上で、人知れず
営業している一軒
のダイニングバー、
MOON RIBAR。
テロップで分かりや
すく内容紹介。
もちろん、BGMに使ってる名曲「Moon River」(1961)のタイトルをもじっ
て「バー」(BAR)に変えた名前だけど、それが分からないと、冒頭で頬を緩
めることが出来ないから、後の受け取り方もちょっと変わるだろう。
☆ ☆ ☆
すぐに、主役の元
セーラームーンが
登場。夜更けの窓
辺でギターを弾い
てる。これも、こ
の曲と共に有名な
映画『ティファニー
で朝食を』へのオマージュ(敬意を込めた模倣)。
映画は見てないけど、美人女優の代表、オードリー・ヘプバーンが歌うシー
ンだけは一応知ってた。アカデミー歌曲賞を受賞。小泉のヘアスタイルは「大
人」しいけど、白い洋服に赤いリボンはセーラームーンの名残りだ。
ここまでは上品な出来でOK。ただ、この後がちょっと物足りない感もある。2
分33秒もあるのに、元おぼっちゃまくん(満島真之介)以外は出演者が不明
で、やや退屈。元・鉄腕アトム、元ケンシロウ(北斗の拳)、元ゴルゴ13、元あ
したのジョー、元ちびまる子ちゃん。最後に、「出演犬」としてなら、お馴染みの
白い「お父さん」が紹介される。
ラストは「スマホたのしい SoftBank」。「携帯たのしい」とか「モバイルたの
しい」ではないから、ガラケーだと楽しくないらしい(笑)。ソフトバンクにとって
は儲けが少ないから♪ まあ、乞うご期待ってことで、2015年10月20日の
本編CMに注目させるわけだ。小泉のコスプレがあるのか、とか。
☆ ☆ ☆
で、一番話題になってる感じの、ヴァージョンA。私はセーラームーンのアニ
メも漫画もほとん
ど知らなくて、実
写版を何回か見
た程度。でも、オ
ムライスは好きだ
から、この「オムー
ンライス」だけで
も満足だ♪ 元セーラームーンの娘らしき、元ちびまる子ちゃん(広瀬すず)
が考えたらしい。ちなみに下の白いカウンターも三日月形になってる。
そして問題のムー
ンスティックを使う
シーン。伸ばして
先端にスマホを
セット。自撮り棒
にして写真を取る
辺りで、原作やファ
ンへのリスペクトが足りないという見方が生じるらしい。
別に、スティックをおとしめるような映し方にはなってないけど、伸ばさずに
普通の長さで使って、「自撮り棒あるわよ♪」という台詞が無ければ、抵抗
が少なかったんだろうとは思う。
もちろん、制作サイドは軽いユーモアのつもりだろうし、これが引っ掛かる視
聴者は少ないはず。私自身も何とも思わない。とはいえ、超人気キャラの数
十年後を扱うメジャーなCMだから、多少の配慮はあっても良かったのかも。。
その後は店の外に出て、写メを撮って仲間たちに送信するシーン。セーラー
ムーンもアトムも、無意識の内にお決まりのポーズを取る♪ 最後はまた、
「スマホたのしい」。ガラホもたのしくないんだろう。料金的に(笑)。まあ、月
の看板やスマホのムーンボタンも含めて、全体的に見れば上質のCMだ。
☆ ☆ ☆
続いて、ヴァージョンBでは、元ゴルゴ13(小日向文世)が総理大臣になっ
て、国会かどこかで激しく詰め寄られてる。ゴルゴは単行本を数冊読んだ程
度かな。
突然、スーツの胸を開くと、一同シーン。。もちろん拳銃ではなく、スマホを取
り出してセーラームーンとお話するだけ♪ スマホには銃弾の跡もあるから、
防弾スマホらしい。小さ過ぎて防ぎきれないだろうけど(笑)
さらに、ヴァージョンCでは、元あしたのジョーの作家(又吉)と、元ケンシロウ
の歌舞伎役者(市川海老蔵)が登場。ジョーは読んでるけど、北斗の拳は全
く読んでない。元ちびまる子ちゃんに、どっちが強いのかとスマホであおられ
て、すぐに勝負することになる。ところが、あしたのジョーは衰えてサンドバッ
グもろくに叩けない状態だから、淋しく前言撤回♪
まあ、頭とペンで勝負する世界に挑戦してるんだから、当然だろう。書いてる
のは、芥川賞のベストセラー『火花』だから、ジョーの才能へのリスペクトもあ
る。ケンシロウが「アタタタタ」と叫びながら連打するパンチが、ちょっと多過ぎ
てパンチに見えない (^^ゞ
まあ、あれも軽いギャグなんだろうけど、違うヒネリが欲しかったかな。たとえ
ば、サンドバッグにジョー=又吉の写真を貼って、写真の下を連打で歪ませ
てジョーに動画送信するとか♪ ちなみに、写真を殴るのはリスキーだろう。。
☆ ☆ ☆
ヴァージョンDのおぼっちゃまくん(現在は売れない動画クリエーター)は、原
作もタレントも全く知らないので、ちびまる子ちゃんが可愛かっただけ♪ ウケ
ないギャグを連発してバカにされてる彼を、可愛く慰めてた。こうゆう「優しい」
コは、男にとって実は一番残酷だったりする(笑)。勘違いして近づき過ぎると、
優しくなくなるのだ。
最後はヴァージョンEで、ちびまる子ちゃん(私はほとんど知らない)が一応主
役だけど、全体の総集編みたいな形にもなってる。彼女がセーラームーンに、
スマホで「いつもありがとう、ママ」と送ると、すぐそばにいるママは「直接言い
なよ(笑)」と返信。本当に大切なことは、スマホより直接的なコミュニケーショ
ンでってことで、納得できる繊細な配慮になってる。
ただしCMだから、
最後はやっぱり
「スマホたのし
い」。シルエット
での全員登場も、
夜や月のイメー
ジとピッタシだ。
なお、動画の再生回数は、Eだけが45万回で、他は20~25万回程度。A
が特に多いわけではないから、セーラームーンへの反発というのも、人数
的には多くないと推定できる。評価の賛否も、どれも2対1~3対1。否定的
反応がすごく多いというわけでもない。。
☆ ☆ ☆
実はここまで前置きのつもりだったのに、もう時間が無くなってしまった (^^ゞ
以前、JR東海のクリスマスCMの記事を書いた時ほどじゃないけど、多数の
動画を扱うと、どうしても話が長くなる。
CM以上に私が興味を持ったのは、初めて読んだ『Moon River』の歌詞や
背景説明だ。Moon Riverというのは、作詞家ジョニー・マーサー(Johnny
Mercer)が少年時代に遊んだBack Riverを歌ったものらしい。なぜか英語
版ウィキペディアには見当たらないけど、あちこちのサイトに書かれてる。
イメージ的には小さな川のような感じもあるけど、歌詞の最初に「1マイル以
上の幅」だと書かれてる。その川は夢を与えてくれたし、逆に傷つけられるこ
ともあった。要するに、田舎から広大な世界へとつながる道、あるいは壁であっ
て、いつかそこをカッコ良く渡りたいのだ。
☆ ☆ ☆
1番の歌詞だけなら、この川は、恋する相手を歌ってるようでもある。要する
に、いつか心が通じ合うのを夢見てるのだ。あるいは、相手が月(Moon)で、
相手に到達するまでの道のりが川(River)と考えてもいい。
ただ、2番では、2人の漂流者(two drifters)が中心となるから、ムーン・リ
バーは遥か彼方の憧れの世界か、そこへと至る道と考える方が自然だろう。
もちろん、1番と2番で、ムーン・リバーが表す対象が変わると考えてもいい。
実は、歌詞全体の中で、ムーン(月)と直接結びつく言葉は無い。また見ぬ
未知の世界と、月明かりでおぼろげに照らされた川を重ねてると考えること
は一応可能。ただ、制作サイドの事情としては、「ムーン」という言葉は後か
ら付けたものだという話もあるようだ(未確認)。もちろん、作り手の事情と、
聞き手の解釈は別物であっても構わない。
☆ ☆ ☆
最後に、ソフトバンクのCMに戻ろう。設定的にも内容的にも、明らかに中高
年をターゲットにしたものであって、彼ら自身がムーン=月のような存在なの
だ。明るくて美しいけど、太陽ほどの輝きやきらめきはない、夜の存在。JRの
旅行企画、「フルムーン」を考えても分かること。
月のような彼らも、昔は太陽だった。でも、昔の自分たちは、今では遠く美しい
思い出。これもまた、月のイメージと重なる。つまり、月のような自分たちが、
月のような思い出を見つめてるのだ。文字通り、「Moon Lover」(ムーン・
ラバー)。
これを訳すと、たとえば「月の恋人」となるわけで、この辺りについては以前、
キムタク=木村拓哉のドラマ記事で細かく考察しておいた。
とにかく、月から月への遥かな思いを形にしてくれるのが、携帯・・・じゃなく
てスマホ・・・でもなくて、ソフトバンクのスマホ♪ そして、みんなで同じ虹の
端を追い求めるのだ。We’re after the same rainbow’s end。虹の
向こう側の端は「お空」のはず(笑)。「彼岸」を目指す漂流者たち。そこまで
考えるマニアックな視聴者はいないだろうから、CM制作者も安心なのだ。。
☆ ☆ ☆
今どき、スマホくらい使わないと、セーラームーンに「お仕置き」されてしまう。
でも、その方がいいという考えもアリだろう。次のシリーズは、「おしおき たの
しい」かも。「Moon Rebashing」(ムーン・リバッシング)。月の反復おしおき
(笑)。似てないだろ!
ま、ムーン世代は体罰にも慣れてるしね♪ それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 4196字)
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