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小保方さんの手記『あの日』、やはり「普通の悪意」は感じない・・

また帰宅が遅くなって、予定してた記事を書く時間が無くなったから、軽~

い感想でお茶を濁しとこう。小保方晴子氏の著書、『あの日』(講談社)を

チラ見した印象その他をまとめたものだ。

 

発売当日(1月28日)も翌日も、amazonのランキング1位。早くも100を

超えたレビューの評価は、星5つと星1つが真っ二つになってる。ある意味、

STAP騒動やアマゾンの状況をよく表してるデータだろう。

 

当サイトでは、STAP細胞騒動が続いてた一昨年の春から夏にかけて、

数本の記事を書いてる。一番本格的なのは、5400字超の次の記事だ。

法律上の「悪意」は道徳的な悪とは別物か?~STAP細胞・小保方さん問題

 

少なくとも当時、「悪意」という言葉=概念について、裁判の判例まで調べ

たものは見当たらなかったし、書いてる内容も他のサイトとはかなり違っ

たものになってる。上の記事をアップした翌日、記者会見の感想記事

アップ。「少なくとも意図的なウソや『普通の悪意』は無いなと感じる姿」

と書いておいた。

 

 

         ☆          ☆          ☆

さて、STAP細胞問題で、「科学的に」一番重要なのはもちろん、存在

するかどうかだろう。二番目が、実験や発表の正当性。

 

ただ、科学的な実在性というものは、暫定的な推測しかできないわけで、

今現在わかってることは、これまでの再現実験がすべて失敗した(らし

い)ということ。さらに、元の成功実験も信用されてないから、結局「否定

された」ということになる。

 

科学的、社会的にフツーの結論だろうが、この後、誰かが成功して「コ

ツ」を発表した途端、再現実験の成功が続く可能性も一応あるわけだ。

科学のブレイク・スルーとはそんなものだろう。日本人研究者のノーベ

ル物理学賞につながった青色発光ダイオードも、さんざん失敗が続い

て、周囲から否定され続けた末での成功だったと聞いてる。

 

一方、実験や発表の正当性については、これまでの報道や証言を元に

して考えるなら、少なからずの問題があったのは明らかで、その一部は

小保方さん自身も認めてること。

 

ただ、報道や証言のどこまでが本当でどこからが間違いなのか、あるい

は、小保方さんに「どの程度の不正」があったのかは、まだ議論の余地

がある。実際、今回の手記『あの日』を読むと、報道や証言に少なから

ずの間違いがあることになってるし、不正が小保方さん一人に無理やり

押しつけられてる気もするのだ。もちろん手記の信ぴょう性も問題だが。。

 

 

         ☆          ☆          ☆

というわけで、ようやく手記『あの日』の話に入るが、例の記者会見と同

様、やはり「普通の悪意」は感じない。

 

ただ、録音や録画のようなものが(おそらくほとんど)無いので、正直どこ

まで信用していいのか分からないのだ。意図的ではない虚言癖、悪意な

き妄想癖のようなものを持ってる可能性は一応ある。

 

もし、手記をそのまま受け取るなら、どこにでもいる程度の未熟な若手研

究者の一人であって、魔女狩り的なバッシングは途方もない不運というこ

とになる。冤罪と言うより、量刑不当ということだ。名指しで批判されてる

若山教授が何もコメントしないままだと、少なくとも手記の一部は本当な

のかも・・・と思われても仕方ないだろう。主犯かどうかはさておき。

 

一方、STAP騒動とは一応別物のはずの、早稲田大学の博士論文問題。

こちらも、手記によると、論文の不正は軽微なもので、普通なら手直しし

て認められるのに、早稲田は全く認める気がなかったということになる。

さんざん叩かれてた博士論文は、実は単なる下書きというお話。

 

修正期間における不誠実な(?)指導教官たちの実名は出てないけど、

あそこまで具体的に批判するのなら、名前も出せば良かったと思う。名

誉棄損で訴えられたら、法廷での勝負だから、これまでよりはスッキリ

するはず。まあ、教官も大学も、訴訟に持ち込むとは思えないけど。。

 

 

         ☆          ☆          ☆

別の角度から手記を見ると、初版が控えめに5万部とされた理由は、す

ぐに分かった気がした。明らかに装丁が似てる、少年Aの『絶歌』と違って、

グロテスクな話や不謹慎すぎる話は無いけど、全体的に内容が堅い=硬

いのだ。リケジョ(理系女子)が書いた、理系研究者の卵の暴露本。

 

これは、たとえ仮に7割が間違いとかウソだったとしても、理系の大学院生

やそれを目指す学生にとっては、参考になると思う。要するに、文系と違っ

て、独特の複雑さを持つ人間関係の中で長い間過ごすわけで、一つの長

大な主観的報告として読めばいい。

 

こんなものが253ページもの著書になることは稀だから、専門が違う人

にとっても希少価値がある。所詮、同じ人間、同じ理系研究者なのだ。

もちろん、研究や大学と無縁の人が読んでも興味深いはず。外見的、専

門的なややこしさは適当にスルーすればいい。

 

 

          ☆          ☆          ☆

ただ、一般の読者にとっては、本文のあちこちに細かく現れてる、小保方

さんの感情を読み取る方が興味深いかも知れない。理系の話の端々に、

怨念のような強い感情が控えめに書き込まれてるのだ。これは当然、今

までの報道にはほとんど無かったもの。

 

弁護士を通じた僅かな反論や抗議とは違う、もっと人間的な思いが時系

列に沿って表れてる。あぁ、あの時、そんな事を思ってたんだ・・・とか、裏

ではそんな会話があったんだ・・・とか、超有名人の自伝として退屈は全

くしない。

 

少年Aの時は、罪の重さにそぐわない文体の過剰な装飾が気になったが、

小保方さんの文体の装飾は控えめになってる。所々に、過剰にも思える

自負心が見られるけど、これまで大量殺人犯なみのバッシングを耐え忍

んで来たことを考えれば、許容範囲だろう。周囲から1万けなされた後、

自分で自分を1だけ褒めるようなものだ。

 

某学会の女性会長や、某新聞社の女性記者への不満(著書では2人と

も実名)については、読みながら納得した。これもまた、1000発殴られ

た後、1発だけ殴り返すようなもの。おそらくあれでも、極度に自重した表

現なんだと想像する。

 

 

          ☆          ☆          ☆  

最後に、「あの日」というタイトルの意味について。編集者が付けたのか

どうかは不明だが、前置きの一番最初から、あの日に戻りたいという話

がヒネった形で登場する。

 

『あの日にかえりたい』というのは、ユーミン(荒井由実)初期の古典的名

曲で、当サイトでも歌詞解釈を行ってるが、「あの日」とはもちろん、彼と

幸せに過ごしてた日々だ。

 

でも、小保方さんにとって、戻りたい「あの日」はなかなか見当たらないら

しい。たとえば、ちょうど2年前、華々しく報道された日も、やがて悲惨な

流れにつながると分かってるから、戻りたい日とは言いにくい。遡ってい

くと結局、自分が生まれた日でさえ呪いたくなるほど。「あの日々を忘れ

たい」という意味の方が近いだろう。

 

 

         ☆          ☆          ☆   

そのためには、「あの日々を変えたい」とポジティブに考えればいいのだ。

まだ若いし、刑務所の前科がついた訳でもない。応援してくれる人もそれ

なりにいるのだから、これから第二の人生を充実させれば、中島みゆきの

古典的名曲『時代』になる。

 

  あんな時代も あったねと きっと笑って 話せるわ ♫

 

いずれ、そう遠くない将来、テレビ朝日の『しくじり先生』に笑って出演でき

る日がやって来るかも。「その日を見てみたい」と、私は願ってる♪ たと

えSTAP細胞が再現できなくても、それは十分可能なのだ。

 

それでは今日は、この辺で。。☆彡

 

                               (計 3002字)

 

 

P.S. 2月1日発売『週刊ポスト 2016 2/12号』では、「小

     保方晴子『告白本』の矛盾と疑問と自己弁護」という2

     ページの記事を掲載。「矛盾」とされてるのは、相反する

     心情表現のことで、人の心理がその種の矛盾をはらむ

     というのは平凡な一般的事実にすぎない。例えば誰で

     も、自分という存在は好きで嫌いだろう。

 

     逆に、手記と同じ出版社(講談社)による『週刊現代』や

     『Friday』は、単なる手記の宣伝のような記事だった。

 

P.S.2 2月21日の朝日新聞・朝刊に掲載された大きな広告によると、

      『あの日』は25万部を突破したとのこと。出版物としては既に成

      功だけど、もちろん重要なのは今後なのだ。科学においても、人

      生においても。。

 

 

cf. STAP細胞・バカンティ氏に関する日米の報道&休養ジョグ

 

                (追記 335字 ; 合計 3337字)

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コメント

香菜子と言います。小保方さんのあの日、読みました。わたしも小保方さんに悪意があったとは思えません。ただ、わたしの自分勝手で傲慢高飛車な意見かもしれませんが、小保方さんは無意識に誇大妄想を持ったり、虚言癖があったり、言葉は悪いけど精神疾患・精神障害や人格障害に近い側面を持っているのではないかしらと感じました。もちろん、悪気があって嘘をついているのではなく、ご本人にとっては誇大妄想による真実を話しているつもりなのでは、と思います。研究者は多少の思い込みの強さや誇大妄想がないと一流になれないのかもしれないとも感じます。香菜子

投稿: 香菜子 | 2016年8月16日 (火) 10時52分

> 香菜子さん
  
はじめまして。コメントありがとうございます。
  
小保方さんに、普通の悪意が感じられないからこそ、
法律上の悪意が認められるとかいう話が出て来たわけでしょう。
そうした主張については、別記事で詳しく批判しておきました。
   
一方、彼女にちょっと変な部分を感じるのは確かです。
ただ、「誇大妄想」、「虚言癖」、「精神疾患」、「精神障害」、
「人格障害」といった言葉には、かなり差別的な響きが含まれるので、
彼女を直接診察した医師でない限り、使うべきではないと思います。
   
一部の天才的な研究者に特徴的に見られることですが、
ごく普通の人でもしばしば、どこか妙な部分はあるもの。
そうした人たちは、たかが周囲の数十人程度の人達に
「ちょっと変」とか言われる程度で、普通の生活を送ってます。
  
小保方さんの悲劇は、最初のニュースの取り上げ方が
非常に大きくて、研究者にしては多少、魅力的な容姿を
持った若い女性だから、日本中からバッシングを受けたこと。
  
その巨大な魔女狩り的バッシングの方が、彼女の人格よりも
遥かに大きな問題を含んでるでしょう。。

投稿: テンメイ | 2016年8月17日 (水) 22時57分

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