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「重力波」観測の英語論文、要約(アブストラクト)の日本語訳

本や新聞の解説を読んでも、専門家の説明を聞いても、何とも分かりにくい

「重力波」検出のニュース。分かりにくさのポイントの一つは、重力による空

間のゆがみを、普通の空間で表現・イメージしようとするからだ。2次元にせ

よ、3次元にせよ。

 

普通の空間の中で、物が歪むのなら簡単に分かるし、画像を作ることもで

きるが、それは空間自体が歪むこととは違う。そもそも、空間が歪むとはど

うゆう意味なのか。その時、歪まないもの(別の空間、物差し、理論、法則

など)は何なのか。どうも理解できない。

 

普通の説明を軽く見聞きしても分からないのなら、試しに元の科学論文自

体を読んでみよう。もちろん、相変わらず分かった気にはなれないが、やは

り普通のニュース解説とは違う表現になってることだけは、分かるのだ。。

 

 

        ☆          ☆          ☆

以下、速報版の物理学誌『Physical Review Letters』(フィジカル・レ

ビュー・レターズ=物理学レビュー通信)のHPから、論文の要約(アブス

トラクト)を引用&翻訳させて頂こう。公益性その他を考えて、著作権の

問題は生じないと考える。

 

160213a

 

 

原論文の著者は、B.P.アボットほか多数(実験施設LIGO=ライゴに関

わる1000人以上の研究者)。論文タイトルは、

 

 Observation of Gravitational Waves from

 a Binary Black Hole Merger

 (2つのブラックホール合体からの重力波の観測)

 

「Binary」は、「連星」ブラックホールと訳してもいい。2コ組、ペアを表す。

波が「Waves」と複数形になってる理由はまだ分からない。

 

 

        ☆          ☆          ☆

要約に入る前に、添付された図を2枚確認して、イメージをつかんでおこう。

 

160213b

 

 

ブラックホール合体のプロセスと、重力波の変化のプロセス(増幅・増加、

減衰、安定)が連動する様子が何となくつかめた気になれるだろう。

 

続いて、重力波を検出するレーザー干渉計装置の場所と仕組み。

 

160213c

 

図の左上に描かれてるように、アメリカの北西と南東に遠く離れた2つの装

置を併用して、精度を上げるらしい。光が10ms(ミリ秒)かかる距離だから、

30万km×10/1000=3000km。

 

十字型の装置は、左の光源から出るレーザーを分配器で2つの方向(上と

右)に分けた後、それらを反射させて、再び一体化させてる。重力波が来る

と、レーザーが進む2方向の距離(4km)にほんの少しの差が生じて、「明

滅」が生じるとのこと。高校物理の干渉縞のようなものだろう。

 

もちろん、まだ1つのチームが一度検出したと報告してるだけだから、科学

的実証とまでは言えないはず。ただ、今の所、専門家達の評判は非常に

いいようだ。。

 

 

        ☆          ☆          ☆

それでは1文ずつ、ほぼ直訳していこう。

 

 On September 14, 2015 at 09:50:45 UTC the two detectors of

 the Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory

 simultaneously observed a transient gravitational-wave signal.

 (2015年9月14日、協定世界時9時50分45秒、レーザー干渉計

  による重力波観測所の2つの検出器が同時に、一時的な重力波

  の信号を観測した。)

 

 

 The signal sweeps upwards in frequency from 35 to 250 Hz

  with a peak gravitational-wave strain of 1.0×10^(-21).

 (その信号は、周波数で35ヘルツから250ヘルツ、

  最大のゆがみで1.0×(10の-21乗)である。)

 

 

 It matches the waveform predicted by general relativity for

 the inspiral and merger of a pair of black holes and the

 ringdown of the resulting single black hole.

 (それは、2つのブラックホールによる渦巻と合体に対して

  一般相対論が予測する波形に合致し、一つのブラックホー

  ルに収束する際のリングダウン(減衰安定)にも合致する。)

 

 

        ☆          ☆          ☆

 The signal was observed with a matched-filter signal-to-noise

 ratio of 24 and a false alarm rate estimated to be less than

 1 event per 203 000 years, equivalent to a significance greater

 than 5.1σ.

 (その信号は、マッチド(整合)フィルターによる観測で、信号対

  ノイズ比24。また、誤警報確率の評価は203000年に1回

  未満となり、これは5.1シグマを超える有意性に値する。)

 

 

 The source lies at a luminosity distance of 410(+160 -180) Mpc

 corresponding to a redshift z = 0.09(+0.03 -0.04).

 (波源の位置は、光度距離で410(+160~-180)メガ・パーセク

  であり、赤方偏移なら0.09(+0.03~-0.04)である。)

 

 

 In the source frame, the initial black hole masses are

  36(+5 -4) M₀ and 29(+4 -4)M₀, and the final black

 hole mass is 62(+4 -4)M₀, with  3.0(+0.5 -0.5) M₀

 radiated in gravitational waves.

 (波源の全体において、最初のブラックホールの質量は、

  36(+5~-4)太陽質量と29(+4~-4)太陽質量

  であり、最後のブラックホールの質量は62(+4~-4)

  太陽質量。3.0(+0.5~-0.5)太陽質量が重力波

  によって放射されている。)

 

 

訳者注。(36+29)-3=62という計算だろう。合体によって質量が減った

分が重力波になった形だ。

 

 

          ☆          ☆          ☆

 All uncertainties define 90% credible intervals.

 (すべての不確定性は、信頼区間90%とする。)

 

 

 These observations demonstrate the existence of

 binary stellar-mass black hole systems.

 (これらの観測は、2つの星=質量から成るブラックホール・

  システムの存在を示している。)

 

 

 This is the first direct detection of gravitational waves

 and the first observation of a binary black hole merger.

 (これは、重力波の最初の直接的検出であり、

  また連星ブラックホール合体の最初の観測である。)

 

 

専門用語だらけで、直訳だけでも大変だったので、今日はこれだけにしと

こう。いずれまた、関連記事を書くと思う。アインシュタインの元の英語表

現も確認してみたい。それでは、また明日。。☆彡

 

                          (計 2888字)

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