死ぬ恐怖、殺す快楽~『怪盗 山猫』第9話
理由は二つあります。一つは僕の性格です。
何て言えばいいんだろう。。そうだなぁ。。
例えば 大事に育ててる花があるとするじゃないですか。
・・・・・・その花が満開になった時に、クシャッ、クシャッとつぶす。
それが僕にとって、至福の喜びなんです。。
── カメレオン・勝村(成宮寛貴)
検索でいらっしゃったサイバー・パトロールの皆さん、単なるドラマ・レビューな
んで、よろしくネ・・・とか、冒頭で一言書いとけば大丈夫かな♪ ミッシェル・フー
コーも驚くほどの現代監視社会。特にネットの世界は、桁違いの自由があるか
らこそ、不自由な制限も受けることになる。あるいは、自らが慎重に抑制するこ
とになる。
さて、今回のスパイ映画、『ジョーカー・ゲーム』♪ 違うわ! ドラマ『山猫』。
妖しく黒光りするボディ・スーツの深田恭子の代わりに、美人女優2人の緊縛
火炎拷問シーンが登場。哀れ、里佳子(大塚寧々)&真央(広瀬すず)。
今現在、Googleで「山猫」の検索をすると、トップに、「広瀬すず本当に死ん
じゃったの!?・・・」という日刊サイゾーの記事がヒットする。大塚寧々は心配
しないわけね(笑)。コラコラ! 火あぶりより他のSM責めの方が萌えるのに
・・・と思った視聴者も多いだろう♪ 他人事か!
☆ ☆ ☆
山猫(亀梨和也)や杏里(中村静香)への銃撃拷問も、使いにくいね・・・って、
何に?! それにしても、火あぶりや銃撃という責めは、どうしてあまり萌えな
いのだろう。ごく一部の方々を除いて。
分かりやすい根本的理由は、それらが死に直結する深刻な苦痛だからだろ
う。自分が死ぬのも、身近な人が死ぬのも嫌。他人を殺すのもあり得ない。
普通はそう考えてるし、その考えに従って子供の頃から行動する。
だから、死に直結するようなものは、その程度に応じて、反射的に忌避する
ような心身が形成されてるわけだ。自分でも、他人でも。そして、現実はもち
ろん、フィクションの世界でも。
当然、フィクションを作る側でも、媒体に応じて、それなりの配慮をするように
なる。一番厳しいのはもちろん、圧倒的多数の人を集めるテレビ番組。数百万
人~数千万人の視聴者を相手にするのだから、死の描写は控えめになる。
実際、広瀬すずが焼け死ぬプロセスは映らないし、亀梨はリアリティ防弾チョッ
キを着用して生き残る。番組のエンディングには、ちゃんとテロップも出る。「窃
盗やそれに関わる犯罪を推奨するものではありません」。ここで、殺人というよ
うなキツイ言葉を使ってないことにも注意しよう。あくまで、「それに関わる犯罪」
という婉曲表現なのだ。
☆ ☆ ☆
一方、多少、自分から遠い感じがある死については、身近に溢れてるし、必ず
しも避けてない。
多くの人は肉を食べるし、道端の小さな花を踏まないようにするのは、フジの月
9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の中の世界。アリを踏
まないように配慮する人も、いまだに一人も見たことはない。知らない内に、気
付かない内に、クシャッとつぶしてるのだ。とはいえ、ペットが死ぬと、たとえ動
物の命でも、ペットロスに陥るほど悲しむことになる。
では、どの辺りが、配慮の境界線になるのか。その点で興味深い例の1つが、
最近話題になった、クジラ写真問題だろう。
北海道立オホーツク流氷科学センター主催の、第25回「オホーツクの四季」
写真コンテストで、クジラの死骸(らしきもの)の上に男性が立ってガッツポー
ズをする姿が最優秀賞に選出された。題名は、「征服」。
地方の小さなコンテストだから、ほんの10年前か15年前なら、まったく話題
にならなかったはず。ところが、ネットと自然保護が根付いた現代社会だと、
あっと言う間に炎上する。主催者の事情説明を受けて、出品者は辞退。主催
者は陳謝の表明に追い込まれた。
私は正直、あの写真は全く趣味ではないし、死骸(らしきもの)の上に乗って
高々と手を挙げる気にもならない。身近で誰かがやろうとしたら、わりと強めに
止めるはず。ただ、同時に、漁業や釣りの世界なら似た情景はいくらでもある
だろうな、とも思う。生きた魚介をそのまま調理して食べる様子も日常的。
哺乳類かどうかという境界は一応あるけど、人間の死刑判決を聞いて喜ぶ人
もいるし、それを非難する声は死刑反対論者でさえほとんど口にしないのが
現実なのだ。もちろん、執行者がガッツポーズの写真投稿をすることはあり得
ないにせよ。。
☆ ☆ ☆
問題の核心の一つは、「自分」とか、「わたし達の命」という存在だ。人は生まれ
てしばらくは、そういった感覚や概念を十分に持ってない。
母親との一体感と分離、父や他の子どもらとの触れ合い、外部の物体の感覚
や操作を通じて、「自分」という存在を区別し、育み、大切にするようになる。と
同時に、「自分の親」とか「自分の友達」といった存在の大切さも認識するよう
になる。広い意味で、「仲間」の世界を築くのだ。
ただ、この大切な存在の範囲は、人それぞれの発達過程に応じて違って来る。
大多数の人は、自分と家族、友人、知人といった、数人~数十人レベルの人達
を特別に重視するようになるし、ペットを飼ってれば、それも家族の一員となる。
いくつかの、悲しく重い永遠のお別れを経験しながら。それらの延長線上に、哺
乳類の保護もある。
一方、おそらく不幸なことに、ほとんど誰の命も大切だと思わない、あるいは思
えない人達が少数いるわけだ。環境によるものか、生得のDNAその他の条件
によるものか、おそらく両方だろうとしか言えないが、自分も大切でないし、そ
れ以上に他人もどうでもいい人が、例外的に存在する。
そうすると、まず他人の命をいくつか奪い、結果的に自分の命も台無しにする
流れになる。死刑にせよ、長期の刑罰にせよ、相手の側からの復讐にせよ。。
☆ ☆ ☆
さて、殺し屋・勝村の場合、かなり成長するまでは普通の子どもだったみたい
だから、自分や周囲の命の大切さは基本的に刷り込まれてるはずだ。実際、
スパイ養成所で、他の子どもが殺されるという話を聞いて、自分の命も心配
してた。殺されたくない、死にたくない。。
仲間が死ぬ恐怖、自分が死ぬ恐怖を激しく体験した直後、他人を殺す経験
を積むことになったのだろう。当然、最初は殺すことも怖かったはず。ところ
が、見知らぬ他人を殺すと、自分の命が救われることに気付いていく。優秀
なガンマンとして上司に重用されるし、敵を倒すことは自分を守ることに直結
する。
極限の状況で、他人を殺してホッと緊張感が緩む安らぎが反復する内、いつ
しか「喜び=悦び」へと変質。その中で、至福の喜びとなるのは、「他人である
自分」、「自分としての他者」を殺す経験なのだ。勝村的な言い方だと、大事に
育てて来た身近な存在の破壊。
というのも、意識的・無意識的な罪悪感は高まってるはずだから、自分を殺し
たくなるけど、まだそこまでは踏み込めない。だから、自分と一心同体のよう
な外的存在を作って、自分の代わりとして殺す。「自分」への処罰による開放
感を得られて、しかも自分自身は死なずに済む。リストカットを悪化させたよ
うな、疑似的な自己懲罰。
ある意味、巧妙な快楽殺人&自己生存システムなのだ。極度に「可哀想」(by
里佳子)な人生であっても。。
☆ ☆ ☆
結局、最終回の予想、自然な流れは、勝村自身が改心して死ぬことだろう。改
心と言うより、システムの自己崩壊と言った方が適切かも知れない。
元々、自分を殺したくてたまらない、処罰したくてたまらない精神状態だったから。
最も大事に育てて来た自分自身を、最後にクシャッとつぶす。至福の快感。自分
の手で出来なければ、他人の手を借りて。それは殺人マシンである自分を「救う」
究極の方法でもある。ちょうど、さくら(菜々緒)と犬井(池内博之)が山猫を捕ま
えることが、山猫を救う方法であるように。
既に勝村は、山猫を殺せなかった。防弾チョッキに気付いてたのだから、頭を撃
てば簡単に殺せたはず。でも、最愛の「仲間」、「相棒」である山猫に止めは刺せ
なかった。「本物」の仲間の里佳子&真央も、銃殺できなかったのだ。別に、緊縛
火炎拷問の趣味があったわけじゃないはず♪
もはや、勝村が殺す相手は、誰よりも自分自身だろう。その次が、テンメイ・・・は
既に終わってるから(笑)、ユウキ・テンメイ(結城天明)か。・・・って言うか、漢字
は「天命」じゃないわけネ。『怪盗山猫の真実』によると。
☆ ☆ ☆
勝村とユウキの関係はまだ分からないけど、勝村がユウキを殺そうとして失敗。
返り討ちにあって死ぬとか、失敗後に自殺するとか。で、愛する山猫に抱かれて、
最後の快楽♪ 違うわ! キレイな涙を流しながらお別れ。テレビドラマは甘口
だから、そこに突然、里佳子&真央も加わるかも。
勝村が山猫に殺されるというのは、偶然にせよ、山猫のキャラ設定と合わな
いと思う。杏里がまだ生きて勝村を銃殺するのは、十分アリ。姉の敵討にもな
るし、腕輪の御利益にもなる。
とにかく、常識的に考えて、女性2人はまだ死んでないと想像するし、山猫も
死なない。ユウキも死なない・・・と言うか、ユウキは既に死んでてAIロボット
かも。関本(佐々木蔵之介)の怪しさを考えると、彼がユウキ二世として暗躍
してる可能性は一応あるけど、かなりテクニカルになる。脚本家・武藤将吾の
技に期待しよう。
二重スパイとか、武士道に基づいて日本を取り戻すとかいう、大がかり話を織
り込むのも大変だし、原作がまだ終わってないみたいだから、映画の余地を残
すラストかな。実は、杏里の姉が生きてて深キョンとか♪ 多分、ドイツでレタス
を作ってるはず(笑)。『セカンド・ラブ』か! あのナイスボディやコスプレを、ま
た見たいわけ。
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
cf. 新渡戸稲造『BUSHIDO(武士道)』、英語原文~『山猫』第1話
節義・道義、新渡戸『武士道』&真木和泉『何傷録』~第2話
吉田松陰「かくすれば・・・大和魂」出典と新渡戸『武士道』~第3話
新渡戸『武士道』における「母」と「自己否定」~第4話
生、死、そして沈黙~第5話
笑顔と任侠、野ブタ、武士道~第6話
生きるべきか、死ぬべきか・・~第7話
誕生日違った山猫死ね!~第8話
維持に負けた改革、音痴の「上を向いて歩こう」~最終回
(計 4144字)
(追記 26字 ; 合計 4170字)
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