吃音(どもり)の多因子モデルCALMS~『ラヴソング』第2話
広平 じゃあ、オレのは? これ。 (白いスニーカーを見せる)
さくら 真っ黒!
広平 いや 違うでしょ。
さくら 心がドス黒い。腹黒い。偉そうなのに小心者。
若ぶってスカしたクソジジイ。
善人ぶったインチキ男。腰ぬけ野郎。
広平 ・・・ それから 他には?
さくら てか、何しに来たんですか?
広平 (渡したパンフレットの裏にメッセージ:
もう一度 7秒の勇気を 信じてみない か?)
まぁ、秒数は関係ないけどね。
さくら ・・・・・・ アハハハハハ♪
広平 ・・・ ハハハハハ♪
滝川 先生、ヘルメットかぶってください。
☆ ☆ ☆
素晴らしい! おばさん・・・じゃなくて、涼子お姉さん(山口紗弥加)のパープ
ル・ミニワンピと黒ストッキングが♪ そこか! ・・・っていうのは毎度お馴染
みの無意味な自分ツッコミだけど、「秒数は関係ないけど」っていうのは広平
(福山雅治)の優しい自分ツッコミだった。靴だけオシャレな滝川(木下ほうか)
のヘルメット突っ込みも、いいね。
さくら(藤原さくら)にいい加減な話を連発してバレた直後だから、自嘲気味
に自分ツッコミすることで、さくらのモグりこんだ心を解きほぐす。と同時に、
7秒ではなく、ずっと自分を信じて欲しいと伝える高度なメッセージ。このクソ
みてえなジジイを信じれば世界は変わる(多分)。
さくらは、喜び・驚き・感謝の思いを、笑い声の形で一気に爆発させてた。大
笑いする時は、どもらないわけネ♪
ということは、さくらの吃音の場合、心理的なストレスがかなり大きいってこと
かな。もちろん、それぞれの個人差も大きいんだろうけど。ちなみに「笑い声
吃音」で検索すると、他人に吃音を笑われる話がズラッとヒットしてしまった。。
☆ ☆ ☆
さて、久々のひどい風邪で迎えることになってしまった、『ラヴソング』第2話。
最初、「7秒の勇気、世界を変える」とでも題してレビューしようかと思ってたの
に、見逃し動画のサブタイトルを見ると、「7秒の勇気が世界を変える」となっ
てた (^^ゞ そのまんまか!
自分の平凡な手抜きアイデアを反省して、「7秒の勇気、クソみてえな世界を
変える」にマイナー・チェンジしようかと思ったけど、先日、保育園の暴言ブロ
グを批判した後だから、タイトルに「クソ」とは書けない♪
それじゃあってことで、一気に難しい専門的タイトルを付けることにした。これ
なら流石に、ツイッターともカブらないだろう・・・と思って検索すると、お一人だ
けツイートしてて、20コほどのリツイートも発見。写真から俳優の顔をカットし
た上で、「リ・ブログ」させて頂こう。写真左側、ホワイトボードの図式が注目点。
只者じゃないなと思ったら、アカウント名に見覚えがある。番組最後のエンド
ロールに「取材協力」として登場してる、九州大学病院の菊池良和ドクターだっ
た。読売新聞HPの記事を読むと、ご本人も吃音の当事者で、大変な努力の末
にここまで辿り着いたらしい。
私は当事者どころか、物心ついて以降、吃音の人と会った覚えがほとんど無い
けど、マニアック・ブロガーとして、もっと突っ込んだ話を書いてみよう。その前
に、モヒカン・ロッカーの方々にも軽くリスペクトを示しときたい♪
☆ ☆ ☆
「このクソみてえな世界を俺たちが変えてやるぜ!」と、ヴォーカルでもドラム
の身代金要求(笑)でも絶叫してた、ロック・バンドと言うか、パンク・バンド。素
人にしては上手いし、様になってるなと思ってたら、やっぱりプロだった。
名前はGEEKS(ギークス=オタク、マニア、変人)。挿入歌の曲名は「DIRTY
BOY」(ダーティー・ボーイ)だけど、未発売の新曲かな? 下はカラー・モヒ
カンのヴォーカル、エンドウ.さんのtwitter。「乱闘シーンでアクション監督の
爺さんにすんごい怒られてビックリしました」とのこと(笑)
「酷いパンクバンド」と自分で書いたり、爺さん呼ばわりしたり、流石の尖り方
だけど、実は3年前に東京マラソンも完走して、ブログで報告してた♪ 健全
なエネルギー発散もちゃんとやってる訳ね。リンクからジャンプする時は、あ
らかじめ音量を絞っといた方がいいかも(笑)
☆ ☆ ☆
あぁ、病人のパワーは既に無くなって来たから、本題に向かおう。検索が少な
くても、書くべき話はある。視聴率が低くても、放送すべきドラマはある。
言語聴覚士・夏希(水野美紀)の部屋で、「500マイル」の替え歌を作って音楽
療法する時、ホワイトボード(白板)には五角形の各頂点を結んだような図が
書かれてた。おそらく、吃音理論の有名なモデルだろうと思って検索すると、
偶然にも(?)ドラマの故郷・広島からの論文が無料公開されてた。
音声言語医学51、「吃音に対する認知行動療法的アプローチ」、川合紀宗
(広島大学)。認知行動療法は、ものの見方や行動の仕方を具体的かつ直
接的に修正する治療法で、日本の第一人者・大野裕は雅子さまの主治医と
してもお馴染みの有名人だ。ただし、雅子妃に適用してるかどうかは不明。
☆ ☆ ☆
ここでは、吃音を理解するための「CALMSモデル」の構造に、一言だけ日本
語訳に近いものを付加してる。一番上は、Affective(心理・感情面)。その左
下は、Cognitive。これを知識面と書いてるけど、英語との対応を考えると、
思考・知覚の方が近いと思う。
そのまた下が、Social(社会性)。社会面と書く方がいいと思うけど、ひょっと
すると新聞の社会面みたいな語感を避けたのかも♪ その右側がMotor
(口腔運動能力)。英語を直訳するなら、発話動作の感覚-運動制御だ。そ
の右上が、Linguistic(言語面)。
Cognitiveから右回りに頭文字をつないでいくと、C・A・L・M・S。日本語読み
は不明だけど、「落ち着かせる」という動詞と考えればカームズとかコームズ
という読みになる。
以上の5つの側面とか因子が相互的に関連しあってると考えながら、吃音を
多面的に理解していく。だからホワイトボードには、<吃音者の悩みの多因子
モデル>と書かれてた。
ただし、ドラマでは元の図を右に1/5回転(=72度回転)してたから、一番上
が「認知 Cognitive」となってた。まあ、その方が右回りにCALMSと読みや
すいのは事実。ちなみに、感情と運動を結ぶ線が無かったのは、スタッフのうっ
かりミスだろう♪ ウチでは福山のヒット作『ガリレオ』の数式でも、不注意と思
われる細かいミスを度々指摘してある。
☆ ☆ ☆
さらにギーク=マニアっぽい所まで進もう。CALMSモデル普及の中心となっ
てるような感じの英語原論文も、無料公開されてた。Healey(ヒーリー)他に
よる、「Clinical Applications of a Multidimensional Approach
for the Assessment and Treatment of Stuttering」。些細な指摘
だが、広大論文の文献名は、「Approach」を「model」と誤記してるようだ。
直訳すると、吃音の評価と治療のための多次元アプローチの臨床的応用。要
するに、CALMSモデルを実際に使うという話だ。2011年には、広島大学と
日本音声学会が中心となって、講演会も開催されたとのこと。また、広島だ。
このモデルがそれほど目新しいものでもないことは、著者たちもハッキリ認め
てる。似た先行研究が色々あって、それをまとめ直したものなのだ。直近の2
つだけ参考までに掲載しとこう。Smithと、De Nil。いずれもGoogle books
で公開されてた。著作権の許可は得てるらしい。
これらと見比べると、五角形のCALMSモデルというのは、5つの側面の相互
性と対等性を重視してキレイにまとめたものだと分かる。だからこそCALMS
では、一方から他方への向きを表す矢印を使わず、単なる線で結んでるのだ。。
☆ ☆ ☆
最後に、ホワイトボードを参照しながら、モデルをさくらに適用してみよう。
C(認知)においては、「どもる自分が悪い」、「吃音を隠したい」とか考えてる。
A(感情)においては、「どもるんじゃないか・・」(予期不安)、「恥ずかしい」、
「私は劣ってる人間だ」(劣等感)を感じてる。だから、結婚式のスピーチは
断って、救急車を呼ぶのに苦労した直後は激しく落ち込むことになった。そ
の劣等感を、甘える形で臨床心理士・広平にぶつけてたのだ。もちろん広平
は、大人のブロの男性だから、包容力で優しく受け止める。
L(言語)においては、どもり易い言葉、どもりにくい言葉とか、細かい言語能
力が関わってる。例えば、菊池医師の場合、実家の下関(しものせき)は言い
やすかったから、しばらく引っ越さなかったとのこと。そう言えば、ドラマのさく
らも、時々スラッと喋ってるような気がする。言葉自体のおかげなのか、状況
の手助けなのかは分からないけど。
M(運動)だと、「ど・・ど・・ど・・」と同じ音を繰返す「連発」、「ど・・・・・・」としば
らく音が途絶える「伸発」、「・・・・・・」と最初の音が出ない「難発」。3つのタイ
プがあって、人それぞれ、言葉や状況で変わるようだ。今度から、さくらの特
徴も考えながら見てみよう。
S(社会)だと、吃音を他人にからかわれる場面(幼い頃の養護施設の思い出
など)があったし、どもる社交的場面を回避することになる。披露宴、ライブハ
ウス「S」でのNEW STAR LIVE(ニュー・スター・ライブ)。
☆ ☆ ☆
しかし結局、さくらは「7秒の勇気」を出して、せかすサラリーマンのプレッ
シャーをはね返し、ハムカツ&コロッケそばを注文した♪ 違うわ! そうじゃ
なくて、特天海老玉わかめそばでゲップしたって話でもなくて、ライブで歌うこ
とにしたのだ。
そのキッカケ、最大の因子はやはり、A、感情だった。原論文の図の通り、A
が最上位なのだ。広平先生、好きという感情から、「一緒に人前に出たい」、
「仲良く練習したい」と考え、ライブという社交的な場面に向かうことを決定。歌
の場合、歌詞も自由にできるから、言語面や運動面も問題ないはず。
ただし、問題は広平の隠された心。さくらの姿と歌声に、亡くなった恋人(?)・
春乃(新山詩織)のイメージを重ねてること。と言っても、案外、さくらにバレて
も大丈夫かも知れない。冒頭の高齢女性・志津子(由紀さおり)みたいに、実
は広平以外にも好きな人がいるとか。
☆ ☆ ☆
それはここまでの流れだと、女性の真美(夏帆)である可能性もあるのだ。で、
さくらの取り合いで、広平と真美がバトルするとか♪ 『ラスト・フレンズ』か!
性同一性障害というものの存在を認知させた『ラスフレ』、吃音を認知させた
『ラヴソング』。フジテレビが誇る、社会貢献活動なのだ。
なお、ゲームの場面で、真美がプレイするキャラ・春麗(チュンリー)にKOされ
た、さくらの超ミニ・セーラー服キャラは、「春日野さくら」(笑)。そのまんまか!
そろそろ体調的に限界なので、今日はこの辺で。。☆彡
cf. 故郷の広島、東京から「500マイル」(800km)~『ラヴソング』第1話
やさしさに包まれたなら、二重の陽性転移~第3話
もっかい、もう1回!、音楽療法~第4話
ブルーハーツ「終わらない歌」、終わる夢~第5話
月夜に好きよ♪、ろくでなしのダメ男~第6話
雨の彼方に虹、Leola(太陽の声)「Rainbow」~第7話
過去の自分との幻想的ふれあい~第8話
ラヴソングへのラヴソング~第9話
さよなら、やさしい悪魔(DIABLO)~最終回
(計 4480字)
(追記 174字 ; 合計 4654字)
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