希望（ＥＳＰＯＩＲ）の裏返しとしての嫉妬（ＲＩＯＰＳＥ）～『好きな人がいること』第８話

　美咲　わかってるんです　実力不足だって

　　　　　でも　さっき　夏向さんが別の人と組もうとしてるの知って

　　　　　・・・・・・悔しくて・・・・・・嫉妬しちゃって

　　　　　私が悪いのに・・・・・・本当、情けないです

　千秋　・・・・・・・・・

　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

この美咲（桐谷美玲）の言葉が、自分を優しくかばってくれてる千秋（三

浦翔平）の胸にグサッと刺さってる辺りを見ても、桑村さや香の脚本は

基本的なテクニックを備えてる。演出の金井紘ももちろん、脚本の意図

をよく理解した上で、独自の味付けで遊び心を発揮してた。　

今回は、世武裕子の明るい音楽が無ければ、千秋が主演のホラー・ドラ

マだったのだ♪　美咲ちゃんが別の男と組もうとしてるの知って、悔しく

て、嫉妬しちゃって。。以前とは対照的な、暗い映像、暗い表情の連続。

ガクガク、ブルブル。。

千秋の心がいつクラッシュするのか、身体がいつ制御不能になるのか。

三浦の演技も冒頭から、複雑な思いを漂わせてた。楓（菜々緒）への冷

めた思い、美咲への未練、夏向（山﨑賢人）への嫉妬。

そうした繊細な部分を味わえる人が増えれば、最低視聴率７．７％

を記録するようにことにはならなかったと思うけどね。まあ、芸術家と

違って、１０００万人レベルの視聴者に合わせて作るのがテレビ界の

プロとも言えるけど。

今回のラストシーンについて、サイゾーが「視聴者から『ゲス』と批判噴

出のラブシーン」という記事を書いてる。あの衝動的で妨害的な抱擁

シーンでショックを受けるということは要するに、台詞や演出、演技が

理解できてないということなのだ。私なんて逆に、いまか、いまかと、

ずっと待ち構えてたほど♪

　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

さて、今回はいつも以上に、書く時間が無い。壊れかけのＶＩＳＴＡ

パソコンがまたさっきトラブって、モニターに画面が映らなくなったから、

修理に２時間もかかってしまったのだ (^^ゞ　プンスカ！（死語？）

と言っても、ＰＣはいつクラッシュしてもおかしくない物だし、

Ｗｉｎｄｏｗｓを熟知してる人なら１０分で応急処置くらい出来た

はず。別の外部ディスプレイをつないで、「画面の設定」でメインと

サブの扱いを修正する方法が、私には分からなかったのだ。

わかってるんだ。実力不足だって。でも悔しくて、激怒しちゃって、私が

悪いのに、ホント情けない。。カワイくない？　あっ、そう♪

　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

要するに、美咲や私に限らず、人は自分が劣ってることをなかなか認

めたくないし、自分の側に非があることを認めたくない。そこで、自分

に向けるべきネガティブな思いを、優ってるものへと向けてしまうのだ。

それが、社会的には責任転嫁。感情的には、嫉妬＝ジェラシー。

他人や何かに嫉妬するということは、そちらの側が優ってて、自分の側

が劣ってるということを、一応分かってるということ。教科書的には、そう

したものは素直に認めて、自分も上を目指して努力する。無理なら、潔

くあきらめる。小学校、中学校の先生が言いそうな正論だろう。

ところが、人間の心はそれほどキレイでも単純でもない。どうしてもドロ

ドロした部分があるし、色々な思いがぶつかり合うことになる。それでも

普通は「妥協形成」によって、ほどほどの所で折り合いをつけるわけだ

が、時には強過ぎる衝動によって、身体のコントロールを失ってしまう。

最近の二世タレントの暴行事件みたいに。

その穏やかヴァージョンが、ラストの千秋なのだ。夏向のためにケーキ

を作って持って行こうとする美咲をじっと見つめた後、いきなり後ろから

あすなろ抱き・・・というより、羽交い締めもどき♪　千秋の理性が壊れ

た瞬間、美咲のほのかな愛の象徴、ケーキもつぶれてしまった。

ちなみに、ケーキを落とすのは台本に書かれてること。それに対して、

「祝」と書かれたチョコ・プレートが真っ二つに折れてたのは、演出の範

囲なのだ。無料配信のおかげで、ドラマとか映像作品の勉強になる♪

「祝」という漢字の右半分、つくりは、「兄」。その兄が壊れてる様子を

示すかのように、左半分は、しめすへん。ＦＯＤ（フジテレビ・オン・

デマンド）の無料動画で再確認してみよう。合法的で好意的な非営利

の引用。ちなみに、「呪」いという漢字のつくりも「兄」だ♪

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美咲は他のパティシエ候補（特に木本美織）に嫉妬してたし、美味しそ

うなナス・・じゃなくて夏向に抱きつくおばちゃん（笑）にも嫉妬してた。

千秋は、腹違いの弟の夏向に嫉妬。

それらは明らかとして、久々に登場した大橋尚美（池端レイナ）はどうか。

今回の台本を見ると、ハッキリは書いてないけど、尚美と夏向が接近す

る流れの中で、美咲の台詞が２回、「・・・・・・」となってる。常

識的にも、嫉妬と解釈できるだろう。

逆に尚美の方も、妙に美咲にだけ冷たい態度を取ってたわけで、軽い

嫉妬や嫌がらせとも言える。密かに狙ってたイケメンの夏向くんと親し

くなってる、若くて可愛い女に対して♪

その尚美が関わってるらしいレストランの名前が面白かった。台本には

「ＲＩＯＰＳＥ」（リオプス）とだけ書かれてるけど、美術さんは「Ｒ」

と「Ｐ」の文字を左右逆転させて遊んでる。前クール『ラブソング』の

最終回、ＤＩＡＢＬＯ（悪魔）みたいな、本質を突いた遊び心。

この辺りまで突っ込んでドラマを見ると、もはやツイッターには情報が

見当たらなくなる。下も公式動画より、著作権法で許容された引用。

私も、台本に書いてなければスルーしてたかも。ただ、ハッキリ書かれ

てたので、意味を調べ始めてみると、ガリレオ福山になってしまった。

「さっぱり分からない」♪　世界中の言語を調べても、有力情報なし。

あきらめかけた時、ふと、ひらめいた。フランス語「ＥＳＰＯＩＲ」

（エスポワール：　希望）の裏返しか！

やっぱり、尚美にもドラマにも、ヒネリが入ってるのだ。何か、良い状態

を素直に希望するのではなく、「反対」の表現をしてしまう。悪い状態を

求めてしまったり、良い状態を嫌悪してしまったり、言葉を裏返したり。

若いカップルを温かく支えるのでなく、逆に仲を引き咲くようなことまで

してしまう。

一般に、嫉妬というものは、素直な望みの裏返しと言えるだろう。その意

味で、ここでは「ＲＩＯＰＳＥ」を「嫉妬」と訳しとこう。こう書いとけば、

意味の検索アクセスが入るはず。１年に１回くらいは♪　少なっ！

そのくらい珍しい言葉を使ってた辺りにも、この脚本家のこだわりが見え

る。それに応えてるのが、美術さんのロゴなのだ。マニアック・ブロガーは

決して見逃さない。台本読むまで見逃してただろ！♪

　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

ところで、フジ月９の大スポンサー、トヨタが１０月から降りるとかいう噂

がしばらく前から流れてるが、そのトヨタが五輪に合わせて作ったＣＭ

もヒネリが入ってる。「ＷＯＷ」シリーズだから、「ワウ！」と声を上げて

しまうような、凄い存在に注目してるのだろう。

　　イチローが嫌いだ

　　あの人を見ていると　

　　限界という言葉が言い訳みたいに聞こえるから

　　イチローが嫌いだ

　　あの人を見ていると

　　どんな逆風もチャンスに見えてくるから

　　でも　同じ人間のはずだ

他には、「自分にウソがつけなくなるから」、「努力すら楽しまなきゃいけ

ない気がするから」、嫌いだ・・というナレーション。

　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

むしろ、この「イチローＣＭが嫌いだ」という人も少なくないだろうし（笑）、

私の個人的趣味とも違ってるが、イメージ広告、メッセージＣＭとしては

そこそこの成功だと思う。少なくとも一発で記憶に残るし、話題にもなる。

それでいて、炎上するほどの失敗作でもない。出演者はイチローも選手

も、一流ばかり。

「イチローが嫌いだ」という出演アスリートの思いも、要するに羨望、うら

やましさの裏返し。ただし、世界的な大企業のＣＭだから、ちゃんとキレ

イな方向にオチをつけてるのだ。同じ人間。私だって、イチローみたい

になれる。誰にでも可能性は開かれてる。

「イチローが嫌いだＣＭ」が嫌いだ、という視聴者の思いにも、嫉妬がま

ざってるだろう。超一流プロを超一流アスリートが絶賛するＣＭを、超一

流企業が作って放映。押しつけがましいほどの超一流づくしへの嫉妬。

ただし、この場合は高望みすぎて、「自分もあの理想を目指して頑張ろう」

とはならない。あのボルトでさえ語ってたように、超一流になるには色ん

な物事を犠牲にする必要がある。それで結局、超一流になれるのはごく

一部の人にすぎないから、ハイリスク・ローリターンの人生投資。損する

確率が高過ぎるから、冷静にあきらめよう。

・・・って感じの人生の真実を中学の先生が授業で話したら、ツイッター

で炎上してしまう、厄介な現代社会なのであった♪　

ちなみに半年前のレビューにも書いたように、『上を向いて歩こう」とい

う有名な曲の歌詞は、上を向いて歩いて挫折した永六輔が書いたもの

として知られてる。

美咲がもう一度デザートを作って、認めてもらえたのは、テレビドラマだ

から。実際にはまた却下されて、別の道を歩むことも多いだろう。内心、

成功者達に嫉妬しながら、あきらめて進路を変えるのも、一つの人生。。

　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

最後にコネタを１つ。これまたほとんどツイートが見当たらない、スペイ

ン語について。

落ち込む美咲に、日村（浜野謙太）が「涙の数だけ強くなれるよ」とスペ

イン語もどきで励ましてた。完全なアドリブかと思ったら、「半ば」、台本

に従ったものらしい。台本の正しい（？）スペイン語は次の通り。アクセン

ト記号は省略。

　Ｓｅ　ｈａｃｅ　ｆｕｅｒｔｅ　ｓｏｌｏ　ｅｌ　ｎｕｍｅｒｏ　ｄｅ　ｌａｇｒｉｍａｓ

　（セ　アセ　フエルテ　ソロ　エル　ヌメロ　デ　ラグリマス）

発音は、私がＧｏｏｇｌｅ翻訳で１単語ずつ確認したもの♪　ほぼ同じ語

順で日本語に直訳すると、次のようになる。

　　なれる　強く　だけ　数　の　涙

　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　　☆

仮に、文法的、意味的に正しいスペイン語としても、それほど有名なこ

とわざではないはず。そのまま検索しても、（ほとんど）何もヒットしない。

日村の台詞は、一部の発音だけもじった適当なアドリブだと思う♪　た

だ、直後のスペイン語「Ｓａｌｕｄ」（サルー：　乾杯）だけは正しいアドリブ。

台本には「かんぱーい」とひらがなで書いてあるだけだった。

とにかく、しっかり観賞すれば、ドラマ自体も台本もＣＭも面白いのだ。

それでは、間接キスとか言うより、桐谷に硬くて長いキュウリをくわえさ

せてた山崎（笑）に嫉妬しつつ、今日はこの辺で。。☆彡

ｃｆ．　ケーキより甘い梅干し♪～『好きな人がいること』第１話

　　　ご褒美としての笑顔、言葉、台本～第２話

　　　自分の気持ちに嘘つく理由～第３話

　　　 隠された想い、隠しきれないハート～第４話

　　　告白のタイミング、返答のための時間～第５話

　　　東京タワーから見えないもの、中心の欠如の補完～第６話

　　　母の欠如を補う、死んだ父～第７話

　　　彼方の夢、夏向のガラス玉～第９話

　　　ノープラン、手ぶらのときめき旅行～最終回

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（計　４３５４字）

　　　　　　　　　　（追記　３６字　；　合計　４３９０字）