宮木あや子『校閲ガール』、『ア・ラ・モード』、サンプル本だけの感想♪
「こうえつ」と聞いて私が最初に思い出す漢字は、「光悦」だ♪ 江戸時
代の代表的な芸術家で、作家・吉川英治の代表作『宮本武蔵』でも
重要な役割を果たしてる。それが頭にあるから、「こうえつガール」と
聞くと、光悦と付き合いのある有名な芸者=芸妓(げいぎ)、吉野太夫
(よしのだゆう)を思い出すのだ。。
・・・っていう妙な書き出しは、実はもうすぐドラマになる宮木あや子の
小説、『校閲ガール』の内容と結び付いてる。画像はKADO
KAWAストアより。可愛いイラストは、茶谷怜花。これ、確かに、
主演女優・石原さとみのイメージに近いかも♪
校閲ガールのお仕事は色々あるけど、分かりやすいものの1つは、原
稿を素早く細かく見て、「校閲」と「光悦」のような漢字の間違いを発見、
訂正すること。ワープロ、パソコンの普及で変換ミスが増えてるから、そ
の作業の重要性は増してるはず。あと10年くらいは、機械だけだと無
理だと思う。柔軟で文系的・総合的な、人間の頭脳が必要だ。
私自身は、そばに派手で可愛い校閲ガールがいてくれるわけでもな
いから、ブログ記事の漢字で迷った時は、自分で変換候補の右側に
出る漢字の説明を読んだり、ネットで調べたりしてるのだ。
☆ ☆ ☆
さて、最近たまたま連続ドラマの情報が目に入ったから、アマゾンの
本の紹介ページで「なか身!検索」しようとしたのに、『校閲ガール』
にはその機能が設定されてない。
あきらめかけて、ふと思い出したのが、kindle読み放題の無料
体験で時々使ってた、「サンプル本」のダウンロード。不思議なこと
に、『校閲ガール』も『校閲ガール ア・ラ・モード』も、キンドル・
アプリ用のサンプル本だけは簡単に手に入る。
下の画像は、iPad用アプリの端末画面。文字中心の本のサンプ
ルだと、ダウンロードも閲覧時の動きも軽い。逆に、キレイな写真
中心の雑誌とかだと重く感じる。通信&端末の環境もあるかも。
これって要するに、kindleを普及させたいアマゾンから出版社
(KADOKAWA)の側に代金が支払われてるのかね?
事情はともかく、20ページほど無料で合法的に立ち読み・・・
じゃなくて座り読みできるんだから、有難いシステム♪ まあ、貴重
な時間というコストはかけることになるから、適度に賢く使う必要はあ
る。店員の冷たい視線を浴びるのが快感(笑)という方は、本屋の立
ち読みでどうぞ。
kindleにせよ、フツーの書店にせよ、やっぱり図書館よりは身近で便
利だと思う。特に、最近の人気小説とか雑誌の場合だと。。
☆ ☆ ☆
で、本題の小説。第1作は、角川・・・じゃなくてKADOKA
WAの雑誌『ダ・ヴィンチ』の公式サイトで2013年に連載。少し
補足して、2014年に発売したらしい。ということは、当時なら
大部分がネットで無料公開されてたわけだ。ただし、1章ごとに
1ヶ月限定って感じで。
小説の一番最初は、是永是之の小説『黒と赤』の原稿(初校)が
斜めにおかれた画像。校閲者の苗字のサインがひらがなで「こうの」
と書かれてる。この是永という小説家は、どうも後で登場するらしい
けど、サンプルの中では出てこなかった。
(☆追記: 第2章ですぐ登場、「ぜえいぜえ」と読まれてた♪)
画像で修正してる箇所が、いちいち笑える♪
霞ヶ浦に「麺した」 → 「面した」
村制が「排紙された」 → 「廃止された」
村おこし事業を「健闘」 → 「検討」
かなりレベルが低い作家ってことね♪ この程度の作業なら、私もす
ぐに分かるから光悦ボーイになれるかも・・・とか書くと、「校閲
ボーイ」と直されてしまう(笑)。他人にやられると、ちょっとカチンと来
るかも。いや、そういった感情的な問題は、小説にも書かれてるのだ。
原稿の画像の最後に、「要再校」というハンコが目立ってるのは、「再
び校閲する必要あり」という意味。それだけ、ひどい原稿ということの
強調表現だ♪
☆ ☆ ☆
ストーリー的には非常に軽くて明るいノリだから、そうゆう作家なのか
と思ったら、実は宮木あや子には二面性があるらしい。重い「A面」
と、軽い「B面」。この小説はB面だと、自分でブログに書いてた♪
それを言うなら、ウチのこのブログにもA面、B面、エロ面(笑)、色々
ある。読者は多分、A面の方が多いから、B面その他の文章にとまどっ
てるかも♪ 「振れ幅が大きい」という表現は、読者に教えて頂いた。
話を戻すと、「悦子の研修メモ その1」の次、小説・第1話の冒
頭は、本郷大作(鹿賀丈史)の小説への突っ込み校閲からスタート。
同僚・米岡が横から、「エロミス。ムラムラしちゃったの?」とかセクハラ
して来たから、イライラしちゃった悦子は、「うるせえガラスルーペぶつ
けんぞ」と怒鳴る♪ 虫眼鏡、使ってるんだ。
この宮木が書いた台詞に、カドカワの校閲係が「うるせえ、ガラ
ス・・」と句読点を入れると、宮木はキレて小説のネタにするはず(笑)
「エロミス」という言葉(エロ・ミステリー)を説明抜きに書いてるのも、もち
ろん意図的なこと。この小説のあちこちに、意味がわかりにくい言葉が
入ってるから、読者は常に言葉に敏感になる。つまり、読者が自然に、
校閲者の視点に立てる仕掛けになってるのだ。
☆ ☆ ☆
私も実は、校閲「する」ことも「される」ことも経験してる人間だから、言葉に
対して細かく配慮する感覚は分かる気がする。それは12年目に入っ
たブログ運営にも活かされてるのだ・・とかまとめちゃうと、キレイ事
すぎるかも。聞いてない? あっ、そう♪
ちなみに、この「する」と「される」の対比は、シリーズ2作目の小説
『ア・ラ・モード』で出て来るものだ。撮影する編集者と、撮影されるモ
デルの対比で、される側が上から目線で使う対比みたいな描き方。
これ、どうだろ? 私的にはいい勝負だと思うし、平均的な生涯収入
だと、する方が上だと思うけど♪ 女子目線だと違うのか。。
☆ ☆ ☆
ヒロインの河野悦子(こうのえつこ)が景凡社で校閲部に回された理
由は、「名前が校閲っぽいから」(笑)。完全にダジャレとか言葉遊び
の世界だけど、さすがに、「校野閲子」って名前は避けたわけね♪
でも、景凡社は明らかに、ケイブンシャのパロディ(笑)。違うわ!
怪獣百科辞典の老舗じゃなくて、光文社をもじってるわけね。
女子大生雑誌『JJ』でお馴染みの。
だから、悦子のお気に入りのファッション誌『Lassy』は、光文社
の『CLASSY』のこと・・・と書くと、「SSY.」と訂正されてしま
う(笑)。
最後の「.」は、デザインとして後から加えたものらしい(by ウィキペ
ディア)。って言うか、「モーニング娘。」の真似かも♪ 小説に出て
来る別の雑誌『C.C』は、『JJ』と小学館『CanCam』の融合。
とにかく、悦子としては、早くファッション誌の部署に移動したいか
ら、わざと乱暴な言動で反感を買うようにしてるらしい。で、これから
何か、作家・本郷との間で事件が起きそうな時に、サンプルは終了
してしまった (^^ゞ
ここで購入すると私の負けだから、ガマンするしかない。本屋の立ち
読みまで♪ 買えよ! あぁ、悦子みたいな驚異的な記憶力さえあれ
ば、立ち読みだけでも済むのに。いや、速読力も必要か。店員のプレッ
シャーへの忍耐力も。。(笑)
☆ ☆ ☆
残念ながら、ここでもう時間となった。まだニフティのシステムが不安定
だし、明日は月曜だから、強引に止めよう。
作者の宮木は、スピンオフ的な短編集らしい2作目、『ア・ラ・モード』
の方が面白いと力説してたけど、サンプルだけ読んだ私の感覚だと、
1作目の方が面白かった。まあ、その後の物語の展開がポイントって
ことだろう。3作目の『トルネード』はまもなく発売。
一応、『ア・ラ・モード』に登場するフランス語だけ解説しとこうか。
「redactrice en chef adjointe」。一語ずつ直訳すると、
「編集者 としての 長 補佐的」。つまり、「副編集長」。
「レダクトリス アン シェフ アジョイント」。
小説では、悦子の仲間・森尾登代子(ドラマでは後輩、本田翼)が
フランス語の名詞を受け取った後、フツーに会話の中で「副編集長」
と言い換えてる。この語学力に、相手が驚いて見直すのだ。水戸黄
門の印籠を見た時に♪
とりあえず、私にとって、『校閲ガール』の第一印象は良かった♪
後は、石原さとみが可愛く映されてるかどうか(笑)。結局そこか!
それでは今日はこの辺で。。☆彡
P.S. ただちにドラマ・レビューをアップした。
時は親切な友達、きのうを物語に・・
~『地味にスゴイ! 校閲ガール』第1話
cf. 補う技術、シール・付箋・ファッション、そして愛~第2話
是永是之『犬っぽいっすね』内容&外見も大切~第3話
(計 3473字)
(追記 55字 ; 合計 3528字)
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