くじ引きの順序は無関係、条件付き確率~2017センター試験・数学ⅠA・第3問
依然として、熱も咳も全くおさまらないまま。異常に体調が悪い
ので、今日はごく簡単な数学記事で済ませよう。
ちなみに昨日はセンター試験の現代国語で3500字ほど書い
た。小説中心だが、評論についても言及してある。
「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』
~2017センター試験・国語
☆ ☆ ☆
さて、私の目に付いたのは、河合塾がやや難化と分析してた
数学ⅠAの選択問題。必答問題の方は易しくなったとされてた
から、自動的にパスしたが、いずれ後でデータ分析を見るかも。
それでは、第3問。配点20点(1/5)。要するに、くじ引きは引く
順番と無関係で公平だということを、簡単な例で証明する問題。
あたりが2本、はずれが2本の合計4本からなるくじがある。
A、B、Cの3人がこの順に1本ずつくじを引く。ただし、1度
引いたくじはもとに戻さない。
(1) A、Bの少なくとも一方があたりのくじを引く事象E1の
確率は、 ア/イ である。
(解答) (E1の確率)
=1-(A、Bともにはずれの確率)
=1-(Aがはずれの確率)×(続くBもはずれの確率)
=1-(2/4)×(1/3)
=5/6 ・・・ ア、イ
(解説) 「少なくとも一方」と言われたら、余事象の確率を
用いるのが普通。このE1の確率はかなり高いから、
最後に引くCはあたりが減ってて不利ではないか?
・・・などと考えてしまいがちな所だ。実際は公平。
(2) A、B、Cの3人で2本のあたりくじを引く事象Eは、
3つの排反な事象ウ、エ、オの和事象である。
また、その和事象の確率は カ/キ である。
(解答) E=(Aだけはずれ)+(Bだけはずれ)+(Cだけはずれ)
= 排反な事象1,3,5の和事象 ・・・ ウ、エ、オ
(注. ここでの「+」は、排反事象の和。以下同様。)
(Eの確率)=(Aはずれ、Bあたり、Cあたりの確率)
+(Aあたり、Bはずれ、Cあたりの確率)
+(Aあたり、Bあたり、Cはずれの確率)
=(2/4)×(2/3)×(1/2)
+(2/4)×(2/3)×(1/2)
+(2/4)×(1/3)×(2/2)
=1/6+1/6+1/6
=1/2 ・・・ カ、キ
(解説) ある意味、Eの確率の求め方を誘導してくれてる
わけだが、「排反」とか「和事象」とか、論理的すぎる
書き方なので、逆に混乱した受験生の方が多いかも。
普通は、反射的に足し算の式だけ書くだろう。
ちなみに、どの2人があたる確率も等しく、1/6。
あたりとはずれの対称性を使うと、次のような解き方もある。
(3人で2本のあたりの確率)=(3人で2本のはずれの確率)
このどちらかしかあり得ないので、共に 1/2。
(3) 事象E1が起こったときの事象Eの起こる確率は、ク/ケである。
(解答) (E1が起こったときのEの起こる確率)
=(E1かつEが起こる確率)/(E1が起こる確率)
=(1/2)/(5/6)
=3/5 ・・・ ク、ケ
(解説) E(=2人あたり)が起こるなら、必ずE1(=A、Bの
どちらか一方はあたり)も起きる。
(E1かつEが起こる確率)=(Eが起こる確率)=1/2。
あとは条件付き確率の公式に代入するだけ。
もし公式を使わずに解くのなら、AあたりBはずれ、
AはずれBあたり、AあたりBあたりと分けて考える。
(4) B、Cの少なくとも一方があたりのくじを引く事象E2は、
3つの排反な事象 コ、サ、シ の和事象である。
また、その和事象の確率は ス/セ である。
他方、A、Cの少なくとも一方があたりのくじをひく事象E3
の確率は、 ソ/タ である。
(解答) E2=(Aがあたりで、B、Cの少なくとも一方があたり)
+(Aがはずれで、B、Cの少なくとも一方があたり)
={(Aあたり、Bあたり、Cはずれ)
+(Aあたり、Bはずれ、Cあたり)}
+(Aはずれ)
=(選択肢0、3、5の和事象) ・・・ コ、サ、シ
(E2の確率)=(2/4)×(1/3)×(2/2)
+(2/4)×(2/3)×(1/2)+2/4
=1/6+1/6+1/2
=5/6 ・・・ ス、セ
(E3の確率)=(A、Cの少なくとも一方があたりの確率)
=1-(A、Cともにはずれの確率)
=1-(Aはずれ、Bあたり、Cはずれの確率)
=1-(2/4)×(2/3)×(1/2)
=5/6 ・・・ ソ、タ
(解説) E2やE3の確率の値は、E1と同じだと分かった人には
すぐ書けたはず。ただ、問題は、E2を排反な和事象で
表すこと。私が実際に解く時には、ベン図を描いた。
3人ともはずれとか、3人ともあたりという事象が存在
しない点が、このくじ引き特有のポイント。
(5) 事象E1が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率p1、
事象E2が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率p2、
事象E3が起こったときの事象Eの起こる条件付き確率p3
の間の大小関係は、 チ である。
(解答) (3)より、 p1=3/5
(3)の時と同様に計算して、
p2=(1/2)/(5/6)=3/5
p3=(1/2)/(5/6)=3/5
∴ p1=p2=p3
大小関係は、選択肢 6 である。 ・・・ チ
(解説) 要するに、くじ引きは色んな意味で順番と無関係だと
示してるわけだが、数研出版のチャート式のHPにある
次のような説明はどうだろうか(単元の冒頭)。
普通のくじ引きで当たる確率は、くじを引く順番
に関係しないことは、順列の対等性から明らかです。
この「明らか」に納得できる高校生、受験生は少数派だろ
うし、「明らか」と納得した生徒でも、実際に細かく証明で
きる人はごく少数だろう。単なるマークシートのセンター
試験でさえ、平均点は低いのが現実。
ちなみに私が知ってる数学のプロの1人は優秀だと評判
だが、お昼休みの雑談中、「くじ引きは先に引く方が得に
決まってる。当たりが沢山あるんだから」と真顔で話した♪
学歴も教育歴もかなり高い方だ。
まあ、「明らか」という言葉は、意欲的な生徒への挑発と
して考えればいいのかも知れないが、私はこの言葉の
危険性や曖昧さをよく理解してるので、この程度の箇所
でいきなり断定的に使うことはない。前置きがあるとか、
柔らかく主張してみるとかならさておき。。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 2511字)
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