華麗なるキムタク、雪山へ~『A LIFE~愛しき人~』第2話
今回も良かったね。「スッチーレス・テクニック」♪ そこか! つま
り、スッチー無しでもCAみたいな快感を与える技。ハァハァ・・(笑)。
そりゃ、スーチャーレステクニックだろ!
ハイハイ。「suture less」だから、縫合・無しって意味ね。
ランニング用のロングタイツ、ワコール・CW-Xの一部でも使わ
れてる技術だ♪ 縫い目があると、数百回の使用でそこから破
れて来るし、肌が弱い人だと気になるらしい・・って、細かいわ!
一方、今週か来週のキムタクのラジオ『ワッツ』なら、最後の萌
えコーナーで女の子が質問するのは、「前立ち」のはず♪
「キャプテン、こんばんは♪ 『A LIFE』で、「前立ち」して
ましたよね。キャプテンは、毎朝ですか?」
甘えた口調でおバカな質問をすると、下ネタ大好きな素(す)の木
村拓哉少年は嬉しそうにニヤけながら突っ込むはず。「前立ちじゃ
なくて朝立ちだろ! 前じゃなくて斜め右で、2日に1回かな」(笑)
ということは、ちょうど「遠位弓部」に当たることになる♪ 弓なり
に曲がった部分の遠い側ね。ごく一部の医療女子はキュンッと
芯が疼くのであった。メドトロニック社HPより。
☆ ☆ ☆
遊び過ぎ? いやいや、このくらい大胆に自分の側で読み替えな
いと、今回はごく普通の医療ドラマにも見えちゃうでしょ。
平川雄一朗の陰影ある演出を見逃してしまうと、まるでバカな若
造・井川(松山ケンイチ)や腐敗した大病院を叩きのめす優秀な
沖田(木村)の大活躍のような外見の話になってた。
ほとんど常にヒーロー路線を進むキムタクが、スーパードクター姿
で難病を解決すれば、多くの視聴者は満足かも知れない。しかし、
私はフツーじゃないのが好きなのだ♪ 動画も静止画も探すのに
苦労するし、コスチューム購入にもお金がかかる。コラコラ!
マジメな話、ベテラン脚本家の橋部敦子が平凡な水戸黄門型ドラ
マを書くとは思えないので、じっくり解釈する必要がある。例えば、
先週も注目したタイトルバックのAとアップル(りんご)。
Aというアルファベットは基本的に、上に向かう線と、下に向かう
線をつないだ形になってる。そのロゴの左側で、女の子が上に投
げたリンゴは、放物線を描いて下に落ちて行った。ニュートンの
重力、万有引力の法則には決して逆らえないわけだ。
☆ ☆ ☆
上がるものは、やがて下がる。盛者必衰。平家物語的な無常観
を見事に描いた上質の悲劇が、ちょうど10年前のTBSの日曜劇
場で放映されてた。『華麗なる一族』。重厚な作品のお遊びコラボ
商品、カレー(華麗)パンを買った人は私も含めて少なくないはず♪
あのドラマの第3話レビューに、私は「腰を抜かした理想主義者
たち」というタイトルを付けてた。鉄平(キムタク)と三雲頭取(柳葉
敏郎)が、あの物語の理想主義者たち。
理想主義者はいつでも、遥かに高い場所を見ながら、そちらに昇っ
て行く。彼らはしばしば有能で自信家だから、「絶対」大丈夫、「必
ず」成功すると確信してるのだ。準備は完全、優れた技術がある
のだから。
☆ ☆ ☆
ところが、現実はそれほど甘くない。と言うより、短期的に成功し
ても、それはなかなか続かず、やがて腰を抜かすハメになる。か
つての優良企業の代表、シャープや東芝を見れば分かること。
あのドラマの放送時期はちょうど、世界的に鉄鋼が注目されて、
新日鉄の株価も急上昇した頃だった。ところが、その後の株価は
見事な山型カーブを描いて下がることになる。まるで、アルファ
ベットの「A」という文字の左右みたいに。あるいは、高く放り投
げた後に落ちていく、リンゴの軌跡みたいに。
華麗なるキムタクの転落を示す伏線の一つが、イノシシの襲撃だっ
た。突発的なアクシデントで、2人の理想主義者たちは腰を抜かし
て倒れた。鉄平のその後の人生も同様。高い雪山を登って行って、
そのまま「明日の太陽を見ない」ことになったわけだ。過剰な自己
愛は、敗北者としての哀しい余生を許容できなかった。。
☆ ☆ ☆
前回の『A LIFE』で、沖田が「絶対に」救うと言ったのは、元・恋
人の深冬(竹内結子)に対してだったが、今回は和菓子職人(平
泉成)にも他の患者にも、医師仲間にも繰り返し言ってた。「必ず」
助ける。「全然」大丈夫。自分の自信には根拠がある。目の前の
患者の命を全力で救うのみ。
ここまで強調されると、これはもう、失敗フラッグにしか見えない♪
そもそも病院の全体会合では、医療ミス・・じゃなくて医療トラブル
予防のために、「大丈夫」とか不用意な発言をしないように注意し
てた。それを破った井川は、珍しい不運もあって失敗したのだか
ら、次は沖田も失敗する方が自然。
ちなみに井川は、壮大(浅野忠信)の依頼を受けた羽村(及川光
博)のタレこみによって、週刊新報WEBの医療ミス記事に登場
してしまった(名前までは流石に出てない)。
沖田の実在モデル、天野篤医師も去年、某週刊誌で2つの話を書
かれてる。どちらも真偽は不明だし、彼の天才的な職人芸とは無
関係だけど、ちょっと気になる状況ではあるのだ。私は、2つの内
の些細な方はありがちな凡ミスで、事実だろうと想像してる。いず
れにせよ、現実社会はなかなか複雑で難しい。
ドラマの沖田の場合、いくら腕が良くても、いくら「私、失敗しないの
で」が続いても、院長(柄本明)と副院長・壮大の権力争いの板ば
さみになってしまうと、新参者として非常に居づらくなる。そうなると、
患者の感謝の言葉や美味しい和菓子の差し入れは役に立たない。
と言うか、建前上のルールを破って、患者からの頂き物をみんな
で仲良く食べてしまう緩さは、おそらく天野医師のまんまだろうと
想像する。それはフツーは笑って見逃されるような事、あるいは
喜ばれるような事だけど、風向きが変わると、脇が甘いとささや
かれるようになるのだ。。
☆ ☆ ☆
最後に、医療用語について補足しとこう。「TVer」(ティーヴァー:
テレビする人、テレビ内居住者)とは、民放の動画サービスやア
プリのこと♪ 10秒飛ばしを連発すると、怒ってフリーズする(笑)
一方、同じ発音の「TEVAR」は、
thoracic endovascular aortic repair
(胸の 血管内の 大動脈 治療)。
ドラマでは、職人・森本の大動脈の瘤(こぶ)に、内側からステント
グラフト(人工血管、またはその移植)。ところが、生まれつきの
「起始異常」(血管の体幹側の結合部分の異常)があったから、
そのトンネル型のステントが異常部をふさいでしまって、右腕に
しびれが発生。自殺未遂に追い込まれてた。
下図は戸田中央総合病院HPより。挿入用の管(カテーテル)を使っ
て入れたステントは、金属のバネ力と血圧で固定されるので、これ
も広い意味でスーチャレス(無縫合)。
小児科医の深冬が直面した危機は、患者の「DOT」(術中死)。
この元の英語は、かなり検索をかけても、唯一の正解にたどり着
けなかった。「Death On (operating) Table」
とか、似たような表現が色々バラついてる。要するに、
「手術台の上の死」。
最後に、沖田が職人の先天的異常を発見した「サジタール
(sagittal)画像」とは、人体を左右に分けて縦切りする
画像のこと。その断面が矢状(しじょう)面。背中側に異常な血管
結合が伸びてたから、この面を見るのが一番わかりやすい。
ちなみに、人体を前後に分けて縦切りした断面なら冠状面、水平
面で切った断面は横断面と言う。建築や数学の世界でも似た区
別がある。下の画像はウィキメディアより。前立ちは隠れてるね♪
コラコラ!
☆ ☆ ☆
なお、第2話の視聴率は微増で14.7%。制作費を別にする
なら、まずまずの数字だろう。来週の第3話では、早くも最初の
躓(つまづ)きが生じるらしいから、最終回までの起伏の作り方
も見どころだ。
『華麗』みたいなシンプルな山型ではないらしいから、
「M」+「W」かな? 上がって下がって、上がって下がって、
最後に上がるとか♪ 視聴者の大部分はハッピーエンド好き
だから、下がって終わる華麗タイプは滅多にない。
そう考えると、やっぱり去年の春の月9、『ラヴソング』の斬新さ
が光ることになる。最後の最後に、どもりの女の子が福山雅治を
叩き潰して終了♪ マニアック・ブロガーも驚く実験的作品だった。
橋部の脚本だと考えにくいから、キムタクファンはご安心あれ。
まあ、私は個人的に脳内でアレンジして楽しむかも。最後にまた
靴を脱いで、匂いをかぐとか♪ 引き金だろ!
それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 切ってつないで治す、心の穴、頭の影
~『A LIFE~愛しき人~』第1話
みどりの目に映る FIRST PASSION COLOR~第3話
私って、いつフラれたの?~第4話
少年たちの冒険と、最小の傷の手術~第5話
逆行性の解離と、二つの穴~第6話
僅かな可能性の扱い方と、リスク管理~第7話
穴(アナ)と由紀&深冬の女王〜第8話
包丁を研ぎ続ける職人たち〜第9話
闘いと穴埋め、自らの存在のために~最終回
(計 3496字)
(追記 156字 ; 合計 3652字)
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コメント
テンメイ様、謹賀新年&寒中お見舞い申し上げます。
インフルエンザ感染症のお加減いかがでございますか。
合併症にご用心くださりますように。
まだまだ人間関係に謎が秘められた第2話でございますが大人と大人の対応が見ごたえございますねえ。
医師と経営者を兼ね備えた院長。
経営者に傾斜した副院長。
手術職人に特化した主人公。
この三者の葛藤だけでも魅了されますな。
そして不良に恋したこともあったけど結局奥様になった元お嬢様というヒロイン。
そして愛人弁護士に職人看護師・・・。
さらに・・・向上心漲るおぼっちゃまくん。
全員の存在感が凄い!
基本的に脚本家は人間性の回復というか
追い込まれてはじめて動き出す人の心を描く名手ですからねえ。
テンメイ様の指摘通り・・・
全員が破綻寸前なのかもしれません。
右手が動かなくなったら死んだ方がマシと考える人に・・・命の大切さを説くのではなくて
右手を動かせるように手術するのが
本当に正しいのかどうかさえ
謎でございますからねえ。
冷え切った心に・・・いつの間にか
温もりを見出す・・・
そういうドラマになることを期待しております。
まあ・・・悪魔の言うことですが。
本年も御身大切によろしくおつきあいください。
投稿: キッド | 2017年1月25日 (水) 04時00分
> キッドさん





こんばんは。
ご丁寧なご挨拶、ありがとうございます。
こちらこそ、明けましておめでとうございます
今年は新年早々、半月も体調不良が続いてしまい、
早くもやる気を失くしてます(^^ゞ
仕事もイマイチ。大ハズレの年の予感がしますね。
まあ、当たりが少ないという話もありますが♪
ともあれ、お気遣いどうもです。
寒さが厳しい中、キッドさんもご自愛ください
さて、大人のドラマですよね。特に、壮大とか。
ペリー荻野というコラムニストが、壮大はもっと
強烈な敵対勢力になるべきだと書いてますが、
僕はまったく逆。実に素晴らしいと思います。
脚本家も早くも、分からない人間だと
壮大に言わせてました。
ただ、特に医療ドラマとか経済ドラマの場合、
善玉と悪玉をハッキリ分けた方が、多くの
視聴者の好みにあってるのは確かだと思います。
『逃げ恥』も含めれば、分かりやすさの問題。
だから僕は、医療ドラマは見ないわけです(笑)。
今回は例外。久々のキムタク主演だし。
あらためて、『華麗』の斬新さに気付きますね。
原作小説から主役を変更。
善悪をハッキリ分けつつ、最後に逆転させて、
ハッピーエンドではなくバッドエンドにする。
産業と金融の話もかなり入れてるのに視聴率も高い。
古い時代設定なのに、現代性も十分。
ほとんど無いパターンでしょう。
話を『A LIFE』に戻すと、
確かに全員の存在感がありますね。
院長も底知れない不気味さを漂わせてる。
個人的には、愛人弁護士の「活躍」を
もっと見たい気がしてます♪
水槽のドジョウ・・じゃなくて魚も使うとか(笑)。
愛人ナース・・じゃなくて職人ナースでもOK
和菓子職人の右手が動くようにする再手術には、
心臓が動かなくなるリスクもあります。
ハイリスクを避ける羽村の発想は、
医学的にも倫理的にも経営的にも自然ですね。
タレこみと絵文字メールは不自然だけど(笑)
全体的には、冷え切った心に温もりを見出す。
同時に、「冷え切った身体」に何かを見出す。
そんなドラマになるだろうと予想します。
そもそも人生とは結局、雪山登山ですからね。
人体の冷凍保存技術が実用化されたとしても♪
医療の世界にも、失敗や限界は付き物だし。。
次回もまた、心因性ではなく身体の異常だと
いう話みたいですが、人間にとっては
心因性の問題も非常に大きい。
そして、心の外科手術は現在ほぼ不可能。
心の病の、心による治癒。
そちらもじっくり鑑賞したいと思ってます。
それでは、今年もよろしくお願いします
投稿: テンメイ | 2017年1月26日 (木) 20時12分