小学校・道徳の教科書の物語『はしの上のおおかみ』、軽い感想(1・2年、奈街三郎作)
森友・籠池問題と築地・豊洲問題が大揺れになる中、来年(2018
年度)から使われる小学校の道徳の教科書も地味な話題になって
る。文部科学省の検定の指摘を受け、細かい変更が行われたらし
い。パン屋が和菓子屋に、おじさんがおじいさんに、アスレチック
公園が和楽器に、etc。。
私はパン屋が和菓子屋になったという話を朝日新聞デジタルで読
んだ時、思わず笑ってしまったけど、文科省の言い分によると、こ
の箇所だけ見た修正ではなく、教科書全体の構成の問題とのこと。
そう言われると、教科書全体をチェックしたくなるけど、当然まだ公
開されてないし、「道徳」に反する裏情報を探し出すつもりもない。
というわけで、合法的に教科書(教材)の内容を読もうとすると、文
科省がネット公開中の副読本『わたしたちの道徳』が参考になる。
この中に、全社が採用したお話が色々入ってるらしい。
とりあえず今日は、1・2年用の副読本の序盤に載ってた読みもの、
『はしの 上の おおかみ』を軽く見ておこう。「橋の上の狼」ではな
く、ひらがなを使ってるし、文節で1マス空けてある。
巻末の注によると、著者は児童文学者・奈街(なまち)三郎。出典
は、『読んでおきたい物語 やさしいの話』(ポプラ社)。ウィキペディ
アが正しいのなら、初出は『はしのうえのおおかみ』(鈴木出版、
1991)なのかも。
副読本は、以前から全文無料公開されてる公的配布物なので、
縮小画像を2枚入れさせて頂いた。出典、著者名も明記してるし、
著作権の問題は生じないと考える。普通にいいお話なので、基本
的には好意的な引用だ。
☆ ☆ ☆
この読みものが挿入されてるのは、第2章「人と ともに」、第2節
「あたたかい 心で 親切に」。p.70~p.73の4ページ。
「おおかみは人ではありません」とか、いきなり先生に突っ込む生
徒もいるだろうけど、なぜか子ども向けのお話では、言動が人間み
たいな動物がよく使われる。擬人法ならぬ、擬獣法。子どもウケが
いいし、人間よりキャラ設定がしやすいからだろうか。たとえば、悪
役にはオオカミ、善玉にはクマさんとか。
あらすじを短くまとめると、次の通り。
1人しか渡れない山の1本橋で、おおかみが意地悪して遊んでる。
うさぎ、きつね、たぬきなど、他の動物が通れないように通せんぼ
して、いばってると、橋の真ん中で大きなクマとぶつかった。
おおかみが慌てて引き返そうとすると、クマはおおかみを抱き上げ
て、後ろへそっとおろした。橋の上で、クマの後ろ姿を見続けたおお
かみは、次の日、クマの真似をして、ウサギを抱き上げて通してあ
げた。おおかみはいい気持ちになった。。
☆ ☆ ☆
まるで『水戸黄門』型のテレビドラマみたいなお話で、6才~8才
くらいの子どもには分かりやすくて教訓的。ちょうどいいと思う。
ただ、ちょっと頭の回る子どもなら、「先生、おおかみはおかしいと
思います」とか発言しても不思議はない。例えば、「おおかみは自
分がいい気持ちになりたいために、わざと橋をふさいだんだと思い
ます。温かい心や親切などではありません」とか。
もちろん、元のお話に、「わざと」という話は書かれてない。
「つぎの日です。1本ばしのまん中で、おおかみは
うさぎに出会いました」
と書かれてるだけ。だから、たまたま橋で一緒になったということか。
☆ ☆ ☆
あるいは、「おおかみに抱き上げられるとウサギは怖いので、余計
なお世話だと思います。おおかみが本当に優しい気持ちを学んだ
のなら、むしろ引き返してあげるべきだと思います」という意見が出
ることも考えられる。
そうすると、別の子どもが、「これは、たとえ話だから、そのまま読む
のはおかしいと思います。他人に良いことをしてもらったら、自分も
すぐ見習おうということを言いたいのです」と反論するとか。
「おおかみはちゃんと、クマにありがとうと言うべきだったし、うさぎ
もお礼を言うべきです」。
「先生は、クマさんみたいにお手本を示してください」。
「みんなで橋をもう1本作る方がいいはずです」、etc。
おそらく既に大量の授業データが蓄積されてるはず。それほど変
な方向に議論が向かうこともなさそうだから、先生の側も余裕を
持って授業に使えると思う。
☆ ☆ ☆
ちなみに私自身がすぐ思い出すのは、中学のホームルームでの
細かい表現論争。
他人に対して、「可哀想(かわいそう)」と言うのは偉そうで失礼だか
ら、「気の毒」という言葉を使うべきだという意見が出て、私は直ち
に反論した気がする。反論内容までは覚えてないけど、この同級
生とは今でも一応、連絡を取り合ってる仲で、関係はわりと良好だ。
まあ、教科書や教材よりも、先生や生徒の能力が問われることに
なるわけで、教科書の細かい部分は枝葉の問題にすぎない。小学
校の先生は大変だな・・とか思いつつ、今日はこの辺で。。☆彡
(計 1995字)
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