横浜競馬場の「老いた3人の賢者」~又吉直樹のいつか見る風景(朝日be)
「3人の賢者」とか「3人寄れば文殊の知恵」とか、人間の知性を
称賛する言葉はもう「老いた」ものになってしまったかも。
遂に今日、2017年4月1日、将棋の佐藤天彦名人がソフト「ポナ
ンザ」(ponanza)に負けてしまった。毎度お馴染み、ニコニコ
動画の電王戦で、失礼ながら、少しも惜しくない完敗。エイプリル
フールの嘘ではなく、真実らしい。
衝撃だったのは、名人がAIに負けてもほとんど衝撃が無いこと♪
逆説的だが、衝撃が無かったことこそ最大の衝撃だ。つまり、若き
名人も負けるんじゃないの?と思ってたわけ。囲碁の井山六冠も
先日、負けてしまったし。
そう言えば、「名人」という言葉にも「人」という文字が入ってる。今
後は、「1台あれば文殊の知恵」とか、「名機」という表現を使うべき
だろう。間違って「名器」と書くのは避けるべきかも♪ コラコラ!
☆ ☆ ☆
さて、人間を超える知性について書くところから始めた理由は、私
が隠れ将棋ファンだからという事だけではない。今回扱うエッセイ
が、人間を超えた知性を思い描いてるからだ。
今日から月1回掲載の予定で始まった、朝日新聞・土曜朝刊別刷
beのコラム、「又吉直樹の いつか見る風景」。
芥川賞に輝いた小説『火花』が大ベストセラーになって、一躍有名
になったお笑い芸人の、真面目で芸術的な文章だ。私はニュース
番組『ZERO』のキャスターをやってる姿しか知らない。
よく読むと、このタイトル自体も意味深になってる。いつか「見た」風景
ではなく、いつか「見る」風景。過去形ではなく、未来形。
実際に話題にしてるのは、歴史を感じる古い遺跡、「横浜競馬場一
等馬見所跡」(横浜市・根岸森林公園内)。ただ、自分は今まで見
たことがないし、読者の多くも見たことないはず。それでも、身近に
ある存在で、いつでも見れるし、いつか幻想の中で見ることも可能。
そんな感じの意味だろう。。
☆ ☆ ☆
私が一番気になったのは、2つある小見出しの内の後者。「老いた
る3賢者」。これは編集者(担当不明)が付けたものだろうけど、本文
にもそれに対応する文章がある。エッセイの終盤近く。
「旧一等馬見所の脇にまわると蔦を絡ませた大きな佇まいが
どこか寂しげで、椅子に座る老いた3人の賢者が家族連れ
で賑わう広場とその奥の海を眺めているようにも見えた」。
句読点の少ない、独特のリズムの芸術的文章なのはいいとして、
「3人の賢者」が何を指してるのか分からない。前後の文章を読み
返しても分からないから、仕方なく「現代の賢者」Google検索を使
用♪ 一瞬で分かってしまった。恐るべし。。
☆ ☆ ☆
この建物の突き出た部分3つのことね。分かりにくっ! なるほど、
それぞれにちゃんと、「目」が2つずつ付いてる♪ 2008年(平成
20年度)経済産業省pdfファイル、「近代化産業遺産群 続33」。
いつか『火花』を読む機会があったら、この独特の比喩に注意し
よう。まだ本屋で3ページ立ち読みしただけなもんで。連続ドラマは、
途中の1回だけ音声のみで聞き流したら、ほとんど内容が分か
らなかった♪
☆ ☆ ☆
話を朝日新聞に戻すと、ネタバレの後で見直せば、確かに上手い
形容だし、ピッタリの写真が添えられてると言えなくもない(撮影・
時津剛)。
ただ、前に大きく写ってる又吉にピントが合ってるし、高い木もジャ
マしてるから、「3人の賢者」だと気付くのは難しい。経産省のファ
イルの解説によると、外国の圧力に譲歩した日本の哀しい歴史も
刻まれてるようだ。「生麦事件」なんてものまで関係して、外国人
居留地の住民向けに作ることになったわけか。。
ちなみにエッセイ全体としては、競馬をめぐる両親との思い出や、
白昼夢みたいな幻想をまじえながら、超越的な知性や世界に思い
を馳せてる。
なるほど、単なる売れ線狙いのキワモノ作家じゃなくて、本物の
アーティストのようだ。知的な顔と落ち着いた語り口は、見せかけ
じゃなかった。
なお、次回は4月29日掲載で、栃木県益子町を訪れる予定。今週
は残り字数が僅かになってるので、今日は早くもこの辺で。。☆彡
cf. なにも書けない孤独な夜を~又吉直樹in旧江戸川乱歩邸
又吉直樹『火花』、吉祥寺の安アパートで思うこと
(追記 52字 ; 合計 1739字)
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