物体の衝突、運動量保存法則、はねかえり係数~物理の問題と解き方6
問題文を書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要問題
集』シリーズ、第6弾。約半年ぶりになってしまったが、今回も数研
出版が集めた受験問題を解説してみよう。
これまでの5本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事は色々あ
るし、数学カテゴリーには多数の記事がある。アクセスは地味に続
いてるので、それなりの需要はあるようだ。
等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1
運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2
動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3
等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4
単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理5
今回は第6章、運動量の保存(p.36~)のA問題から3問。
いつものように、式や説明などはすべて私が書いたもの。
読みやすさと入力環境のため、小文字を大文字に変えた
り、添え字を小文字に変えたりしてるが、言葉遣いは元の
ままだ。
☆ ☆ ☆
54 (一直線上の衝突) 関西学院大
なめらかな水平面上をx方向に運動する2つの球A、Bが
向心衝突した。A、Bそれぞれの衝突前の速度をVa、
Vb、衝突後の速度をUa、Ub、質量をMa、Mbとする。
(1) 反発係数(はねかえりの係数)eを上の記号を
用いて表せ。
(2) Va=26m/s、Vb=8m/s、Ma=0.4kg、
Mb=1.8kg、e=0.8としてUa、Ubを求めよ。
(3) この衝突によって失われた力学的エネルギー
ΔEを計算せよ。
(4) 失われた力学的エネルギーは何に変わったか。
☆ ☆ ☆
解答
(1) 定義式より、
e = -(Ua-Ub)/(Va-Vb) ・・・答
(2) 反発係数の定義式より、
0.8=-(Ua-Ub)/(26-8)
∴ -Ua+Ub = 14.4 ・・・①
また、運動量保存則より、
0.4×26+1.8×8=0.4Ua+1.8Ub
∴ 2Ua+9Ub=124 ・・・②
①②の連立方程式を解いて、
Ua=-0.5 m/s,
Ub=13.9 m/s ・・・答
(3) ΔE={(1/2)×0.4×26²+(1/2)×1.8×8²}
-{(1/2)×0.4×(-0.5)²+(1/2)×1.8×13.9²}
=18.9 (J) ・・・答
(4) 熱エネルギー、音のエネルギー、
球の変形のエネルギー ・・・答
(解説・感想)
全くの基本問題で、小数や分数の計算ミスに注意すれば
よい。数値がキレイに出ないし、有効数字も不明だが、
(2)の問題文から、小数第1位までと考えておいた。2ケ
タで答えても、ほとんど減点はないはず。
☆ ☆ ☆
55 (走る台車からの打ち上げ) 上智大
水平面上に固定されたなめらかなレール上を、質量
500g(弾丸を含む)の台車が2.0m/sの速さで
走っている。時刻t=0に、この台車から100gの
弾丸を、水平面上の観測者から見て、鉛直方向から
30度後方に向けて12m/sの速さで打ち上げた。
弾丸が上昇して再びレール上に落下した瞬間の台車
と弾丸との距離はいくらか。ただし、重力の加速度
9.80m/s²、√3=1.73とする。
☆ ☆ ☆
解答
発射後の台車の速さを x m/sとする。
水平方向の運動量保存則より、右向きを正として、
0.5×2.0=0.4x+0.1×(-12×sin30°)
∴ 1=0.4xー0.6 ∴ x=4
また、弾丸の鉛直方向の初速は、
12×cos30°=6√3=10.38
鉛直方向・上向きを正とし、時刻t(>0)における
位置が0とおいて、
10.38t-(1/2)×9.8×t²=0
∴ 10.38=4.9t ∴ t=2.12
これが弾丸落下時の時刻だから、求める距離は、
(台車の右向き移動距離)+(弾丸の左向き移動距離)
=4×2.12+(12×sin30°)×2.12
=10×2.12
=21.2 (m) ・・・答
(解説・感想)
水平面上から台車の上の面までの高さが書いてないから、
ゼロと解釈。問題文が3ケタの数字になってるから、tは
4ケタで計算する方がいいかも知れないが、おそらく問題
作成者でさえ3ケタで計算してるはず♪
弾丸の打ち上げ角度を、水平方向に対して30度だと誤解
しないように。。
☆ ☆ ☆
56 (床との衝突) 東京水産大
高さ10mの所から、ボールを静かにはなして床に落とし
たら、衝突してはね上がり、6.4m(最高点)までもどった。
このあと再び床に落ちてはね上がることをくり返した。重力
加速度を9.8m/s²とする。
(1) はねかえりの係数を求めよ。
(2) 手をはなしてから、床ではね返り、6.4mの最高点
に達するまでにかかる時間を求めよ。
(3) 2回目に床に衝突する直前の速度と直後の速度を
求めよ。
(4) 何回かくり返しているうちに、最高点はしだいに低く
なるが、最高点が3.0mに達しないのは何回目の
衝突のあとか。
☆ ☆ ☆
解答
(1) 衝突直前の下向きの速度を x m/sとすると、
速度、加速度、距離の関係式より
x²-0²=2×9.8×10
∴ x=14
衝突直後の上向きの速度を y m/sとすると、
0²-y²=2×(-9.8)×6.4
∴ y=11.2
よって、 速度ゼロのまま動かない地面に関して、
(はねかえりの係数)
=-(11.2-0)/(-14-0)
=0.8 ・・・答
(2) (落ちる時間)+(上がる時間)
=14/9.8+11.2/9.8
=2.6 (s) ・・・答
(3) 下向きを正とすると、
(2回目の衝突直前の速度)
=(1回目の衝突直後の速度の符号を逆にしたもの)
=-11.2 (m/s) ・・・答
(2回目の衝突直後の速度)
=-(衝突直前の速度)×(はねかえり係数)
=-11.2×0.8
=-9.0 (m/s) ・・・答
(4) 上向きを正として、
(3回目の衝突直後の速度)
=(2回目の衝突直後の速度)×(はねかえり係数)
=9.0×0.8
=7.2 (m/s)
最高点の高さをhとすると、
0²-7.2²=2×(-9.8)h
∴ h=51.84/19.6 < 3 (m)
よって、3回目の衝突のあと。 ・・・答
(解説・感想)
鉛直方向のはね返りの問題では、速度計算する時の符号の
プラス・マイナスに注意する必要がある。
2回目以降の衝突の計算では、はねかえり係数の定義式を
使うのは省略した。もし時間があれば、真面目に定義に従う
ところだが、多くの受験生は省略すると思う。
(4)の問題文は、おそらく「はじめて3.0mに達しない
のは・・・」という意味だろうと解釈した。文字通りに読むと、
答は、「n回目の衝突(n≧3)」とかだろう♪
やはり、物理の記事は入力が大変だなと思いつつ、それでは
今日は この辺で。。☆彡
(計 2650字)
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