信じ続けること、それが愛~『ボク、運命の人です。』第8話
どんなに困難で くじけそうでも
信じることさ 必ず最後に愛は勝つ
(作詞 KAN)
最近あまり聴かなくなったような気もするが、1990年発表のこの
大ヒット曲は、日本人なら誰でも知ってるものの一つだろう。KANの
作詞・作曲・歌による、『愛は勝つ』。200万枚突破、91年・レコード
大賞。カバー&パロディも多数ある。
似たタイプの曲でも、ZARDの『負けないで』の歌詞にはかなり含み
や解釈の余地があって、彼女自身の謎めいたキャラと共に、独特な
魅力にもなってる。その点は5年前の記事で解説した通り。
それに対して、『愛は勝つ』の歌詞は非常にシンプルで分かりやすく、
小学生からお年寄りまで誰でも一度聞くだけで理解可能。だから、
レベルが低いといった批判もあったけど、間違ってる。逆説的だが、
シンプルなものを大ヒットさせることは、決してシンプルではない。
例えば、一番叫びやすい母音の「あ」を連呼して、特に文節の最初
を「あ」だけでまとめてる点も、目立たないテクニックの一つだ。自分
でスッキリ歌いやすいかどうかは、大きなポイントだから。
「KANARAZU SAIGONI AI WA KATU」。
一方、複雑なものをヒットさせることは複雑で大変なことだ。その例
の一つが、11年半前、『野ブタ。をプロデュース』のドラマと主題歌
『青春アミーゴ』だった。実力や技術と共に、運命も感じるほど。。
☆ ☆ ☆
さて、『ボク運』第7話は、失敗した人を信じ続けるお話だった。現実
には、裏切られ続ける場合も少なくないはずだが、ハッピーエンド
間違いなしの甘口恋愛コメディとしては当然、上手く行くわけだ。
信じても、最後に愛が勝つとは限らない。これこそ、間違いない真実。
上手く行くこともあれば、上手くいかないこともある。裏切られ続ける
ことに疲れ果てて、信じることを止めてしまうことも日常茶飯事だろう。
それでも人は信じたいし、信じ続けること、信じ続ける人を愛してる。
信じることの価値を信じてる。そもそも、少なくとも自分という存在を
信じないと生きていけない。
だからこそ、信じることの素晴らしさを歌い続けるし、信じて成功する
フィクション(作り話)も永遠に作られ続けて行くのだ。
「どんなときも どんなときも」。。
☆ ☆ ☆
ところで、信じることが困難になるパターンはいくつかある。最たる
ものは、信じてる人や物事が失敗することだろう。特に、失敗が続く
とか、大失敗してしまうとか。
今回の『ボク運』だと、正木(亀梨和也)が犯罪者レベルの美人局
(つつもたせ)に引っかかって、運命の人だと思ってしまったこと。
これは晴子(木村文乃)の父親(杉本哲太)にとっては、許しがたい
失敗に思えた。
ドラマではまるで、娘を溺愛する父親の変なこだわりみたいな扱い
にも見えたけど、フツーの判断だろう。性的な失敗は反復しがちだし、
そもそも、どうして犯罪者達と接点が生じたのかも疑問。表面的失敗
だけでなく、背景にある交友関係や行動パターンが気になる所だ。
しかし、自分の部下・国枝(加藤涼)がボクシングの初戦で完敗した
後、必死にサポートする姿を見て、父の心も和らぐ。過去の恋愛で
大失敗したのは、自分の娘も同じこと。
それなら、2人とも温かく愛し続けよう、信じ続けようという流れになっ
た。水はいつも美味しいし、将棋の王将の駒を掘ってくれるサービス
も付いてるし♪
ちなみに晴子の方は、既に覚悟を決めてるわけだ。自分は過去の
恋愛で失敗したけど、もう一度、男性を信じよう。男性に対する自分
の愛を信じてみよう。。
☆ ☆ ☆
晴子にも父親にも正木のウケがいいのは、彼に何となく愛嬌がある
からでもある。「空振りしても ご愛嬌」♪ どことなく憎めないとか、
あいつなら許してしまうということは、自分の身の回りを見ても思う
こと。
「ボン・キュッ・ポン」のボディはもちろん、小悪魔的なキャラの悪女
とか、柔らかくて大らかな人間っぽさとか。『大辞泉』を見ると、明快
な説明が載ってた。
「愛嬌」は「愛嬌のある顔」のように、その人にもともと
身についたものをいうことが多いが、「愛想」は、「ご愛想を
言う」のように、意識的な動作や態度をいう。
意識的な愛嬌というものもあると思うが、天性のものが大きいのは
事実。正木や自称・神(山下智久)の可愛さは、基本的に天性だろう。
三恵(菜々緒)の場合は、ルックスとボディに支えられた「愛想」かも♪
それを信じた晴子パパは、やがて大火傷して、ママ(石野真子)に
ぶっかけられたサーバーの水で冷やすとか。やはり、水は人の命。
そして、おミズは男の命なのであった(笑)。「ミューズ」(女神)という
ギリシア神話の言葉を縮めると「ミズ」になるのは、偶然ではない♪
☆ ☆ ☆
それにしても『ボク運』第8話の美人局は、恋愛の危機のエピソード
としてはちょっと弱いと感じる。これもいつものように、『野ブタ』第8話
へのオマージュ(敬意を込めた模倣)だからだろう。
木皿泉の脚本はかなり技巧的だったが、本質は唯一つ。信じること。
よく分からなくても、疑惑で心が揺れても。妖しいドラキュラの存在も、
信じれば真実になる。少なくとも、当人にとっては。
第8話では不運なアクシデントも続いて、人気者・修二(亀梨)の人格
が疑われる。さらに、正体を現した蒼井(柊瑠美)の歪んだ言動を追及
して、逆に悪者呼ばわりされてしまう。
要するに、『ボク運』も『野ブタ』も、第8話では、犯罪者レベルの悪女
がらみで亀梨が苦しむ話になってるのだ。その悪女が、ドラマの序盤
から登場してた点も同様。
☆ ☆ ☆
野ブタ(堀北真希)にとっては、信じることが難しい状況にもなってる。
というのも、片思いの相手で大切な仲間でもある修二と、初めての
友達の蒼井とが対立してるから。自分が信じる2つのものが矛盾して
しまうパターンの困惑。
しかし、野ブタは正しく、修二を選んだ。ということは、蒼井と友達
になるという失敗を自分で修正したことでもある。自分の直感・・
ではなく「直観」、物事の本質を直接観る能力を信じて。キャサリン
の手品(夏木マリ)の手品を見破った、自分の目を信じて。
一方、彰(山P)も、野ブタが修二をあすなろ抱きする盗撮写真を
蒼井に見せられて、2人への友情と信頼が揺らぐ。やっぱり自分
だけ邪魔者じゃないのか。野ブタにグーで殴られた直後だし♪
しかし、下宿先の豆腐屋のおいちゃん(高橋克実)の古い知恵が
助けてくれる。糠(ぬか)漬けのツボに写真を封印して、見ないこと
にした。臭いものは見る気がしない♪ 逆に、美しいものなら幻想
でも見ようとするもの。
ちなみに、先日話題にした『うん・漢字ドリル』が発売2ヶ月ちょっと
で227万部(!)の大ベストセラーになったのは、ウン・なのに臭く
ないからだろう(笑)
☆ ☆ ☆
野ブタ8話の最後は、三つのヒモの輪の奇跡♪ 信じて握れば一つ
につながる。三人の友情と絆を信じれば。野ブタ。パワーを信じれば。
あれが手品かどうかは、どうでもいい。
私の当時のレビューは、「信じること、本当の事」というサブタイトル。
初めて、暴言っぽいコメントが入って来たのは、それだけインパクト
がある内容だったからだろうと、私は信じる♪ 野ブタ関連の掲示板
とかフォーラムみたいな所で話題になったようだ。
なお、来週の『ボク運』第9話は婚前交渉(笑)・・じゃなくて婚前旅行。
今回、ゴルフのパットの練習は伏線だ♪ 棒と玉で穴に入れて悦ぶ
のだから、正木と神様の関係が進展するはず(笑)。そっちか!
今週は個人的に、映画の動画を3本見てしまったし、自転車シーズン
も開始したので、ブログの字数は少なめ。13142字で終了となった。
早く映画レビューを書かないと大損だな・・とか、ブロガー症候群に
苦しみつつ(笑)、それではまた来週。。☆彡
P.S. 第8話の視聴率は8.2%。さすがに7%台は避けたい所。。
cf. 神は死んだ、そして運命は水がもたらす
~『ボク、運命の人です。』第1話
雨と洪水の彼方、虹を目指すハト~『ボク運』第2話
淋しがり屋が3人、似たもの同士~第3話
意外な告白、ホントは114(いいよ)♪~第4話
Over The Top、限界を超えて~第5話
人が手作りするものの価値、その彼岸~第6話
半月の恋、ときめきと切なさ~第7話
取り返しのつかない未来からの帰還~第9話
指輪という名の虹に輝く、3つの宝石~最終回
(計 3326字)
(追記 73字 ; 合計 3399字)
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