温度と熱量、熱容量、比熱~物理の問題と解き方7
問題文を書き写すのが面倒で、なかなか進まない『物理重要問題
集』シリーズ、第7弾。また2ヶ月も間が空いてしまったが、今回も
数研出版が集めた過去の大学入試問題を解説してみよう。
これまでの6本は次の通り。他にも物理カテゴリーの記事は色々あ
るし、数学カテゴリーには多数の記事がある。相変わらずアクセス
は地味に続いてるので、受験生その他の需要はあるようだ。
等加速度直線運動、放物線、モンキー・ハンティング~物理1
運動の法則、浮力、物体の連結と分離~物理2
動滑車、摩擦力(静止・動)、バネの弾性力~物理3
等速円運動、円すい振り子、万有引力と人工衛星~物理4
単振動、ばね振り子、水平ばね2本~物理5
物体の衝突、運動量保存法則、はねかえり係数~物理6
今回は第7章、温度と熱量(p.43~)のA問題から3問。わりと
単純で簡単な分野だが、熱という特殊なエネルギーを扱う内容
だから慣れは必要だろう。
いつものように、式や説明は私が書いたもの。読みやすさと入力
環境のため、小文字を大文字に変えたり、添え字を小文字に変え
たりしてるが、言葉遣いは元のままだ。
☆ ☆ ☆
66 (熱容量と比熱) 久留米工大
次の各問いに、単位をつけて答えよ。
(1) 比熱が0.1cal/g・Kである物体の温度を10℃から
60℃まで上げるのに5000calの熱量が必要であった。
この物体の熱容量はいくらか。
(2) この物体の質量はいくらか。
(3) 質量100gのある物体を80℃に熱して、容器に入れた
温度10℃の水340gの中に落としてかきまわしたら、
水と物体の温度は12度になった。物体から水に移動
した熱量および物体の比熱を求めよ。ただし、容器の
熱容量は無視する。
☆ ☆ ☆
(解答)
(1) 10℃から60℃まで50K上げる熱量が5000calだから、
1K上げる熱容量は、
5000 / 50 = 100(cal/K) ・・・答
(2) 「熱容量=比熱×質量」だから、
100=0.1×(質量)
∴ (質量)=100/0.1
=1000(g)
=1(kg) ・・・答
(3) (物体から水に移動した熱量)
=(水が得た熱量)
=(水の比熱)×(質量)×(上昇温度)
=1×340×(12-10)
=680(cal) ・・・答
また、物体から移動した熱量が680calだから、
(物体の比熱)×(質量)×(下降温度)=680
∴ (物体の比熱)×100×(80-12)=680
∴ (物体の比熱)=680/(100×68)
=0.1(cal/g・K) ・・・答
(解説・感想)
基本問題だが、問題文でわざわざ単位を求めてるので、単位を
揃えて計算する。この種の問題では、質量の単位はgが普通
なので、(2)では1000gのままでもいいはず。
温度の単位は、 「℃」と「K」の違いを気にする必要はない。
温度差が問題になる時は「K」が普通だろうが、問題文や説明文
に「℃」と書いてることも多い。学校の場合は、先生に合わせる。
(3)では、物体と水をハッキリ分けて考えればよい。
☆ ☆ ☆
67 (金属球の比熱) 東北歯大
比熱がc1[cal/g・K]の金属で作った質量50gの
容器に100gの水を入れて温度を測ったところ15℃で
あった。これに80℃の湯70gを入れてよくかきまぜた
ところ全体の温度が41℃になった。
(1) この金属容器の熱容量a1はいくらか。
(2) この金属容器の比熱c1はいくらか。
引き続いて、この容器の中へ温度100℃で質量が200g
の金属球を入れてよくかきまぜたところ、全体の温度が
52℃になった。
(3) この金属球の熱容量a2はいくらか。
(4) この金属球の比熱c2はいくらか。
☆ ☆ ☆
(解答)
(1) (湯が失った熱量)
=(金属容器が得た熱量)+(水が得た熱量)
∴ 1×70×(80-41)
=a1×(41-15)+1×100×(41-15)
∴ 2730=26a1+2600
∴ a1=5(cal/K) ・・・答
(2) (熱容量)=(比熱)×(質量)だから、
5=c1×50
∴ c1=0.1(cal/g・K) ・・・答
(3) (金属球が失った熱量)
=(金属容器が得た熱量)+(水が得た熱量)
∴ a2×(100-52)
=5×(52-41)+1×170×(52-41)
∴ 48a2=55+1870
∴ a2≒40(cal/K) ・・・答
(4) (比熱)=(熱容量)÷(質量)
∴ c2=40/200
=0.2(cal/g・K) ・・・答
(解説・感想)
金属容器と金属球、水とお湯、計4つの物質を合わせて考える
ので、ミスが無いよう注意。(1)の熱容量は、比熱×質量で
50c1と書いた受験生が少なくないと思うが、採点でどうなるか
は不明。ただ、(2)が合ってれば、(1)は50c1でもいいはず。
☆ ☆ ☆
69 (熱量の保存) 近畿大
3個の物体A、B、Cがあって、最初これらの物体の温度は、
互いに異なっていた。まず、物体AとCとを接触させたら、
物体Aの温度は41℃下がり、物体Cの温度は16℃上昇
した。次に物体AをCから離して物体BとCとを接触させた
ところ、物体Bの温度は2℃上昇し、物体Cの温度は10℃
下がって、80℃となった。接触した物体の間だけ熱のやりとり
があり、そのために両物体の温度が等しくなるものとする。
(1) さらに物体CをBから離して、物体AとCとを接触
させると、物体Cの温度は何℃になるか。
(2) このようにして、物体Cを交互にAとBに接触させていく
と、物体Cの温度は、しだいにある一定の温度に近づいて
いく。この温度は何℃か。
☆ ☆ ☆
(解答)
(1) まず、Cの温度に注目すると、
Aとの接触で74℃から90℃へと16℃上昇し、
Bとの接触で90℃から80℃へと10℃下降。
よってAはCとの接触で131℃から90℃へと41℃下降。
BはCとの接触で78℃から80℃へと2℃上昇。
ここで、A、B、Cの熱容量をそれぞれa、b、cとすると、
41a=16c ∴ a=16c/41
2b=10c ∴ b=5c
よって、2度目のAとCの接触でt℃になったとすると、
(16c/41)×(90-t)=c×(t-80)
∴ 16(90-t)=41(t-80) (∵ c≠0)
∴ 4720=57t
∴ t≒83(℃) ・・・答
(2) 無数の操作全体をまとめて考えると、
(Aが失った熱量)=(Bが得た熱量)+(Cが得た熱量)
よって、最終的に近づく温度をs℃とすると、
(16c/41)×(131-s)
=5c×(s-78)+c×(s-74)
∴ 16(131-s)=205(s-78)+41(s-74)
∴ 2096+15990+3034=(16+205+41)s
∴ 262s=21120
∴ 131s=10560
∴ s=80.6・・・
≒81(℃) ・・・答
(解説・感想)
やや問題文が読みにくいが、実力が問われるユニークな良問だと
思う。質量も比熱も出てないので、熱容量だけで解く。変数3つは、
条件を使って1つだけに絞る(ここではc)。最後は計算が面倒
なので慎重に変形。
おそらく、何か具体的な例があるのだろう。例えば、高温のAから
低温のBに熱を移したいが、Bは高い温度に耐えられないから、
Cを媒介にして熱を移動させるとか。Cは単なる媒介だからこそ、
主役のAとBに続くアルファベットを選んでるのだと想像する。
毎度の事ながら、物理の記事は入力が大変だと痛感しつつ、
それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 気体の状態方程式、熱気球、ピストンと仕事~物理8
(計 2972字)
(追記 27字 ; 合計 2999字)
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コメント
66の(3)の解説の部分についてなのですが、水の比熱は1.0ではなく4.2cal/g・kだと思います。
投稿: すね(17)♂ | 2022年2月17日 (木) 21時57分
> すね(17)♂ さん
はじめまして。コメントどうもです。
高校生・男子という意味のハンドルネームでしょうね。
それは、熱の話でよくある単位の誤解です。
calとJを混同してるのです。
2年生ですかね。あと1年、頑張ってください。。☆彡
投稿: テンメイ | 2022年2月17日 (木) 22時11分