なにも書けない孤独な夜を・・~又吉直樹 in 旧江戸川乱歩邸(朝日be)
今夜は意外と早く雨が降り出して、予定が狂ってしまった。天気予報
の降水確率は、月曜未明まで10%~20%。一時的に天気が崩れる
としても、日曜の午後という情報だったんだけどね。
わざわざタイヤに空気を入れた自転車には乗れなくなったし、ランに
切り替える気にもなれない。あぁ、今日の分のブログ記事は自転車
日誌+α(アルファ)のつもりだったのに、どうしよう。。
☆ ☆ ☆
・・って感じで、毎日更新マニアック・ブロガーはたまに追い詰められ
てるのだ♪
1日も休まずに12年間も書き続けるには、その日に何を書くか、前日
までに決めとくのがフツー。その予定を自分で積極的に変えるのなら
いいとして、何らかのアクシデントで変えるハメになると、パソコンを前
にして悩むことになる。って言うか、そもそもPCの電源を入れる気に
ならないことも珍しくない。
だから今夜は、昨日(17年7月1日)の朝日新聞・別刷beの又吉の
コラムを思い出してしまった。初回にウチで感想記事を書いてる、月
1回掲載のシリーズ、「いつか見る風景」。今回の長いタイトルはこう
なってた。
なにも書けない孤独な夜を
いつか誰かが乗り越えてゆく
☆ ☆ ☆
上の1行目だけなら平凡な書き手のつぶやきだけど、2行目が秀逸
で文学的。やっぱり、単なるタレント作家の枠を越えた才能を感じる。
文章にせよ、お笑いのネタにせよ、自分が何も書けなくて困ってる
状況を、他人が困ってる状況と重ね合わせてる。私という一人称と、
不特定多数の三人称・複数形。重ね合わせの媒介となるのが、本棚
にズラッと並ぶ本。写真は時津剛撮影。
本棚というのは、「誰かが夜を乗り越えて作品を完成させた証拠が
並んでいることが心強い」。
そこには、本という物体の重みや厚みも関係してるだろう。背景にある
歴史や体験を感じさせる手触りや外観。ネットや電子書籍だと、やはり
軽いのだ。
芸人になるための修行時代、授業で講師に見せるためのネタ作りで
苦しんだ経験を思い出して、こうも書いてた。「かつて養成所の同期達
に対して感じたなにかを共有できているような得体のしれない感覚と
よく似ている」。
☆ ☆ ☆
ちなみに上の2つの短い引用文は、直接的には、又吉自身の部屋
の本棚を眺める感じを書いたもの。
ただ、今回のコラムは一応、旧江戸川乱歩邸(東京都豊島区、立教
大学・大衆文化研究センター)の訪問記という建前であって、上の
写真も(一般非公開の?)土蔵「幻影城」の内部。
写真の下には、「お気に入りの短編『人間椅子』に読みふける」と
書き添えてあったけど、土蔵に乱歩の名作小説があるのかどうか
不明だし、手に取って読んでいいのかどうかも不明。又吉が持参
したのか、あるいは全然関係ない本とか♪
とにかく「趣のある家」で、「乱歩が書庫として使った土蔵の本棚
には、あらゆる種類の本が並んでいる」。
下はセンターHPより、乱歩邸の外観の写真。
☆ ☆ ☆
コラムの最後は、芸術的で美しい文章で締めくくられてるので、やや
長めに引用させて頂こう。
その本棚を眺めると、原稿に向かう乱歩の姿が容易に想像
できた。乱歩は、この本を入口としてどこの時代のどこの街
にでも行けたのではないか。そして、僕も自分の部屋の本棚
にある乱歩全集を入口として、ここに来たことがあるような
気がした。
「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」という幻想的な乱歩
の言葉も、ここでは妙に生々しく響き、自分の身体に浸透して
くる。
自分の本棚から乱歩の本棚へと話を展開させた後、時空を超えて2つ
の本棚を結びつける発想は、お笑いやテレビのものではないだろう。
もはや文学とか、芸術系の映画の領域。
☆ ☆ ☆
なお、乱歩の言葉は色紙に書いてたもののようで、鈴木貞美氏の
論文『江戸川乱歩、眼の戦慄』によると、昭和の簡易映写機「幻燈」
とのつながりを読み取ることも可能。
現実世界と夜の夢と、どちらが「まことか」という問いかけは、もう少し
ひねると、『荘子』(斉物論)の「胡蝶の夢」という挿話になる。引用は
中国語版ウィキソースより。
荘周という人が、蝶になって飛んでたが、やがて目が覚めた。荘周が
夢の中で蝶になったのか、蝶が夢の中で荘周になったのか、どちらか
分からない。。
☆ ☆ ☆
又吉が幻影城の中で乱歩になったのか、あるいは、乱歩が幻影城の
中で又吉になったのか。そもそも、それら2つは別の事なのだろうか
・・とか思いつつ、今夜はそろそろ終わりにしよう。
乱歩はNHKの英語講座『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』にも
登場してるので、いずれ別記事を書くかも。なお今週は計14863字
となった。本降りになった雨音を聞きつつ、ではまた来週。。☆彡
cf. 横浜競馬場の「老いた3人の賢者」
~又吉直樹のいつか見る風景(朝日be)
又吉直樹『火花』、吉祥寺の安アパートで思うこと
(計 1968字)
(追記 23字 ; 合計 1991字)
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