数学甲子園2016本選 1st Stage、全問題の解き方と感想
(☆17年9月18日の追記: 2017年の記事を新たにアップ。
数学甲子園2017本選Math Battle、問題と解き方 )
☆ ☆ ☆
去年(2016年)辺りから急に情報公開が遅くなってる数学甲子園。
1年後になってようやく、本選1st Stageの問題と解答(答のみ)
が公式サイトで公開されたので、全ての解き方と感想を書いとこう。
解法は私の第一感であって、速さや上手さ、美しさは別の話になる。
日本語10問、英語5問、計15問をチームで40分以内に解く
から、1チーム5人なら1人3問。何とか完答を狙えると思う。ただ
1チーム3人だと1人5問になってしまうから、かなり大変だろう。
なお、当サイトの過去の記事(2011~16年)は以下の通り。
数学甲子園2016予選、全20問の問題、解き方、感想
数学甲子園2016(Abemaライブ配信)、前半感想
数学甲子園2015準々決勝、全問コメント&解き方
2015予選、全20問の問題、解き方、感想
2014準々決勝、全問コメント&問題10解答・別解
2013予選のポイント、問題15の解説&解答
2012、予選問題&3日ぶりのラン、まだ暑い・・
数学の甲子園、全国数学選手権の問題にチャレンジ☆ (2011)
☆ ☆ ☆
以下、問題文はそのままの引用ではなく、省略表現にしてある。図だ
けは縮小コピペさせて頂いた。著作権的に許容範囲の引用と考える。
問題1 aは正の定数。2a離れた定点PQを中心とする半径r
の球2つの和集合(合併)の体積V(r)は?
r<aのとき、共通部分が無いから、
V=(8/3)πr³ ・・・答
r≧aのとき、半分だけ定積分で求めて2倍。因数分解して、
V=(2/3)π(r+a)²(2r-a) ・・・答
ちなみに、rを大きくすると球1つの体積に収束。
問題2 1辺が6の正三角形の内部に、下図のように3つの円を
書き、面積和を考える。どちらがどれだけ大きいか?
円の中心と接点、頂点を結ぶ補助線を引いて、
各円の半径を求めればよい。
(図1の円の面積和)={ 27-(27/2)√3 }π
(図2の円の面積和)=(11/3)π
図2が { (27/2)√3-70/3 }π 大きい ・・・答
これはかなり小さな差で、4ケタの計算が必要。
問題3 aは正の定数。複素数zが|z|≦aを満たす時、
w=i(z+a²)の絶対値の最小値は?
複素数平面で、原点からの距離の最小値を考える。
i倍は単なる90度回転で無意味だから、無視。
z+a²は、点(a²,0)中心、半径aの円盤と考えると、
a²とaの大小関係、すなわちaと1の大小関係に
よる場合分けとなる。
a>1 のとき、 a²-a
0<a≦1のとき、 0 ・・・答
☆ ☆ ☆
問題4 四面体ABCDで、AB=CD=4、
AC=BD=5、AD=BC=6。
外接球の中心をO(オー)とし、ベクトル
AB、AC、ADをベクトルb、c、dとおくとき、
ベクトルAOをベクトルb、c、dで表せ。
ベクトルAO=p(ベクトルb)+q(ベクトルc)
+r(ベクトルd)
とおいて、OA=OB=OC=ODの条件から
p、q、rを求める。辺の長さが分かってるので、
内積計算は簡単になって、連立1次方程式になる。
ベクトルAO=(1/4)ベクトルb+(1/4)ベクトルc
+(1/4)ベクトルd ・・・答
キレイな答だし、もっと上手い解き方があると思う。
図形的に考えるとか、一般的な知識を適用するとか。
問題5 石とりゲーム必勝法を考える。ルールは3つ。
n個の石を2人で交互にとる。1度にとる石は
1コ以上、kコ以下。最後に石をとった者が勝ち。
k=4のとき、先手必勝となる100以下の
正の整数nは何個あるか?
n=1、2、3、4は、直ちに先手勝ち。n=5だと
先手必敗。n=6なら、先手が1コとれば残り5コ
で後手の手番になるから、後手必敗、先手必勝。
n=7なら、先手が2コとればよい。以下同様。
結局、nの条件は5の倍数でないことになり、
100以下だと、80個 ・・・答
実際の問題には、軽いヒントがついてる。厳密には帰納法で証明。
問題6 ある整数の平方で表される数を完全平方数という。
完全平方数でない正の整数nに対して、
f(n)を次のように定義する。
n=a0とし、a0<a1<a2<・・・<akという
正の整数列をつくって、すべての積が完全平方数
になるようにする。このような列のうち、akが最小
のものについて、f(n)=akとする。
たとえば、f(2)=6。このとき、f(20)を求めよ。
20=2×2×5だから、完全平方数にするには5をかける
ことが必要。そこで、akの候補として、25、30、・・・と
考えていく。25は、5×5だから不適。30の場合、
20×24×30=(2²・5)×(2³・3)×(2・3・5)
=(2³・3・5)²
で完全平方数になる。よって、f(20)=30 ・・・答
問題の意味を素早く正確に理解することが求められる。
基本は、簡単な例を具体的に書いてみること。
☆ ☆ ☆
問題7 nは4以上の整数。n人の生徒を2つの区別
できない組に分け、どちらも2人以上にするとき、
分け方は全部で何通りか?
n人それぞれを、A組かB組に振り分けるだけだと、
(2のn乗)通り。
このままだと、例えばア、イ、ウ、エの4人をA、A、B、B
とする場合と、B、B、A、Aとする場合を2通りとして
数えてしまうことになるが、これらは区別しない。
よって、2で割って、(2のn-1乗)通り。
さらに、0人の組ができる場合を避けるために、1を
引き、1人の組ができる場合を避けるためにnを引く。
以上より、全部で (2のn-1乗)-n-1通り ・・・答
問題文の「区別できない組」という書き方がまぎらわしいが、
話のパターンとしてはよくあるものだから、好意的に解釈。
問題8 音の強さのレベルを表す単位としてdB(デシベル)
がある。振動数1kHzの音の最小可聴値の強さを
I₀(=(10⁻¹²W・m⁻²)とすると、強さ I (W・m⁻²)の
音のレベルα(dB)は次の式で表される。
α=10log₁₀(I/I₀)
80dBの音の強さは、75dBの音の強さの何倍か?
80dBの音の強さをp、75dBの音の強さをqとする。
80=10log₁₀(p/I₀)より、 p=10⁸ I₀
75=10log₁₀(q/I₀)より、 q/I₀=(10の7.5乗)I₀
∴ p/q=(10の0.5乗)=√10
よって、√10倍 ・・・答
物理的な意味や単位は深く考えず、数式で機械的に処理。
音の物理的な話はややこしい。
問題9 ある地域で収穫された人参のうち、規格外品である
割合は15%と予想される。これを確かめるため、
収穫した人参から無作為に何本か選び、規格外品
である割合を調査したい。
「規格外品である割合が13.5%以上16.5%以下」
である確率を0.95以上であるようにするとき、
少なくとも何本選べばよいか。一の位を切り上げて
十の位までの概数で答えよ。
ただし、次のことを仮定する。
収穫する本数、選ぶ本数は十分多く、「規格外品で
ある割合」は(近似的に)正規分布にしたがう。
平均0、標準偏差1の正規分布に従う確率変数X
において、P(|X|≦x)=0.95を満たすxは2。
二項分布を正規分布で近似する。15%は0.15。
区間 0.15-0.015 ~ 0.15+0.015 が
区間 0.15-2√{0.15(1-0.15)/n}
~ 0.15+2√{0.15(1-0.15)/n}
と対応する。nは選ぶ本数。
∴ 0.015=2√(0.15×0.85/n)
∴ (0.015)²=4(0.15×0.85/n)
∴ n=2266・・・ よって、2270本 ・・・答
正直、忘れてたので、公式に当てはめて機械的に解いた。
たぶん合ってると思うけど、悪しからず♪ この実験で、
規格外が16%だと、最初の予想は正しそうだと判断。
20%だと、予想が甘かったと判断するのが確率統計学。
☆ ☆ ☆
問題10 実数x、y、z、wが次の式を満たすとき、xの値は?
x=2/(w-2), y=2/(x-3)
z=2/(y-12), w=2/(z-3)
第2式を第3式に代入して、yを消去。zをxで表す。
それを第4式に代入して、zを消去。wをxで表す。
それを第1式に代入して分母を払い、整理すると、
5x²-12x-12=0
この解のうち、与式の分母が0にならないものを求める。
∴ x=(6±4√6)/5 ・・・答
最後の分母のチェックは、もし記述式テストなら減点
ポイント。2次方程式の解は必要条件にすぎないから、
十分性のチェックを済ませて、はじめて完全な正解。
問題11 A rope of length 180m is
cut several pieces,whose
lengths form an arithmetic
sequence with common
difference d m.If the shortest
piece is 1m long and the
longest piece is 23m long,
find the value of d.
180mの長さを、1mから23mまで、等差数列
をなす長さに分けるとき、公差は何mか。
項数をnとすると、 n(1+23)/2=180
∴ n=15
公差をdとすると、 23=1+(15-1)d
∴ d=11/7 ・・・答
等差数列という英語が分からなくても、公差dを
求める問題だと想像できる。
問題12 The positive difference between
the zeros of the quadratic
expression x²+kx+3 is √109.
Find the possible values of k.
2次方程式x²+kx+3=0の2解の差が√109。
∴ {-k+√(k²-12)}/2
-{-k-√(k²-12)}/2=√109
∴ √(k²-12)=√109
∴ k²-121=0 ∴ k=±11 ・・・答
「2次方程式の解」と書かず、「2次式の値をゼロにする
ような数」と書いてるが、気づかないまま解く人が多いかも♪
☆ ☆ ☆
問題13 Find the constant term
in the expansion of
{ x²-(2/x)}⁹.
9乗の展開式で、定数項を求める。
{(x²)の3乗} (-2/x)⁶の項だから、
9C3×2⁶=(9・8・7/3・2・1)×64
=84×64
=5376 ・・・答
最後、2の6乗を掛け合わせるのを忘れないように。
問題14 What base-10 fraction is
represented by the base-5
decimal 0.3₅(3の上に水平横棒)?
5進法の循環小数0.333・・・は、10進法の分数だと何か。
3×(1/5)+3×(1/5)²+3×(1/5)³+・・・
=3×{(1/5)/(1-1/5)}
=3/4 ・・・答
問いも書き方も珍しいが、基本通りに計算するだけ。無限等比
級数の和の公式を適用。ここでのbaseは、位取り記数法
の底(てい)の意味。
問題15 There are four points in
space,not all in the same
plane.How many planes
can be drawn such that
they are equidistant from
these points?
空間に4つの点があり、同一平面上ではない。
これらの点から等距離の平面はいくつ描けるか?。
両側に3点と1点が分かれる平面は、
1点の選び方で4つ。
平面の両側に2点と2点が分かれるものは、特定の
1点が他のどの点と組になるかを考えて、3つ。
∴ 4+3=7 ・・・答
2点と2点に分ける平面がいつでも描けるかどうか、迷う所。
四面体の図を書いて、各辺の中点を結ぶ線分を引くと分かる
(ような気がする♪)。ただ、証明するのはやや面倒だ。
個人的には、問題4の計算と問題9の理論、問題15の
図形的イメージにちょっと苦しんだ。
とりあえず、今日のところはこの辺で。。☆彡
(計 4739字)
(追記 62字 ; 合計 4801字)
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